税務お役立ち情報

毎月発行の税務お役立ち情報を一部公開しています。
税務お役立ち情報をご希望の方は、切手1200円分(1年間)を送って頂ければ送付いたします。

2024年3月号 相続税対策に相続時精算課税制度を使うときには注意を
2024年2月号 令和6年度の税制改正- 主な項目を抜粋して   -
2023年12月号 年末調整とその留意点
2023年11月号 よく言われる年収の壁について
2023年10月号 インボイス制度の再確認 - 免税事業者との取引関係
2023年9月号 役員への貸付金の留意点
2023年8月号 自分や相続人が認知症になったときの問題点と対策
2023年7月号 具体的・身近なインボイス対応
2023年6月号 中小企業向け設備投資促進税制について
2023年5月号 中小企業の賃上げ促進税制について
2023年4月号 いき過ぎた節税対策は企業存続を危うくする
2023年3月号 令和5年度税制改正-使いやすくなった相続時精算課税制度-

2023年2月号 令和5年度の税制改正-インボイス制度の改正-
2022年12月号 年末調整とその留意点
2022年11月号 補助金・助成金の税務
2022年10月号 役員賞与を損金にする方法 事前確定届出給与について
2022年9月号 日々、税務調査で疑われないようにしていきましょう
2022年7月号 すぐ始めるべきインボイス制度への対応
2022年6月号 相続が発生したら 税務上やるべきことの概略
2022年5月号 インボイス制度と免税事業者への対応-公正取引委員会はどう言っているか-
2022年4月号 人材投資にまつわる税金
2022年3月号 令和4年度の税制改正について
2022年2月号 令和3年分の確定申告について
2021年12月号 年末調整のよくある間違いとよくある質問
2021年11月号 インボイス制度に備える留意点
2021年10月号 全企業に対応が求められる電子取引のデータの保存が義務付け
2021年9月号 リスクに備える  -保険とその優先順位を考える-
2021年8月号 評価損について:税務での留意点
2021年7月号 消費税 インボイス制度とは その2 制度の影響と留意点
2021年6月号 消費税 インボイス制度とは 近づいてきたインボイス制度の申請
2021年5月号 コロナ禍の税務での留意点
2021年4月号 令和3年税制改正のポイント その2
2021年3月号 令和3年度税制改正のポイント
2021年2月号 令和2年分の確定申告について
2020年12月号 自民党税調 令和3年度税制改正の方向性
2020年11月号 年末調整のよくある間違いと疑問点
2020年10月号 今年の年末調整の留意点
2020年9月号 税にまつわる、ゴシップ話
2020年8月号 コロナ禍の税務での留意点
2020年7月号 新型コロナウイルス対策として受け取る国や地方自治体からの給付金や助成金に税金はかかる?
2020年6月号 不測の事態に備えておくべき資金  備える経営
2020年5月号 新型コロナウイルス対策として、講じられている措置について
2020年4月号 再度、事業承継税制について
2020年3月号 令和2年税制改正について  ポイントの概略解説
2020年2月号 令和1年分の確定申告について
2019年12月号 外注費なのか給与なのか判断の注意点
2019年11月号 年末調整について、来年の為の注意点
2019年10月号 企業が寄付をした場合の法人税の取り扱いについて
2019年9月号 いよいよ来月から消費税の改定
2019年8月号 民法(相続法)等の改正で変わる「相続税・贈与税」への影響
2019年7月号 役員と会社間の取引に関する注意事項  その2
2019年6月号 役員とその取引に関する注意事項
2019年5月号 従業員.役員の福利厚生を巡る税務 その3
2019年4月号 従業員.役員の福利厚生を巡る税務 その2
2019年3月号 従業員.役員の福利厚生を巡る税務 その1
2019年2月号 31年税制改正について  ポイントの概略解説
2018年12月号 年末調整にあたって 申告書の書き方が変わりました
2018年11月号 (特例)事業承継について その3 問題点の多い新事業承継税制、じっくり考えて取り組みましょう
2018年10月号 事業承継について  その2 商業ベースに踊らされることなく、じっくり考えて取り組んでいきましょう
2018年9月号 事業承継について  商業ベースに踊らされることなく、じっくり考えて取り組んでいきましょう
2018年8月号 相続税の申告が必要な場合とは?2 小規模宅地の評価減について
2018年7月号 相続税の申告が必要な場合とは?
2018年6月号 特例事業承継税制のポイント
2018年5月号 30年度税制改正 その4:中小企業の投資を後押しする固定資産税の特例の創設
2018年4月号 30年度税制改正 その3:法人税 所得拡大税制を中心に
2018年3月号 30年改正税制(案)その2:所得税関係の改正
2018年2月号 30年改正税制(案):事業承継税制の抜本的見直し
2017年12月号 年末調整にあたって
2017年11月号 配偶者特別控除について
2017年10月号 決算の時に特に注意すべき項目:税務調査の目から
2017年9月号 節税の考え方
2017年8月号 節税の考え方
2017年7月号 関係会社同士で取引をする際の経理上の注意点
2017年6月号 29年度税制改正について
2017年5月号 29年度税制改正について
2017年4月号 29年度税制改正について
2017年3月号 29年度税制改正案について
2017年2月号 29年度税制改正案について
2016年12月号 損益通算について
2016年11月号 マイナンバーの対応は進んでいますか・【中小企業向けの固定資産税の軽減特例】について
2016年10月号 企業格付けのこと
2016年9月号 
2016年8月号 「中小企業等経営強化法」の制定で企業はますます未来志向経営計画が求められる
2016年7月号 生産性工場設備にかかる固定資産税の軽減措置について
2016年6月号  源泉徴収について
2016年5月号 M&Aにまつわる話:主に税務について
2016年4月号 M&Aにまつわる話
2016年3月号 決算の時に注意すべき事
2016年2月号 平成28年度税制改正大綱の概要:主に法人税関係をまとめました。
2015年12月号 マイナンバーについて
2015年11月号 福利厚生費か給与か?
2015年10月号 帳簿書類の保存の期間について
2015年9月号 修繕費として損金(経費)にできるか、資産計上して減価償却すべきか?
2015年8月号 相続ってなんだろう
2015年7月号 今回はふるさと納税について解説します
2015年6月号 マイナンバーがもうすぐ導入されます
2015年5月号 役員への報酬の税務上の注意点
2015年4月号 相続税に備え生前贈与を上手に活用しましょう
2015年3月号 平成27年度税制改正大綱 特に関連ある項目について
2015年2月号 平成27年度税制改正大綱の概要:主な内容をまとめました。

2024年3月号 相続税対策に相続時精算課税制度を使うときには注意を

■制度の概要 -相続の前取り制度なので相続時に加算されます-
相続時精算課税の制度とは、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
受贈者(子や孫)が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができます。
ただし、それで終わりというわけではありません。贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額で相続税額を計算します。いわば相続の前取り制度といえます。贈与を受けた年の翌年確定申告時期に「相続時精算課税選択届出書」等一定の書類をつけて贈与税の申告書を提出する必要があります。

■制度の留意点 -相続発生まで長期間の管理が必要-
①上記のように贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額を加算して相続税額を計算します。その価額は贈与時の価額です。なので、評価が上がるであろう資産は有利ですが、下がる可能性のある資産は不利になります。その見極めは必要になります。

②この制度を選択すると、その選択をした贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。一度選択すると、その後の贈与は全て相続税の申告の時に加えなければなりません。何年経過しても加えなければなりませんので、ずっと記録が必要です。もちろん税務調査でもさかのぼって調べられます。暦年課税の場合は3年超前(改正で7年になりました)は加える必要はありませんが、相続時精算課税制度はそうはいかないと言うことです。

③ 相続時精算課税を一度使うと、暦年課税に戻れないわけですから、贈与税の基礎控除額110万円を控除することはできません。贈与を受けた財産の価額が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。となっていたのですが、この毎年の申告を失念するなどして問題が生じていました。そこで、改正されて6年分から下記のようになっています。
累計で2500万円オーバーしたら20%の税率で贈与税がかかります。この税金は相続税の前払いとして相続税と精算されます。

■令和6年1月から制度が一部改正されます
① 相続時精算課税に係る基礎控除の創設 
相続時精算課税を選択した受贈者が、 贈与者から令和6年1月1日以後に贈与により取得した場合の贈与税については、暦年課税の基礎控除額と同様に、相続時精算課税用の基礎控除額110万円 ができる様に改正されました。一度使うと少額でも申告が必要だったのですが、改正で110万円超のみ申告必要です。
また、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算されるのは、令和6年1月1日以後に贈与については、基礎控除額を控除した後の残額とされます。 改正前は基礎控除がなく全部加算でした。

■使うときのポイント
相続時精算課税制度を使うと、相続が発生するまでは、何年であろうと管理しておかなければならないことには変わりありません。相続の時に以前贈与した分を加算しなければならないわけですから、相続の時に財産が少なくても相続税の申告が必要な場合も出てきます。加算しても相続税申告が不要と想定される場合には、早期の財産移転として有効に使えると思います。申告の時に以前もらっていたことが判明しても、もめ事がないならば、適用して良いでしょう。相続の申告が将来かならず起こるという場合は適用するかどうかを慎重に検討しましょう。

2024年2月号 令和6年度の税制改正- 主な項目を抜粋して   -

令和6年度税制改正の中で、岸田総理が経済対策の一環として「所得税の定額減税」を打ち出したことで、「減税か、給付か」など社会的にも大きな議論を呼びました。この「所得税の定額減税」ですが、所得税、住民税合わせて1人あたり最低4万円と減税額が小さい一方、早く効果を上げたいがために年末調整時ではなく期中で実施します。そのため企業の事務負担、と混乱は避けられません。詳細は次号等でお知らせしますが、関係ありそうな項目を概略お知らせします。

  1. 所得税の定額減税の方法
    令和6年6月以後の最初の給与支給時に源泉徴収される税額から、以下の①②の金額の合計額を控除します。つまり源泉税を少なくし、手取りを増やすという訳です。事務負担がかなり増加します。
    ただし、令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超える人は対象外です。
    【特別控除額】は所得税①本人3万円②控除対象配偶者又は扶養親族1人につき3万円
    住民税もそれぞれ1万円です。住民税は市の方が手続きします。納付額から引かれることになります。

  2. 住宅取得資金贈与の非課税措置の一部改正と3年延長 令和8年12月31日まで
    直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた際、最大で1,000万円までの金額について贈与税が非課税にる特例措置です。今回の改正では、大枠従来通りですが、耐震・省エネ・バリアフリー住宅を取得した場合の非課税限度額の上乗せ措置について、対象となる住宅が一部見直されます。一般住宅であれば500万円までが非課税ですが、一定の耐震・省エネ・バリアフリー住宅であれば、これに500万円が上乗せされ、1,000万円が非課税となります。

  3. 賃上げ税制 よりインセンティブをつけ3年延長
    賃上げの動きをより拡げ、効果を深めるため、インセンティブとしての賃上げ促進税制が強化されます。また、中小企業についてはその6割が欠損法人となっており、税制措置のインセンティブが必ずしも効果を発揮しない構造となっていることから、賃上げを後押しする措置がされます。
    改正の概要 中小企業は従来の賃上げ率対前年比1.5%以上・2.5%以上UPの段階に応じてインセンティブも併せて、最大税額控除額が40%から45%に拡大されます。中堅企業は3%以上・4%以上UP段階に応じて要件で最大35%、大企業は3%以上UPから7%以上UPまで段階に応じて最大35%になります。
    併せて、欠損法人について5年間という期間にわたって繰越控除が可能になります。
    なお、適用期限については、3年間延長され令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度(設立事業年度等を除く。)までとなります。

  4. 交際費課税の見直し 1万円へ引き上げと期限延長
    交際費課税の見直しされます。損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準について、現行の1人当たり5千円以下から1万円以下に引上げることとされます。これは大中小問わず全ての企業に適用です。中小企業はその他の交際費について800万円まで損金算入できますので、さほど影響はないでしょう。また、大企業(資本金100億円超は除く)は1万円以下に該当しない飲食費は従来通り50%が損金算入できます。交際費等の損金不算入制度について、令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度までその適用期限が延長されることになります。

2023年12月号 年末調整とその留意点

年末調整は、特に昨年との改正点はありません。今一度提出書類を確認し早めに提出してもらいましょう。電磁的方法による提出も推進されています。以下、よくある留意点、疑問点をまとめました。

■年末調整対象者は?
「扶養控除等(異動)申告書」の提出がないとできません。給与総額が2,000万円超も対象外です。本年12月31日に在籍している方が対象です。中途退職者は原則年末調整はしません。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を求めましょう。
この申告書を提出されていないと年末調整はできません。必ず提出を求めてください。また、この書類が提出されていない場合は毎月の給与について一般の源泉徴収金額とは異なる「乙欄」による源泉徴収をする必要があります。天引きしていなくても雇用主にその源泉徴収税額の納付をする義務があるので、注意しましょう。

■年末調整の改正点と「扶養控除等(異動)申告書」の記載の留意点は?
令和3年分から給与所得控除や基礎控除の改正、寡婦控除の改正、ひとり親控除の創設、所得金額調整控除の創設があっています。本人や扶養親族等の障害者の場合には、障害者の□にチェック、本人が寡婦、ひとり親、勤労学生の場合は該当する□にチェックを忘れずに入れましょう。昨年と移動があっていないか改めて確認を。

■記入用紙が3枚あります。この提出がないと事務手続きができません。
記入用紙は①「扶養控除等(異動)申告書」②「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」③「保険料控除申告書」の3枚になっています。①と②は必ず必要です。③は該当ある方のみの提出ですが、昨年と比べ移動がないか確認しましょう。念の為「なし」の場合も「なし」ということで出してもらった方がのちのトラブルを避けるためにもよろしいでしょう。他に「住宅借入金等特別控除申告書」は該当ある方のみです。

■子供が12月25日に生まれました。扶養親族にできますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行います。従って生まれて間もないですが、扶養親族になります。

■親を扶養していましたが、年の途中で亡くなりました。扶養から外れますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行いますので、その日には親はいないので、扶養から外れるのではと思いがちですが、令和5年中であれば、例えば5年1月に亡くなられたとしても今年までは扶養控除ができます。

■中学生の息子は扶養控除にできないのですか?
扶養親族は生計を一にしていて、所得が48万円以下(給与だと収入103万円以下)であることが条件です。しかし16歳未満(平成20年1月2日以後に生まれた人)は扶養控除の対象にはなりません。子供手当てが支給されるからです。ただし、障がい者の場合は障がい者控除があります。

■障害者等の確認をしてください
障害者として申告されている人は、給与所得者本人又は同一生計配偶者や扶養親族となっている人ですか。
障害者控除は、同一生計配偶者や年齢16歳未満の扶養親族であっても受けることができます。

■国外に住んでおられる親族に係る扶養控除の適用を受ける場合
その国外居住親族の年齢等の区分に応じて、関係書類(送金関係書類など)を給与等の支払者に提出又は提示する必要があります。不明点は当事務所にお尋ねください。

■前職の源泉徴収票がもらえないのですが?
中途就職の従業員さんは前の職場の給与も加えて年末調整をします。そのために前職の源泉徴収票が必要です。それがないと、年末調整はできませんので、自分で確定申告をすることになります。従って、中途退職者がおられれば、必ず退職までの給与の源泉徴収票を発行してあげましょう。

2023年11月号 よく言われる年収の壁について

パートで働く主婦は、年収によって税金の有無や社会保険の自己加入義務が変わります。年収の壁には所得税の壁、住民税の壁、そして社会保険の壁がそれぞれあって、より複雑になっています。しかも数年毎にそれぞれの法律が変わっていくものですから余計に混乱しています。それぞれの年収の壁を超えるとどうなるのか、概略を解説していきます。色々な詳細な条件等がありますが、それは割愛し一般的な事例をお話しします。

100万円前後の壁:自分の住民税の非課税年収額
住民税は、前年の所得に対してかかり、均等割と所得割が徴収されます。伊万里市の場合均等割は、年間5500円(自治体により異なる)の定額です。給与収入93万円超の場合課税となります。所得割は、年収100万円を超えると課税対象となります。100万円を超えると収入から98万円を引いた額に10%の税額を掛けて計算するので、1万円増えるごとに1,000円の所得割が増えます。また、未成年者、障がい者、ひとり親、寡婦の方は、前年の合計所得金額が135万円(給与で約204万円)では市・県民税はかかりません。

103万円の壁:自分の所得税の非課税年収額
パート代が年間103万円以下であれば、本人の所得税がかかりません。103万円を超えると、超えた分に対して所得税がかかります。給与所得控除が最低でも55万円あり、基礎控除が48万円あるので合計103万円までは所得税はなしです。ちなみに150万円の所得があれば所得税住民税併せて7万円ほどです、103万円以下だと、ご主人の所得計算のために配偶者控除を受けられます。超えたとしても201.6万円までは配偶者特別控除を受けられます。

106万円の壁:勤務先によっては社会保険加入の年収額
サラリーマンの夫の勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金など)の扶養に入るには、年収約106万円と130万円の二つの年収ボーダーラインがあります。勤務先での社保は会社が約半分負担します。
勤務先規模や条件が以下の人は、年収106万円以上になると勤務先の社会保険への加入義務が発生し、自分で保険料を払うことになります。夫の扶養に入っていた人は、夫の社会保険の扶養から外れます。

*106万円~社会保険の加入条件(2022年10月時点)

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 賃金月額が88,000円以上
  • 雇用期間が2ヵ月を超えることが見込まれる
  • 101人以上(厚生年金の被保険者数)の従業員のいる事業所
  • 学業を主とする学生(昼間学校に通う学生)でないこと

法改正により、2024年10月からは従業員数51人以上の企業にも社会保険適用の範囲が拡大されます。

130万円の壁:社会保険加入の年収額
年収106万円の条件に当てはまらない人も、年収が130万円以上(60歳以上の場合は180万円以上)になると、夫の社会保険の扶養を外れ、勤務先の社会保険に加入するか、勤務先の加入条件に該当しない場合は、国民健康保険や国民年金に加入することになります。年収130万円で社保だと約20万円、国保国年だと約30万円の負担になります。

150万円の壁:配偶者特別控除満額の年収額
上記の通り、妻の収入が103万円以下なら配偶者控除の対象です。それを超えると配偶者特別控除を使いますが、妻の給与所得が条件以下(年収が150万円以下)であれば、最大38万円の所得控除を使えます。
ただし、配偶者控除・配偶者特別控除を受けるには夫の所得制限があり、夫の合計所得が900万円以下(給与収入1,095万円以下)の場合は38万円、以下増える毎に減少し、夫の合計所得が1,000万円超(給与収入1,195万円超)の場合は、配偶者控除・配偶者特別控除は受けられません。

パート年収201.6万円までは配偶者特別控除があります。
妻の年収が150万円を超えても201.6万円までは、夫の収入等と妻の所得額に応じて段階的に配偶者特別控除が受けられます。ただし、上記の通り、夫の所得が一定の範囲(年間の合計所得金額が1,000万円 ※給与収入のみの場合、年収1,195万円)を超える場合には適用されません。

2023年10月号 インボイス制度の再確認 - 免税事業者との取引関係

いよいよインボイス制度が始まりました。今回は免税事業者との取引関係についてお話しします
これまでも取り上げていますが、基本的事項を含め、実務で重要となる点を再点検する意味で確認します。

免税事業者等との取引で仕入税額控除はできますか。
インボイス発行事業者以外の者である消費者・免税事業者・インボイス登録を受けていない課税事業者(免税事業者等)からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために保存が必要なインボイスの交付を受けることができないため、仕入税額控除を適用できません。ただし、一定期間は、免税事業者等からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる下記の「経過措置」があります。 

免税事業者等からの課税仕入れに係る「経過措置」の内容と、いつまで適用できますか。
経過措置を適用できる期間及び控除割合は、「令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%」、「令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の 50%」となります。
令和11年9月30日を過ぎると、免税事業者等からの課税仕入れの全額について、仕入税額控除ができなくなります。 

経過措置の適用要件を教えてください。
経過措置の適用を受けるためには、一定の事項が記載された「帳簿」及び「請求書等」の保存が必要です。帳簿については、通常の記載事項に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要です。
「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」の記載については、 個々の取引ごとに「80%控除対象」、「免税事業者からの仕入れ」などと記載する方法があります。そのほか、例えば、経過措置の適用対象となる取引に、「※」や 「☆」といった記号・番号等を付し表示する方法も認められます。区分が必要なので事務手続きが複雑になります。
【経過措置の適用を受けるための帳簿の記載事項】は従来と同様です。
①課税仕入れの相手方の氏名又は名称   ② 課税仕入れを行った年月日
③課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)及び 経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨
④課税仕入れに係る支払対価の額 

免税事業者等との取引条件を変更しようと考えていますが、留意点はありますか。
取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、「優越的地位の濫用」として、独占禁止法上問題となるおそれがあります。
特に、令和11年9月30日までは、前述のとおり、免税事業者からの仕入れでも一定割合を控除できる経過措置があります。にもかかわらず、消費税10%相当額を取引価格から引き下げることを一方的に通告することは、問題となるおそれがあります。
しかし、新聞報道によれば経過措置後は免税事業者とは取引をしないことを打ち出している大手企業も出てきています。 

免税事業者がインボイスのために課税事業者になった場合の納付税額の軽減措置とは
小規模事業者から「免税事業者のままでは、取引先が仕入税額控除できないため取引が打ち切られる」「課税事業者になると消費税負担が増えて生活が苦しくなる」といった影響が心配されています。そこで、免税事業者がやむを得ず課税事業者となりインボイス発行事業者になった場合、納付すべき消費税額を3年間は軽減する措置が設けられています。
消費税額を売上の20%に軽減する措置を受けることができます。納付税額=売上税額-(売上税額×80%)です。
例えば税込売上550万円(消費税50万円)であれば、50万円−(50万円×80%)=10万円 (50万円×20%)の納税となります。
この軽減措置は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において適用されます。

2023年9月号 役員への貸付金の留意点

中小企業のオーナー経営者の場合、会社のお金と個人のお金の境目が曖昧になってしまい、
社長の生活費が足りないなどの理由から、いつの間にか「役員貸付金」が膨らんでいることがあります。ここにはいろんなリスクがありますのでこれについて考えます。

1.オーナーと会社の財布は同じではありません
まず理解しておいてもらいたいのは、会社の財布と社長の財布は決して同じではないということ。会社から社長へ貸したお金は「役員貸付金」としてしっかりと管理し、会社の帳簿に記録する必要があります。「この会社は自分のものだから」と曖昧なままでお金を移動させることは、絶対にしてはいけません。

2.役員貸付金の発生原因
「役員貸付金」は大抵役員報酬が低すぎる場合に見られます。例えば会社の業績が思わしくなく、役員報酬が少額な場合には、生活費が足りずに会社からお金を借りざるを得なくなるケースも出てきます。その他現金管理がずさんで、役員が個人的に使ってお金がどこに使われたのかわからない場合です。明らかにあるべきお金がないのですから、使途不明である限りは役員貸付金にするしか方法はありません。社長以外でも役員がお金を借りたのであれば「役員貸付金」となります。

3.役員貸付金のリスクは?
「役員貸付金」の一番のリスクは、銀行の印象をきわめて悪くします。結果融資が受けにくくなりますし、返済をしばらく止めてもらうなどの救済の支援も受けにくくなります。金融機関からの借り入れがある場合は、その借入金を流用していると判断されます。金融機関に返済すべきお金を役員が個人的に使っているのですから、心証はきわめて悪くなるのは当然です。使途不明の貸付金が、異常に増加するとすれば益々です。
対外的な信用も落ちます。第三者が決算書を見た際に良い印象は与えません。 

4.税務調査でのリスク「役員貸付金」には利息がかかる
会社は営利組織ですから、企業行動は全て利益につながっているはずだ、という前提があります。会社から社長にお金を貸すのも、営利活動の一環でなければならないのです。ということは、会社は利息を取る必要があります。しかし社長は自分の会社から借りたお金に利子をつけなければいけないという意識がありません。
この状態で税務調査に入られると、税務署からは指摘が入ることになります。多くの場合、会社が取り損ねた利息は「会社から社長への役員報酬として支払われた」とみられます。利子分が上乗せされた報酬額となりますから、それに応じた追徴課税の対象となってしまいます。

5.税務調査で「役員貸付金」を会社に返済する意思がないとみなされるととんでもない税金がかかる
「返済の意思がない」と見なされた時点での「役員貸付金」は役員に対する報酬にすぎないと見なされることもあり得ます。すると多額の追徴課税の対象になるのです。できるだけ早く定期的に返済すべきです。

6.役員貸付金の解決方法は?
上記のようなリスクを避ける為に、まずは、現金預金管理をしっかりして、使途不明の為の役員貸付金が増えないようにすべきです。次に「役員貸付金」は返済することで、増やさないようにすることです。多額の役員貸付には「取締役会の承認」が必要であることもお忘れなく。返済方法には、「役員報酬の増額」「個人資産の売却」、「役員退職金との相殺」などが考えられます。特に事業承継をするためには、整理をしておく必要があります。

2023年8月号 自分や相続人が認知症になったときの問題点と対策

厚生労働省の予測では2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になるといっています。
認知症になるとどのような問題が生じるのか、想定される主な事項を知っておきましょう。そして、その対策も考えましょう。

1. 認知症の相続人がいると、遺産分割協議はできない
相続が起こると、亡くなった方の財産は凍結されます。なので、原則として、銀行預金などは下ろせなくなり、不動産等も処分できなくなります。遺産分割協議で誰が相続するかを決めれば解除されます。しかし、相続人であるお母さんが認知症などで判断能力が低下していると、遺産分割協議に参加して意思表示することはできないのです。認知症の相続人は相続放棄をすることもできません。これらの手続きは代筆することもできません。

2.株式の売買や贈与、融資の契約、株主総会における決議などができません。
認知症の人が会社にかかわる人物であればより問題を大きくします。株式売買等の法律行為ができないからです。
例えば、事業承継には、さまざまな法律行為を伴います。高齢化で事業承継を進めようと考えていた場合、経営者が認知症になってしまうと、自身の判断で事業承継ができなくなるリスクがあります。

3. 遺産分割協議等を行うためには成年後見制度を利用するしかない
相続人に認知症の人がいると遺産分割協議や相続放棄は全くできなくなるわけではありません。その場合成年後見制度を利用することになります。成年後見人等が代理で法律行為を行うことになります。後見人が本人の代理人として参加することで遺産分割協議をし、また相続放棄についても、後見人が手続きすることになります。
ただしその手続きは面倒です。お父さんの死後、慌てて認知症のお母さんの後見人の選任を家庭裁判所に申し立てた場合、手続きには数か月かかってしまいます。特に複雑な家族関係とかがあればなおさら困難です。
相続税申告の期限は10カ月ですので、もたもたしていると期限に間に合わない可能性もあります。

4. 認知症の家族がいるときの生前対策
相続人の1人が認知症などにより判断能力が無い場合は、相続発生後のトラブルを回避するため、生前にできる対策をしておきましょう。特に複雑な家族関係とか、事業経営にかかわっている場合は絶対に対策が必要です。

5. 遺言書を作成する
対策の最も有効でやりやすいのは、お父さんが生前に「遺言書」を作っておくことです。遺言で「誰に何を相続させるか」を決めていれば、遺産分割協議をしなくても不動産や預貯金について、凍結を解除し相続手続きをすることができ安心です。ただし、認知症になってからは判断力次第で作成できないこともあります。元気なうちに作りましょう。
特に複雑な家族関係とかがあれば、これはぜひともやっておく必要があります。公正証書遺言がいいでしょう。手続きは公証役場(唐津や佐世保にあります)にて行います。数万円の手数料で済みます。

6. 家族信託を利用する
お父さんと子どもが家族信託という手続きをしておき、承継先を定めておくことでも、同様に遺産分割協議を回避することができます。父親の死後、子どもは事前にした契約通り、信託財産を管理、運用、処分できます。
家族信託の手続きは、信託銀行や専門の司法書士に依頼します。

2023年7月号 具体的・身近なインボイス対応

身近なインボイス対応 タクシー代はどうなる?

 従業員等がインボイス登録をしていない個人タクシーの領収書を会社との間で精算した場合、どうなるのか気になるところです。

 インボイス制度では、免税事業者や未登録の課税事業者等からはインボイスが交付されず、買手は経過措置を適用することで制度開始から6年間、仕入税額相当額の80%又は50%を控除できます。一方、請求書等の交付を受けることが困難などの理由から、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引として、出張旅費等特例があります。同特例では、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)が対象となります。

 例えば、従業員等がインボイス登録をしていない個人タクシー(免税事業者等)を利用し、代金を現金で支払って領収書を受け取ったとします。従業員等が会社との間で精算する実費相当額はその領収書と帳簿の保存により、経過措置を適用して最初の3年間は80%、その後の3年間は50%の控除が可能となります。また、旅費規程等に基づく範囲の額であれば、会社は帳簿に“出張旅費等特例”などと記載して保存すれば全額を控除できます。

 基準期間売上1億円以下の中小事業者については、インボイス開始後の6年間、税込1万円未満の課税仕入れにつきインボイス不要で一定事項が記載された帳簿のみで仕入税額控除も認められます。(少額特例)

 インボイス制度では、原則、適格請求書等を保存しなければ仕入税額控除ができませんが、請求書等の交付を受けることが困難な取引に係る仕入れについては、帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます。控除を受けるには、帳簿に「帳簿のみ保存が認められるいずれかの仕入れに該当する旨(該当する仕入名)」を記載しなければなりません。
 帳簿のみ保存の対象となる取引には、適格請求書等の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送(公共交通機関特例)や、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費特例)などの9種類があります。帳簿には、例えば、公共交通機関特例に該当する取引には「3万円未満の鉄道料金」と、出張旅費特例に該当する取引には「出張旅費等」とそれぞれ記載すればよいです。

大手建設会社はインボイスに関して下請け会社にどう対応しているか

鹿島建設株式会社はこのほど、インボイス制度に関する行動指針を策定し、全従業員が遵守することを公表しました。具体的な遵守事項は以下のとおりです。参考になります。
(1)適格請求書発行事業者登録をしないことを理由にして、発注取止めや、消費税相当額の一部または全部を支払わない行為をいたしません。
(2)適格請求書発行事業者登録によって免税事業者から課税事業者に転換したお支払先様から、従前、免税事業者であったことを前提に設定していた単価の見直し要請があった時に、価格交渉に応じず一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注する行為をいたしません。
(3)お支払先様に対する適格請求書発行事業者登録のお願いは、協力の依頼のみであり、強要はいたしません。

2023年6月号 中小企業向け設備投資促進税制について

中小企業投資促進税制は、中小企業が生産性を高めるための設備投資を支援する税制です。ところが近年、この制度を活用した節税(実際には課税繰延)が一部で流行しています。本業との関連性が薄く、「中小企業が生産性を高めるための設備投資を支援する」という制度趣旨から大きく外れる「コインランドリー」と「マイニング機器」が名指しで除外されることになりました。
令和6年まで改正の上で延長されています。
個人事業主と資本金3000万円以下の中小企業は30%の特別償却のみでなく7%の税額控除か選択可能です。

中小企業投資促進税制

出典 経済産業省 令和5年度税制改正について

2023年5月号 中小企業の賃上げ促進税制について

 令和4年度税制改正において、「中小企業向け所得拡大促進税制」を抜本的に拡充した「中小企業向け賃上げ促進税制」が設けられています。税額控除率は従来の最大25%から最大40%へと大幅に引き上げられております。賃上げが求められる今日税制面での後押しです。
 従前と比べ使い勝手は緩和されていますので、賃上げの参考にしてみてください。

制度改正の全体概要
 中小企業向け賃上げ促進税制は、中小企業者を対象に、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始される事業年度(個人事業主の場合は令和5年及び令和6年)で利用可能な制度です。適用要件及び税額控除は以下の通りです。大枠を理解していただくために細かい点は省いて概要を書いています。
① 通常要件 雇用者給与等支給額が前年と比べ1.5%以上増加したとき
  増加額の15%を法人税または所得税額から控除
② 上乗せ要件1 雇用者給与等支給額が前年と比べ2.5%以上増加したとき
  控除率を15%上乗せし、増加額の30%を法人税または所得税額から控除
③ 上乗せ要件2教育訓練費が前年比10%以上増加したとき
 さらに控除率を10%上乗せし、増加額の40%を法人税または所得税額から控除

税額控除額は控除前の法人税額または所得税額の20%が上限となります。
例)前年給与支給額 1,000万円  当年支給額1,100万円  法人税額200万円とする。
  増加率10%>2.5% ②の適用   控除税額は増加額100万円×30%=30万円
  控除限度額 法人税額 200万円×20%=40万円  40万円>30万円 よって控除額30万円
*①のみの適用は15%、②の上乗せ適用の場合は30%、①と③適用は25%、②と③だと40%になります。
*この制度は中小企業者(期末時に資本金の額等が1億円以下、又は、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の青色申告法人等)のみの制度です。

中小企業向け賃上げ促進税制については、一人ひとりの賃上げに加え、雇用を拡大することによる給与等の支給額の増加に対するインセンティブとしても機能するよう、対象となる雇用者給与等支給額を雇用されている全ての方の給与総額とする考え方は維持しており、昨年の改正のポイントは、上乗せ要件の簡素化及び税額控除率引上げです。

また、一人ひとりの賃上げや雇用の確保に積極的に取り組む中小企業を力強く後押しするという観点に加え、人的投資に積極的に取り組むことで、生産性の向上を通じた更なる賃上げ原資の確保に繋げることを目的として、上乗せ要件を「雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加」と「教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加」の2つに分け、いずれか一方のみの適用、あるいは併用、いずれも可能とすることとしました。

参考 大企業向け賃上げ促進税制の概要  中小企業とは若干厳しい要件となっています
令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において、継続雇用者に対する給与等が対前年度比で3%以上増加した場合に、原則、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%の税額控除が認められます。4%以上増加などの上乗せ措置を適用した場合には、最大30%の税額控除が可能となります。適用要件や税額控除限度額などは、従前の人材確保等促進税制に設けられていた、いわゆる設備投資要件は令和4年改正で撤廃されています。

2023年4月号 いき過ぎた節税対策は企業存続を危うくする  

過度な節税対策を行うと、後に困ったことがおきます。

 中小企業にとって節税対策は会社を維持するために大事なことですが、やり過ぎてしまうと資金繰りを悪化させ、かえって企業の存続を危うくしてしまいますので、要注意です。
 決算の時期に税金対策として高級車を購入する。必要性の低い物を購入する。行き過ぎた交際費を使う等です。これらの行動でお金を使いすぎてしまえばいくら節税ができたとしても結局は損失につながってしまい、経営を苦しくする原因になります。高級車購入はちょっと待ってください。自己資本比率が30%以上になってからにしましょう。それ以下はまだ並の会社になっていないのですから。

1.ここに A社 B社 いずれも同じ業績の会社があるとします。
A社は儲かった利益で毎年500万円の納税をし、毎年1,500万円貯めていきました。B社は税金がもったいないと思い、その対策のため1,500万円の経費を使い利益を減らし、税金を125万円に少なくしていきました。
さてこの2つの会社の5年後はどうなっているでしょうか?その結果が下記の通りです。

A社


1年目2年目3年目4年目5年目
売上10,00010,00010,00010,00010,000
△経費8,0008,0008,0008,0008,000
税前利益2,0002,0002,0002,0002,000
△法人税 約25%500500500500500
税引後利益1,5001,5001,5001,5001,500
残る預金1,5003,0004,5006,0007,500

B社


1年目2年目3年目4年目5年目
売上10,00010,00010,00010,00010,000
△経費8,0008,0008,0008,0008,000
△税金対策の経費1,5001,5001,5001,5001,500
税前利益500500500500500
△法人税 約25%125125125125125
税引後利益375375375375375
残る預金3757501,1251,5001,875

残る預金に注目してください。A社は預金に7,500万円が残ります。B社は1,875万円しか残っていません。実にその差は5,625万円もあります。
借入金でいえば、A社はその預金で7,500万円返済できますが、B社は1,875万円しか返済できないことになります。

2.ここで考えてみましょう。
5年後、経済環境が変わり不景気が来ました。生き残れる会社はどちらでしょうか?
5年後、運良くいい仕事が来て、それに対応するため設備投資をする必要があります。対応できるのはどちらの会社でしょうか?資金力の差で、リスクに耐えてかつ業績を伸ばすチャンスを逃すことをわかっていただきたいと思います。

3.目的が税金対策であることが問題。
目的は経営対策としての支出であるべきなのです。経営対策はそれぞれの会社で異なります。借入過大の会社は、まずは預金が残る対策(=借入返済)を最優先すべきであることはおわかりだと思います。
借入過大の会社かどうかは自己資本比率でわかります。30%以下の会社は税金対策の支出は慎重であるべきです。そのようなことをすれば負のスパイラルにはまり経営悪化をするばかりです。多くの資金繰りの失敗、経営の失敗はここにあるのです。

2023年3月号 令和5年度税制改正-使いやすくなった相続時精算課税制度-

 □生前贈与の改正 相続時精算課税制度が使いやすくなりました。

 贈与の方法として、大きく暦年贈与と相続時精算課税制度の2種類があります。
 今までは、贈与は暦年贈与をお勧めしてきました。なぜなら相続時精算課税制度は、「行きはよいよい帰りは怖い」と言われる制度だからです。
 相続時精算課税制度は、相続時に贈与した金額が何年たっても持ち戻され、相続税の前取りみたいな制度です。しかも以後暦年贈与は使えない制度になっています。一方暦年贈与は贈与時に課税されても一定期間持ち戻されることはありません。従ってこつこつと暦年贈与をした方が賢明であり、相続時にもめるリスクも低いのです。相続税の申告の必要の無い人にはお勧めでした。
 現に令和3年贈与課税件数は、暦年課税分48万件、相続時精算課税分4万件と圧倒的に暦年課税分が利用されています。令和5年度改正で、相続税の見直しがなされ、この相続時精算課税制度が令和6年分から使い勝手が良くなったと言えます。

① 生前贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間が3年から7年間に延長されます

現在の制度では相続の前に暦年贈与をしたとき、3年前の分までは、相続の時に加算することになっています。これが、次のような改正されます。
○相続発生前7年以内(現行3年以内)に贈与された財産を、相続財産に加算する。
○ただし、延長された4年分の贈与については、4年間の贈与額の合計額から100万円を控除した金額を相続財産に加算する。つまり、4年間合計で100万円以内の少額は加算しなくても良いということです。
この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。

② 相続時精算課税制度を使っても110万円の基礎控除が使えるように見直し

○相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母が、18歳以上の直系卑属(子または孫など)
に対して贈与した場合に、適用できる制度です。贈与時は2500万円までは課税されないのですが、相続時に贈与した金額が持ち戻されるという意味で、相続税の前取りみたいな制度です。しかし、これを選択すれば、2度と暦年贈与には戻れません。従ってこれを使えば現行制度では以後110万円の暦年贈与の基礎控除枠は使えないことになり、例えば50万円の贈与をしても申告が必要となります。ここが普及しない原因でした。

〇今回の改正では、暦年課税制度と同様に、相続時精算課税制度にも毎年110万円の基礎控除枠が設けられます。これにより、年間110万円以下の贈与については、贈与税の申告が不要となります。110万円以下については毎年の贈与があったとしても、持ち戻しの必要がなくなったのですから、非常に使い勝手は良くなりました。
この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産について適用されます。

○相続時精算課税制度を使って贈与した場合、その財産の評価額は「贈与時の評価額」で固定され、仮に10年後に相続が発生した場合であっても、贈与した当時の評価額で相続財産に加算されます。
そのため、贈与財産が災害で被害を受けて価値が下がったのに評価額は贈与時のままになる可能性があります。そこで今回の改正では、贈与された土地・建物が災害により被害を受けた場合には、評価額を再計算する事ができるようになります。令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用されます。

2023年2月号 令和5年度の税制改正-インボイス制度の改正-

 令和5年度税制改正での特に重要な点は、相続時精算課税制度の改正と、今年10月からスタートするインボイス制度に関する改正です。今回はインボイス制度の改正について要点をお話しします。主に4項目あります。

1.納付すべき消費税額を3年間売上の20%に軽減する
〇インボイス制度をめぐっては、小規模事業者から「免税事業者のままでは、取引先が仕入税額控除できないため取引が打ち切られる」「課税事業者になると消費税負担が増えて生活が苦しくなる」といった影響が心配されています。そこで今回の改正では、免税事業者がインボイス発行事業者になった場合、納付すべき消費税額を軽減する措置が設けられることになりました。
〇改正の概要 次に掲げるいずれかに該当する事業者が納付する消費税額は、3年間限定で、売上に係る消費税額の2割納付に軽減されます。 
イ) 免税事業者が適格請求書発行事業者となった場合 
ロ) 課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合
この軽減措置は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において適用されます。

2. 中小事業者の過大な事務負担軽減
〇インボイス制度が開始されると、金額にかかわらず、全ての取引についてインボイスを取得・保存することが義務付けられます。これに伴い特に、中小事業者においては過大な事務負担の発生が予想されることから、一定規模以下の事業者の行う少額の取引については、帳簿のみで仕入税額控除を可能とする措置が設けられました。
〇改正の概要 以下のいずれかに該当する事業者が行う「支払対価の額が1万円未満である取引」については、一定の事項が記載された帳簿のみの保存を要件として仕入税額控除が認められます。
イ) 基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1億円以下である事業者 
ロ) 特定期間(前年または前事業年度開始の日から6ヶ月間)の課税売上高が5,000 万円以下である事業者
この改正は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて適用。

3. 少額なものについては、返還インボイスの交付を不要とする
〇インボイスが交付された後に返品や値引き、取引先に対する販売奨励金の支払いなどが行われた場合、返還インボイス(適格返還請求書)と呼ばれる書類を別途交付しなければなりません。そのため、例えば振込手数料を売手負担とし、振込手数料相当額を値引きとして処理する場合にも、この「返還インボイス」を発行する必要があるのです。この事務処理は、事業者の膨大な負担になります。そこで今回の改正では、返品や値引き、取引先に対する販売奨励金の支払いなどに係る税込価額が1万円未満である場合、返還インボイスの交付義務が免除されます。
令和5年10月1日以後の課税資産の譲渡等につき行う売上げに係る対価の返還等について適用。

4. 適格請求書発行事業者の登録期限の見直し
〇現行制度では、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、その課税期間の初日の前日から起算して1月前の日までに登録申請書を提出しなければなりません。改正後は「その課税期間の初日から起算して15日前の日」までに登録申請書を提出すれば、その課税期間の初日から適格請求書発行事業者になることができます。

2022年12月号 年末調整とその留意点

年末調整は、特に昨年との改正点はありません。ただ複雑になっていますので、今一度確認しましょう。電磁的方法による提出も推進されています。以下、よくある留意点、疑問点をまとめました。

年末調整対象者は?
「扶養控除等(異動)申告書」の提出がないとできません。給与総額が2,000万円超も対象外です。本年12月31日に在籍している方が対象です。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を求めましょう。
この申告書を提出されていないと年末調整はできません。必ず提出を求めてください。また、この書類が提出されていない場合は毎月の給与について一般の源泉徴収金額とは異なる「乙欄」による源泉徴収をする必要があります。天引きしていなくても雇用主にその源泉徴収税額の納付をする義務があるので、注意しましょう。

年末調整の改正点と「扶養控除等(異動)申告書」の記載の留意点は?
昨年分から給与所得控除や基礎控除の改正、寡婦控除の改正、ひとり親控除の創設、所得金額調整控除の創設があっています。本人や扶養親族等の障害者の場合には、障害者の□にチェック、本人が寡婦、ひとり親、勤労学生の場合は該当する□にチェックを忘れずに入れましょう。昨年と移動があっていないか改めて確認を。

記入用紙が3枚あります。
記入用紙は①「扶養控除等(異動)申告書」②「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」③「保険料控除申告書」の3枚になっています。①と②は必ず必要です。③は該当ある方のみの提出ですが、念の為「なし」の場合も「なし」ということで出してもらった方がのちのトラブルを避けるためにもよろしいでしょう。他に「住宅借入金等特別控除申告書」は該当ある方のみです。

子供が12月25日に生まれました。扶養親族にできますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行います。従って生まれて間もないですが、扶養親族になります。
所得要件を満たせば、年末に結婚したら配偶者控除の対象ですが、離婚したら対象外です。

親を扶養していましたが、年の途中で亡くなりました。扶養から外れますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行いますので、その日には親はいないので、扶養から外れるのではと思いがちですが、令和4年中であれば、例えば4年1月に亡くなられたとしても今年までは扶養控除ができます。

中学生の息子は扶養控除にできないのですか?
扶養親族は生計を一にしていて、所得が48万円以下(給与だと収入103万円以下)であることが条件です。しかし16歳未満(平成19年1月2日以後に生まれた人)は扶養控除の対象にはなりません。子供手当てが支給されるからです。ただし、障がい者の場合は障がい者控除があります。

前職の源泉徴収票がもらえないのですが?
中途就職の従業員さんは前の職場の給与も加えて年末調整をします。そのために前職の源泉徴収票が必要です。それがないと、年末調整はできませんので、自分で確定申告をすることになります。従って、中途退職者がおられれば、必ず退職までの給与の源泉徴収票を発行してあげましょう。

2022年11月号 補助金・助成金の税務

1. 補助金は収入ですので税金がかかる。
「補助金は、国から貰えるお金だから、税金はかからないのでは」と考える方もいますが、そうではありません。補助金や助成金は、会社にとってはお金が入って来るわけですから収益に計上しなければなりません。決算書上は、「雑収入」「補助金収入」などの科目で営業外収益又は特別利益に表示します。したがって、他の収益と同様に会社全体で利益が出れば法人税等の税金がかかります。

2. 補助金は消費税の対象外。
補助金は、何かを売ってあるいは何かの役務提供をして得る収益ではありませんので、収入にはなりますが消費税の対象ではありません。

3. 経費のための補助金は、結果として利益が増える。
補助金や助成金は、前述のとおり「収益」として計上しなければならないので、法人税が課税されるといえます。しかし、補助金はある特別な経費を補填するものであり「原則後払い」で、同額かそれ以上が費用に計上されています。補助金受取前と比べたら当然利益が増え、結果税負担が増えることになります。
例えば高齢者の雇用で給与60万円支払い、補助金が40万円あった場合、実質差引き20万円が経費になります。

4. 補助金で固定資産を取得した場合。
機械装置等の固定資産を取得した場合、会計上は「経費」ではなく「資産」として処理します。固定資産は、一度に経費になるのではなく「減価償却」を通じて数年間にわたって分割して費用化されます。
機械取得のための補助金をもらった場合はどうなるかを考えてみましょう。
例えば800万円の補助金で1,000万円の機械装置を取得する場合を考えてみましょう。機械が10年償却だとしたら年100万円しか経費にはできません。残る700万円は利益計上ですので税金がかかります。税率25%とすれば、約175万円(利益700万円×税率25%)の税金がかかり、800万円いただいたのに625万円しか支払いに充てることはできなくなります。それでは補助金の意味が薄れます。その対策として圧縮記帳という方法が認められています。

5. 圧縮記帳で利益を少なくする。
上記のように、取得した年に法人税が課税されてしまうと、補助金を最大限に利用することができません。そこで、補助金で固定資産を購入した場合には、事例の場合、補助金収入800万円と同額の損失を計上することで、800万円の収入をなかったものとする処理を行うことができます。これを「圧縮記帳」と言います。
ただし、圧縮記帳は、適用の可否により翌期以降の税金計算や資金繰りに大きな影響が出て来ることも考慮すべきです。上記の例でいけば圧縮記帳を適用すると1,000万円で取得した固定資産は200万円(1,000万円-800万円)で取得したことになります。ということは毎年の減価償却費も20万円(200万円÷10年)に減ります。つまり利益が増えることになり、当然税金も増えます。もうおわかりのように圧縮記帳は税金の支払いを後に延ばすという方法なのです。

6. 補助金は別の意味で慎重に検討すべき。
設備投資をする場合、確かに補助金は有効です。ただし補助金ありきの設備投資は禁物です。本当にやるべき設備投資が先にありそこに補助金があるという流れが必要です。例えば70%補助といっても30%は自己資金です。設備投資がうまく稼働しなかった場合その資金が後に重くのしかかっています。どうせ自己の資金を出していないのだからという甘い考えもつきまといがちです。しっかりとシュミレーションして補助金を考えましょう。

2022年10月号 役員賞与を損金にする方法 事前確定届出給与について

■役員への報酬は税務上の規定に基づいて支給されていなければ損金に算入できません。
会社が従業員に支払う給与や賞与はすべて損金に算入できますが、役員への報酬は税務上の規定に基づいて支給されていなければ損金に算入できません。損金扱いにならないので、支払ったとしても会社の課税上の所得は減らないことになります。従って税務上の規定に基づいて支払うことが節税にもつながります。役員に支払う報酬には「役員報酬」と「役員賞与」があります。
役員報酬:給与として毎月支払われる報酬 役員賞与:退職給与以外の臨時的な報酬 です。

■役員報酬について
役員報酬は定期同額給与であることが損金にできる要件です。定期同額とは、事業年度期間内に毎月支払う役員給与のことです。役員報酬を決定する機関(株主総会や取締役会)でその金額を決定する必要があります。特に税務署に金額を届ける必要はありません。支給時期が一般的には毎月一定かつ同額であることが条件であり、不定期の支給や期の途中で金額が変動していると、条件から外れたと見なされ損金扱いになりません。
役員報酬は原則として年に1度しか変更できず、変更可能時期も決算後3ヶ月間と決まっています。そのため、役員報酬は事業年度ごとに利益額を予測して、計画的に設定することになります。

■役員賞与について 損金算入できる「事前確定届出給与」の制度
役員に支払う賞与は定期同額の枠外の支払いですから、原則損金にはできません。このような事態を避けるために、役員賞与を損金算入できる「事前確定届出給与」の制度が平成29年からできています。
事前確定届出給与とは、取締役や監査役といった役員に対して所定の日に支給額を定め、それを事前に税務署に届出をした給与のことです。役員に対する賞与を事前に決めておいて支払うイメージです。従業員さんはその支払う時期の業績などを加味して支払うことが多いと思いますが、事前に確定ですからそのような判断はできません。

■「事前確定届出給与」を適用するためには
株主総会等で決議して議事録を作成し、期限までに一定事項を記載した「事前確定届出給与届出書」を税務署へ提出しなくてはいけません。届出書に明記した時期と金額が完全に一致した形で役員に報酬支給が行われた場合に限り、損金として認められます。届出は事業年度ごとに提出する必要があります。

■「事前確定届出給与」の提出期限
株主総会等の決議によって所定の時期に所定金額を支給することを定めた場合 次のうちいずれか早い日が期限となります。
 a.その決議の日から1月を経過する日  b.会計期間開始の日から4月を経過する日

従って、一般的には申告書を提出する決算2月後前には総会を終えますので、決算3月後前が期限です。
1日でも遅れると適用はできません。

■留意点 届け出内容の管理が必要です
留意点があります。一度でも届出内容と異なる条件で支給した場合、例えば12月15日に支払うと届出をしていて一日遅れの16日に支払った場合や、50万円支払うとしていたのに30万円や60万円支払った等、届出と不一致の場合、その年度の事前確定届出給与分すべてが損金不算入となるので注意が必要です。例えば、夏は調子が良かったので届出通り支払ったが、冬は赤字で支払わなかったという場合夏の賞与は全額損金にできません。

2022年9月号 日々、税務調査で疑われないようにしていきましょう

秋は税務調査の頻度が多くなる季節です。調査は残念ながら「性悪説」で行われると聞いています。したがって、税務調査において、疑われやすいことは避けるべきです。正しくしていても疑わしきことがあると調査が長引いたりすることがあります。疑われやすい証拠書類とは、どのようなものかをお話しします。

■正確・適正な税務証拠資料の保存の必要性
決算書や申告書が真実に基づいて作成されたものであれば、真実より強いものはないはずですが、その真実を証明するはずの税務証拠資料が不明確であったり、現金が実態とあっていなかったり、書類整備状況が悪かったり、通常の資料と様式などが違うものがあったり、証拠資料相互の関連性が不明確であったり、合致しなかったりした場合には、調査官に疑いを持たれ調査が長期化する原因となります。具体的には下記のような場合です。

■証拠資料が保存されていないとか、証憑書類の内容が不明確なもの
領収書、小切手などの控に、日付、相手先、内容などが明確に記載されていないもの。
②請求書、見積書などの控に、欠落があったり、書き損じ分が保存されていないもの。
飲食店業などの場合で、注文伝票(売上伝票)に欠落があったり、書き損じ分が保存されていないもの。
保存している領収書に、年月日・相手先名・内容などのうち明確に記載されていない事項があるため、私的費用かどうか確認できないもの。特に交際費は要注意です。

■帳簿書類の不整備
次のように不整備の状況にある帳簿書類は、疑いを持たれる原因となります。
計算違いや転記違いが多数あり、帳簿に信頼がおけないもの。
②メモ書きのようであったり、鉛筆書きであったり、粗雑で判読できず、帳簿の体をなしていないもの。
預金通帳、当座照合表、残高証明書などの証憑書類と帳簿残高が一致しないもの。
売掛帳などの補助簿と総勘定元帳間で内容や残高が一致しないもの。

■証憑書類が仮装または偽造されているのではと疑われるもの
①証憑書類の中に、通常の証憑書類と様式・形式が違うものがあるなどの場合には、その証憑書類が仮装または偽造されているとの疑いを持たれる原因となります。
②売上に関して、請求書はコンピュータにより作成されているはずなのに、手書きの請求書控がある場合
この場合には、手書きの請求書分の売上が除外されているとか、相手方の不正計算に協力しているなどの疑いを持たれかねません。

■その他の留意事項
①証憑書類の整備状況が悪く、要求された資料をすぐに提示できない場合
このような場合には、経理体制が劣悪であるという印象を持たれます。
②決算書や帳簿は、事実に基づいて計上されているが、証憑書類が事実を反映していない場合
例えば、相手先が官公庁や大手ゼネコンなどの場合に、実際は受注工事が完了していない場合であっても、相手方の都合で引渡済みの書類を作成する場合があります。このような場合には、調査官に事情を説明できるように、工事台帳、作業日報、外注費等の請求書、賃金などの支払状況等の資料を提示して、理解を得る必要があります。
金庫や机の中に、役員や従業員の現金・預金通帳や異常なメモ書きなどがある場合簿外預金などの存在を疑われかねません。

参考:税務研究会資料・新日本法規資料

2022年7月号 すぐ始めるべきインボイス制度への対応

いよいよインボイス制度が近くなってきました。令和5年10月からではあるのですが、すぐスタートできるように準備が必要です。今一度どう対応すべきか確認していきましょう。

①インボイス発行事業者になるかどうかを確認します。
この確認は、現在課税事業者であればほぼ100%発行事業者を選択することになるでしょう。やらないメリットは何もありません。問題は現在免税事業者の場合です。これについては対象先には事務所の担当者が検討アドバイスをしています。その結果で判断してください。

②税務署への申請書を提出します。
インボイス発行事業者になるためには、税務署に登録申請書を提出する必要があります。
令和5年10月からインボイス制度を導入するには、令和5年3月31日までに申請が必要です。
現在課税事業者の方はほとんどインボイス発行事業者を選択しますので、当事務所ではその確認をさせていただき、既に税務署の方に届け出も大部分が終了しています。その旨お知らせしています。事業所での提出は必要ありませんので担当者に確認ください。

③免税事業者の方の提出は、よく検討してから。
現在免税事業者の方は、免税を返上して課税事業にならないとインボイス発行事業者にはなれません。つまり消費税を払わないといけなくなるということです。事務負担も大きくなります。従ってよく検討の上の対応になります。当事務所で該当先は確認検討をしています。決して検討無く提出しないでください。不利益を被ることがありますので、必ず当事務所担当者へご相談ください。

④仕入先である免税事業者との取引について。
インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことを検討する必要があります。従来のままの金額でするのか、少し値引きしてもらうのか検討を要します。値引きの場合どの程度を要請するのか等、当事務所の担当者に相談ください。一方的な値下げは違法になる可能性もありますので注意してください。
免税事業者からの課税仕入れについては、インボイス制度の実施後は、仕入れ税額控除ができなくなるのですが、3年間は、仕入税額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができることとされています。
そのことを加味して、免税事業者の仕入れ先や外注先と交渉してください。

⑤請求書様式やシステム等の改定をする必要があります。
請求書やレジ等がインボイス制度の要件に合うように改定が必要です。要件具備を確認して下さい。さらに、制度対応や経理業務の効率化など、システムの変更に合わせた社内での対応が必要となります。システムの新規導入は必ず当事務所の担当者に相談下さい。要件がちゃんと具備していなければ売上先が仕入れ税額控除ができなくなるわけですから、クレームのもとになりかねません。なかにはこの時勢に便乗したシステム導入の勧誘もありますので注意してください。

⑥インボイス登録番号のゴム印の作成をお勧めします。
請求書や領収書等にインボイス登録番号の印刷が必要です。当面の対応策として、ゴム印を作っておかれることをお勧めします。

2022年6月号 相続が発生したら 税務上やるべきことの概略

相続が発生したら
相続が発生した場合、税務上やるべきことの概略をお話しします。
所得税や消費税の準確定申告
相続発生の日から4ケ月以内に相続人さんが被相続人に変わって準確定申告書を提出する必要があります。また、青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を承継し、今後も青色申告を適用しようとする場合には、青色申告承認申請書を改めて期限までに提出する必要があります。税理士事務所に相談ください。

相続税の申告が必要でないか遺産額を確認しましょう。
相続税の申告が必要なのは基礎控除額を上回る相続財産がある場合です。
基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。それ以下なら申告は不要です。
配偶者は相続財産1億6,000万円または法定相続分までは無税ですが、申告は必要ですのでご注意ください。

遺産内容の確認。
不動産の名寄帳、銀行の残高証明書、借用書などの書類や通帳で概略を確認します。生命保険も加わります。
もし、基礎控除以上あるようでしたら、財産の評価は専門的な知識が必要ですし、時間も結構かかりますので早めに税理士事務所に相談しましょう。遺言書もあれば必要です。

財産には、次のものについても含まれますので併せて確認します。
イ)被相続人からの贈与

  • 「相続時精算課税制度」による贈与
  • 相続開始前3年以内の「暦年課税制度」による贈与
  • 「贈与税の納税猶予」を適用した自社株
ロ)生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産
ハ)実質的に被相続人のものである家族名義の預金
二)被相続人名義に変更登記されていない不動産、未登記の建物など

葬儀にかかった費用は、相続税の計算上、財産から控除することができますので、領収書等の保管をする必要があります。香典返しや初七日にかかった費用などは控除することはできません。
税理士事務所では確認した遺産内容より、相続税対象の財産を把握します。

相続税申告について。
相続税の申告は相続開始から10か月以内にしなければなりません。
申告するまでに財産の評価と相続人さん同士で遺産の分割協議を整える必要があります。
相続税は相続した遺産の額に応じて各人が分担して支払います。
配偶者は相続財産1億6,000万円または法定相続分までは無税になります。

相続税納付について。
相続税申告書を作成し、税務署に提出します。通常は相続人全員で1つの申告書を作成し申告します。
10か月以内に相続税申告書提出と相続税納付を行います。「現金での一括納付」が原則です。

2022年5月号 インボイス制度と免税事業者への対応-公正取引委員会はどう言っているか-

■免税事業者とインボイスの関係
令和5年10月1日から適格請求書(いわゆるインボイス)をもらわないと仕入税額控除(課税売上から課税仕入に関する消費税を控除すること)ができなくなります。免税事業者はインボイスを発行できません。従って免税事業者を取引先に持つと、課税仕入れができなくなるために、課税事業者になってもらうように働きかけが必要となりますが、その対応は現実問題としてなかなか難しい面もあります。
このことについてどう対応すべきか、公正取引委員会が下記のような考え方を示しています。
今一つあいまいな点が多く、現場の事情とそぐわないのではないかと思います。結局は、免税事業者は課税事業者になって下さい。一方で仕入税額控除が出来なくても仕方ない、大きい会社の方がその分負担して下さいと、言っているように思えます。ポイントを絞って、その内容を紹介します。詳しくは公正取引委員会のHPをご覧ください。

■免税事業者への対応について公正取引委員会の見解
「仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことを検討していますが、独占禁止法などの上ではどのような行為が問題となりますか。」という質問に対する回答です。
(回答)事業者がどのような条件で取引するかについては、基本的に、取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものですが、免税事業者等の小規模事業者は、売上先の事業者との間で取引条件について交渉力の面で格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすい場合も想定されます。自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となるおそれがあります。と言っています。
インボイス制度の実施を契機として、免税事業者と取引を行う事業者がその取引条件を見直す場合に、どのようなことが優越的地位の濫用として問題となるおそれがある行為であるかについて、下記の通り行為類型ごとにその考え方を示しています。

1 取引対価の引下げ
取引上優越した地位にある事業者(買手)が、免税事業者との取引において、仕入税額控除ができないことを理由に、取引価格の引下げを要請し、取引価格の再交渉において、仕入税額控除が制限される分について、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではありません。しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。また、取引上優越した地位にある事業者(買手)からの要請に応じて仕入先が免税事業者から課税事業者となった場合であって、その際、仕入先が納税義務を負うこととなる消費税分を勘案した取引価格の交渉が形式的なものにすぎず、著しく低い取引価格を設定した場合についても同様です。

2 商品・役務の成果物の受領拒否、返品
取引上の地位が相手方に優越している事業者(買手)が、仕入先から商品を購入する契約をした後において、仕入先が免税事業者であることを理由に、商品の受領を拒否することは、優越的地位の濫用として問題となります。
また、同様に、受領した商品を返品することは、どのような場合に、どのような条件で返品するかについて、当該仕入先との間で明確になっておらず、当該仕入先にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合、その他正当な理由がないのに、受領した商品を返品する場合には、優越的地位の濫用として問題となります。

3 協賛金等の負担の要請等
取引上優越した地位にある事業者(買手)が、免税事業者である仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、その代わりに、取引の相手方に別途、協賛金、販売促進費等の名目での金銭の負担を要請することは、当該協賛金等の負担額及びその算出根拠等について明確になっておらず、当該仕入先にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や、当該仕入先が得る直接の利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり、不利益を与えることとなる場合には、優越的地位の濫用として問題となります。その他、取引価格の据置きを受け入れる代わりに、正当な理由がないのに、発注内容に含まれていない役務の提供その他経済上の利益の無償提供を要請することは、優越的地位の濫用として問題となります。

4 購入・利用強制
取引上優越した地位にある事業者(買手)が、免税事業者である仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、その代わりに、当該取引に係る商品・役務以外の商品・役務の購入を要請することは、当該仕入先が、それが事業遂行上必要としない商品・役務であり、又はその購入を希望していないときであったとしても、優越的地位の濫用として問題となります。

5 取引の停止
事業者がどの事業者と取引するかは基本的に自由ですが、例えば、取引上の地位が相手方に優越している事業者(買手)が、免税事業者である仕入先に対して、一方的に、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しく低い取引価格を設定し、不当に不利益を与えることとなる場合であって、これに応じない相手方との取引を停止した場合には、独占禁止法上問題となるおそれがあります。

6 登録事業者となるような慫慂等
課税事業者が、インボイスに対応するために、取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請することがあります。このような要請を行うこと自体は、独占禁止法上問題となるものではありません。
しかし、課税事業者になるよう要請することにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります。例えば、免税事業者が取引価格の維持を求めたにもかかわらず、取引価格を引き下げる理由を書面、電子メール等で免税事業者に回答することなく、取引価格を引き下げる場合は、これに該当します。また、免税事業者が、当該要請に応じて課税事業者となるに際し、例えば、消費税の適正な転嫁分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置く場合についても同様です(上記1、5等参照)。
したがって、取引先の免税事業者との間で、取引価格等について再交渉する場合には、免税事業者と十分に協議を行っていただき、仕入側の事業者の都合のみで低い価格を設定する等しないよう、注意する必要があります。

(参考) 
■簡易課税制度を適用している事業者の影響
簡易課税制度を適用している場合は、売上だけで消費税納付額を決めますので、インボイス制度の実施後も、インボイスを保存しなくても仕入税額控除を行うことができます。従って、仕入先との関係では留意する必要はないことになります。

■6年間の経過措置  
令和5年10月1日から即インボイスでないと仕入れ税額控除ができなくなるのではなく、経過措置が設けられており、免税事業者からの仕入れについても、制度実施後3年間は消費税相当額の8割、その後の3年間は5割を仕入税額控除が可能とされています。

2022年4月号 人材投資にまつわる税金

人手不足が深刻な問題となっています。従って今働いてもらっている人材をいかに大切に人財として育てるかが、大きな課題です。経営資源を人材投資に重点的に優先的に充当していくことがこれまで以上に必要です。今回は人材投資にまつわる税の関係についてお話しします。

①人材へ投資する
人材投資に関しては所得拡大促進税制や雇用促進税制があります。
所得拡大促進税制は、前期に比べて給与の支給額が増加するなど複数の要件を満たすことで、税額控除が受けられる制度です。雇用促進税制は、地方で本社機能の拡充または東京23区から地方への本社機能の移転し、その地方事業所において雇用者を増加させた場合に税額控除が受けられる制度ですので、一般的ではありません。

②役員や従業員の退職金準備とリスク対策
役員や従業員の退職金を準備する方法には、いくつかの選択肢があります。代表的な方法として法人保険・中小企業退職金共済などがあります。保険は社員の病気けがなどもしもの時に備えることが出来ますし、中小企業退職金共済は、従業員の退職金を積み立てる制度です。掛金は経費として計上することができます。

③福利厚生の充実
福利厚生を充実させることで、従業員のモチベーションを上げることもできるでしょう。
これらの費用について給与とならないポイントは、全従業員対象であること、社会通念上の金額であることです。
懇親会や慰安旅行、人間ドックの費用は福利厚生費として経費にすることができます。ただし、誰に対しても機会が平等であることが条件です。特定の従業員しか参加できない場合は、従業員への給与とみなされます。
結婚祝金品等の支給ほか
結婚、出産など社会的な慣習として一般的に行われている慶事の祝金品は、役員や使用人としての地位に基づいて支給されるものですので、原則は給与等とされますが、社会通念上相当の範囲内であれば、課税対象外です。
社会通念上どの程度であれば相当の範囲であるかが問題とされます。慶事の内容や地域の習慣、地位などによって異なってくるものと思われますが、例えば、結婚の場合であれば一般社員で5万円程度、役付き者で10万円程度、成人、出産、入学の場合で3万円程度以下であれば社会常識の範囲内として、給与として課税しなくて差し支えないものと思われます。その他の参考事例として、
イ 新生児のミルクなど2万円相当の育児用品の現物支給
社員の出産に際し祝金品等をあげることは世間一般の例です。2万円程度であれば課税しなくてよいでしょう。
ロ 成人祝賀パーティーの欠席者に支給する1万円の祝金
成人の祝は社会一般に行われており、レクリエーション行事とは異なることから、成人の祝賀パーティーに出席できない者に対して支給したとしても、金額も妥当な範囲と認められますので課税しなくてよいでしょう。

スキルアップの為の研修費の支給 基本的には、仕事に直接的に必要な知識や技術を身につけるための研修、あるいは仕事に直接的に必要な免許や資格を取得するための費用のことです。業務を遂行する上で必要と認められる研修費等については給与として処理する必要はありません。
有用な提案等に対する報償金等の支給
業務上有益な発明、考案等をした従業員に対して支給する報償金や表彰金、賞金等もモチベーションアップにつながります。ただしこれは賞与みたいなものですから給与所得として課税されることになります。

2022年3月号 令和4年度の税制改正について

■税制改正の背景と主な概要
詳細は別冊同封の「令和4年度税制改正のポイント」をご覧ください。
(1)成長と分配の好循環の実現
「成長と分配の好循環」の実現に向けて、企業の積極的な賃上げを促すとともに、株主だけでなく従業員、取引先などの多様な関係者への還元を後押しする観点から、いわゆる賃上げ税制(所得拡大促進税制など)が抜本的に強化されます。特に大企業については中小企業より高い賃上げが求められています。
(2)経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
個人所得課税については、近年、配偶者控除等の見直し、給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の一体的な見直しなどが進められてきました。「相続税・贈与税のあり方」については、贈与税の110万円基礎控除がなくなるのではと言われていましたが、今回の改正ではありませんでした。「今後本格的な検討を進める」とされています。
(3)円滑・適正な納税のための環境整備
消費税では、令和5年10月に施行される消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)のスタートにより、免税事業者である小規模事業者が不当な取扱いを受けないよう、政府がしっかりとサポートすることが明言されています。

■特に注目していただきたい改正項目
(1)所得拡大促進税制の拡充(法人も個人も適用です)
中小企業における所得拡大促進税制について、現行雇用者の給与支給総額が前年比1.5%以上の場合、給与等の増加額の15%の税額控除でしたが、改正により2.5%以上の伸びの場合15%上乗せがされ、30%になります。さらに、教育訓練費を増加させた場合に、さらに10%上乗せで40%を控除できます。大企業は3%以上の増額を要件とする等別途規定されていますが、ここでは省略します。新制度の適用期限は法人は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度、個人は5年から6年までが対象です。
(2)住宅ローン控除の改正
住宅借入金等を有する場合の住宅ローン控除は、個人が住宅ローンの借り入れを行って住宅を新築、取得または増改築等した場合に、10年間にわたり、住宅ローンの年末残高に控除率を乗じて計算した金額をその年分の所得税額から控除できる制度です。控除率1%と恩恵が大きく、住宅購入の大きな後押しとなっています。
ところが会計検査院は、借入金利が低いと、住宅ローン控除でより得をすると指摘しました。こうした指摘を受け、住宅ローン控除の控除率について、令和4年分から現在の金利水準に合わせ1%から0.7%に引き下げられます。
(3)住宅取得資金贈与の非課税措置の改正
住宅取得資金贈与の非課税措置(直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置)は、直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた際、最大で1,500万円までの金額について贈与税が非課税になる特例措置です。今回の改正では非課税枠が縮小され、2年間延長で令和5年末までです。
(4)電子取引データの保存について
令和4年1月以降、請求書、領収書、契約書、見積書などに関する電子データを送受信した場合には、紙ではなく電子データとして保存することが、すべての事業者に義務付けられています。しかし、規定された電子データの保存要件が厳しく、特に中小企業では準備が進んでいない状況です。また「制度自体が周知されていない」と指摘する声も大きいことから、政府は予定通りに電子保存の義務化をスタートすることが難しいと判断し、2年間宥恕することにしました。やらなくていいのではなく、2年間は厳しくは言いませんということですので、早めに取り組みましょう。

2022年2月号 令和3年分の確定申告について

個人所得税・贈与税の確定申告の時期になりました。早めの準備をしましょう。よくある注意事項をお知らせします。昨年のように申告期限の延長は今のところありません。

■確定申告が必要な方・不要の方
昨年1年間の税金を決める手続きですので、1年間で得た各種の所得から所得控除額を引いて計算したら税額の出る方、または還付がある方は申告が必要です。
給与が1箇所だけで年末調整が済んでいる方は、原則申告の必要はありません。2か所給与などの場合注意が必要です。いただいている給与全ての源泉徴収票でもって申告が必要です。
同族会社の役員やその親族などで、その同族会社から給与のほかに、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている方はそれが20万円以下でも申告が必要です。
公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の各種の所得金額が20万円以下である場合には、所得税等の確定申告は必要ありません。

■今年の確定申告で変わったことなど
昨年変わりましたが、今年は特に大きな変更はありません。昨年変更部分を再確認しましょう。
基礎控除額が所得によって0円~48万円になります。
元年分までは一律38万円でしたが、2年分から10万円増えて48万円です。2,400万円超から段階的に減額され2,500万円超の高額所得者は0円になっています。
給与収入が850万円を超えると給与所得控除額が195万円に引き下げられています。ただし子育て世代に配慮して、23歳未満の扶養親族や特別障碍者である扶養親族等を有する場合は負担増が生じないように調整することになっています。
本人、扶養親族で障害者がある場合には障害者手帳等を提示してください。各種控除があります。
ひとり親控除に注意しましょう
2年分から婚姻歴の有無・男女にかかわらず、生計を一にする子を有する所得500万円以下の単身者について「ひとり親控除35万円」が新設されています。「婚姻歴に関係なく」が変わったところです。
離婚で「子」以外を扶養する寡婦となったときや、死別の寡婦は扶養親族がいなくても従来通り寡婦控除27万円があります。

■医療費控除 R2年分から明細書が必須に領収書の添付等を認める経過措置が終了
令和2年分の所得税から「医療費控除の明細書」の添付が必須です。以前は医療費の領収書の添付又は提示により申告することもできましたが、今はできません。必ず明細を書いてください。健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」でもいいです。領収書は提出不要ですが、自分で5年保管を要します。

■住宅ローン控除はありませんか
金融機関からの住宅ローンで住宅を新築または取得、あるいは増改築した場合に利用できる制度です。住宅の床面積等の要件がありますが、対象になったら適用初年だけは確定申告が必要です。

■その他の留意事項
保険満期金の申告は漏れていませんか?
保険金の契約者と受取人が同一の場合は一時所得となります。保険満期金から保険料の総支払額を引いた金額からなおかつ特別控除50万円を引いてもプラスになれば確定申告の対象となるので注意しましょう。なお、契約者と受取人が異なる場合は、所得税ではなく贈与税となります。
医療費控除やふるさと納税(寄附⾦控除)などの適⽤を受ける場合は、給与以外の所得が20万円以下であっても全部含めての確定申告が必要です。
土地建物を売却したり、収用があった場合は申告が必要です。取得したときの契約書等の資料や、売った時の契約書が必要です。収用は収用証明書関係の資料が必要です。
株式の譲渡のあった方は特定口座や特定口座以外でも証券会社から送ってきている書類が必要です。

■ふるさと納税をした方へのご注意!!
ふるさと納税には
「ワンストップ特例」という制度があります。しかし、確定申告をする人はワンストップ特例で済んだと思ってふるさと納税を入れずに申告すると、その申告が優先されてしまい、ワンストップ特例で申請したふるさと納税の情報は無効になります。医療費控除や住宅ローン控除などの確定申告を行う場合は、必ずふるさと納税の全てを確定申告で記入する必要がありますので、ご注意ください。

国等から支給される主な助成金で収入に入れるべきものがあります
コロナ関連の助成金のうち、事業者の収入が減少したことに対する補償や支払賃金などの必要経費に算入すべき支出の補てんを目的として支給する持続化給付金や・家賃支援給付金・農林漁業者への経営継続補助金・雇用調整助成金などは収入に入れなければなりません。詳細は担当にお尋ねください。

下記の贈与での優遇を受けるためには申告しないと認められませんので必ず申告してください
財産の贈与を受けた方で、配偶者控除の特例を適用する方・相続時精算課税を適用する方。
財産の贈与を受けた方で、住宅取得等資金贈与の非課税を適用する方。

2021年12月号 年末調整のよくある間違いとよくある質問

今年の年末調整は、特に大きな改正点はありません。各関連書類の押印欄が廃止されています。
昨年改正された事項の確認の意味で、以下、その他のよくある留意点、疑問点をまとめました。

■「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を求めましょう。
扶養控除等申告書は年末調整のための大切な情報が記載されています。この申告書を提出されていない従業員さんの年末調整はできません。年末調整をする場合は必ず提出を求めてください。また、この書類が提出されていない場合は毎月の給与について一般の源泉徴収金額とは異なる「乙蘭」による源泉徴収をする必要があります。天引きしていなくても雇用主にその源泉徴収税額の納付をする義務があります。天引きしていないと会社が払ったうえで、従業員さんから戻してもらうという面倒なことになりますので、必ず源泉徴収をしましょう。

■昨年の年末調整の改正点と「扶養控除等(異動)申告書」の記載の留意点は?
昨年は、給与所得控除や基礎控除の改正、寡婦(寡夫)控除の改正、ひとり親控除の創設、所得金額調整控除の創設があっています。改めて確認してください。
本人や扶養親族等の障害者の場合には、障害者の□にチェック、本人が寡婦、ひとり親、勤労学生の場合は該当する□にチェックを忘れずに入れましょう。

■記入用紙が3枚になっています。
記入用紙は①「扶養控除等(異動)申告書」②「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」③「保険料控除申告書」の3枚になっています。①と②は必ず必要です。③は該当ある方のみの提出ですが、念の為「なし」の場合も「なし」ということで出してもらった方がのちのトラブルを避けるためにもよろしいでしょう。

■子供が12月25日に生まれました。扶養親族にできますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行います。従って生まれて間もないですが、扶養親族になります。
話は変わりますが、所得要件を満たせば、年末に結婚したら配偶者控除の対象ですが、離婚したら対象外です。

■親を扶養していましたが、年の途中で亡くなりました。扶養から外れますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行いますので、その日には親はいないので、扶養から外れるのではと思いがちですが、令和3年中であれば、例えば1月に亡くなられたとしても今年までは扶養控除ができます。

■中学生の息子は扶養控除にできないのですか?
扶養親族は生計を一にしていて、所得が48万円以下(給与だと収入103万円以下)であることが条件です。しかし16歳未満(平成18年1月2日以後に生まれた人=年少扶養親族)は扶養控除の対象にはなりません。子供手当てが支給されるようになってからできなくなりました。ただし、住民税に関係しますので,記載は必要です。

■前職の源泉徴収票がもらえないのですが?
中途就職の従業員さんは前の職場の給与も加えて年末調整をします。そのために前職の源泉徴収票が必要です。それがないと、年末調整はできませんので、自分で確定申告をすることになります。できれば年末調整で済むように前職の源泉徴収票の取得を促してください。ほとんどの人が還付になるはずです。逆に、中途退職者には必ず退職までの給与の源泉徴収票を発行してあげましょう。

2021年11月号 インボイス制度に備える留意点

■インボイス制度のポイント
 ①消費税の納付額は原則として
 【売上でもらった消費税】-【仕入れや経費支払いで支払った消費税】として計算します。この支払った消費税を引くのは、支払った消費税がその事業者によって納付されていることを前提にしています。免税事業者は消費税を払っていませんので本来引けないはずですが、現在わからないので引いています。今後、その証拠となる「適格請求書等(インボイス)」をもらって「保存」しなければ引けなくなります。
 ②「適格請求書等(インボイス)」は、これまでの領収者や請求書等に、発行事業者の登録番号が付されている書類をいいます。登録番号を付すことのできるのは「適格請求書等(インボイス)発行事業者」だけです。
 ③「適格請求書等(インボイス)発行事業者」は、納税していますという証明書の発行をする様なものですから、課税事業者のみなることができます。免税事業者は対象になりません。大きな影響があるのは免税事業者です。
 ④この制度は令和5年10月1日から始まります。

■課税事業者の方がやるべきこと
 ①課税事業者は税務署に登録申請書を出すことで、適格請求書等を発行できる事業者になれます。
この届出は既に令和3年10月から始まっており、令和5年3月31日までに提出する必要があります。
 ※届け出についてはご希望の方は事務所で、対応しますのでご安心ください。
 ②請求書や領収書に登録番号が必要になりますので、システムの改変が必要です。業者の方と打ち合わせを始めてください。
 ③外注先や、商品仕入れをする先に免税事業者の方は無いか、確認しましょう。お分かりのように、インボイスを発行できない事業者からの仕入や経費の支払いは消費税を引けなくなります。もしかしたらその事業者にはインボイスが発行できる課税事業者になってもらう必要があるかもしれません。対応を考える必要があります。

■現在免税事業者の方がやるべきこと
 ①免税事業者は、「適格請求書等(インボイス)」を発行できません。なので、まず、インボイスの発行できる事業者になるかどうかを検討する必要があります。
 ②免税事業者は、仕入事業者から課税事業者になるよう要請されたり、免税事業者のままだと取引を控えられたりするということが考えられます。取引先との価格調整など打ち合わせが必要です。
 ②発行事業者になるということは課税事業者になるということです。課税事業者になれば、消費税を納める必要があります。納税額がどれくらいになるのか、そのデメリットとインボイス発行事業者にならないことのメリット・デメリットを秤にかけて検討する必要があります。
 ③取引先の大部分が、個人消費者である場合は、あえてインボイス発行事業者になる必要はないかもしれません。

■その他:インボイス制度への対応準備
 免税事業者との取引で支払った消費税は、仕入税額控除を受けられなくなりますが、下記のように令和11年9月までの6年間は段階的な措置がされます。影響が少ないその間に課税事業者の方も免税事業者の方も、何らかの対応策を検討する必要があります。
 令和5年10月1日~令和8年9月30日 仕入税額相当額の80%
 令和8年10月1日~令和11年9月30日 仕入税額相当額の50%  これ以降は控除できません。
※山浦税理士事務所の対応
 各顧問先の皆様にはアドバイス、対応をさせていただきます。ご不明点は担当者にご遠慮なくご相談ください。

2021年10月号 全企業に対応が求められる電子取引のデータの保存が義務付け

図:電子取引の流れ

制度の概要 -まずはイメージをつかんでください-
 電子取引は紙ではなくデータで保存しなければならなくなります。上記の図のように、請求書などをメールやホームページ等からダウンロードするような取引が電子取引となります。企業規模に関係なく全企業に適用です。

1.いつからの適用か
 令和4年1月1日以後に行う電子取引に適用されます。そのため、令和3年12月31日までの電子取引は出力した書面での保存が認められますが、令和4年1月1日以後の電子取引は保存要件を満たす形で電子データを保存する必要があります。

2.保存の方法は
 法人や個人事業者が電子取引で交付、又は受け取った請求書等に係る取引情報を、電子データで残す必要があります。残す内容には、取引の日付、取引先、金額等の情報が必要です。
 また、取引年月日などに応じて検索できるようにする、改ざんができないといった一定の保存要件を満たす形で電子データを保存する必要があります。また、システムによっては訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付けも必要です。事務手数がひと手間増えることになります。

3.保存要件を満たさない形で電子データを保存していたり、紙で保存した場合はどうなるか
 これが、非常に問題の多いことなのですが、法律的に言えば、取引情報の電子データの保存がなかったものとして、青色申告の承認の取消しの対象となり得ます。
 また、例えばその電子データに係る経費支出が法人税や所得税における損金、必要経費として認められるか否かといった申告内容の適正性についても、税務調査において納税者からの追加的な説明や資料提出、取引先の情報等を総合勘案のうえ確認されることになるでしょう。ただ、私見ですが、当面は、保存要件が不十分である場合などでも、それだけをもって直ちに、青色申告の取消しや経費性が否定されるわけではないのではと思われます。

4.現実にどのような取引が電子取引に該当するか
 簡単に言えば、書面以外の形で請求書等を授受した際は、保存要件を充足する形で電子データの保存が求められるというイメージです。
例えば、日常的にあるのは(1)電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領する警備料金とかコピー料金とかがこれに該当するでしょう。(2)クレジットカードの利用明細データもそうでしょう。
 現在は、そう多くはないかもしれませんが、これからメールでの請求書等も増えてくることになるでしょう。
従って、対応が求められてくることは認識しておきましょう。
※TKCシステムでは、オプションとして対応できるようになっています。
皆様には、担当が監査訪問したときなどに、当局からの情報も得て最新情報を伝えていきます。

2021年9月号 リスクに備える  -保険とその優先順位を考える-

■ リスクに備える。
 様々なリスクが法人にも、個人にもあります。今回は特に法人経営者の人的なリスクに対し、保険でどう対応するかを考えたいと思います。リスクは次の3つがあります。

 死亡リスク
万一、経営者が亡くなった場合、必要なのは次の3点です。
運転資金の準備 :売り上げの減少や、資金繰りの悪化に対する備えです。
借入金の返済の準備:借入金の毎月の返済に対する備えです。
死亡退職金の準備:残された家族の生活を支えるための資金準備です。

② 就業不能リスク
経営者の重大疾病や重度の障害になった時に必要な備えは次の3点です。
運転資金の準備 :売り上げの減少や、資金繰りの悪化に対する備えです。
借入金の返済の準備:借入金の毎月の返済に対する備えです。
リタイア退職金の準備:要介護状態になった時の治療などの対応資金と、リタイアを余儀なくされた時の家族の生活を支えるための資金準備です。

 生存リスク
経営を継続する上での不測の事態に備える。また、経営者を勇退するとき引退後の資金に備えるということです。
経営資金:万が一に備え急な資金を必要とするときに備える資金です。
リタイア退職金:リタイア後の生活資金です。

主に以上のようなリスクがありますが、これに対し対応する最適の手段として「保険」があります。
「保険」については保険料がもったいないという発想は禁物です。企業は継続できて初めて経営者はもとより従業員の生活を支えることができます。企業の継続を可能にするための必要なコストと考えましょう。
 保険には様々な種類が提供されています。保険料は必要なコストなのですから、そのコストが無駄にならない『我が社にとって、どういった保障が、どれだけ必要なのか』優先順位を考えて加入することが必要です。税務上も保険の種類により全額もしくは一部損金(経費)になりますので、節税しながら保障も得られます。

第1優先 借入金が補填できるか
 
もしもの時に借入金が過大に残っているのは企業継続に最大のリスクです。その借入金に見合うだけの保障額は確保しましょう。収入の安定しない一般的な事業であれば、必要な運転資金は確保できるかも考えておくべきです。
 保険料を少なくしたいのなら掛け捨てタイプの定期保険。保障額を借入残額に合わせて逓減させる保険。
保険料が高いが解約返戻金がある定期保険。

第2優先 就業不能リスク
 
医療体制が整い、治療が長引き、また治療費がかかります。その負担をカバーしておくことが必要な時代です。
 上記の定期保険にオプションで入院給付金をつけます。既に死亡保険金加入済であれば重大疾病を保障する保険。身体障がいになった時の就業不能保障の保険。

第3順位 勇退時の退職金に備える
 
無事に会社を後継に任せ勇退するときに、退職金を確保しておきましょう。
 保障もつきつつ解約返戻金のある定期保険。

2021年8月号 評価損について:税務での留意点

税法上、評価損は認めらないというのが原則です。ただし、一定の要件を満たせば損金として認められます。実務で問題となりやすいのは、棚卸資産と有価証券です。ここでは棚卸資産と有価証券の評価損について解説します。

棚卸資産の評価損 
棚卸資産の時価が下落したため、法人が資産の評価換えをして帳簿価額を減額した場合でも、その減額した金額は損金に算入されません。下落したという客観的事実は、その資産を讓渡しない限り実現しませんので、原則として、評価損の損金算入は認められないというわけです。そうは言っても、それはないだろうという現実もあります。
そこで、例外として、棚卸資産について、次のような事実があった場合には、評価損の損金算入が認められます。
棚卸資産は、
次の場合に評価損を計上できます。
① 季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが明らかであること。
② 型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき、今後通常の方法により販売することができないようになったこと。
③ 破損や型崩れ、たなざらし、品質変化等により、通常の方法によって販売することができないようになったこと。

④ 民事再生法の再生手続開始決定により、評価替えをする必要が生じたこと。

次の理由だけでは評価損を計上できないとされます。時価が単に次の理由等で低下した場合です。
物価変動 ②過剰生産 ③建値の変更 等

評価損は、上記のような事実が生じたことにより適用できます。したがって、評価損に計上した理由と金額の根拠が重要となります。特に時価をどのように算出したかは、重要なポイントです。実際に、商品等をその価格で販売していれば証明力は高いものといえます。
また、実務の簡易方法として、商品を経過年数毎に分類して一定の率で評価替えを行うことがあります。例えば3年経過の商品は60%、5年経過の商品は40%等で評価し、継続適用を行うといった方法です。ただし、利益調整には使わないことです。この場合であっても、評価損を行った時価の実売等の根拠(理由)はしっかりしておきましょう。

有価証券の評価損
有価証券の評価損が認められる要件は、
有価証券の価格が著しく低下したことで、具体的には、時価が簿価のおおむね50%相当額を下回り、かつ、近い将来回復の見込みがないことです。
実務上問題となるのは、近い将来の回復見込みの可能性をどう判断するかです。時価の算定根拠と、回復見込みの可能性の判断基準の確認が必要です。会計の基準にプラスして、市場価格の推移、市場環境の動向、法人の業況、事業計画含む、財政状態等を踏まえて判断する必要があるので、その根拠資料をそろえていきましょう。
なお、税務調査で問題となりやすいのは関係会社の評価損です。特に、子会社は親会社のコントロール下にあることが多く、事業計画や財務の改善は親会社の意向が反映されるため、回復見込みの可能性を客観的に評価することはなかなか難しいと言えます。評価するにあたって会社の今後の方針(事業計画等)が合理的であり、かつ、その結果から回復する見込みがないと判断した根拠資料をそろえておく必要があります。

2021年7月号 消費税 インボイス制度とは その2 制度の影響と留意点

■インボイス制度の導入による影響と留意点
前号では、令和5年10月から始まるインボイス制度について、概略をお話ししました。今回はインボイス制度の導入による影響や留意点をお話しします。課税事業者も免税事業者も影響があります。一番の影響は納付する消費税が増える可能性が高くなります。インボイスとは登録番号のある請求書や領収書のことと理解して下さい。

課税事業者の場合
インボイス制度が始まると、課税事業者はインボイス(適格請求書等)の発行が義務付けられます。そのため、事前に適格請求書発行事業者の登録をしておかなければいけません。インボイスのシステムに対応した経理システムの整備や、取引先の事業者が課税事業者に該当するかの確認なども求められます。
仕入れ先が、小規模で免税事業者の場合、現行では消費税を支払っていないのですが、消費税がかかっているものと計算してよいようになっています。インボイス制度が始まると、一定の場合を除いてインボイスがない限りは原則引けなくなります。従って仕入先等がインボイス発行事業者かどうかの確認が必要になるでしょう。
(例)個人タクシーの領収書。小規模小売店の領収書、がインボイスでないことが想定されます。

免税事業者の場合
上記の通り、インボイス制度下では、免税事業者との取引で支払った仕入代金や経費について、インボイスをもらわない限り仕入税額控除を受けられません。また、前号でお話ししましたように、課税事業者でない限りインボイスは発行できません。そのため免税事業者は、取引先から課税事業者になるよう要請されたり、免税事業者のままだと取引を控えられたりするということが考えられます。インボイス発行事業者になるためには、免税を返上して、課税事業者にならなければなりません。ということは、消費税を納めなければならなくなるということです。
インボイス発行事業者になれば、領収書等に発行事業者の番号を書く必要があります。機械発行されればいいのですが、小規模な小売店などでは、事業を行っているとみられるお客から「領収書をください」と言われた場合には、手書きの領収書を交付しているケースもあるかと思います。そこに手書きで番号を書くという手間が生じます。

一般個人から仕入れる中古車販売業者は、仕入れ税額控除ができなくなるのか?
例えば、中古自動車販売業者は、事業者でない一般個人さんから、車を仕入れることも多いでしょう。当然個人さんから頂く領収書はインボイスではありません。現行では税込みで仕入れたものとみなして計算した消費税額を引けましたが引けなくなってしまうことになります。そこでこのような業種には例外としてインボイスは必要ないことになっています。他にリサイクル業者・宅地建物取引業者業も一般個人から仕入れた場合は例外で認められます。

登録番号の記載のない領収書などはすべて課税仕入れの対象にならないのか?
インボイスの交付困難な取引は、交付義務が免除されます。これらの領収書等はインボイスでなくても仕入れ税額控除ができます。例えば3万円未満の交通機関の切符代、郵便切手代、自販機の飲み物代等が決められています。

一定の期間、インボイスなき課税仕入れの場合100%仕入税額控除できないのではなく特例がある。
5年10月1日~8年9月30日 の3年間  仕入税額相当額の 80%
8年10月1日~11年9月30日 の3年間  仕入税額相当額の 50%
この期間が過ぎれば、インボイスなき取引は100%仕入れ税額控除はできません。

インボイス制度と簡易課税制度との関係
インボイス制度は、「インボイスの保存がない場合に仕入税額控除を適用しない」というものです。簡易課税制度は、売上のみで納付税額を計算できる制度です。業種ごとに決められた売上げの○○%を仕入税額控除して納めることになっています。従って、
簡易課税の適用の場合インボイスは必要ないことになります。こうした事業者は仕入れの場面ではインボイス制度の影響はほとんどないでしょう。

2021年6月号 消費税 インボイス制度とは 近づいてきたインボイス制度の申請

コロナ禍の中でなんとなく埋もれてしまっていますが、消費税のインボイス制度が令和5年10月より始まります。まだ、先の話のようですが、今年の10月より事業者の届出申請が始まりますし、準備も必要です。

インボイス制度とは:請求書等保存方式と適格請求書等保存方式
復習ですが、消費税の納付額は原則として
【売上でもらった消費税】 - 【仕入れや経費支払いで支払った消費税】
として計算します。この支払った消費税を引くためには、帳簿に記載し、その証拠となる「請求書等を保存」しておく必要があります。この「請求書等」が変更になって「適格請求書等」をもらって「保存」しなければ引けなくなるわけです。これが「適格請求書等保存方式」と言われるものです。この「適格請求書等」をインボイスと言います。
ということは、仕入れたり、経費を払ったりしたとき「適格請求書等」を相手からもらわなければなりません。ところが「適格請求書等」を発行できる事業者は届け出をした事業者のみです。発行できる事業者である証明の為「適格請求書等」には事業者の「登録番号」が記載されています。

適格請求書等を発行できる事業者になるための届出
ここでお分かりのように、その請求書を発行できない事業者からは仕入れたり、経費を払ったりはしないでしょう。貴事業者も当然、「適格請求書等を発行できる事業者」にならなければなりません。
どうすればなれるのか?税務署に届出することで登録されます。この届出が今年の令和3年10月から始まり、インボイス制度の義務化が始まる令和5年10月1日から登録を受けるためには、原則としてその6ヵ月前の令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。(困難な事情がある場合には、令和5年9月30日まででもOKです)

「適格請求書等」を発行できる事業者の要件
届出が必要なのですが、事業者すべてが出来るわけではなく、事業者の要件があります。それは「課税事業者であること」です。免税事業者は届出を出すことはできず、つまりは「適格請求書等」を発行できないのです。消費税を納めない事業者は外されるということです。現在課税事業者の方は届出を出すことで「適格請求書等」を発行できる事業者になれます。

影響が大きい免税事業者
影響が大きいのは免税事業者ということになります。免税事業者との取引で支払った消費税は、仕入税額控除を受けられません(6年間は段階的な措置がされます)。そのため免税事業者は、仕入事業者から課税事業者になるよう要請されたり、免税事業者のままだと取引を控えられたりするということが考えられます。また、これまで消費税は収めることはありませんでしたが、課税事業者になることで、消費税の納税も生じることになります。

まとめ:インボイス制度への対応準備
インボイス(適格請求書)を発行できる「適格請求書発行事業者」になる届出をする
要件を満たしたインボイスが発行可能な経理システムを整える
免税事業者は課税事業者になるかどうかの選択をする
免税事業者は課税事業者との取引終了の可能性を視野に入れて対策を練る

2021年5月号 コロナ禍の税務での留意点

今回は個人で契約した生命保険金関係の税のことをお話しします。
生命保険金には満期保険金、死亡保険金、生存中に受け取る障害各種給付金等があります。どのような税金がかかるのかは、契約内容や保険金によって異なり複雑です。特に契約内容を間違えるととんだ課税が生じたりしますので注意が必要です。特に税率の高い贈与税対象にならないようにしましょう。

1.どのような税金がかかるのかは以下の内容がどうなっているかで変わります。まず確認しましょう。
○契約者は誰か
○保険料を負担しているのは誰か(一般的には契約者=保険料負担者ですのでそれを前提とします)
○被保険者(保険の対象者)は誰か
○受取人は誰か
○どういう理由で支払われるのか(満期?死亡?障害?

2.所得税(一時所得)になる場合
<契約者=保険金受取人の場合>例えば夫が妻の万が一に備えて契約し、受取人が自分(夫)の場合です。契約者である人が保険料を支払っており、その本人(=契約者=保険料負担者)が死亡保険金満期で一時金として受け取った時には、自分で払って自分が受け取りますので「所得税」対象になり、一時所得になります。
計算ですが、受け取った満期保険金から支払った保険料を差し引きます。その差額から50万円を引くことができ、なおかつその1/2に課税されます。{(受け取り保険金額ー掛けた保険料累計額)-50万円}×1/2

3.贈与税がかかる場合
<契約者≠被保険者≠保険金受取人の場合>例えば夫が妻の万が一に備えて契約し、保険受取人を子どもとする契約にした場合は、受け取った死亡保険金は「贈与税」の対象となります。保険料を支払った人が死亡したわけでもなく、契約者=保険料負担者から保険金受取人に贈与が発生したとみなされるわけです。保険料は自分で払ってなくて、満期保険金をもらった場合も同様です。意識せずに、例えば、契約者は子供なのですが、保険料は父名義の預金からが引かれており、満期受取人が子供で、贈与税がかかったということが意外とあるので注意しましょう。

4.相続税の対象となる場合
<契約者(保険料負担者)=被保険者の場合>例えば、夫が自分の万が一に備えて契約し保険金受取人は妻といった場合の死亡保険金は「相続税」の対象となります。この場合受け取った妻(相続人)には所得税や贈与税はかかりません。その替わり相続税の対象です。受け取った保険金は法定相続人1人あたり500万円の控除があります。

5.所得税(雑所得)となる場合
個人年金保険の場合は、保険料を支払った本人(契約者=被保険者)が年金として受け取れば、公的年金と同じ雑所得となります。2と同じように掛けた保険料は引くことが出来ます。

6.すべてが課税ではありません。非課税となる場合があります。
死亡とか満期とかではなく、生存していて不慮の事故や疾病などにより受け取る高度障害保険金、特定疾病保険金、入院・通院・手術給付金などには額にかかわらず税金がかかりません。がん診断一時金なども非課税となります。障害で生ずる治療や生活費の不安定を解消するための生活の保障だからです。

2021年4月号 令和3年税制改正のポイント その2

前号に続き2021年度(令和3年度)の税制改正のポイント解説です。

中小企業が設備投資をする場合の税制優遇措置について
これには似たような 〇中小企業経営強化税制と、〇中小企業投資促進税制があり、両方とも2年延長され、2022年(R5)度末までとなります。制度も少し変わりますのでポイントを紹介します。

〇中小企業経営強化税制について 改正し2年延長
一定の設備を取得した場合に、即時償却または取得価額の10%の税額控除(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)を選ぶことができます。ただし、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画にもとづいている必要があります。「一定の設備」とは、生産性が1%以上向上する生産等設備であることが要件です。ただし、事務用器具備品・本店・寄宿舎等に係る建物付属設備、福利厚生施設などは対象外です。原則的には、経営力向上計画の認定を受けてから設備を取得する必要があります。設備業者が対象資産であるかどうか詳しいと思いますので、投資の前に確認したほうがいいです。

〇中小企業投資促進税制について、適用期限を2年延長
一定の設備投資をすれば、その額の30%の特別償却か7%の税額控除いずれかを適用できる制度です。特別償却をすれば本来の償却より多く経費にできますので、節税になります。もしくは7%の税額控除ができます。一例として、制度を適用できる200万円の機械設備を購入したとき、税額控除を使えば14万円の税金が少なくなるわけです。5年3月末まで延長になりました。使い勝手のいい制度ですので、ご検討ください。

■住宅ローン控除の特例の延長等
住宅ローン控除は、住宅取得を促すために、借入金残高の1%を税金から引きますという制度です。控除期間は本来10年ですが、消費税が上がった関係で特例として13年間に延長されています。この特例について延長し、一定の期間(新築は3年9月30日まで、中古は3年11月30日まで)に契約した場合で、令和4年末までの入居者を対象とします。
面積は本来50㎡以上が条件ですが、この延長した部分に限り、合計所得金額が1,000万円(給与収入で約1,200万円)以下の者について面積要件を緩和し、床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅も対象とします。
前号で紹介した、父母や祖父母からの住宅取得資金贈与の非課税(1,000~1,500万円)との併用も可能です。

■中小企業の法人税の軽減税率を2年延長
現在中小企業の法人税率は、本来は19%なのですが所得800万円以下の部分に限っては15%に軽減されています。これが2年間延長され5年3月末までになりました。

■研究開発を維持するための研究開発税制の見直し
厳しい経営環境にあっても研究開発投資を増加させる企業について、後押ししようとする制度です。従来からある制度ですが、拡充されて5年3月末までと2年間延長されました。より多くの試験研究費を使った企業に対し、より多くの税額控除ができるよう控除の率が改定されました。さらに売上が2%以上下がった上での試験研究費の増額等、他にいろいろな条件等がクリーアーされれば控除率がアップされます。
通常の場合の一例ですが、試験研究費を100万円使ったら2万円~14万円が税金から引かれます。率は諸条件で変わってきます。

2021年3月号 令和3年度税制改正のポイント 

令和3年税制改正については、どちらかといえば大企業向けの項目が多く、中小企業にとっては目立った改正はないのですが、政府の誘導する経済の流れを知る上ではポイントをつかんでおく必要があります。2回に分けてご案内します。

改正の背景とその概要
①ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生
コロナによる新たな日常に対応した事業再構築を早急に進めていくためには、デジタル技術を活用した企業変革(DX)が不可欠です。そこで今回の改正では、一定のクラウド型システムを導入する企業に対する税制措置が新設されます。また、国際競争力を失わないためには、企業の研究開発投資の維持・拡大が求められることから、コロナ禍により売上が一定程度減少したにもかかわらず、研究開発投資を増加させた企業については、「研究開発税制」の控除上限が法人税額の25%から30%に引き上げられるなど、インセンティブが大きくなります。
大企業の話ですが、コロナ禍により生じた欠損金については、一定期間に限り、DXやカーボンニュートラル等、事業再構築・再編に係る投資に応じた範囲において、最大100%までの控除を可能とする措置が講じられることになりました。

②デジタル社会の実現
今回の感染症では、わが国における行政サービスや民間分野のデジタル化の遅れなど、様々な課題が浮き彫りになりました。菅内閣は、各省庁や自治体の縦割りを打破し、行政のデジタル化を進め、今後5年で自治体のシステムの統一・標準化を行うこととしており、税制においても、DXの取組みが強力に推進されることになりました。
具体的には、国税関係書類について、押印義務が一部廃止されます。また、経理の電子化による生産性の向上等を実現するため、国税関係帳簿書類を電子的に保存する際の手続きが抜本的に見直される
ことになりました。

③グリーン社会の実現
政府は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050 年カーボンニュートラル」の実現を目指しており、これに向かって税制面においても必要な支援が講じられることになりました。
具体的には、目標を達成するため、生産プロセスの脱炭素化に寄与する設備等を導入する企業に対し、強力な税制上の支援措置が手当されるほか、自動車税等のいわゆる「エコカー減税」や「グリーン化特例」について、大変革期を迎える自動車業界の対応や環境整備に貢献する観点から制度の見直しが図られることになりました。

④中小企業の支援、地方創生
地域経済を担う中小企業を取り巻く状況が厳しさを増していることから、「生産性の向上」「経営基盤の強化」などの取り組みに対して、税制上でも幅広い支援措置が実施されます。具体的には、中小企業者等に係る軽減税率の特例や中小企業投資促進税制及び中小企業経営強化税制の適用期限が2年間延長されることになりました。
また、経済の好循環のためには、企業が生み出した付加価値を従業員の給与へ還元していくことが不可欠です。そのため、いわゆる賃上げ税制(所得拡大促進税)が、より使いやすくなって2年間延長されることになりました。

⑤円滑・適正な納税のための環境整備
取引のクロスボーダー化、デジタル化が進展するいま、税務行政においてもこれらに上手く適応しなければ、適正で公平な納税環境は実現することが不可能です。納税環境整備の観点から、今回の改正では、主に「国際的徴収回避行為への対応」「退職所得課税」などについて改正が行われることになりました。

■改正の内、主な項目の具体的内容 その1
①退職所得に対する課税の改正
現行制度では、法人の役員が勤続5年以下で退職金を受け取った場合、いわゆる「2分の1課税」が適用されません。今回の改正は、勤続5年以下の従業員についても、役員と同様に「2分の1課税」が適用されなくする、というもの。ただし、雇用の流動化等に配慮し、退職金から退職所得控除額を除いた残額のうち300万円を超える部分については、引き続き続き「2分の1課税」が適用されます。一般的には対象になることは少ないと思います。
なお、この改正は令和4年分以後の所得税について適用されます。

②住宅取得資金贈与の非課税限度額の据え置き
住宅取得資金贈与の非課税措置(直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置)とは、直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた際、一定額まで贈与税を非課税とする特例措置です。令和3年4月1日から同12月31日までの間に住宅を取得した場合の非課税限度額が、令和2年4月1日から令和3年3月31日までの間の非課税限度額と同額まで引き上げられます。省エネ住宅1,500万円・一般住宅1,000万円までです。
この改正は、令和3年1月1日以後の住宅取得資金の贈与について適用されます。

③「直系尊属から教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の改正
この制度は経済対策として導入された側面があるものの、「相続税の2割加算」を回避する手段として主に富裕層に活用されていました。また、近年は利用件数が低迷していることから、廃止の方向で議論を進めてきました。
「相続税の2割加算」の回避策として利用できなくする措置が講じられて、2年間延長されることになりました。
なお、この改正は令和3年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権等について適用されます。

④固定資産税の計算のベースとなる課税標準の据え置き
令和3年は3年ごとに土地の時価を調査する評価替えの年に該当します。新型コロナウイルスの感染拡大により、現在は商業地を中心に地価が大きく下落しています。そのため、大部分の土地について、令和3年度の課税標準額が令和2年度の課税標準額と同額とされます。つまり今年度と同額に据え置かれます。

⑤中小企業における所得拡大促進税制の見直し
雇用の維持・確保への懸念がある中においては、特に中小企業全体として雇用を守りつつ、賃上げによる所得拡大を促すことが重要課題となります。このため、賃上げだけでなく、雇用を増加させる企業を下支えする観点から、適用要件の見直しがされます。令和3年4月1日から令和5年3月31日に開始する事業年度から適用です。
具体的には、これまでは継続して雇っている人に支払う給与の総額が1.5%以上増えた場合に増加分の15%の減税でしたが、今後は賃上げがなくても、人員増などで給与総額が1.5%以上増えれば、減税の対象となります。

2021年2月号 令和2年分の確定申告について

個人所得税・贈与税の確定申告の時期になりました。いろいろ準備が必要です。よくある注意事項をお知らせします。ご自身で税務署に行かれる場合、今年はコロナ対策として受付は予約制により対応されるようですので注意しましょう。4月15日まで延長になりましたが、早めがいいと思います。

■確定申告が必要な方

大雑把に言えば、昨年1年間の税金を決める手続きですので、1年間で得た各種の所得から所得控除額を引いて計算したら税額の出る方は申告が必要です。
給与が1箇所だけで年末調整が済んでいる方は、原則申告の必要はありません。年末調整が済んでいる給与はすでに計算してありますが、2か所給与などの場合注意が必要です。いただいている給与全ての源泉徴収票でもって申告が必要です。
同族会社の役員やその親族などで、その同族会社から給与のほかに、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている方はそれが20万円以下でも申告が必要です。
公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の各種の所得金額が20万円以下である場合には、所得税等の確定申告は必要ありません。

今年の確定申告で変わったこと
所得税は毎年のように法律が変わります。今年変わった主なものは
基礎控除額が所得によって0円~48万円になります。
去年までは一律38万円でしたが、10万円増えて、2,500万円超の高額所得者は0円になりました。
給与収入が850万円を超える方の給与所得控除額が195万円に引き下げられています。ただし子育て世代に配慮して、23歳未満の扶養親族や特別障碍者である扶養親族等を有する場合は負担増が生じないように調整することになっていますので、お忘れなく。
ひとり親控除が新設されました
婚姻歴の有無・男女にかかわらず、生計を一にする子を有する所得500万円以下の単身者について「ひとり親控除35万円」が新設されています。
「婚姻歴に関係なく」が変わったところです。以前あった寡婦(寡夫)の改定です。「子」以外を扶養する死別・離別により寡婦となったときや扶養者がいなくても死別の寡婦は従来通り寡婦控除27万円があります。

医療費控除 R2年分から明細書が必須に領収書の添付等を認める経過措置が終了
令和2年分の所得税から「医療費控除の明細書」の添付が必須です。昨年までは医療費の領収書の添付又は提示により申告することもできましたが、今年はできません。必ず明細を書いてください。健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」でもいいです。領収書は提出不要です。自分で5年保管します。

住宅ローン控除はありませんか
住宅ローンで住宅を新築または取得、あるいは増改築した場合に利用できる制度です。住宅の床面積等の要件がありますが、対象になったら適用初年だけは確定申告が必要です。住宅ローンは、返済期間が10年以上の割賦償還による返済方法の借入金とされており、自身の親や知人から住宅購入資金を借りても控除の対象になりません。

その他の留意事項
保険満期金の申告は漏れていませんか?
保険金の契約者と受取人が同一の場合は一時所得となります。受け取った保険満期金から保険料の総支払額を引いた金額からなおかつ特別控除50万円を引いてもプラスになれば確定申告の対象となるので注意しましょう。なお、契約者と受取人が異なる場合は、所得税ではなく贈与税となります。
年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以下の方は、確定申告は不要なのですが、医療費控除やふるさと納税(寄附⾦控除)などの適⽤を受ける場合は、給与以外の所得が20万円以下であっても全部含めての確定申告が必要です。
土地建物を売却したり、収用があった場合は申告が必要です。取得したときの契約書等の資料や、売った時の契約書が必要です。収用は収用証明書関係の資料が必要です。
株式の譲渡のあった方は特定口座や特定口座以外でも証券会社からの書類をお願いします。

ふるさと納税をした方へのご注意!!
ふるさと納税には「ワンストップ特例」という制度があります。この制度を使うことを申請すれば、確定申告しなくても自動的に住民税が安くなります、という制度です。が、おとし穴があります。確定申告をする人はワンストップ特例で済んだと思ってふるさと納税を入れずに申告すると、その申告が優先されてしまい、ワンストップ特例で申請したふるさと納税の情報は無効になります。医療費控除や住宅ローン控除などの確定申告を行う場合は、必ずふるさと納税の全てを確定申告で記入する必要がありますので、ご注意ください。

国等から支給される主な助成金で課税となるもの
コロナウィルス感染症等の影響に伴い、国や地方公共団体から受け取った助成金のうち、一定の非課税所得となる助成金以外の助成金については、所得税の課税対象になります。
事業者の収入が減少したことに対する補償や支払賃金などの必要経費に算入すべき支出の補てんを目的として支給する持続化給付金や・家賃支援給付金・農林漁業者への経営継続補助金などは収入に入れなければなりません。各種の助成金がありますので、担当にお尋ねください。

贈与税の申告が必要な方
令和元年(平成31年)中に110万円を超える財産の贈与を受けた方。
財産の贈与を受けた方で、配偶者控除の特例を適用する方・相続時精算課税を適用する方
財産の贈与を受けた方で、住宅取得等資金の非課税を適用する方。

2020年12月号 自民党税調 令和3年度税制改正の方向性

自民党税調で話し合われている令和3年度税制改正の方向性
令和3年度税制改正⼤綱の取りまとめに向けて、⾃⺠党税制調査会(⽢利明会⻑)は11⽉下旬から議論を本格化させています。コロナウイルス感染症の影響で落ち込んだ経済の税負担の軽減策や企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の優遇策等を検討課題とすることになりました。

主な検討課題
〇法⼈課税では研究開発税制の拡充等前年度も議論した株式を使ったM&Aで買収される企業の株主の税負担の軽減策を挙げています。

「デジタル化」についてはクラウドサービスを利⽤してデータをやり取りするDXに取り組む企業の投資を後押しするため税負担の優遇策を検討します。

〇所得課税では消費税率引上げ時に導⼊した住宅ローン控除の控除期間の特例(控除期間13年)が令和2年12⽉末に期限を迎えるため期限延⻑等について検討課題とします。

〇資産課税では直系尊属から教育資⾦の⼀括贈与を受けた場合の贈与税の⾮課税措置や直系尊属から結婚・⼦育て資⾦の⼀括贈与を受けた場合の贈与税の⾮課税措置について令和3年3⽉31⽇までとされている期限の延⻑等を議論されています。

〇地⽅税では3年に1度の評価替えを迎える固定資産税について商業地を中⼼に固定資産税の負担増にならぬよう⼟地の負担の調整措置等を議論します。地⽅税の納税⼿続等のデジタル化等も検討課題となります。

〇確定申告等の税務⼿続に関する押印についても基本的には原則廃⽌の⽅向で検討されます。

〇各府省庁からの税制改正要望や政府税調で議論された退職所得課税への対応「退職所得課税の適正化の⽅向性」がテーマに挙がり勤続年数が短い場合には課税所得を半減させる恩典を制限するべきではないかとしている点も注⽬されます。

〇政府税制調査会では相続税・贈与税の改正について議論を進めていますが、そのメインテーマに「資産移転の時期の選択に中⽴的な課税⽅式を確⽴する」ことが掲げられています。贈与税の基礎控除110万円を活⽤した⽣前贈与は、相続税対策の王道ですが、これが不公平だというわけです。もしかすると、いずれ使えなくなる時がくるかもしれません。

インフルエンザ予防接種と給与課税
今年はインフルエンザの予防接種を受ける者が例年に⽐べ増加しているようです。インフルエンザの予防接種は業務停滞防⽌や健康維持等を⽬的に会社が従業員等の接種費⽤の⼀部⼜は全額を負担する企業も多いでしょう。
この場合の会社負担額は福利厚⽣費として処理でき従業員等には給与課税する必要はありません。

2020年11月号 年末調整のよくある間違いと疑問点

前号でお知らせしましたが、今年の年末調整の書類と手続きには変更があっていますので、ご留意ください。
特に年収850万円超の高額所得者には変更点にご留意を。以下、その他のよくある留意点、疑問点をまとめました。

年末調整を怠ると罰則があるのですか?
会社が年末調整を怠り、納めるべき税金を納めないでいると、罰則があります。
年末調整は必ず行いましょう。

子供が12月25日に生まれました。扶養親族にできますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行います。従って生まれて間もないですが、扶養親族になります。
話は変わりますが、年末に離婚したら、配偶者控除はできないことになります。

親を扶養していましたが、年の途中で亡くなりました。扶養から外れますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行いますので、その日には親はいないことになり、扶養から外れるのではと思いがちですが、何時亡くなられたかに関係なく、例えば1月に亡くなられたとしても今年までは扶養控除ができます。

■中学生の息子は扶養控除にできないのですか?
扶養親族は生計を一にしていて、所得が48万円以下(給与だと収入103万円以下)であることが条件です。中学生は所得はないでしょうから扶養親族ではあります。しかし税務上16歳以下は扶養控除はできません。子供手当てが支給されるようになってからできなくなりました。

■コロナの影響で、従業員に支払った休業手当はどうすればいいですか?
休業手当も給与と同じですので、年末調整に加えなければなりません。従業員がけがや病気で休んだ時に社会保険から本人に支給される休業補償金は非課税ですので入れなくていいのですが、混同しないようにしましょう。

■中途退職の人の年末調整はするのですか?
死亡退職の場合はその後の給与支払いはあり得ませんので、年末調整をします。それ以外は原則年末調整は行いません。最後の支給日までの源泉徴収票を必ず発行して下さい。次の職場の年末調整に必要です。

■コロナの為に生命保険の支払いを猶予してもらいましたが?
実際に支払っていませんので、今年の分には入りません。生命保険会社から送られてくる生命保険料控除証明書も払った保険料のみ書いてあるはずですので、そのままの金額を使ってください。

■前職の源泉徴収票がもらえないのですが?
中途就職の従業員さんは前の職場の給与も加えて年末調整をします。そのために前職の源泉徴収票が必要です。それがなかなかもらえないとか、間に合わないとかの時には、年末調整はできませんので、自分で確定申告をすることになります。それだけ手間がかかりますので、できれば年末調整で済むように前職の源泉徴収票の取得を促してください。ほとんどの人が還付になるはずです。

2020年10月号 今年の年末調整の留意点

2020年は税制改正で「年末調整書類」が大きく変わります。 
令和2年分以後の所得税については、給与所得者に関する改正事項が集中します。基礎控除の引上げやひとり親控除の創設など「年末調整」の場面で対応を求められるものが多く、人的控除以外では所得金額調整控除が新設されています。事務担当の方はまずはアウトラインをつかんでおきましょう。

■年末調整の申告書が変更追加されます。
「給与所得者の基礎控除 兼 給与所得者の配偶者申告書 兼 所得金額調整控除申告書」ができています。一枚の用紙に記載するようになっています。

新しくもうけられたのは2つです。
①一つは給与所得者の基礎控除の計算をする欄です。一般的には48万円(前年までは38万円でした)です。高額所得者は減額されますが、それを算出する欄です。
②もう一つは所得金額調整控除の欄です。給与収入が850万円超の人が特別障害者の有無、又は23歳未満の扶養親族の有無を書く欄です。一般的にはあまり該当者はいないと思います。

従来あった、「給与所得者の配偶者控除等申告書」はこの用紙に含められています。

所得税が増えるのか?との疑問がわきますが、給与収入850万円以下の人は結果的に以前と変わりません。
給与所得控除が10万円引き下げられますが、基礎控除が10万円引き上げられますので結果同じだからです。

■「給与所得者の扶養控除等(移動)申告書」の記入欄の変更など
以前より「寡婦控除」、「寡夫控除」がありましたが、「寡婦控除」、「ひとり親控除」と変更されました。
子供さんのいるいわゆる「ひとり親家庭」には男も女も公平な控除をする制度になりました。

①婚姻歴や男女に関係なく、生計を一にする子(所得が48万円以下)がいる単身者には「ひとり親控除」35万円が適用されます。
②寡婦だけの話ですが、死別か離婚で子供さんはいないけど子以外の扶養親族があれば27万円の控除です。死別であれば子、扶養親族がいなくても27万円控除があります。ここは寡夫と違います。

*「ひとり親」の記載方法
「ひとり親」を記載する欄はありません。中央付近に □寡婦 □特別の寡婦 □寡夫 の記載がありますのでそこに「ひとり親」と追加記入してください。

「給与所得者の保険料控除申告書」
この申告書は従来通り生命保険や火災保険、地震保険等を記入する用紙です。特に変更はありません。
これらの書類が提出されないと、年末調整の計算ができません。書き方に迷った従業員さんの書類提出が遅れてしまうといったことも予想されます。税務署主催の説明会は、今年はコロナの影響で中止の予定です。事務所としては改めてパンフレット等提供する予定です。ご不明点は担当者におたずねください。

2020年9月 税にまつわる、ゴシップ話

コロナ禍による暗い話ばかりで、いささかストレスもたまり気味だと思います。今回は堅い話は抜きに、最近起きた週刊誌ネタ風の税にまつわる話で、頭を休めてください。

■ZOZO創業者の前澤さんの資産管理会社が5億円の申告漏れ
話題になったニュースでした。何だ、若造が金儲けして、脱税?不正なことをしたの?と思った方が多いでしょう。しかし、これは申告漏れであり、脱税や不正とは全く別物なのです。とかく最近は脱税も申告漏れも同列にみてしまいがちな記事があるので要注意です。しかも本来このような案件は税務当局の守秘義務があるので出ないはずですが、どうして出てくるのでしょうかね。見せしめの為の当局からのリークだと言われています。さて、今回は金額のスケールが大きいので、びっくりですが、「申告漏れ」と言っており「脱税」と言っていないところがポイントです。これはいわば「見解の相違」ということでしょう。
申告漏れの内容は、会社のプライベートジェットを個人利用したということです。個人的に使った場合は会社に利用料を支払っていたということですが、税務署はそれ以外にも個人的使用がある判断したということの様です。会社の車を個人的に使用すると使用料を会社に支払いますね。同様に車がジェットに変わったというだけです。なにせ金額が大きいので目立つのですが、前澤さんにとってはジェットでの移動は普通であったわけで、問題の本質は業務の範囲です。前澤さんだけでなく、仕事とプライベートを分けることが難しいと思う社長も多いと思います。というのも、どこで仕事の話が広がるかわかりませんし、前澤さんの場合は仕事と関連すると考えて利用したわけで、ジェット移動も宣伝の内なのでしょう。何せ1億円のお年玉をした方ですから。税務調査の結果、その一部は仕事と関係ないという判断になったのでしょう。つまり、売り上げを意図的にごまかしたとか、架空の経費を計上したといったような悪意のある脱税とは全く別という訳です。

■あの「紀州のドン・ファン」の遺産はどうなった
2年前、貸金業や酒類販売業で富を築き怪死したドン・ファンこと故野崎氏の遺産は、約13億円にのぼり話題になりました。55歳年下の若い奥さんがいましたが、財産を田辺市に全額寄付するという遺言書も見つかり、家庭裁判所は正式な遺言書の要件を満たしていると判断しました。田辺市は遺産の受け入れを表明したのです。国や地方公共団体に財産を寄付すれば、原則的には相続税はかかりません。田辺市に莫大な遺産が入ることになれば、市民にとってもありがたいはずなのですが、ここで大きな問題が出たのです。遺産の受け入れにかかる費用として、鑑定費用とか名義変更等の手数料、弁護士手数料とかで合計1億8000万円超かかるというわけです。市はその予算を組んだので市民から不満の声が出ているとのことです。妻に対する遺留分についても問題が起こっているかと思われます。

吉本興業芸人の無申告事件
昨年の秋に芸人チュートリアル徳井さんの会社が、7年間で約1億2千万円の申告漏れがあったとして、国税局から悪質な所得隠しとして重加算税を含め約3,400万円を課されたというニュースがありました。税理士さんに促されながらも3年間申告をしていなかったというから驚きです。当然税務調査が入りました。調査は原則5年分できるようになっていますが、一般的には3年分です。悪質と見られると7年間さかのぼることができます。結果7年さかのぼっての調査となったようです。納税に関するペナルティには、4種類の「加算税」と、「延滞税」「利子税」の計6種類があります。加算税は、申告漏れあるいは脱税の悪質度等によって税率が異なってきます。決定されると、本来納める必要があった「本税」に加えて、これらの税金を支払わなくてはなりません。
脱税額が大きいと刑事告訴され、懲役刑もあります。彼の場合は刑事告訴までには至らなかったようです。今年の春から芸能活動も徐々にやっているようですね。
参考:納税通信など 

2020年8月 コロナ禍の税務での留意点

役員報酬は期中、定期同額であることが損金算入にできる(経費にできる)条件です。一定の期間に改訂をしないと、期の途中での増額減額は損金にできる金額が制限されます。平時において“事業年度開始日の属する会計期間開始の日から3か月経過日”までに行う増額・減額改定であれば、「通常改定」として定期同額給与に該当することになります。
しかし、コロナ感染症拡大の影響下において、経営状況が著しく悪化したケースや今後の著しい悪化が不可避なケースについては期の途中でも減額せざるを得ません。このような「業績悪化改定事由」に該当する場合は減額しても、損金にすることはできるとなっています。ただし、期の途中また元に戻すのはだめです。

コロナ禍で役員給与の未払いでも、損金にできるのか
コロナ禍で減額ではなく“未払い”となるケースもあるでしょう。この場合、資金繰り悪化等のやむを得ない事情によるものであれば未払期間にかかわらず定期同額給与の要件を満たすという判断です。
ただし、 未払い分を積み立てておいて、後でまとめて支払う等は不可ですので注意してください。

コロナ禍による資金困難による納税の特例猶予
国税は、定められた納期限までに完納することが原則ですが、災害等により「財産につき相当な損失」が生じ、やむを得ず納付ができない事情がある場合には、一定の要件の下で、その納付を猶予することができます。
この猶予制度は「新型コロナウイルス感染症等の影響による収入の相当な減少」に適用されます。この特例猶予は、担保は不要で、延滞税も課されないで、1年間、納税を猶予します。
適用を受けるには、税務署へ申請が必要です。

コロナ禍により、一時的なテレワークでも交通費(通勤手当)は従来通り非課税でよいのか
ご承知の通り、従業員らに支給する通勤手当は、一定の限度額まで非課税とされています。一時的なテレワークの実施により、従業員らが会社に通勤しない場合でも、①従業員らの本来の勤務地は会社であること、②テレワークの実施期間中に従業員らが必ずしも通勤しないとは限らないことから、非課税と処理して問題ないという判断です。

従業員に対しての一定の見舞金は非課税
所得税関係では、事業者が、新型コロナウイルス感染症の感染リスク等を抱えながら業務に従事する従業員等に対して「見舞金」を支給した場合の課税関係がどうなるかですが、非課税でよいという判断です。
所得税法上、「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金」は非課税とされています。
従って、給与とみなすことなく、源泉徴収も不要です。

所得税・法人税・消費税・地方税・相続税等の申告期限の延長
コロナ感染の拡大状況を踏まえ、その影響を受けている場合、各税目で期限後でも柔軟に確定申告を受け付けることとなっています。これは今も引き続き適用されています。法人の場合には、コロナ禍によるさまざまな影響で決算作業が間に合わず、期限までに申告が困難なケースなども考えられます。 申請書等を作成して提出する必要はなく、申告書の提出の際に、「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を申告書の余白に付記するか、e-Taxを利用する場合は「電子申告及び申請・届出による添付書類送付書」の「電子申告及び申請届出名」欄にその旨を入力するなどの手続で申請を行うことができます。 *該当先は当事務所で対応しています。

2020年7月 新型コロナウイルス対策として受け取る国や地方自治体からの給付金や助成金に税金はかかる?

新型コロナウイルス対策で国民に支給されるお金の内容と法人税・所得税の課税・非課税について見ていきましょう。基本的な考え方は、法人が受け取る助成金等はすべて課税の対象ですので、まずは収入に計上します。(資産助成金によっては圧縮記帳といって、結果的に課税を繰り延べる方法があります)
個人の場合は原則課税所得になるのですが、非課税の所得は法律で決められています。事業者の収入が減少したことに対する補償や、支払賃金などの必要経費の支出の補填を目的として支給される助成金等は、課税の対象になる収入(事業所得)となります。

なお、消費税に関しては法人・個人いずれも販売や役務提供の対価ではないので非課税です。

持続化給付金・県市からの○○事業支援助成金
コロナウイルス感染拡大により売上の大幅な減少という影響を受けた事業主に対し、「事業全般に幅広く使えるように」と経済産業省から交付される給付金です。中小法人は最大200万円、個人事業主は最大100万円が支給されます。これは収入減の補填ですので法人・個人にかかわらず課税の対象となり収入として計上します。

県や市から事業者に対しての助成金が交付されていますが、事業者に対する売上補填、経費補填の意味があるようですので、法人個人問わず収入に計上することになります。

10万円の特別定額給付金
外出自粛で感染拡大防止に協力している個人(国民全員)に対し、家計支援の一つとして給付されるお金です。
1人あたり10万円が支給されます。この特別定額給付金は新型コロナ税特例法により非課税所得とされています。

●子育て世帯への臨時特別給付金
児童手当受給世帯に対して一人1万円上乗せ支給されていますが、これも非課税です。

休業協力金
都道府県から一定期間に渡り休業や営業時間の短縮などを要請された事業主に対して支給されるお金です。自治体によって名称や支給額が異なります。東京都の感染拡大防止協力金については、一律50万円(2事業所以上で自粛する事業主には100万)となっています。これらは課税対象ですので収入に計上します。

雇用調整助成金
コロナ禍の影響の中、従業員さんに休業手当を支払うなどで雇用維持に努めている事業主に対し、厚生労働省が交付する助成金です。事業規模や従業員への支給割合によって支給額が異なりますが、賃金という経費の補填という意味でこちらも課税対象で収入に計上です。

収入の計上時期は?
一般的に申請から支給までには時間がかかります。収入をいつ計上するかですが、実際に入金された時ではなく、助成金等の支給決定がなされた日、つまりは「支給決定通知書」の日付でもって収入に計上します。期をまたぐときには未収入計上しなければなりませんので注意しましょう。
※不明点がございましたら、各担当者にご確認ください。

2020年6月 不測の事態に備えておくべき資金  備える経営

コロナ問題というリスクが生じてしまいました。企業にとって大きな課題は資金繰りでしょう。
これを機に今一度、不測の事態に備えておくべき資金(現金預金)のことを考えておきましょう。

■月商の何か月分かを持つという判断でいいのか?
よく「月商の3か月分は持ちましょう」といわれることがあります。しかし、その根拠はあいまいです。「月商」といっても、業種によって、その金額は大きく違います。10%の粗利(限界利益)の事業と、70%の粗利(限界利益)の事業では、同じ1000万円の売り上げでも前者は100万円の粗利ですし、後者は700万の粗利です。その粗利でもって固定経費をまかなっているわけですが、その固定費も違い、必要な利益も違います。借入金があれば、その返済額も違うでしょう。基準となる売上がいくらなのかさえ不明確ですので、売り上げの〇か月分というのは判断基準にしない方がいいでしょう。

■では、何を基準にしたほうがいいか?
まず、最低限、資金繰りを回すためには自社の経費、借入返済額を知り、もし売上が2か月間無かったらいくらの資金が必要かと考えた方がいいでしょう。そのためには下記の手順で考えましょう。

 毎月の固定費を把握しましょう
固定費とは、売り上げがあってもなくてもかかる経費です。ざっくり言えば仕入れや外注費以外の経費です。主な固定費は人件費で、他に地代家賃、水道光熱費等があります。毎月の試算表の固定費(減価償却費を除く)です。
その他に、不定期に支払う経費も加味しましょう。賞与とか、中間払いの法人税や消費税などです。

 毎月の借入金の返済額を把握しましょう。
借入金があれば、毎月の返済が必要です。不測の事態の時には一定期間返済を猶予してもらう交渉もできないわけではないですが、それは極めて例外的なことであり、約定どおりに支払うのが基本です。

 買掛代金の支払いはできますか
買掛代金や支払手形はいくらありますか?この支払は一般的には売掛金の入金で賄いながら資金を回しています。
不測の事態が起こる前に存在する売掛代金は原則的にはきちっと入ってくるはずですが、それは大丈夫でしょうか?今回のコロナ問題のようなことが起こると売掛代金を約束通り支払ってもらえないということもあり得ます。
もし入ってこなかったらいくら足りないかも計算しておく必要があります。
私は、売掛金回収は50%を見込み、買掛金、支払手形100%支払うと見た方がいいと思います。

④ 以上で必要な資金が把握できます。
(① 減価償却費を除く固定費 + ②返済額)×月数 + ③掛代金支払に要する額 これが当面必要なお金です。
月数は、売上がないと仮定される月数です。最低でも2か月分は必要でしょう。1か月では資金0になり、次の月の活動ができないからです。今回のコロナのことを考えますと、3か月から4か月分は必要です。

 売上の変動が大きいほど、より多めに手元資金を持っておく必要があります。
売上は毎月保証されているわけではありません。景気、季節変動、得意先の倒産等により、いつ減少するか分かりません。この売上の減少に備えるためには、変動が大きいほど手元資金を多く保有しておくことが必要です。

 資金調達ができる体制をとっておくこと
理想的な資金の保有ができるとは限りません。開業間もない場合とか、現状、資金繰りに苦慮しているとかの場合、そうもいかないでしょう。この場合は金融機関さんに支援をお願いするしかありません。困ったときにだけ頼むのではなく、常日頃から金融機関さんとのコミュニケーションをしっかりしておくことです。正しい会計データの早期の情報開示、事業計画の提示等々、経営に取り組む姿勢と実績をしっかりと見せておくことが必要です。

2020年5月 新型コロナウイルス対策として、講じられている措置について

様々な緊急対策がとられ、しかもその情報は刻々と変化しています。ぜひ政府関係のHPをご覧いただき、新しい情報をつかんでいただきたいと思います。当事務所としましても、最新の情報を入手し、皆様の事業等に関連する事項についてはできるだけ早く対応し支援していきたいと考え行動しております。
当面の重要な項目のアウトラインをお知らせします。詳細は担当者で、できる限りの支援をさせていただきます。

1.税制上の措置 ―この件につきましては、皆様の事情に合わせ個別に対応させていただきます。―
法人の申告に関しまして、期限の延長ができるように手当されています。納付の猶予制度についても一定の条件のもと手当てされています。4月30日には、「新型コロナウイルスへの当面の税務上の取扱い」が大幅に追加されました。追加項目は、法人税や消費税の中間申告期限についても、期限後に申告書を提出する際に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と付記することで延長申請できることが示されました。地方税も同様です。一般的には前年の税額をもとに計算する予定納税(予定申告)をしますが、この場合は納税の延長申請が必要です。
資本金10億円以上の大企業を除く、中堅・中小企業、小規模事業者、個人事業者を対象とします。

2.持続化給付金給付
法人は200万円まで、個人事業者は100万円までを給付します。※昨年1年間の売上から減少分が上限です。
代理申請不可ですので、申請は皆さん方でする必要があります。事務所では必要書類等の支援をいたします。

■要件:2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月が存在すること。 どこかひと月を任意で選択していいですので、多くが対象になると思われます。

■給付額の算定方法
前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)
多くが限度額の法人200万円、個人事業100万円に該当すると思われます。
注:一度給付を受けた方は、再度給付申請することができませんので、選定月を吟味する必要があります。

■添付する書類
 ①対象月の月間事業収入がわかるもの(2020年○月と明確に記載されていること)
  売上台帳、帳面その他の対象月の属する事業年度の確定申告の基礎となる書類を原則とする
 ②通帳の写し
  ※通帳のオモテ面および、通帳を開いた1、2ページ目の両方を添付します。
  1)法人:法人名義の口座通帳の写し(法人の代表者名義も可)
  2)個人:申請者名義の口座通帳の写し
 ③本人確認書類(免許証等)   個人事業者のみ必要です
  現在受付は電子申請が原則ですので、添付資料の電子データ化が必要です。
 ④その他、確定申告書等の添付が必要ですので、当事務所にて支援をいたします。担当者に相談ください。

3.雇用調整助成金
コロナで休業手当を支給した時の助成金を支払うという制度です。手続きの複雑さが問題になっていますが、いくらか簡素化されました。受け付けはかなり混雑しているようです。社会保険労務士さんの代理申請もできますが、多忙で受付ができない状況のようですので、基本、手引きを参照して本人申請をする必要があります。

4月27日拡充が発表されました。
拡充1.休業手当の支払率60%超の部分の助成率を特例的に10/10(改正前9/10)とする
中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、賃金の60%を超えて休業手当を支給する場合、60%を超える部分に係る助成率を特例的に10/10とする。上限一人8,330円。
拡充2.1のうち一定の要件を満たす場合は、休業手当全体の助成率を特例的に10/10(改正前9/10)とする
休業等要請を受けた中小企業が解雇等を行わず雇用を維持している場合であって、下記の要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を特例的に10/10とする。
 ○新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づき都道府県対策本部長が行う要請により、休業又は営業時間の短縮を求められた対象施設を運営する事業主であって、これに協力して休業等を行っていること
 ○以下のいずれかに該当する手当を支払っていること
  ①労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っていること
  ②上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っていること(支払率60%以上である場合に限る)
適用日 令和2年4月8日以降の休業等に遡及(4月8日以降の期間を含む支給単位期間に適用)

■大同生命による相談窓口:不明点がありましたら、TKC会員事務所である当事務所の関与先法人および個人事業主は、下記のサービスが受けられますので利用下さい。
社会保険労務士による雇用調整助成金に関する相談受付  電話番号:03-6231-6711
 受付時間:平日9時30分~17時30分(12時~13時を除く)相 談 料:無料 ※通話料はお客さま負担

4.金融支援
日本政策金融公庫、皆様のお取引民間金融機関と連携して個別に対応を進めています。個々に、将来のこと、資金繰りのことを吟味して皆様の企業にマッチした支援融資をアドバイスしています。ご遠慮なくご相談ください。

■まずは生き残りのための資金の確保が優先です。利息や保証料の3年負担なしではありますが、返済を要する資金ですので、今後の事業計画はよりシビアーに考えていく必要があります。
■4月27日に金融庁・経済産業省から、補正予算の前提として、金融機関に対して「実質無利子・無担保の融資制度に基づく資金供給を迅速かつ適切に行い、事業者への資金繰り支援を徹底すること」等の要請がされています。

2020年4月 再度、事業承継税制について

東京商工会議所の調査で、平成30年度改正で拡充された特例事業承継税制について改正も内容も知らなかったという企業が実に35.2%と全体の3分の1超にのぼり、周知されていない事実がわかりました。

そこで、皆様に再度この内容のポイントをお話しします。(詳細は2019.9.10.11月号に記載)
なお、顧問先の皆様には見当が必要と思われる先については担当の方で検討させていただいています。
多くの企業が、将来リスクが伴うことから適用することを見送っておられるのが現実です。

〇平成30年度に制定された新しい制度である「特例事業承継税制」の基本的な要件
特例承継計画をR5年3月31日までに都道府県知事に提出しなければなりません。
R9年12月31日までに後継者に株式を贈与または相続で渡さなければなりません。
(R9年12月31日までに相続がなかったら、必ず贈与をしなければこの制度は使えません。)
株式は税務署に担保に入れなければなりません。
贈与や相続の後、一定の要件を守らなければ、猶予された税金を利子をつけて払わなければなりません。


〇気になる要件のみを、かいつまんで書きます。詳しくは2019年,9.10.11月号をご覧ください。

1. 贈与税は本当に払わなくていいのか? 
免除でなくあくまで猶予ですので後継者に先送りする制度です。生前贈与でこの制度を使った場合には、その時の贈与税は猶予されて0円ですが、その人が亡くなった時に、この制度を使って生前贈与した株式を加えて相続税を計算します。相続税を払えば猶予された贈与税は免除です。その時相続税の支払いを猶予するためには、その時の制度を使って先送りします。つまり、後世代に連鎖していく制度です。

2. 税制を受けるための要件 贈与と相続ではすこし違います
贈与の場合
株を譲る人(先代経営者)と譲り受ける人(後継者)の要件
先代経営者が満たすべき要件と、後を継ぐ後継者が満たすべき要件があります。
先代経営者の主な要件は、 
•会社の代表者であったこと (贈与したら、代表権は外れないといけません。覚悟が必要です。)
受贈者(後継者)の主な要件は、 
•会社の代表者であること 
後継者が20歳以上で取締役就任後3年以上であること (早めに取締役にしておかなければなりません) 
・先代経営者から後継者への贈与は、基本的には先代経営者が持つ株の全株の贈与でなければなりません。
スタートしてから5年間の要件
スタートしてから5年間、守らなければいけないルールがあります。途中でこのルールを破ってしまった場合には、猶予されていた税金は利息をつけて納めなければいけません。 そのルールのうち、主なものは下記の通りです。
1.後継者が会社の代表者であり続けること
2.後継者が会社の株式を保有し続けること
(株式を誰かに売却した場合は、猶予されていた税金を払う必要あり)
3.後継者は一族で筆頭株主であること
4.会社の雇用の8割を維持すること(経営状況の悪化や正当な理由があればよい)
5.毎年の報告・届け出を怠らないこと(5年間。5年後は3年毎に。提出しないと免除取り消し)
相続の場合
贈与と同じような要件があります。
⓵株を持っていた先代経営者と相続人である後継者の要件
先代経営者の主な要件は、 
過去、会社の代表者であったこと (相続時に代表取締役でなくてもよいということです)
後継者の主な要件は、 
•会社の役員であること(役員になっていないと適用できません)。先代の死亡後5月以内に代表取締役になること 
②スタートしてから5年間の要件
贈与の場合と同じです。
特に条件の中で、ずっと報告を続けなければならないことが気になります。相続ですから何年後になるかもわかりませんし、その報告を失念できませんし、税理士事務所に依頼するとすれば費用もばかにはなりません。

3. どうすれば最終的に免除になるのか
どうすれば最終的に免除になるのかですが、後継者(2代目)が、この同じ制度を使って、次の後継者に事業を承継することができれば、税金が免除になります。先代がそうであったように、次の代に再度伸ばすわけです。1代目から2代目に承継される時の相続税は、2代目が3代目経営者に事業承継ができた場合に免除になるという繰り返しの仕組みです。つまり、先送りであり後々まで管理が必要となる制度です。しかもこの制度が続く保証はありません。
次世代に延々先送りするこの制度は、急場しのぎにはいいかもしれませんが、問題が多いようです。おそらく制度の改正があるだろうと思われますが、使うことは慎重にすべきだと思います。

2020年3月 令和2年税制改正について  ポイントの概略解説 

令和2年度の税制改正は大きな事項はありませんでした。

特に中小企業に関係ある事項のみを概略お知らせします。

1.寡婦(寡夫)控除の要件の見直し
現行の寡婦(寡夫)控除については、以前より「婚姻を前提とした制度であり、未婚のひとり親には適用されない」「事実婚の確認が求められていない」「男女で要件や控除額が異なる」「離別と死別で要件が異なる」等の問題点が指摘されていました。 寡婦(寡父)控除について、令和2年分から以下のような改正が行われます。基本的には「寡婦」も「寡夫」も公平に、死別も離別も未婚も同様に扱うということです。

生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下)を持つ未婚のひとり親(合計所得金額が500万円以下)に対して、寡婦(夫)控除が適用されることになりました。
寡婦(夫)控除の適用要件について、寡婦にも従前の寡夫と同じく所得制限(合計所得金額500万円以下)が設けられます。
生計を一にする子を持つ寡夫の控除額(改正前:所得税27万円、住民税26万円)が、生計を一にする子を持つ寡婦の控除額と同額(所得税35万円、住民税30万円)になります。

2.接待交際費課税の特例の2年延長(資本金100億円以上の大企業は除く)
交際費のうち接待飲食費の50%に相当する金額を損金算入できる「接待交際費に係る損金算入の特例」があります。これは全企業に適用されていました。ところが、この制度によって「大企業の交際費が大きく変化している状況とは言えず、現預金の大幅な減少に寄与していない」ことから、資本金等の額が100億円超の大企業だけは、この特例の対象法人から除外した上で2年延長(令和4年3月末まで)されます。
資本金1億円以下の中小法人に認められている定額控除限度額800万円の損金算入制度も2年延されます。

3.中小企業者の少額減価償却資産の即時償却制度の2年延長
30万円未満の減価償却資産を取得した際、合計300万円までは全額損金算入(即時償却)できる制度が2年延長(令和4年3月末まで)延長されます。

4.消費税の申告期限の延長(1か月)
働き方改革が進められる中、「法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例」の適用を受ける法人が、消費税の確定申告書の提出期限を延長する旨の届出書を提出した場合には、「提出をした日の属する事業年度以後の各事業年度の末日の属する課税期間」に係る消費税の確定申告書の提出期限を1月延長することができるようになります。
上記の改正は、令和3年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間(1年決算であれば令和2年4月1日開始の企業)から適用されます。
なお、提出期限を延長した場合、延長した期間に対応する利子税を併せて納付する必要があります。従って法人税同様、見込納付が必要です。

2020年2月 令和1年分の確定申告について

個人所得税・贈与税の確定申告書の時期になりました。よくある注意事項をお知らせします。
確定申告期間は2020年2月17日(月)から3月16日(月)です。郵送やオンライン上で電子申告を行うという方法もあります。

〇提出が必要な方のうち、主なものをご紹介します。
1.個人商売をされているつまり事業所得のある方・貸家などの不動産所得のある方
2.土地建物を売った方
3.給与の年間収入金額が2,000万円を超える方
4.給与を1か所から受けていて公的年金に係る収入金額が90万円(65歳以上の方(昭和30年1月1日以前に生まれた方)は140万円)を超える場合
5.給与を2か所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える方 
6.同族会社の役員やその親族などで、その同族会社から給与のほかに、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている方
7.公的年金等に係る雑所得のみで、公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引くと△になる方は、確定申告書の提出が必要です。ただし、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の各種の所得金額が20万円以下である場合には、所得税等の確定申告は必要ありません (年金所得者に係る確定申告不要制度)。
8.住宅ローン控除を受けようとする方
  いろいろな資料が必要ですので、早めに税務署や税理士事務所にお尋ねください。
9.医療費控除を受ける方 
  年間の医療費が、一般的には10万円を超えているときにできます。
10.特定口座(源泉徴収口座)以外で株式等を譲渡(売却)し、所得(利益)を得た方
11.特定口座(源泉徴収口座)の譲渡損失を、他の上場株式等の譲渡益から差し引く方
12.災害で資産(住宅・家財・車両等)に損害を受けたときの雑損控除を受ける方
  り災証明書等が必要です。

〇確定申告の提出が遅れたときはどうなる 
確定申告期限後に申告を行った場合、期限後申告となり、無申告加算税もしくは重加算税が賦課される可能性があります。税務署からの通告前に、自主的に期限後申告をした場合は、ペナルテイも低いので、もし確定申告の提出を忘れていた場合は、早めに提出するようにしましょう。 

〇その他の留意事項
保険満期金の申告は漏れていませんか? 
基本的に保険金の契約者と受取人が同一の場合は一時所得となります。一時所得の特別控除は50万円。受け取った保険満期金から保険料の総支払額を引いた金額が50万円を超えるようであれば確定申告の対象となるので注意しましょう。
なお、契約者と受取人が異なる場合は、所得税ではなく贈与税となります。

〇消費税の申告が必要な方

平成29年分の課税売上高が1,000万円を超えている事業者の方

〇贈与税の申告が必要な方
令和元年(平成31年)中に110万円を超える財産の贈与を受けた方
財産の贈与を受けた方で、配偶者控除の特例を適用する方・相続時精算課税を適用する方
財産の贈与を受けた方で、住宅取得等資金の非課税を適用する方

2019年12月 外注費なのか給与なのか判断の注意点

外注費なのか給与なのか
働き方の多様化で所得区分が判然としないことも 増えてきました。
特に税務上、注意しなければならないのは「外注費なのか給与なのか?」という問題です。
税務調査の消費税事案で「課税仕入に該当しない人件費を課税仕入となる外注費に科目仮装していた」ということが取り上げられ、よく問題になっています。

なぜ、給与か外注費の区分が重要なのか
いずれも経費(損金)であることには違いありませんので、基本的には利益が変わることはありません。ところが、外注費か給与かで問題になるのは、消費税と源泉所得税に関する取扱いが違うからです。
外注費の場合には「課税仕入れ・源泉所得税の徴収は不要」となり,
給与の場合には「不課税仕入れ・源泉所得税の徴収が必要」となります。

支払側の会社としては、外注費処理の方が源泉税もしなくてよいし、税務処理的には有利であるイメージがあるのかもしれません。また、社会保険の加入もないので、保険料の会社負担などを考慮して、ということもあるでしょう。なかには従業員さんからの要請といったこともあるようです。
しかし、実態による判断をし、それに即した処理が必要であることは言うまでもありません。契約書の確認は当然として、業務実態の確認も必須です。

■区分の判断の基準は?
近年の就労形態の多様化に伴い、業務委託契約や請負契約に基づき就業する“個人請負型就労者”が増加しており、自営であるものの雇用労働に近い実態を有する者も多いようです。このような就業形態が変化する中,給与所得と事業所得(外注費)の区分が判然としないケースがあるのも事実です。例えば、もともと従業員として会社に勤務し給与の支給を受けていた者に対して、個人事業主として独立したことにより外注費を支払うことになった,という契約を目にすることがあります。しかし,独立後も会社の指揮監督下にあり,作業内容をはじめ作業時間や作業場所も変わらない,ということであれば,その者は実質的に従前と変わらず自社の従業員と同様であって,その者の受ける報酬は給与と同じであるということになります。

この場合において,外注費等と判断される主なポイントは,
その個人が業務につき責任を負っていること,
その個人は会社の指揮監督下にないこと,
その個人は業務時間や作業場所等につき拘束されないこと,などが挙げられます。

疑念を持たれないようにするために、上記のことを加味した契約書をきちんと交わすことが大切です。

参考資料:税務通信

2019年11月 年末調整について、来年の為の注意点

税制改正により2020年(令和2年)から年末調整が変わります
2019年の年末調整では、これまでと大きな変更はありませんが、2020年度から制度の変更があるため、今から注意しておかなければならない点があります。
既にお知らせはしていますが、改めてお知らせいたします。(参照:2018年3月320号)

2020年(令和2年)から適用になる税制改正により、所得税に関して大きな変更があります。
2020年の年末に行う年末調整からは、税額等の計算や必要書類の書式が変わることになります。

2019年までは基礎控除は一律38万円でしたが、2020年以降は基礎控除額が所得に応じて変わります。
合計所得金額が2,400万円以下の人は48万円に引き上げになります。一方、給与所得控除については所得区分ごとに一律10万円引き下げられます。高額給与収入850万円を超えると給与所得控除が220万円から195万円に引き下げられます。

このほかに、所得税額調整控除の創設、各種所得控除を受けるための配偶者や扶養親族等の合計所得金額の見直しなどの変更もあります。複雑な体系になりますので、改めて経理担当の方は情報を得ておく必要があります。

これらの税制改正により、ほとんどの従業員は税額に大きな影響を受けません。
しかし、年末調整で使う書類等が変更になるため、会社が行う手続きは複雑になることが予想されます。

2019年の年末調整時には新様式の扶養控除等申告書を提出してもらう
年末調整の方法が変わるのは2020年分からですが、2019年分の年末調整時に「2020年分の給与所得者の扶養控除等申告書」を従業員に記入させ、提出を求める会社は多いと思います。2020年分の扶養控除等申告書は2019年分のものと様式が変わっているため、従業員が混乱するおそれがあります。今一度確認してください。

変更の主な部分

「源泉控除対象配偶者」や「控除扶養親族」の要件が変わるため、これまで扶養親族等だった人が該当しなくなるといったケースも出てきます。

「2020年分の扶養控除等申告書」では、「単身児童扶養者」という欄が追加されています。ここは児童扶養手当を受給しているシングルマザーやシングルファーザー(未婚の場合含む)が記入する欄です。記入を忘れると住民税の非課税措置が受けられませんので、特に注意してください。

2019年分の年末調整時には、扶養控除等申告書の記入の仕方で従業員が混乱するおそれがあります。従業員へ事前に注意喚起・レクチャーするようにしましょう。
このように2020年からは年末調整が大きく変わる予定です。あらかじめ国税庁のWebサイトや、税務署から送られている「年末調整の仕方」などで確認しておきましょう。

2019年10月 企業が寄付をした場合の法人税の取り扱いについて 

企業が寄附をした場合の法人税の取扱いをとりあげます。 

概略
 企業が寄附をした場合,国や地方公共団体への寄附金や指定寄附金はその寄附をした全額が損金に算入できます。それ以外の寄附金は一般寄付金として一定の限度額までが損金に算入できます。
また,寄附した企業と完全支配関係のある法人(100%子会社)に対する寄附金は損金に算入できません。 
寄付金と思っても、その内容では交際費や広告宣伝費と判断される場合もあります。
指定寄附金とは,公益社団法人,公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金で,財務大臣が指定したものをいいます。
 特定公益増進法人に対する寄附金(公共法人等のうち,教育又は科学の振興,文化の向上,社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものと認められた寄附金)もありますが、これは別の計算で損金にできる金額が定められています。

■一般寄附金の損金算入限度額 
 一般寄附金の損金算入限度額や特別損金算入限度額は,その企業の資本金等の額と所得の金額に応じて,次の算式で計算します。所得が多ければ損金にできる金額も多くなるということです。計算してみるとわかりますが意外と少ないです。

(所得金額×2.5/100+期末の資本金等の額×2×2.5/1,000)×1/4

次に、よくある具体的な事例を見ていきましょう。

■スポーツ大会等の協賛金

金銭協賛者は,①大会パンフレットへの広告掲載,②大会会場内に設置するパネルへ企業名やロゴマークの表示,をするというのが普通でしょう。
これらの協賛金については,広告宣伝を目的として支出されたものと考えられますので,広告宣伝費として,損金に算入することができます。 
企業が地元で開催されるイベントに対して主催者等から金銭の支出を求められる場合があります。その金銭の支出が主催者に対する単なる贈与(いわゆる寄付)である場合には,税務上,一般の寄附金として取り扱われます。

■災害による被災者への自社製品等の提供 
佐賀県も水害で大きな被害が出ました。このようなときに,急遽,自社製品である食料品と他から購入した日用品を救援物資として避難所へ提供することもあるでしょう。この提供のために要した費用は税務上どのように取り扱われるかです。このような場合、特定のごく限られた者のみに対する贈答を目的としたものを除いて,その提供先が不特定又は多数の被災者である救援物資等の提供は,寄附金に該当しないものとして全額損金として取り扱われます。市町村等に災害支援として金銭を寄付した場合は、当然全額が損金です。

■代表者の出身学校から,寄附金募集で支出した場合
学校創立50周年記念式典の開催と記念アルバムの作成費用に充てるためとかで,卒業生に対して寄附金の募集を呼びかけが一般的にあります。地元の高校でもあり,代表者の母校でもあることから寄附金募集に応じて寄附を行うこともが多いでしょう。 
これはあくまで高校の卒業生に対して募集が行われたものであり,代表者個人が負担すべきものを企業が肩代わりしたものといえますので,代表者に対する給与として取り扱われることになるでしょう。 
ただ、それとは別に広告宣伝用の一コマの費用負担の場合もありますが、これは広告宣伝費で良いと思います。

■議員の政治資金パーティのパーティ券の購入費用
購入目的は議員が所属する政党支部への政治献金を目的としたものでしょう。 
企業が政治資金パーティのパーティ券を購入した場合,その購入に要した費用は,その実情により交際費等又は寄附金として取り扱われるでしょう。
例えば,政治資金パーティに出席する目的が,その議員やそのパーティの出席者との親睦を図ることで、会社経営に資するということであれば,交際費等に該当することになるでしょう。一方,そのパーティ券の購入目的がその議員(の政党支部)に対する政治献金をすることである場合には,寄附金として取り扱われます。

2019年9月 いよいよ来月から消費税の改定

 ■いよいよ10月1日から消費税が10%になり、かつ軽減税率8%が実施
 
増税の施行日をまたぐ場合の税率に迷うことがあると思います。どの税率を使うのかを検討します。経過措置もありますのでご注意ください。改正消費税については先月号同封のパンフレットをご覧ください。

1. 原則的な考え方
 消費税を計上すべきタイミングは、資産の譲渡や貸付け、サービスの提供が行われた時となります。したがって2019年9月30日以前の取引であれば税率8%、10月1日以降の取引であれば税率10%が適用されます。
当然ながら食品や新聞など、軽減税率対象商品を購入した場合は日付に関係なく消費税率は8%となります。
 具体例で考えてみましょう。商品販売やサービス提供(役務の提供)の契約を2019年9月30日以前に締結し、実際の販売やサービスを2019年10月1日以後に行った場合、商品の販売や貸付けは「商品の引渡し完了日(出荷日や納品日)」、サービスの提供は「サービスの提供日」が消費税を計上する基準となります。したがって、10%の税率が課されることとなります。これが原則です。
ただし、判断基準が難しい取引も少なくありません。そのような取引については、経過措置が定められています。

2.消費税率引き上げに伴う経過措置
 経過措置が適用される取引は、2019年10月1日以後に行われる取引であっても8%の税率が適用されます。
経過措置が規定されている取引は、「旅客運賃等」「電気料金等」「請負工事(請負契約)等」「通信販売」などです。このような取引は経過措置に該当する条件を押さえることが重要です。経過措置が適用される取引は、8%と10%どちらかを選択ではなく、必ず8%の税率を適用しなければなりません。以下、個別にみていきましょう。

〇ホテル・旅館
9月30日にチェックインし、10月1日にチェックアウトした場合について考えてみましょう。
宿泊サービス(役務の提供)の消費税計上の基本的な考え方は、「サービスの全部を完了した日」、つまり、チェックアウトの日になります。したがって消費税率が引き上げされる10月1日以後のチェックアウトの場合、原則に沿えば、新税率である10%が適用されることになります。
 ホテルや旅館の宿泊にも経過措置が適用されるのは、「2019年3月31日までに宿泊予約を完了しているケース」です。このケースでは実際の宿泊日が10月1日以後でも旧税率である8%が適用されることとなります。

〇旅行・観光
 旅行や観光に関連したサービス、例えば飛行機や電車のチケット、遊園地やスポーツのチケットなどは、事前に料金を支払うケースが多いでしょう。このケースでは、経過措置が適用され、2019年9月30日までに料金の支払いを済ませていれば、搭乗日や入園日が10月1日以後であっても、旧税率である8%が適用されます。
例えば電車の定期券やバスの回数券などは2019年9月30日までに購入した方が得ということになります。

〇電気・ガス・水道
電気・ガス・水道などの公共料金は、検針日がきっちり1日から月末までとはなっていないことが多いです。
この場合、経過措置により、2019年10月1日前から継続して供給されており、10月1日以後の「検針で料金が確定する」ものについては、旧税率である8%が適用されます。
例えば次のようなケースが経過措置の対象となります。
電気料金で検針日が毎月20日の場合の、9月21日~10月20日の料金
水道料金で検針日が2ヶ月ごとに各月20日の場合の、9月21日~11月20日の料金
上の2つのケースは施行日をまたがって料金が請求されますが、上記の期間はすべて8%が適用されます。

 インターネット利用料金で定量性でなく定額制の場合は、「検針等によって料金が確定する」という要件に該当しないので、経過措置の対象とはなりません。

〇インターネット通販
インターネット通販にも消費税の経過措置が規定されています。原則でいえば、消費税を計上するタイミングは「資産の譲渡、貸付けまたはサービスの提供をした日」です。
 したがって増税前の2019年9月30日に商品の注文を確定しても、発送が翌日にズレ込めば消費税10%が適用されてしまいます。クレジットカードで通販サイトから商品を購入するケースでも、あくまで消費税の計上日は原則、商品の出荷日や納品日です。
 このあたりはトラブルの種になりそうなので、通販サイト側は基準を明確に明示しておくことが必要でしょう。

インターネット通販の経過措置は、下記の条件を満たす場合に適用されます。
2019年3月31日以前に商品価格が提示されている、もしくは提示する準備を完了していること
2019年9月30日までに申し込みをしていること
2019年3月31日以前に提示された条件そのままで販売されること
一応こうなってはいますが、このような基準に当てはまることは意外と難しいと思われます。

〇建築業
 建築等の請負契約についても経過措置があります。
経過措置が適用されるのは、「2019年3月31日までに契約した」場合、10月1日以後に完成引き渡しでも旧税率である8%が適用されることとなります。今からではもう遅いですが・・・。

■「かけこみ購入」は得なのか?
 消費税の増税前に、物品の購入をしておこうという方も多いと思います。これについては、事業者の方は必ずしもそうではありませんので、勘違いしないようにしましょう。

〇課税事業者で売上割合が95%以上の方 
 消費税を納税している方で、簡易課税以外の場合は、ほとんどがこの事業者に該当します。
納める消費税は、  (売上でもらった消費税) - (仕入れや経費の支払った消費税) で計算します。
つまり消費税の計算で、仕入や備品購入時の消費税を控除できるわけです。そのため、増税後に購入しても、その分納める消費税額が減るため、かけこみ購入をする意味はありません。必要なしです。

〇課税売上割合が95%未満の方 (特殊な事業のほんの一部の方です)
 課税売上割合とは、課税売上と非課税売上の合計に占める課税売上の割合です。例えば、消費税が非課税である社会保険料診療を営む医療機関や、非課税である土地の売買が多い不動産業者などが該当します。これらの方は、購入するものにもよりますが、払った消費税が一部控除できないので、増税前の購入が得の場合もあります。

〇簡易課税制度を選択されている方
 簡易課税とは消費税の計算のとき、売上を基礎に計算する方式です。基準期間(3年前)の売り上げが5000万円以下の時に選択適用できます。売上しか考慮しないため、仕入や備品の購入時にいくら消費税を払っていても控除できませんので、一般消費者の方と同じで、安く購入したほうが得です。

〇消費税の免税事業者の方
 一般消費者の方と同じで、消費税を納めないのですから増税前に安く購入したほうが得です。

〇一般の消費者の方
 消費税を納めないのですからかけこみで安く購入したほうが得です。ただし、住宅の購入では、増税後では直系尊属からの住宅資金贈与の非課税枠が広がったり、住宅ローン控除が3年延びたり、補助金など優遇がありますので、10%になってからのほうが得する方が多いと思われます。

2019年8月 民法(相続法)等の改正で変わる「相続税・贈与税」への影響

 民法の改正で、関連する税法関係も変わることになります。主な事項をかいつまんでお知らせします。詳細はまた研修の機会を設けたいと思います。

1.成年年齢関係の改正 2022年4月1日から施行
 18歳(改正前20歳)をもって、成年とすることになりました。
 婚姻は男女とも父母の同意なく18歳になればできます。

税への影響  2022年4月1日から施行
 相続税の未成年者控除が18歳未満に引き下げられます。未成年者控除は未成年者が相続したとき20歳になるまで年10万円の税額控除ができるというものです。
 相続時精算課税制度の受贈者の対象も20歳以上から18歳以上に変わります。
 直系尊属からの贈与は20歳以上に軽減税率が適用されていますが、18歳以上に改正されます。

2.配偶者居住権の創設  2020年4月1日から施行
 配偶者の居住権を保護するため、自宅の権利を「所有権」と「居住権」に切り離し、夫婦のどちらかが亡くなった時に、遺産分割で所有権が別の相続人になったとしても配偶者は自宅に住み続けることが出来るようにするというものです。
 原則として亡くなるまで権利を行使出来ますが、譲渡や売買は出来ません。

税への影響     2020年4月1日から施行
 相続税の計算に当たり配偶者居住権は一定の計算で評価されます。評価額は平均余命などを基に算出され、一般に配偶者が高齢であるほど低くなります。所有者の建物の評価は居住権分を引いた金額となります。

3.遺留分侵害額の請求の金銭債権化  2019.年7月1日から施行
 遺留分制度とは、例えば、被相続人が遺言書に「私の財産を全て長男に相続させる」と書いていた場合、長男以外の他の相続人は何も相続できないことになってしまいます。そこで、民法は、長男以外の他の相続人にも法定相続分の半分については、遺言書の内容如何に関わらず、最低限相続できる財産を「遺留分」として保障しています。兄弟姉妹には遺留分はありません。ただし、これはあくまでもめた時の話であって、相続人さんが皆さん納得して分けるのはどう分けようと自由です。 
 遺留分を請求することによって、どういう問題が起こるかといえば、請求を相手方に申し立てると、全ての財産が相続人たちによる共有状態になってしまうのです。自宅の土地・建物等が共有財産状態となると、すぐには処分ができなくなるし、事業用だと特に厄介な問題を起こします。そこで、法改正がなされました。
 改正された内容は、遺留分の金銭債権化ということです。遺留分返還方法については、遺留分減殺請求という形ではなく、遺留分侵害額の請求(遺留分を侵害された額に見合うだけの金銭を請求することの出来る権利)としました。金銭で返還してもらえたら、不動産が共有になることもなく、後々まで問題が残るおそれもありません。

税への影響  2019.年7月1日から施行
 金銭で支払うことになるわけですが、金がないので代わりに不動産をあげたとしたときに、その不動産を売って、その代金でもって支払ったとみなされて、あげた者に譲渡所得税がかかることになるので注意が必要です。

2019年7月 役員と会社間の取引に関する注意事項  その2

会社(法人)と役員間の取引に関する税務上の基本的な考え方
 前号では役員と従業員の違い、なぜ区分しなければならないのかをお話ししました。今号では役員と会社間の取引で、税務上の注意すべき点をお話しします。
 基本は、その取引でどちらが得をしたか(利益がどう移動したのか)を把握することです。 
 会社(法人)と役員間の利益移動には2つあり、基本は下記の通りです。
 ・会社 → 役員 =役員の「給与」
 ・役員 → 会社 =会社の「受贈益」
 ということです。 特に役員が得をした場合には注意すべきです。具体的な例を見ていきましょう。

1.会社と役員との金銭貸借
 会社が役員から借入をした場合、無利息や低利率だと、会社が得をすることになりますが、原則として会社に税金は生じないことになっています。ここのちょっとややこしい理屈はここでは抜きにします。
 役員が通常の利息より多い利息を受け取っている場合には、役員が得をします。得をしたのは通常の利息との差額です。この差額については、役員給与となり課税の対象となります。
 逆に会社が役員に貸し付けをした場合を考えてみましょう。無利息または通常利率より少ない利息しか受け取っていないときは、役員はその分得をします。その得をした利息の額が、役員給与となり課税の対象になります。
 なので、給与の課税が生じないようにするためには、会社にきちんと利息を払わなければなりません。
そういう会社は、決算時に役員からもらうべき利息の未収入金を計上していますのでご心配なく。

2、会社と役員との不動産賃貸借
 会社が役員所有の土地建物を借りた場合、家賃なしだと、会社が得をすることになりますが、原則として会社に税金は生じません。上の貸付金と同様にちょっとややこしい理屈は抜きにします。
 逆に会社の不動産を役員に貸し付けている場合、通常の賃貸料より少ない額しか受け取っていないときや無家賃のときは、役員が得をしているわけですから、得している額が役員給与となり課税の対象となります。社宅などがその事例です。この適正賃料は税の世界では計算方法が決められています。ここでは計算方法は省略します。

3、その他の良くある事例
 そのほかに役員が得をする事例はたくさんあります。常識的に考えて役員が得をするなということはお分かりだと思います。得をした部分は役員給与となり課税の対象となるというわけです。
 ① 役員を被保険者および保険金受取人とする生命保険料を会社が支払った場合のその支払った額
  役員に対して交際費、旅費等で支給した金額のうち、個人的なもの
 ③ 会社が役員への貸付金等の債権を放棄または免除した場合のその放棄や免除した額
  役員の所有していた資産を会社が高い金額で購入した場合のその購入価額と資産の時価との差額
 ⑤ 会社の資産を役員に低い金額で譲渡した場合のその資産の時価と譲渡価額との差額 

2019年6月 役員とその取引に関する注意事項

1.会社と役員との取引に関しては様々な税務上の制限が設けられています。
 例えば、会社が役員に支払う報酬・賞与・退職金など ( 以下、役員給与 ) は、一定の要件を満たさなければ原則として会社の損金にはならないとなっています。恣意的に給与を変動させて税金を少なくすることを避けるためです。
 このため、支払う給与の相手が従業員なのか、それとも役員なのかが問題になるわけです。

2.役員なのか従業員なのか
 
法人税法上の役員の範囲 は 会社法上の役員の範囲より広くなっています。
 税金を減らしたい会社側は、本来役員給与になるものであっても従業員給与にしたいと考えます。
 税務当局側は、本来役員給与にあたるものを従業員給与にするような抜け道がないようにしたいと考えます。そこで法人税法上は、役員の範囲を会社法で定める役員よりも広く定めることで、抜け道を塞いでいます。

3.法人税法上の役員
 このように法人税法上の役員は大きく分けて2つに分類されます。
 ① 会社法などに定めのある役員等
  法人税法特有の 「 みなし役員 」

 下記のような会社法などに定めのある役員等は、法人税法上の役員にも該当します。
 ・取締役、監査役  委員会設置会社の執行役 ( 執行役員とは異なります )
 ・会計参与  ・理事、監事   ・清算人

4.みなし役員とは
 会社法などの定めでは役員に該当しませんが、法人税法上は役員になる、「 みなし役員 」 があります。
 下記のいずれかに該当する人は、「みなし役員」として法人税法上は役員になります。
 〇会社の従業員以外の人で会社の経営に関与している人
 具体的には、取締役・理事ではないが相談役、顧問、会長、理事長、副理事長、組合長などといった、その会社内における地位や職務などからみて他の役員と同じく実質的に会社の経営に関与している人が該当します。
 〇同族会社 ( 株主等3人以下と、その株主等と特殊の関係 ( 親族など )にある個人・法人が所有する株式等が50%を超える会社など ) の従業員のうち、下記条件を全て満たす人
・会社の経営に関与している従業員
・株式所有割合が高い株主グループ ( 親族関係など特殊な関係にある個人・法人 ) を上から順番に並べて、50%になるまでの株主グループに入っている従業員
・10%を超える株主グループに入っている従業員
・自分自身 ( 配偶者と自分の持分が50%超の会社含む ) の所有割合が5%を超えている従業員

 ちょっと難しいのですが、持ち株割合と「実質、会社の経営に従事している」ところがポイントで、おのずと社長の家族はみなし役員となることが多いのです。
 このように法人税法上の役員は、形式的な会社法などの肩書によらないので注意が必要です。
 次回、会社と役員との具体的なかかわりでの税務上の注意すべき点をお話しします。

2019年5月号 従業員.役員の福利厚生を巡る税務 その3

 前2号でお話ししましたように、「福利厚生費」として計上されたものが、「広く社会一般的な福利厚生施策」として実施されているものであると認められない場合には、「従業員給与・賞与」や「役員報酬」として認定され、税務上、会社にとって、また従業員・役員にとっても税務上の影響を及ぼすことになります。
 会計帳簿上で「福利厚生費」として計上していた費用が、税務上の福利厚生費として計上できる要件を満たしていないために、税務調査等で、「役員報酬」「従業員給与」と認定された場合には、「法人税申告」「所得税の源泉徴収申告」「消費税申告」等で、「税金の追加納付」が必要となる可能性が出てしまうのです。
 従って、「福利厚生費」として計上する場合には、前2号でお話ししました「税務上で福利厚生費として計上することができる要件」をクリアできるかを事前に確認することが大切です。

1.法人税申告に関係する問題点

  1. 「従業員給与」として認定された場合
    「福利厚生費」として計上していたものが、税務調査等で「従業員給与」として認定された場合には、法人税の計算にあたり、「福利厚生費」が「従業員給与」に変わるだけですので費用の増減は生じず、利益(所得)は増減しませんので「法人税」の追加納付はありません。
  2. 「役員報酬」として認定された場合
    「福利厚生費」として計上していたものが、税務調査等で「役員報酬」として認定された場合には、当該部分は「臨時的な役員報酬の支払」となり、税務上、費用として認められないことになります。
    このため、費用の減少が生じ利益(所得)が増えますので、結果「法人税」の追加納付が必要となります。 

2.所得税の源泉徴収申告に関係する問題点

「福利厚生費」として計上していたものが、税務調査等で「従業員給与」や「役員報酬」として認定された場合には、「従業員給与」や「役員報酬」の増加となります。
この結果、増加した「従業員給与」や「役員報酬」に対する「所得税の源泉徴収税」を追加納付しなければなりません。 当然に個人の所得が増えますので、住民税も変わってくることになります。

3.消費税申告に関係する問題点

「福利厚生費」として計上していたものが、税務調査等で「従業員給与」や「役員報酬」として認定された場合、消費税計算において「課税仕入」であったものが「課税仕入とならない」可能性があります。
この結果、消費税申告にあたり「原則課税方式」を選択している場合には、課税仕入としていた「従業員給与」や「役員報酬」のうちに非・不課税仕入れとなった分だけ「消費税」を追加納付しなければならないことになります。

2019年4月号 従業員.役員の福利厚生を巡る税務 その2

「従業員・役員の福利・厚生のために会社が支出した費用」となるための、要件については、個別の項目ごとに、税務上細かく規定されていますので、それに合うかどうか検討しましょう。

1.社員旅行の費用

会社が「社員旅行に掛かった費用」の「一部を負担」している場合、会社が負担した金額を「福利厚生費」として計上するためには、

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること。海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
  • 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要です。
  • 旅行の参加者が役員だけでないこと、自己都合で旅行に行かなかった人に現金を支給しないことも必要です。

2.社員への食事提供

会社が「社員へ食事を提供するために掛かった費用」の「一部を負担」している場合、会社が負担した金額を「福利厚生費」として計上するためには、食事代の補助の要件として、

  • 役員や従業員が、食事の金額の半分以上を負担していること。(残業や宿日直のぞく)
  • 次の金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。食事の価額 ー 役員や従業員が負担している金額

また、深夜勤務者については、現金で1食当たり300円(税抜き)までは福利厚生費として計上できます。
なお、残業や宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてもよいです。

3.中退共の掛金

「独立行政法人勤労者退職金共済機構」につきましては、公的機関に近い存在であり、このような公的機関に近い機構が運営する公的制度に近い「中小企業退職金共済」の掛金は、その支払時点において、税務上要求される「福利厚生費」の要件を満たしていると判断されています。

4.社宅

  • 従業員に提供する社宅については、賃貸料相当額の50%以上の金額を使用人から受け取った場合、会社負担額は福利厚生費となります。受け取った家賃の額が、賃貸料相当額の50%未満である場合は、その受け取った家賃と賃貸料相当額との差額は給与となります。
役員の場合
  • 役員に無償で貸与する場合には、賃貸料相当額が、給与として課税されます。
  • 役員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、家賃との差額が給与として課税されます。
    賃貸料相当額については、社宅の床面積により、別途計算方法が決められています。(詳細事務所に相談ください)
    入居者が直接契約している場合の家賃負担は、社宅とは認められませんのでご注意ください。
5.親睦・行事費

忘年会、新年会、歓送迎会などのレクリエーションの費用は、福利厚生費として計上できます。要件は、

  • 全社員を対象とすること(ただし、やむを得ない事情で参加できない場合を除く)。
  • 会社の費用負担が一律であること。
  • 会社が負担する金額が、社会通念上高額にならないこと。
社員へ現金で支給すると、給与もしくは接待交際費とみなされ、課税対象となるので注意が必要です。


2019年3月号 従業員.役員の福利厚生を巡る税務 その1

人材の確保のために、福利厚生面の充実を図ることも大切になってきました。
ただしその費用には税務上の取り扱いに注意する点があります。

1.福利厚生費の意味を理解しましょう。

「福利厚生費」として計上されるものは、
•「従業員や役員」に対して、直接、金銭の支払がなくとも、
•実質的には、会社から従業員・役員に対して、「経済的利益が提供される」ものです。
 例えば社員旅行費用の会社負担などは金銭を支給はしていませんが、従業員に支払って負担してもらったと考えれば、見方によれば「従業員給与・賞与」や「役員報酬」が支払われていることと同じ意味を持つことになるのです。このことで税務上の問題が出てきます。

2.税務上における取扱の基本的な考え方

 税務上では、「従業員・役員の福利・厚生のために」会社から金銭の支出がある場合、その「金銭の支出」を「会社の費用」として計上することは認めています。 
 会社から見れば「福利厚生費」であろうが、「従業員給与」「役員報酬」であろうが、「会社の費用」となります。しかしながら経済的利益を受ける従業員・役員から見れば、税務の取り扱いは異なります。

どう異なるのかですが、
「従業員給与」や「役員報酬」と判断されれば、所得ということになり、「所得税の徴収」を要します。
•「福利厚生費」として判断されれば、所得にはなりませんので、「所得税の徴収」は必要ない事になります。
このようにその判断(判定)で、大きな違いが出てくるのです。

 このため、税務上では、「会社が従業員・役員の福利・厚生のために支出した金銭」については、一定の要件に当てはまらない限り、税金のかからない「福利厚生費」として計上することを制限しています。
逆の見方をすれば、要件をクリアーすれば福利厚生費として経費にできるということになります。

3.税務上、どういう場合に福利厚生費になるか

 制限があるといっても、税務上は「会社が従業員・役員の福利・厚生のために支出した金銭」が、「職場環境の整備・改善」等をもたらし、会社の業務にとって必要性があることを認めています。そして、一定の要件に適合する場合のみ従業員・役員が経済的利益を受けても課税はしないとしています。
どういう場合なのかと言えば、
•本来的には、「従業員・役員に対する経済的利益」の提供となるものではあるが、
•従業員・役員に対して平等に行われるものであり、「社会通念上、広く社会一般的に行われている従業員・役員の福利厚生のための費用」の程度であれば、「従業員給与」や「役員報酬」とせず、「福利厚生費」として計上することを認めています。つまり、従業員や役員には所得税はかからないということになります。

4.「社会通念上、広く社会一般的に行われている福利厚生のための費用」とは

 この基準は抽象的であり、この範囲はどの程度を言うのか、実務上判断が難しいところです。
この点については、判断が難しいからこそ、個別の項目ごとに、税務上さらに細かく要件等が設けられています。
例えば「海外旅行費用はどれくらいまで?」「食事代はいくらまで?」とかです。次号からこの辺りを学んでいきましょう。

2019年2月号 31年税制改正について  ポイントの概略解説

31年の改正は特に大きな事項はありませんでした。その中で特に皆様に関係ありそうな事項を解説します。

■住宅ローン控除の特例(期間の延長)の創設
消費税率が平成31年10月に8%から10%に上がることを受けて、
住宅ローン控除の期間が延長される特例が創設されます。
住宅ローン控除は、マイホームを新築、増改築等をした場合に、所得税額から年末のローン残高の1%(限度額あり)を居住開始年から10年間控除できる制度です。
今回の改正で、平成31年10月1日から平成32年12月31日までに購入し、住み始めたマイホームについては
控除期間が3年延長されて、13年間控除できるようになります。

■個人事業者の事業承継税制の創設
非上場会社のオーナー社長から後継者へ自社株式を承継したときに、一定の要件を満たすことで対象株式の相続税の一部(贈与税は全部)の納税を猶予できる制度がありますが、
個人事業者に対してもこの納税猶予制度が創設されることになりました。
認定相続人(承継計画に記載された事業の後継者)が、平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に相続等により特定事業用資産を取得して事業を継続する場合には、その認定相続人が納付すべき相続税額のうち特定事業用資産に対応する相続税の納税を猶予する制度です。
承継計画提出期限や担保の提供など諸要件があります。現実的にはこれを使うことはまれだと思われます。

■イノベーション促進のための研究開発税制の見直し
試験研究を行った法人に対しては、一定の税額控除(法人税から直接控除できる制度)があります。
その税額控除額の限度額が今まで法人税の25%であったのが、一定のベンチャー企業の場合に40%に引き上げられることになりました。
更に、別枠の税額控除制度(試験研究費がその事業年度の平均売上金額の10%相当額を超える場合)も拡充され、こちらは期限が2年延長されます。

■中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の延長
中小企業者等(資本金の額が1億円以下の法人)に対する法人税の軽減税率15%(年800万円以下の所得に対する税率。本則は19%)の特例が2年延長されました。(平成33年3月31日まで延長)

■中小企業投資促進税制の適用期限の延長
中小企業者が機械等を取得した場合に適用できる法人税額の控除が、2年延長されます。(平成33年3月31日まで)

■特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除の延長
特定中小企業者等(卸・小売業、サービス業、農林水産業)が経営改善に必要な設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の適用期限が2年延長されます。(平成33年3月31日まで延長)
なお、この制度の適用を受ける要件として経営改善により売上高又は営業利益の伸び率が2%以上となる見込みであることについて認定経営革新支援機関等の確認を受けることが追加されました。

中小企業の経営力強化のための設備投資にかかる特別償却や税額控除については、要件や制度が毎年のように改正されております。設備投資を予定されている場合はご相談下さい。

2018年12月号 年末調整にあたって 申告書の書き方が変わりました

年末調整の用紙が変更になりました。今までは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」の2種類だったのが、平成30年度からは1.「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」2「給与所得者の配偶者控除等申告書」3「給与所得者の保険料控除申告書」の3種類になりました。特に変更点と1,2の注意点を説明します

1.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書について

給与所得者本人が所得控除の対象になる配偶者や、扶養親族に関する所得控除を申告するためのものです。

【対象となる控除】
基礎控除、扶養控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載できる控除は、これから紹介する源泉控除対象配偶者以外にも、扶養控除や障害者控除など人に関わる複数の控除があります。
目新しいのは「源泉控除対象配偶者」ですが、これについて説明します。

源泉控除対象配偶者とは

配偶者控除、配偶者特別控除の対象者のうち、給与所得者本人の合計所得金額が900万円以下であり、配偶者の合計所得金額が85万円(給与収入で150万円)以下の場合に該当します。毎月の給与から差し引く源泉所得税を計算するときに「源泉控除対象配偶者」がいる場合、扶養親族等の数を「1人」とカウントして計算してよいことになります。

2.給与所得者の配偶者控除等申告書について

主に、配偶者控除と、配偶者特別控除について申告します。
【対象となる控除】
配偶者控除、配偶者特別控除
配偶者控除、配偶者特別控除の対象者はこの「給与所得者の配偶者控除等申告書」で申告します。

配偶者控除とは
配偶者控除は控除対象配偶者がいる時に適用することができます。
【対象となる要件】
・年間合計所得38万円以下の人(給与所得のみの場合は、年収103万円以下の人)
・給与所得者本人の合計所得が1,000万円を超えていないこと
【控除の金額】
配偶者控除は給与所得者本人の年間の合計所得によって控除金額が決定します。
・900万円以下:38万円
・900万円超950万円以下:26万円
・950万円超1,000万円以下:13万円

配偶者特別控除とは
配偶者特別控除は、配偶者控除の対象にならないケースで、以下の要件を満たす場合に適用することができます。

【対象となる要件】
・配偶者の合計所得金額が38万円超123万円以下
・給与所得者本人の合計所得金額が1,000万円以下
【控除の金額】
「控除を受ける人のその年の合計所得金額」と「配偶者の合計所得金額」に応じて控除の金額が決まります。最高38万円で所得に応じて減額されます。
●上記の申告書は必ず本人に書いてもらい、会社に保管して下さい。
 この書類が提出されていないと乙欄での源泉徴収が必要で、本人が確定申告をすることになります。税務調査では必ず見られる書類です。全員分揃っているか確認して下さい。パート、アルバイトさんからも主たる給与の人はもらって下さい。
会社の事務の方が書いたりすると間違いのもとです。特に扶養親族の年齢や所得の状況は正確でないと計算が出来ません。必ず本人に書いてもらうようにして下さい。マイナンバー記載もお忘れなく。

2018年11月号 (特例)事業承継について  その3 問題点の多い新事業承継税制、じっくり考えて取り組みましょう

前号に続けて事業承継その3(最終)です。
新しい事業承継税制は後継者への一括贈与を促す制度で、これを使えば税が免除されるという触れ込みですが、そこに問題はないのかについて、一般的な事業承継の例を想定してお話しします。

〇この制度の注意すべき点 前号のつづき

「新制度では贈与税や相続税は本当に払わなくていいのか?」というお話をしました。結論はこの制度は贈与税や相続税の納税の猶予の制度であり、免税を前提とした制度ではないということです。
前回は贈与でしたので、引き続き今回は相続の場合の話をいたします。その前に新制度を復習しておきましょう。

新しい制度である「特例事業承継税制」の基本的な要件は
特例承継計画を35年3月31日までに都道府県知事に提出しなければなりません。
39年12月31日までに後継者に株式を贈与または相続で渡さなければなりません。
(39年12月31日までに相続がなかったら、必ず贈与をしなければこの制度は使えません。)
株式は当局に担保に入れなければなりません。
贈与や相続の後、一定の要件を守らなければ、猶予された税金を利子をつけて払わなければなりません。

1.事業承継税制を受けるための2つの要件 相続の場合、贈与と同様に

主に以下の要件があります。①株を譲る人(先代経営者)と譲り受ける人(後継者)の要件と
②スタートしてから5年間守らなければならない要件です。

①株を持っていた先代経営者と相続人である後継者の要件

相続する場合、先代経営者の主な要件は、

  • 過去、会社の代表者であったこと (相続時に代表取締役でなくてもよいということです)
  • 相続直前で、一族で50%超保有し、一族の中で筆頭株主 であること

後継者の主な要件は、 

  • 会社の役員であること。先代の死亡後5月以内に代表取締役になること 
  • 相続により、一族で50%超保有し、一族の中で筆頭株主となること

②スタートしてから5年間の要件 相続も贈与も同じです。

この制度は、スタートしてから5年間、守らなければいけないルールがあります。途中でこのルールを破ってしまった場合には、猶予されていた税金は利息をつけて納めなければいけません。
そのルールのうち、主なものは下記の通りです。

1.後継者が会社の代表者であり続けること
2.後継者が会社の株式を保有し続けること
3.
後継者は一族で筆頭株主であること
4.
会社の雇用の8割を維持すること
5.毎年の報告・届け出を怠らないこと

これらの要件は前号で説明した贈与の時と同様です。雇用の8割を維持する要件は「経営状況の悪化や正当な理由があればよい」と緩和されました。5年経ったら、社長はやめてOKですし、雇用の8割も意識しなくてOKです。
しかし守り続けなければいけない条件は株式を保有し続けなければならないということです。株式を誰かに売却した場合は、今まで猶予されていた税金を払わなければいけません。会社を解散しキャッシュ化した場合も同様です。

2.どうすれば最終的に免除になるのか

何度も言いますが、この制度は、税金を払わなくてよいというものではなく、一定の要件を満たせば後に伸ばします(猶予)という制度です。要件を満たさなくなれば猶予は打ち切られます。それでは、どうすれば最終的に免除になるのかです。
 株式の相続を受けた後継者(2代目)がこの制度を使って、相続税の猶予を受けるわけですが、次の後継者に事業(株式)を承継することができれば、2代目の猶予された相続税は免除になります。しかし3代目が受けた株式の相続税は払うことになりますので、そこでまた事業承継税制を使うことになります。が、この特例制度が使えるのか?特例制度は既に期限切れだからです。旧制度での適用をすれば全額ではないですが猶予となります。
 次世代に延々先送りするこの制度は、知れば知るほど問題が多いようです。おそらく制度の改正があるだろうと思われます。政府としても肝いりの制度ではあるのですが、使うことは慎重にすべきだと思います。

2018年10月号 事業承継について  その2 商業ベースに踊らされることなく、じっくり考えて取り組んでいきましょう

前号に続けて事業承継その2です。
事業承継の大きな課題は2点です。1点は後継者を誰にするかということ、2点は株式をどう引き継がせるかです。
後者は相続税や贈与税をどう少なくするかにつながります。新しい事業承継税制は後継者への一括贈与を促す制度で、これを使えば税が安くできるとう触れ込みですが、果たして本当にそうかということです。
実は、株式対策は少しの贈与税を支払ってでも計画的にしていくことが一番なのです。しかし、何が何でも税を支払いたくないといった欲のため、結局は、危なげな手法を使わざるを得なくなるのです。多くの中小企業はコツコツ贈与対策が得策だということを頭に入れておいたほうがよいでしょう。

〇この制度の注意すべき点 前号のつづき

「新制度では贈与税は本当に払わなくていいのか?」というお話をしました。引き続き今回はこの制度を使うための要件についてお話します。

1.事業承継税制を受けるための2つの要件 贈与と相続では違いますのでまずは贈与の話から

 ①株を譲る人(先代経営者)と譲り受ける人(後継者)の要件 
 ②スタートしてから5年間の要件
これらの条件で注意すべき点を見ていきましょう。 

①株を譲る人(先代経営者)と譲り受ける人(後継者)の要件の要件

まず、この制度は使うためには、先代経営者が満たすべき要件と、後を継ぐ後継者が満たすべき要件があります。
贈与する場合、先代経営者の主な要件は、 

  • 会社の代表者であったこと 
  • 贈与直前で、一族で50%超で、一族の中で筆頭株主 であること
受贈者(後継者)の主な要件は、 
  • 会社の代表者であること 
  • 贈与により、一族で50%超で、一族の中で筆頭株主となること 
  • 後継者が20歳以上で取締役就任後3年以上であること これは特に注意すべきです。 
先代経営者から後継者への贈与は、基本的には先代経営者が持つ株の全株の贈与でなければなりません。 
また、先代経営者は、贈与の前までに代表を退任している必要があります。 
そのため先代経営者は後継者に引き継ぐ覚悟が必要です。そうでなければ、事業承継にならないため、この制度の適用は受けられないことになります。 

②スタートしてから5年間の要件

この制度は、スタートしてから5年間、守らなければいけないルールがあります。途中でこのルールを破ってしまった場合には、猶予されていた税金は利息をつけて納めなければいけません。
 そのルールのうち、主なものは下記の通りです。
1.後継者が会社の代表者であり続けること
2.後継者が会社の株式を保有し続けること
3.後継者は一族で筆頭株主であること
4.会社の雇用の8割を維持すること
5.毎年の報告・届け出を怠らないこと
雇用の8割を維持する要件は、30年改正で「経営状況の悪化や正当な理由があればよい」と緩和されました。
贈与から5年経過すると比較的緩やかな要件のみとなります。5年経ったら、社長はやめてOKですし、雇用の8割も意識しなくてOKです。しかし1つだけ守り続けなければいけない条件があります。
それは
株式を保有し続けなければならないということです。
もし、株式を誰かに売却した場合は、今まで猶予されていた税金を払わなければいけません。また、もし会社を解散させてキャッシュ化した場合も同様です。

2.どうすれば最終的に免除になるのか

この制度は、税金を払わなくてよいというものではなく、一定の要件を満たせば後に伸ばします(猶予)という制度です。要件を満たさなくなれば猶予は打ち切られます。それでは、どうすれば最終的に免除になるのかですが、
後継者(2代目)が、この同じ制度(事業承継税制)を使って、次の後継者に事業を承継することができれば、税金が免除になります。次の代に再度伸ばすわけです。1代目から2代目に承継される時の税金は、2代目が3代目経営者に事業承継ができた場合に免除になるという仕組みです。つまり、後々まで管理が必要となる制度なのです。

この制度は、知れば知るほど問題が多いようです。おそらく制度の改正があるだろうと思われます。政府としても肝いりの制度ではあるのですが、使うことは慎重にすべきだと思います。

平成30年9月 事業承継について  商業ベースに踊らされることなく、じっくり考えて取り組んでいきましょう

 世の中、事業承継の話題が多くなりました。多くのコンサルタントと称する方々がビジネスチャンスとばかりにスキームの売り込みに躍起です。後々こんなはずではなかったでは済まされませんので、メリットばかりではなくデメリットや必要な要件があることを認識して、それでも適用するかどうかを考える必要があります。先に事務所研修会でもお話し、事務所だよりにも書きましたが、改めて2回に分けて留意点を紹介いたします。

〇事業承継税制の背景

 会社の株式という財産は相続財産になります。株式の価値は、会社の業績と連動してどんどん大きくなっていきます。それはそれでよいことなのですが、大きな価値をもった株式を大量に持ったまま、その会社のオーナーが亡くなった場合、相続税に反映されることになります。しかも、会社の株式は換金困難が故に問題が残ります。
 もし相続人の一人が換金困難な株式だけを相続したとしても、その相続人は、お金で相続税を払わなければなりません。子供が2人以上いたら、会社の承継者に株式を相続させるなら、その他の兄弟姉妹には、ほかの財産をあげなければ不平等だと言われかねません。こういった問題を解決するために、事業承継税制ができました。

〇制度の概要

 この制度の趣旨は、「中小企業に限りますが、次世代に事業を承継すれば、相続税や贈与税を減免します」というものです。この制度を受けることができた場合、株式にかかる贈与税や相続税を最終的に100%免除するというわけです。(平成30年1月以降)
 実はこの事業承継税制は、平成21年の税制改正で作られました。しかし、条件が厳しく、利用者はとても少なかったのです。そのことをうけ、30年改正で大幅に要件を緩和したので、今話題になっているわけです。

〇この制度の注意すべき点 その1

1.贈与税は本当に払わなくていいのか? あくまで猶予です。

 実はここは誤解があるので注意すべき点です。生前贈与でこの制度を使った場合には、その時の贈与税は猶予されて0円ですが、その人が亡くなった時に、その人の手元に残っている財産額に、この制度を使って生前贈与した株式を足し戻して相続税を再計算するのです。いわば相続財産の先もらいみたいなものです。

事例で説明しましょう。

 この制度を使い先代社長である父が事業承継者長男に株式の評価額 1億円 を贈与したとしましょう。要件さえ満たせば(要件は後述します)贈与税の支払いを猶予され0円で譲りました。後に父が死亡し相続が発生しました。株は全部既に長男に贈与したので他に家や土地や預金が2億円あったとします。

 相続税の対象になる財産を計算するときには、先に無税で贈与した株式 1億円は既に長男のものなのですが、父の相続財産に加えられて2億円+先に贈与した株式 1億円=3億円として相続税が計算されます。その代わり猶予していた贈与税は免除されます。いわば、贈与税が相続税に変わったということです。
 そこで相続税を支払えばそれで済むのですが、もし相続税を払いたくなければ(正確には先延ばししたければ)その時に長男の子(先代から見れば孫)に事業承継としてその株を贈与する計画を出すことで、その株にかかる相続税は先延ばしすることができます。つまり、次々と次世代に税金の免除を引き継いでいくことになるのです。いつ死ぬかわからないので、何十年も先の話まで制度が引き継がれます。忘れたころに何だこれはとなるかもしれません。長期の管理が必要という点が注意すべきことです。      (つづく)

平成30年8月 相続税の申告が必要な場合とは?2 小規模宅地の評価減について

前月号で相続税の申告が必要な場合はどんな時なのかの概略をお話ししました。

1.相続税が0円になる場合は、どんな時かと言いますと

大きく次の3通りがあります。

①相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)の範囲内で0円になる場合                
②相続税の配偶者控除を使うと0円になる場合
③小規模宅地等の評価減を使うことで0円になる場合

相続税が0円なら申告しないでもいいのかと思いがちですが、②とか③は結果相続税が0円であったとしても、申告をすることが必要です。つまり申告することで控除や評価減を使えることになります。
中でも③の小規模宅地の評価減ついてお話しします。

2.小規模宅地等の評価減とはどんなものか?最大80%評価が下がる

 相続する財産は、現金や預金だけではなく、多くの場合不動産が大部分を占めます。この場合、不動産を評価して財産額を計算し、そこに相続税が課されます。
 ただ、相続税の為に住む家や事業用の店舗がなくなるなんてことがあってはなりません。そこで居宅や事業用の宅地については一定要件を満たした場合評価額を減額してもらえる制度「小規模宅地の評価減」があります。この規定を適用できれば、評価額は80%減らすことができます。
例)相続財産が1億円の居宅のみだったとしますと、小規模宅地の評価減を適用できれば、80%減らすことができ、2千万円の評価額となります。2千万円は基礎控除の範囲内ですので、相続税は0円になります。
ただし、この制度を適用するためには次のような条件があります。概略をお話しします。

①「相続前の利用状況」についての要件です。
不動産が被相続人や同一生計親族の事業用や居住用でなければなりません。つまり、相続する人か家族が実際に住んだり、事業に使っていなければならないのです。生活を共にしない親族などが使用している宅地は適用をうけることが出来ませんが、居住用については、一人暮らしの親がいて、そこに息子夫婦が帰ってきて住むといった場合、息子夫婦が持ち家でなかったら適用できるようになっています。*少し細かい要件もあります。

②「相続後の宅地の取得者及び利用状況」の要件です。
この利用状況とは、配偶者が取得する場合を除いては、相続税の申告期限(相続後10ヶ月)までの間、宅地の取得者がその宅地を継続して利用している必要があるということです。つまり、当然ですが相続後に家を出たり、売却した場合は、この制度は使えません。

③「小規模宅地」ということですから、面積の上限があります。
 事業用宅地で400㎡、居住用宅地で330㎡となっています。

④この制度は、その他細かいルールが定められています。例えば、この事業には不動産の貸付けや駐車場を営んでいる場合、なども含まれます。ただし不動産を貸付けている場合は、一般の事業と異なり50%の減額となり、面積の上限も200㎡となっています。

平成30年7月 相続税の申告が必要な場合とは?

相続税の基礎控除が少なくなったため相続税の申告が必要な場合が増えています。相続税の申告が必要な場合はどんな時なのかを知っておきましょう。相続税が0円でも相続税申告が必要な場合があります。

1.相続税が0円になる場合は、どんな時?

大きく次の3通りがあります。
①相続税の基礎控除の範囲内で0円になる場合
②相続税の配偶者控除を使うと0円になる場合
③小規模宅地等の評価減を使うことで0円になる場合

相続税には様々な控除を使うことができ、それをうまく活用することが出来れば、相続税を0円にすることができます。その場合は税金がかからないので、相続税の申告をしなくても良い、というケースもあります。逆に、相続税は0円であったとしても、申告をしなければならない、というケースもあります。
そのため、相続税が0円だから、申告しないでよいと思っていると大変なことになります。

2.相続税の基礎控除で0円になる場合

 相続税は、故人から引き継いだ財産に対して課せられる税金です。相続税は富の集中を避けるために、高額な財産を相続する人に対して課されます。また、相続財産は、そもそも自分で稼いだ財産では有りませんので不労所得に該当すると考えられ、税率は所得税よりも高めに設定されています。ただ、残された遺族の生活を確保するために一定額まで税金がかからない様に基礎控除が設けられています。
基礎控除の額は、[3,000万円+600万円×法定相続人の数]で計算されます。
例)夫が亡くなって、妻と子ども2人が財産を受け継ぐ場合は、3,000万円+600万円×3(妻、子2人)で、4,800万円が基礎控除となります。それを超えた分に対して、相続税が発生します。つまり、4,800万円以下の財産しかない場合は、相続税がかかりません。

3.配偶者控除を使うと0円になる場合

 夫を亡くし妻が財産を相続した際(逆の場合もですが)、多額の税金がかかってしまうと、残された妻の生活に支障が出ます。財産は夫婦の協力で形成されたものだともいえるでしょう。そこで、配偶者の生活を守るため、配偶者控除の制度があります。
 配偶者控除の額は非常に大きく、1億6,000万円、または法定相続分の額までは控除されます。
例)もし財産が1.2億円で、妻と子2人の相続人だとすれば、法律通りに分けると、妻が1/2で6千万、子どもが残りを頭割りするので1/4の3千万ずつを相続することになります。
この場合は、子どもには相続税が発生しますが、妻は法定相続分しか財産を相続しないため、税金は課されません。もし、妻が全部の1.2億円相続すれば1.6億円以下ですのでこの遺族には相続税はかからないことになります。
 確かにこの段階では配偶者控除で税金を免れることはできますが、その妻が死ねば次に子が相続することになり、その時はもう配偶者控除は使えないので、基礎控除だけになります。結局は子どもの世代になって相続税の負担が大きくなってしまうこともありますので、その見極めとその後の対策が必要です。

4.小規模宅地等の評価減で0円になる場合

 相続する財産は、現金や預金だけではなく、多くの場合不動産が大部分を占めます。この場合、不動産を評価して財産額を計算しそこに相続税が課されます。
 ただ、相続税の為に住む家がなくなるなんてことがあってはなりません。そこで居宅については一定要件を満たした場合評価額を減額してもらえる制度「小規模宅地の評価減」があります。この規定をうまく適用できれば、評価額は80%減らすことができます。*事業用にも評価減制度があります。
例)相続財産が1億円の居宅のみだったとしますと、小規模宅地の評価減を適用できれば、80%減らすことができ、2千万円の評価額となります。2千万円は基礎控除の範囲内ですので、相続税は0円になります。
ただ、この制度を適用するためには色んな条件があります。これについては次号でお話しします。

5.要注意!!0円でも相続税の申告が必要な場合があります。

 まずは基礎控除で相続税が0円になる場合。つまり相続財産が基礎控除以下の場合は、相続税が課されないため、申告書を提出する必要はありません。申告をしなくても、申告漏れではありません。
 一方、上記の2.配偶者控除や3.小規模住宅の評価減制度等のさまざまな制度を使うことで、課税されない、という場合があります。この場合は、申告不要とはならず、必ず申告をしなければなりません。
 これを知らずに相続税の申告をしないでいると、申告漏れとなり、延滞税、無申告加算税などが課される場合もあります。必ず自分で判断せず、わからない場合は税理士の助言を受けましょう。

平成30年6月号 特例事業承継税制のポイント

2月号ですでにお知らせしましたが、これまでの事業承継税制を大幅に拡充する期限付きの特例制度(以下、特例事業承継税制といいます)が設けられました。よくよく検討すべき課題も見えてきました。

1.「特例事業承継税制」の概要

(1) 自社の株式を後継者に贈与する際の贈与税が全額納税猶予されます。
(2) 納税猶予された贈与税額は、一定条件のもとで最終的に免除されます。
(3) 経営者以外の株主からの贈与も納税猶予の対象にできます。
(4) 後継者を1人に限定せず、2人~3人でも対象にできます。
(5) これまでの事業承継税制では、贈与等の日から5年間は従業員の雇用を確保する必要がありましたが、これが実質撤廃されました。
(6) 「特例事業承継税制」の適用を受けるためには、認定経営革新等支援機関(当事務所はこの機関です)の指導や助言を受けて「承継計画」を平成35年3月31日までに都道府県に提出する必要があります。
(7)  「承継計画」は、株価評価や税額試算などが必要であり、会計と税務の知識が必要です。

2.この制度の課題など

(1)納税猶予を使った事業承継対策は、あくまで相続税や贈与税の支払い猶予であり先送りに過ぎません。払わなくてよいということではないのです。自分の次の後継者に贈与するとき、改めて納税猶予の制度を使えば、そのときには自分の納税は、免除されるわけで、次世代に先送りしているということなのです。
(2)納税猶予を使うための大切な要件等を確認しておきましょう。主に次の4つの要件を満たす必要があります。
①人の要件
・先代経営者は、会社の代表者であり、これまで筆頭株主であったこと。
・後継者は、新たに会社の代表者になり、筆頭株主となること。
・後継者20歳以上で取締役就任後3年以上であること、かつ後継者は、5年間は会社の代表者であり続けること。
②株式保有の要件
・39年12月31日までに後継者に贈与すること。
・後継者は株式を保有し続けること。
たとえば、納税猶予を受けた株式の一部を、息子に、あるいは従業員に売却したとしたらその時点で猶予されていた税金を支払うことになります。要するに、株式はずっと持ち続けている必要があるということです。
③雇用維持の要件
5年間は雇用8割という条件は実質撤廃されたので問題ないでしょう。経営状況の悪化とか、この他正当な理由があれば、納税猶予は継続する、ということになりました。
④担保提供を要する
猶予された税金相当額を担保として提供する必要があります。提供する担保の対象は、不動産、国債・地方債などですが、不動産、国債等を持っていない会社は、自社株を税務署に担保として差し出すことになります。
(3)気になること
この納税猶予制度は、次の世代に引き継がれていくことで有効な制度なのです。ただし、永続的に使える保証はありません。後継者に問題を先送りすることになります。これまでいくつもの制度が改正されてきました。政府の方針で、この制度の枠組みが変わっている可能性は十分に考えられます。納税猶予をしたその先のことを考えれば、決してこの方法は必ずしも得策とはいえず、よくよく検討したほうがよさそうです。

平成30年5月号 30年度税制改正 その4:中小企業の投資を後押しする固定資産税の特例の創設

中小企業による設備投資を強力に後押しする臨時の措置として、中小企業が一定の設備投資を行った場合に、その機械・装置等に係る固定資産税が大幅に軽減される制度が創設されることになりました。

■特例措置の内容

固定資産税の課税標準:最初の3年間、ゼロ〜2分の1に軽減
(※)軽減率は、市町村が条例で定めることとされています。伊万里市はゼロとする予定。

■対象となる設備投資

●市町村の導入促進基本計画に基づいて企業が実施する設備投資であること
●労働生産性を年平均3%以上向上させる一定の機械・装置等である(※)
●生産、販売活動等の用に直接供されるもので、中古資産でないこと
(※)一定の機械・装置等とは
①旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等)が年平均1%以上向上するもの

②次に掲げる資産の区分に応じ、それぞれ次に定める販売開始時期であるもの
 イ)
機械・装置…10年以内
 ロ)測定工具及び検査工具5年以内
 ハ)器具・備品6年以内
 ニ)建設付属設備14年以内

③1台又は1基の取得価額がそれぞれ次に定める額以上であるもの
 イ)機械・装置…160万円
 ロ)測定工具及び検査工具30万円
 ハ)器具・備品30万円
 ニ)建設付属設備60万円

適用のための手続きは、設備の取得前にする必要があります。流れは下記の通りです。
工業会証明書の取得(認定後でも良い)
認定経営革新等支援機関(山浦税理士事務所も認定機関です)による“事前確認”
自治体(市区町村)による計画の認定

適用の期間
施行の日(6月中旬の予定)から平成33年3月31日までの間

平成30年4月号 30年度税制改正 その3:法人税 所得拡大税制を中心に

 法人課税については、設備投資と持続的な賃上げを後押しする税制が盛り込まれています。中でも特筆すべきは、所得拡大促進税制の拡充です。最大で給与等増加額の25%を税額控除できる制度となります。
 大企業については、研究開発税制をはじめとした一部の租税特別措置の適用が認められなくなるなど、「内部留保ではなく、投資をして欲しい」という政府の姿勢が強く表れた改正になっています。

①中小企業向け 所得拡大促進税制の拡充
(1)改正の背景と現行制度の概要
 
企業の賃上げを促進するため、平成25年度税制改正で創設された所得拡大促進税制が大幅拡充されます。
給与等支給額を一定額以上増加させた場合、増加額の10〜22%を税額控除できる制度です(法人税額の20%が上限)

現行の適用要件

給与等支給総額が対基準年度(平成24年度)比で3%以上増加している
給与等支給総額が前年度以上である
平均給与等支給額が前年度より2%以上増加している
 ※の要件を満たしている場合は、税額控除の上乗せがあります(控除率22%)

現行制度のイメージ

中小企業向け 所得拡大促進税制の拡充

(2)改正の概要
 
中小企業の賃上げをより強力に支援するため、税額控除率が拡大されるとともに、過去の改正で複雑化していた制度がシンプルに整理されます。

中小企業向け 所得拡大促進税制の拡充

改正後の適用要件

給与等支給総額が前年度より増加している
平均給与等支給額(=従業員1人あたりの給与)が前年度より1.5%以上増加している

改正後の控除率

イ) 前年度より増加した給与等支給額の15%
ロ) 以下の上乗せ要件を満たす場合には、控除率が25%へアップ(10%の上乗せ)
    ※ 控除額は、法人税額の20%が限度
【上乗せ要件】
上記の要件における増加率が2.5%以上であり、かつ、以下のいずれかを満たしている
教育訓練費の額が前年度より10%以上増加している
中小企業経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って経営力向上が確実に行われている

②大企業向け 所得拡大促進税制の改組
 
大企業の賃上げと生産性向上のための設備投資を促すため、大企業を対象とした所得拡大促進税制が大きく見直されることになりました。 制度の適用要件及び控除率が以下のように改正されます。


現行改正後
適用要件
①給与等支給額総額:平成24年度から5%以上増加     
②給与等支給額総額:前年度より増加 
③平均給与等支給額:前年度から2%以上増加
①平均給与等支給額:前年度比3%以上増加     
②国内設備投資額:減価償却費総額の90%以上
税額控除率
【給与等支給額】
平成24年度からの増加額の10%
(上限:法人税額の10%)
【給与等支給額】
前年度からの増加額の15%(※)
(上限:法人税額の20%)
※教育訓練費を前年度より20%以上増加させた企業は20%

上記の改正は、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます。

平成30年3月 30年改正税制(案)その2:所得税関係の改正

 個人所得課税は、「多様な働き方」に対応した課税の仕組みにシフトすべく、既に30年分から配偶者特別控除の拡大によって、配偶者の給与収入が103万円を超えても世帯の手取り収入が逆転しない仕組みと変わり、制度上は「103万円の壁」は解消されました。今度の改正では32年分から給与所得控除・公的年金等控除を下げ基礎控除を上げるとともに、それに伴う人的控除の金額基準等が改正されます。
下記の改正は、平成32年分以後の所得税及び平成33年度分以後の個人住民税について適用されます。

(1)給与所得控除の見直し
 
給与所得控除額が一律に10万円引き下げられます。合わせて、高額収入者の給与所得控除額が引き下げられ、上限額が適用される給与等の収入金額が850万円に、その上限額が195万円に引き下げられることになります。

平成30年3月 30年改正税制(案)その2:所得税関係の改正

給与収入が850万円を超える場合は、給与所得控除額が195万円に引き下げられるため税負担が増加します。
ただし、22歳以下の扶養親族が同一生計内にいる場合や、特別障害者控除の対象となる配偶者若しくは扶養親族を有するものが同一生計内にいる場合は負担増が生じない措置が講じられます。

(2)公的年金等控除の見直し
 
世代内・世代間の公平性を確保する観点から、公的年金等控除について以下の改正が実施されます。

公的年金等控除額を一律10万円引き下げる。
公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除額については、195万5千円の上限を設ける。
公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円を超え2,000万円以下である場合、控除額を更に10万円引き下げる。
公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が2,000万円を超える場合、控除額を更に20万円引き下げる。

(3)基礎控除の見直し

基礎控除額38万円から48万円へ引き上げ。
合計所得金額が2,400万円を超える個人については、その合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用はできない。

(4)青色申告特別控除の見直し
 
確定申告・年末調整手続の電子化を推進し、オンライン手続の利用を促進するため、青色申告特別控除の控除額が原則65万円から原則55万円に引き下げられ、以下いずれかの要件を満たす場合にのみ、これまで通りの65万円の控除を受けることができます。

「国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」の定めに従い、仕訳帳及び総勘定元帳等について電磁的記録の備付、保存を行っている。
所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等を、電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行っている。要するに電子申告を行っているということです。顧問先の皆さんは電子申告をしています

(5)人的控除の金額基準の見直し
 
給与所得控除の引き下げ、基礎控除の引き上げに伴い、所得等に影響が出ますので、その他の人的控除についても調整されます。改正前後における各控除の金額基準は以下の通りです。
 例えば子供の給与が103万円だった場合給与所得控除が65万円なので所得は38万円で扶養控除にできたのですが、改正で10万少なくなって55万円だと所得は48万円となり扶養控除ができなくなります。このことを避けるために、扶養親族の所得が38万円以下の場合でしたが48万円以下になるというわけです。

■人的所得控除対象者の所得金額要件の改正


対象改正前改正後
配偶者控除生計を一にする配偶者の合計所得金額38万円以下48万円以下
配偶者特別控除
生計を一にする配偶者の合計所得金額38万円超、123万円以下
48万円超、133万円以下
扶養控除生計を一にする扶養親族の合計所得金額
38万円以下
48万円以下
勤労学生控除
本人の合計所得金額65万円以下75万円以下

平成30年2月 30年改正税制(案):事業承継税制の抜本的見直し

(1)改正の背景
 
中小企業経営者の平均年齢は66歳まで上昇しています。また、2020年頃までに、さらに数十万人の経営者が引退時期になるため、後継者への事業の引継ぎは待ったなしの状況です。うち50%超が廃業を検討していることが明らかになっています。廃業する理由として「後継者不在」や「相続税・贈与税の負担」を挙げる経営者が多く、政府としても様々な施策を講じています。その一環として平成21年度の税制改正で事業承継税制(非上場株式等に係る相続税、贈与税の納税猶予制度)が創設されましたが、現在までほとんど活用されていません。活用が進まなかった理由として、適用要件の厳しさと制度の複雑さ、柔軟性のなさが指摘されています。

■現行の事業承継税制 適用の流れと適用要件(中小企業庁資料を参考)

事業承継税制の流れ
先代経営者の要件会社の代表者であった
後継者の要件
相続開始の直前において対象会社の役員であること等
 (贈与の場合)贈与の3年前から引き続き役員に就任していること
会社の要件中小企業である
上場会社、資産管理会社、風俗関連事業を行う会社に該当しない
5年間の事業継続要件
5年間平均で、雇用の8割を維持すること

 とりわけ「5年間平均で雇用の8割を維持する」という要件は中小企業にとってハードルが高く、しかも、要件を満たさなくなった場合には、猶予された税額と猶予期間の利子税も納付しなければなりません。こうしたリスクがあるため、専門家からも敬遠されてきたのです。そこで、事業承継税制が抜本的に改正されることになりました。

(2)改正の概要 
 平成30年4月1日から同35年3月31日の間に「特例承継計画」を作成し、同39年12月31日までに事業承継を行った場合には以下①〜⑤の特例が適用されます。10年間の時限措置とされております。

対象株式及び猶予税額の大幅な拡大
 現行制度では、発行済議決権付株式の3分の2について相続税(贈与税)の8割が猶予されますが、改正では、株式の100%が対象となり、猶予される税額も、相続税(贈与税)の8割から全額へと拡大されます。

現行特例
発行済議決権付株式の3分の2発行済議決権付株式の100%
相続税(贈与税)の80%を猶予相続税(贈与税)の全額を猶予

対象者の拡充
 後継者が、先代経営者以外の人から株式を取得した場合も納税猶予の対象となります。

現行特例
先代経営者から贈与された
株式のみが、納税猶予の対象
先代経営者以外の人から贈与を
受けた株式も納税猶予の対象に

 また、現行制度では後継者が1人に限定されていますが、今回の改正により、以下の要件を満たす最大3人まで納税猶予が適用できるようになります。

 ●保有する議決権が、全株主中上位3名以内の者である
 ●総議決権の10%以上を保有している

改正のイメージ (経済産業省の資料 ビズアップ資料より)

雇用確保要件の撤廃
 雇用確保要件を満たせなくなった場合、「認定経営革新等支援機関による意見」が記載された理由書を都道府県に提出することで納税猶予の打ち切りを回避できるようになります。

現行特例
雇用確保要件を満たさなくなった場合、納税猶予は打ち切り
 → 直ちに猶予税額+利子税を納付
雇用確保要件を満たさなくなっても、正当な理由を記載した
書類を提出すれば、納税猶予は継続される

株式の譲渡、合併による会社の消滅、解散で猶予税額の一部が免除

 一定の経営環境の変化が起きたことを理由に会社を売却(譲渡、合併)、廃業する場合には、売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、承継時の株価を基に計算された納税額との差額が免除されます。

後継者が第三者の場合も、相続時精算課税の適用が可能に

平成29年12月 年末調整にあたって

【知って欲しい大切な情報】

○年末調整にあたって
1.年末調整の対象になる人ならない人
 年末に在職している従業員さんが対象になりますが、対象にならない人の主な事例は
①給与収入2,000万円超の人 ②2カ所以上の給与の支払いを受けていて「給与所得者の扶養控除等申告書」を他の会社に提出している人 ③ 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない人④中途退職者(死亡退職者は退職の時に年末調整をします)です。

2.「扶養控除申告書」は必ず本人に書いてもらい、会社に保管して下さい。
 年末調整に必要な「給与所得者の扶養控除等申告書」(税務署から送られてきています)を必ず書いて下さい。この書類が提出されていないと乙欄での源泉徴収が必要で、本人が確定申告をすることになります。税務調査では必ず見られる書類です。全員分揃っているか確認して下さい。           
 パート、アルバイトさんからも年末調整をするのであればもらって下さい。
29年中に子供が生まれたり就職したり、扶養親族が移動している場合もあります。会社の事務の方が書いたりすると間違いのもとです。特に扶養親族の年齢や所得の状況は正確でないと計算が出来ません。必ず本人に書いてもらうようにして下さい。マイナンバー記載もお忘れ無く。

3.通勤手当の非課税限度額は間違いありませんか?
 マイカー通勤者の通勤手当の非課税限度額は26年4月以降改正されています。通勤距離を確認し、正しく適用しているか確認しましょう。オーバー分は課税給与として年末調整で修正します。

4.中途採用の方は前職場の源泉徴収票が必要です。
 年末調整は前職の給与も合算して計算しますので、前職分の源泉徴収票がないと年調手続きはできません。もしどうしてももらえなかったら年調はせずに本人に確定申告をするように言って下さい。逆に職場に中途退職の方がおられたら、その方に必ず源泉徴収票を発行して下さい。

5.配偶者控除と配偶者特別控除について
 配偶者の給与の額によって配偶者控除と配偶者特別控除があります。141万円未満であれば、いずれかが適用されますので、確認のため必ず源泉徴収票をもらってください。配偶者の年末調整がまだであれば見積額でします。後に違っていれば年調をやり直します。

6.生命保険料控除証明書、損害保険料控除証明書について
 一般生命保険料控除と個人年金保険料控除、そして、介護保険料控除というのが24年から新しくできていますので、注意して下さい。保険料控除証明書に『一般』とか『個人年金』とか書いてあります。別々に最高5万円の控除があります(合計10万円)ので注意しましょう。 
 なお、介護保険料控除が新しくできたので、24年1月1日以後に締結した保険契約については、各4万円の合計最高12万円の控除になります。
 本人が支払った分が対象ですのでご注意ください。証明書は会社に保存しておく必要があります。

7.扶養親族の注意点
 扶養控除申告書を見て、その内容を確認しましょう。判定には年齢や所得は特に大切です。扶養親族の収入が多いことが判明し、税務署から、修正を求められることがありますので、収入には特に注意して下さい。
 29年中に死亡した方も死亡時点で扶養控除や配偶者控除の要件が満たされていれば(合計所得金額38万円以下)適用できますので注意して下さい。
 平成23年分から16才未満の年少扶養親族控除は廃止されていますが、住民税申告には必要です。

8.障害者控除の注意点
 障害者控除は本人だけでなく扶養者が障害者の場合も適用されます。特別障害者(1,2級で40万円控除)でかつ同居している場合は同居特別障害者になり控除が75万円になります。        障害者手帳の交付を受けていなくても「常に就床を要し、複雑な介護を要する人(いわゆる寝たきり)」に該当すれば特別障害者になりますので確認して下さい。

9.住宅取得控除の件
 昨年以前に住宅の新築や取得をされた方は、住宅取得控除の申請をされているかもしれません。税務署から本人送付された「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」と金融機関が発行した「住宅取得資金にかかる借入金の年末残高等証明書」の提出を求めましょう。
 今年29年中に新築をされた方は年調でなく確定申告で手続をする事になっています。

10.寡婦・寡夫控除について
 寡婦とは、その年の12月31日の現況において、次のいずれかに当てはまる女性をいいます。
・夫と死別、または離婚した後に婚姻をしていない人で、親族や子を養っている。
夫と死別した後に婚姻をしていない人(離婚ではないので注意)で、合計所得金額が500万円以下の人。この場合親族や子を養うなどの要件はありません。
 男性の場合の「寡夫」は少し要件が異なり、次の3つの要件のすべてに当てはまる男性をいいます。
・所得金額が500万円以下。・妻と死別し、もしくは離婚した後に婚姻をしていない。・子を養っている。
寡婦控除・寡夫控除で控除できる金額はどちらも27万円です。ただし寡婦の場合に限り扶養の子がいれば「特別の寡婦」となり35万円となります。

11.公的年金を受給している父を扶養親族にできるか
 年金金額から公的年金等控除額を差し引いた残額が38万円以下であり、生計を一にしていると扶養親族にすることができます。公的年金等控除額は65才以上で最低120万円、65才未満で最低70万円です。なお、遺族年金は非課税ですので、判定のための所得に含める必要はありません。

12.25年分の所得税より、復興特別所得税を含む税額を含めて精算することになっています。
年末調整の結果、納付税額が0円になっても0円の納付書を作成して税務署に提出します。

平成29年11月 配偶者特別控除について

【知って欲しい大切な情報】

○配偶者特別控除について
■配偶者の年収が103万円超でも受けられる控除がある
 配偶者控除は合計所得金額38万円以下(給与の年収だけだと103万円以下ですが、給与の他に個人事業などから所得を得ている方はそれも含む)が対象になります。しかし控除対象配偶者から外れてしまうと、途端に税務上全く控除が受けられないかというと、そんなことはありません。

■配偶者特別控除とは? 適用されない場合とは?
 配偶者特別控除とは、合計所得金額38万円を超えてしまうと配偶者控除は受けられないことで、途端に税の負担緩和措置がなくなることに配慮したものです。合計所得金額が38万円を超えても76万円未満(給与だと141万円)の場合には、段階的に税の緩和措置が受けられる制度です。

 ただし、配偶者控除と異なるのは、所得者本人(申告する人)の合計所得金額が1000万円を超えていると適用できません。給与の年収でいうと所得者本人(妻が専業主婦の場合は主に夫)の年収が1220万円を超えているときは適用できません。

■配偶者控除や青色事業専従者給与と二重適用できない
 配偶者特別控除適用の注意点のひとつめは、配偶者控除との二重適用ができないことです。配偶者特別控除の対象者は、合計所得金額38万円超76万円未満、配偶者控除の対象者は合計所得金額38万円以下です。したがって、適用を受けられる所得金額要件が相違するので二重適用は受けられません。

 年末調整では、配偶者控除の対象者である場合は「扶養控除等(異動)申告書」の控除対象配偶者の欄に氏名・生年月日を記載し、該当しなければ、「給与所得者の配偶者特別控除申告書」に記載する者に該当しないかどうかを検討しましょう。

青色事業専従者として所得者本人から青色事業専従者給与を受けている場合や、白色事業専従者の対象となっている場合には、配偶者控除と配偶者特別控除の適用はできないこととなっています。

■29年税制改正で配偶者特別控除が拡大します
 なお、既にお知らせしたように29年税制改正で配偶者特別控除を含めると38万円の控除が受けられる配偶者の対象が、給与の年収基準で103万円から150万円に引き上げられることとされています。
 ただし、下記の2点についてご注意ください。
 ①配偶者控除は拡大されていません
 配偶者控除の範囲は年収103万円まで、配偶者本人の年齢が70歳以上の場合に受けられる老人加算の範囲も変更はされていません。「配偶者控除は拡大」されていない、つまり、所得者本人の所得が900万円以下の場合、現行税制のままです。

 ②平成30年の年末調整から適用
 この税制改正は平成30年の所得税および平成31年の住民税から実施されます。つまり、平成29年の年末調整、および平成30年3月期の確定申告においては従来の税制のままです。

 「妻の年収が141万円を超えても配偶者特別控除が受けられる」という税制は平成30年の所得税および平成31年の住民税からです。来年の年末調整からですので注意しましょう。

○経営全般  ----同族経営----
 同族経営というと世間の目は家族のなれ合いと、経営者ファミリーの傲慢、マネジメントの不在とかマイナスイメージがありがちです。しかし、ある調査によると、業歴100年を超える創業者一族が経営する企業数は、欧州6,000社、 米国800社に対し、日本は20,000~30,000社 存在するといわれています。もし放漫経営だとしたら、これだけ長寿であり得るはずはないのです。同族経営企業であるがゆえの、強みがあるはずです。その内容について、考えてみましょう。殆どが同族企業であるが故に、これらの強みを活かしていくべきなのではないでしょうか。

1.意思決定を速くできる
 意思決定が一点に集中しているために、経営者単独、一族で意思決定を行う事ができます。また、経営者=株主ですから、株主の顔色をうかがう必要がなく、結果、意思決定が早くできます。

2.目指す方向は長期的で一貫性を持てる
 大きな組織であればあるほど意思決定をする際には、クリアすべき関門が多く存在しがちです。上司、株主等々です。また短期的成果を求めることで目指す方向もぶれやすくなりがちです。しかし、同族が故に決定権が一極に集中し、長期政権であることで、一貫性を保てます。長期展望で継続的な成長を視野とした経営方針を打ち出すことができます。老舗になればなるほど未来に責任を持たねばならないことが強みといえるのではないでしょうか。
 メリットをもたらす半面、リスクもあります。コンプライアンスの問題などは、自浄作用が働きにくい傾向があるでしょう。なので、バランスを取りながら経営をされていることが多いのでしょう。その背景には、地域との密接なつながりなどが一つの抑止力となっているのではないでしょうか。数字を追うだけの経営とは一線を画する経営理念をより大切に守られている様です。


平成29年10月号 決算の時に特に注意すべき項目:税務調査の目から

【知って欲しい大切な情報】
【決算の時に特に注意すべき項目:税務調査の目から】
 決算では、今期の利益がいくらなのかを計算するわけですから、売上は今年度にあげるべきなのか、経費は今年度のものなのかを重点的に検討することが基本になります。以下税務調査においても重点的に調べられる項目を中心に掲げます。月次の監査で確認しますが、皆様の方も留意してください。

○売上高の確認
 〆後の売上についても漏れなく計上する必要があります。万が一にも漏れた場合には、脱税行為となりかねませんので、請求漏れがないか等充分に注意しましょう。売上を計上すべき時期は原則、商品製品の引渡しの時、工事の完了引渡の時です。期末頃の完成で微妙な場合は必ず税理士事務所に相談してください。

○経費の中で特に注意すべき点 微妙な点は税理士事務所に相談ください。
 ●給料と外注費の区分
 同じ仕事をしても税務の定義で給料なのか外注費なのか、判断が難しいことがあります。一人外注などは要注意です。この違いで、源泉税と消費税に影響しますので注意が必要です。
 ●修繕費と資産計上の判断
 修繕費として一時の経費とすることが可能か、資産に計上べきか、微妙な判断が必要なケースがあります。税務上、実質基準と形式基準とかがありますので、注意が必要です。
 ●従業員に対する福利厚生など
 通勤手当、出張手当、社宅家賃、昼食代の活用、社員旅行、勤続表彰の課税関係など、従業員に対する福利厚生が給与として課税される場合がありますので、要注意です。

○現金残高の確認
 現金の実在残高と帳簿上の残高が一致しているか確認をしましょう。特に現金商売のところは売上に直接結びついていますので要注意です。金庫残高が多いのは危険です、できるだけ銀行に預けましょう。
○売掛金残高の確認
 取引先毎の残高が一致していることを確認します。できれば取引先に対し残高確認書により確認を行うことが望ましいです。確認することでいわゆる不正を防止できます。長期滞留先の状況も確認し、事情を必ず記録しておきましょう。貸倒損になるのではないかの判断の材料として必要です。

○棚卸商品・製品・貯蔵品
 自社の棚卸評価方法を再確認し、必ず実地棚卸を実施しましょう。そしてその棚卸の計算の原始資料(エクセルに書き写したものだけでなく)も必ず保管しましょう。特に期末頃に仕入れた物の確認漏れがないか、別の倉庫に入れている商品はないか、広告印刷物等の多量の残はないか等特に注意しましょう。工事業、製造業では仕掛工事、仕掛品がないかの再確認を特に期末は綿密に確認しましょう。

○固定資産の確認
 これまでに計上してある固定資産が実在するかどうかについて、現物と確認しましょう。既に滅失しているものは速やかにその理由を確認し、除却損で計上します。物はあっても使われていない、使う見込みのない物がないかも確認しましょう。除却損にできないかを当事務所で検討します。

○買掛金残高の確認
 〆後の仕入について漏れなく計上する必要があります。〆後の仕入については必ず納品書等により確認してください。棚卸との整合性も確認しましょう。

○未払金残高の確認
 期間損益を求めるにあたり、当期発生した経費についても計上する必要があります。買掛金同様に相手からの請求漏れがないか確認しましょう。

○経営全般        ---会計で会社を強くする その3---
 少し前の話になりますが、6月8日(木)の日経新聞に「金融庁「強権」を封印 銀行検査、抜本見直し」という記事が掲載されました。驚くことに「金融検査マニュアルを廃止する」というのです。今まで、金融機関は、10年以上、この金融検査マニュアル下での融資審査において、「財務諸表」を重視し、取引先の格付けをし、格付けの低い「債務超過先」や「赤字決算先」に対して、積極的には融資を行いませんでした。たとえ、その会社に成長可能性や将来性があったとしてもです。
 私が金融機関に勤めていたころは、たとえ財務諸表の内容が悪くても、企業を調査し、経営者に対してヒアリングを行い、その企業の将来性や成長可能性を見極め、それを稟議書に反映させることで、「この企業は、赤字企業だが、将来的には返済出来る」とし、困難な融資を実行したものです。この頃は、今金融庁が積極的に推進している「事業性評価融資」と同じスタンスだったのです。金融庁は、金融検査マニュアルを廃止することで、金融機関の本来の姿に戻ったといえるでしょう。
 では企業はどう対応すべきなのかですが、重要になってくるのは、「経営計画」です。重視されるのは「経営者の経営の姿勢」と「将来性」「成長可能性」なのです。一言で言えば本物の経営が求められるということです。それを、きっちりと金融機関の方に伝えることができる資料が「経営計画書」です。

平成29年9月号 節税の考え方

【知って欲しい大切な情報】
【節税の考え方】
前号で、「繰延型の節税」を紹介しましたので、もう一つの「永久(恒久)型の節税」を紹介します。

●永久(恒久)型節税で手許のお金を残す
 この節税は、課税の繰延べではありませんので、将来その分税負担が多くなるということはありません。従って本当の意味の「節税」であるといってもよいでしょう。
この永久型節税を3つのパターン別に見てみましょう。

(1)政策的な優遇税の活用
これは、国策としてある取り組みをする事で税の軽減をするという恩典を活用するものです。例えば、一定の設備投資等を行った時には一定額の「税額控除」を認める等です。このことで企業の設備投資を促進しようとしています。一定の人件費増額の場合の「税額控除」もそうです。
 後に節税分を支払うという税の繰延べではありません。多額の設備投資等に効果ある節税ですが、多額故に費用対効果を考えるべきです。節税を目的として必要でもない設備投資をするのは本末転倒です。

(2)過去の失敗の整理による税の取り戻し
 これは「不良資産」「不良在庫」などという「過去の失敗」を整理することで過去の税金を取りもどすというものです。例えば売掛金が回収出来なくなったので貸倒として損金(経費)にすることで今期の利益が減少し、結果的に税金の支払は小さくなります。売り上げたときに既に税金を支払っていますのでそれを取り戻す感じです。

(3)課税構造の違いを合法的に活用
 利益を得れば、必ず何らかの課税を払うという「関所」を通らなくてはなりません。その通るところの違いで税の負担が違います。そこを利用する節税方法があります。
 例えば「法人税と所得税」の違いを利用する方法です。個人事業から法人になり節税するというのが典型的パターンです。役員報酬からは「給与所得控除」という概算の経費が差し引かれた上で課税がされます。このような仕組みを利用して、法人個人の全体でもっとも税負担が小さくなるような役員報酬額を設定するのもこの節税策です。
 「相続税と贈与税」の違いの利用もそうです。毎年の110万円以内の贈与によって相続税を節税するという方法です。
 中には法律の盲点をつくことによってなされる節税?もあります。しかし、この盲点はいずれ改正され、期待した効果がなくなってしまい、節税対策が無駄になってしまうことは多々あります。例えば「法人契約の生命保険を個人に譲渡することについての税法の曖昧さ」をついた節税対策が目を付けられたという事例があります。盲点を突く節税はリスクが高すぎ、止めるべきです。

節税は行き当たりばったりではなく経営戦略的にすべき
 節税効果を得るには多くの場合、節税対策をしてから実際の効果が確定するまでには長い時間を要します。故に計画的に経営戦略の一環として取りくむべきです。事業計画で赤字が見込まれる期があればその期の費用を次期へ持ち越すなどの選択肢もあるでしょう。逆に大幅な黒字が見込まれる期に設備投資や修繕を行うことで、利益をコントロールできます。「収益と支出のバランス」について、それぞれが発生するタイミングをきちんと認識し、計画的に調整することが大切です。
 よくある決算賞与も、経営上の問題であり、節税のために支給するものではありません。成果が出たので還元するとかモチベーションを上げるために支給するとか、経営戦略として考えるべきです。
○経営全般        ---会計で会社を強くする その2---
 前号で、経営のための「現状認識」とそれを基に行われる「経営戦略の意思決定」のための武器はデータ=会計である。従って会計データは経営にとって最も重要な指標であることを述べました。
 では、経営者が実践すべき会計とはどんなものでしょうか。基本は正しい会計でなければ意味がないということです。正しくなければ正しい判断はできないから当然のことです。
 判断の指標となる正しい会計であるためには次の項目が満たされていることが条件です。
①発生主義での会計 : 売上げられた時に売上が計上され、小口は別にしても費用が発生したときに費用が計上されるというあたり前のことです。中には入金になったときに売上に計上し、払ったときに費用に計上するという現金主義の会計がまかり通っている場合があります。
②適時・正確な記帳の実践 : 適時の記帳は不可欠です。半年分まとめてなんて処理は論外です。
③月次決算の早期化 :  その月の経営状況は少なくとも翌月半ばには把握すべきです。②により日々記帳(入力)がなされていれば、あたり前のことです。
④改ざん不可能なシステム :  中には遡っていつでも変更、改ざんできる会計ソフトがあります。これでは経営者は安心して会計データに基づく戦略はできません。
⑤会計専門家の指導・助言 : 月次のデータの正確性が問われます。専門家の目が当然入る必要があります。このような会計データであって初めて業績管理体制を構築できます。
つまりP(計画)→D(行動)→C(検証)→A(改善)のサイクルを回すことができるのです。
 ちなみに、「中小企業の会計に関する基本要領」もこの事を求めており、これがスタンダードです。

平成29年8月号 節税の考え方

【知って欲しい大切な情報】
【節税の考え方】

●節税の目的とは
 税金という直接収益に結びつかない支出を減らすことが目的です。節税はそのことで手許のお金をできるだけ多く残すという「目的」を達成するためのひとつの「手段」であるということです。
 ところが、経営者の中にはいつしか「手段」が目的化してしまい「どうしたら税を安くできるのか」という視点だけで意思決定をする人もいます。その結果、必要のないものを購入し、税金は減ったもののそれ以上に手許のお金がなくなり、全くの本末転倒の対策をとっていることになります。

●二つの種類の節税
節税には「繰延型の節税」と「永久型の節税」があります。

繰延型の節税とは
 まず繰延型の節税について触れます。これは、今支払わなくてはならない税金の支払を翌期以降に延期するものです。延期ですから税額を減らしているわけではありません。節税対策の大部分がこの繰延型の節税だといってよいでしょう。一定の基準を満たした機械の特別償却の制度を使う節税とか、多様な生保や金融商品を用いた節税もこれに分類されます。特別償却は、後の期の減価償却が少なくなることで減らされた利益はいずれ利益としてまた元に戻ってきます。その時に結局課税がされます。

では、この繰延型節税は意味がないのでしょうか
 そうではありません。メリットを発揮するのです。どんな時かといえば、一つは今期利益が出てしまったが来期の業績が不透明である時です。一般的にはそうでしょう。来期以降に支払う可能性の高い費用を今期に支払うことで一定の効果があります。
 例えば、物販会社がHP等の広告費を仕掛けて消費者を獲得する、といった将来収益を生むための戦略的費用として使うといった場合です。費用を支払った時点ではすべて損金になればその効果は大きいです。使わなければ将来収益は生み出せないのですから。
 しかし、「いくら税金を減らすためにいくらの費用を使うか」というような逆算発想をするのは戦略的節税ではありません。目的と手段が入れ替わったものになってしまいがちですので注意が必要です。
ピーター・ドラッカーも「税制から経営の意思決定をするのは最悪の意思決定である」と言っています。

その他の目的で利益を少なくしたいとき
 節税は脱税ではありません、合法的に利益の少ない損益計算をする方法でもあります。
どういうときにそうしたいかといえば、例えば自社株を譲渡する際の株価を下げるため、一時的に業績を悪化させたいといった場合です。これも戦略的な節税策でしょう。

節税対策は、戦略的に行う必要あり
 一見ドラスチックな節税の効果の額に惑わされることなく戦略的に行う必要があります。
利益を上げても税金で半分持って行かれる、などとも言われますが、それは昔の話で、今は決して高くはありません。むしろ個人の所得税が高いくらいです。
 中小企業ではおおよそ25%前後の税金です。従って75%は残るのです。ですから、節税のための支出をした方が確実に出ていくお金は多いのです。手許のお金を増やしたいのであれば、支出をしないで素直に税金を支払ったほうが得策ということなのです。

○経営全般  ---会計で会社を強くする---
 これまで会計に対する中小企業経営者の意識は低かったといわざるを得ません。何故なら、高度成長期には、どんぶり勘定でも十分に儲かり、逆に、バブル崩壊以降の低成長時代に入ると、日々の売り上げを稼ぎ出すことに汲々とするあまり、会計による業績管理など二の次というのが実態となってしまったからです。一方、会計専門家である税理士の経営者に対する啓蒙不足、金融機関の融資の姿勢にも問題がありました。
 しかし、言うまでもなく会計とは企業経営の羅針盤であり、「会計を知らない経営者は、免許を持たないドライバーのようなもの」といっても過言ではありません。
 多くの中小企業経営者は、会計を税務申告や金融機関に提出するための義務と考え、どこか「他人ごと」だと感じ、経理担当者任せの業績・計数管理となり、いびつな経営を生み出すのです。会計とは、倒産を防ぎ健全経営を行うために創られた制度、つまり「会社を強くするための武器」です。有効に活用することで、経営をいかようにも方向付けることができる、そんな武器を使わない手はないのです。
 会計は経営結果の数値化ですから、会計によってしか、「現状認識」と「意思決定」は出来ないのです。頭の中に入っているというのも幻想に過ぎません。「現状認識」と「意思決定」までの間の溝を埋めるのが具体的かつ精緻なデータ=会計というわけです。だからこそ、会計は適時・正確な記帳の実践で、正しいものでなければ意味がないことも、これは当然です。

平成29年7月号 関係会社同士で取引をする際の経理上の注意点

【知って欲しい大切な情報】
【関係会社同士で取引をする際の経理上の注意点】

 親会社と子会社の取引など関係会社間取引は、第三者間取引と比較して取引価格を自由に操作したりすることなどで利益を操作し税金を操作しやすいため、税法上もその点を問題視されます。
 ポイントは、関係会社だけ特別扱いでなく第三者の企業と取引をしていると思って処理することです。
関係会社取引は、大きく分けて100%支配関係がある場合に適用される「グループ法人税制」とそれ以外の場合に適用される税制に分けることができます。
 ここでは一般的にある100%.グループ法人税制適用外の関係会社取引についてお話しします。

(1)関係会社間の資産の譲渡取引の金額の注意
 親会社と子会社間で資産の譲渡取引については、時価よりも著しく低い価格で譲渡した場合に、売却側には時価と取引価格の差額が寄附金、買取側には受贈益となります。結果買取側には利益が計上されますし、売却側にも寄附金には損金算入限度額があるため、一部が損金不算入になります。
(2)関係会社間の資金貸借取引で無利息だと問題有り
 親会社と子会社間で資金貸借の場合、無利息で資金貸借を行うと、関係会社間の資産の譲渡取引同様に貸付側は第三者間の利率に基づき計算した利息分の寄附金認定、借入側は受贈益が認定されます。
ただし、債務超過の子会社を救済するために無利息で貸付ける等経済的利益を供与する側から見て、下記(5)と同様にその再建支援等を行うことに相当な理由があると認められれば寄附金認定されません。
(3)関係会社間の業務委託取引やリベートの金額が合理的でないと問題有り
 親会社と子会社間で業務委託が行われるケースでは、業務委託の実態の有無、金額の合理性、資金の授受等が総合的に判断され、妥当でない場合は、損金の否認、益金算入等税制上不利な扱いがなされるケースがあります。
 売上代金の一部を戻すリベートが行われることもあると思われますが、これについても第三者間取引同様に明確な算定基準がない等の場合は損金の否認、益金算入等税制上不利な扱いがなされる場合があります。
(5)関係会社間の債権放棄をするとき
 親会社が業績不振の子会社に対し有する売掛金、貸付金等の債権について、債権放棄をした場合には、その債権放棄した金額は寄附金に該当します。ただし、関係会社間の資金貸借取引同様に再建支援等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることが明らかな場合等、その再建支援等を行うことに相当な理由があると認められル場合に限り寄附金認定されません。
(6)関係会社間の共通経費負担をするとき
 関係会社間で同じ事務所を賃借する等、共通の経費が発生することがありますが、 共通の経費を一部の会社のみ負担している、使用割合以上に負担している場合は、過大に負担している側は寄附金に、過少に負担している側は受贈益認定されます。親会社の事務所を借りている等の場合も同様です。

上記から、関係会社間取引する際には、特別扱いではなく第三者の企業と取引をしているのと同様の考え方を持つべきです。その上で実態の有無、取引価格や負担の合理性、算定基準の明確化等総合的に判断し、税務署に説明できるように文書化する等して明確化する必要があります。

平成29年6月号 29年度税制改正について

【知って欲しい大切な情報】
29年度税制改正について
1. 中小企業経営強化税制
(1)改正の背景
  中小事業者の「攻めの投資」を後押しするとともに、サービス産業も含めた中小企業の設備投資を支援するため、中小企業経営強化税制が創設されることになりました。
(2)改正の概要
  中小企業投資促進税制のうち、生産性の高い先進的な設備や生産ライン等の改善に資する設備投資を対象に、即時償却又は税額控除ができる上乗せ措置について、中小企業等経営強化法の認定計画に基づく制度に改組した上で、対象となる器具備品及び建物附属設備が拡充されます。
  設備投資をされる場合は対象かもしれませんので、業者や認定支援機関である当事務所にご相談ください。下記②の計画や認定はそうややこしいことではなく当事務所で対応しますのでお気軽にご相談ください。

■適用要件

適用対象法人①青色申告書を提出する中小企業者
経営力向上計画(人材育成、コスト管理、設備投資など、事業者の経営力を向上させるための取り組みをまとめた計画)を提出し、認定を受けた法人
対象期間
平成29年4月1日から平成31年3月31日までの期間
適用対象法人 生産性向上設備(右記①、②を満たす設備)
①生産性向上設備▼発売開始から一定期間以内の設備(機械装置:10年以内、工具:5年以内、器具備品:6年以内、建物附属設備:14年以内、ソフトウェア:5年以内)
②旧モデル比で生産効率、エネルギー効率、精度等が年平均1%以上向上するもの
※ソフトウェア及び旧モデルが存在しない資産については、①の要件のみ
 収益力強化設備等 
年平均の投資利益率が5%以上の投資計画に係る設備等
取得価額要件・機械装置 1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
・工具及び器具備品 それぞれ1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの
・建物附属設備 一の取得価額が60万円以上のもの
・ソフトウェア 一の取得価額が70万円以上のもの

■特別償却・税額控除の金額


特別償却
税額控除
中小企業者等
取得価額×100%
取得価額×7%
特定中小企業者等
取得価額×100%
取得価額×10%

なお、税額控除は当期の法人税額の20%を限度とし、控除しきれない場合には1年間の繰越しが可能となります。

改正イメージ

平成29年5月号 29年度税制改正について

【知って欲しい大切な情報】
29年度税制改正について
給与支給額増加の場合の税額控除制度の改正

(1)現行制度の概要
法人が、国内で雇用する使用人の給与総額を適用年度に応じた一定割合増額し、かつ、次の3つの要件を満たす場合は、給与等支給額の増加額の10%を税額控除(大企業は法人税額の10%、中小企業は20%が上限)ができます。 賃上げを行った企業へのインセンティブ機能を強化する観点から、平成25年度税制改正(5年間)で創設された所得拡大促進税制が拡充されます。大企業には要件が厳しくなります。


適 用 要 件
当期の雇用者給与等支給額 ≧基準事業年度(※1)の給与等支給額 × 一定の増加割合(表2参照)
当期の給与等支給額(※2) ≧ 前期の給与等支給額  
当期の平均給与等支給額(※3) > 前期の平均給与等支給額

*1基準事業年度とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち、最も古い事業年度の直前事業年度を指します。
 (例)3月決算→25年3月期
*2給与等支給額は、国内雇用者に対する給与等の支給額で、各事業年度の法人の所得金額の計算上損金の額に算入されるものをいいます。
*3平均給与等支給額とは、適用事業年度の継続雇用者(国内雇用者で日雇い者を除く)に対する給与等の支給額を、継続雇用者が勤務した月数の合計で除して計算した金額をいいます。

■「一定の増加割合」とは   (表2)


適用事業年度
基準年度(24年度)比の伸び率
中小企業者以外中小企業者
平成28年4月1日~平成29年3月31日104%103%
平成29年4月1日~平成30年3月31日105%103%

(2)改正の概要        平成29年4月から30年3月末まで開始事業年度適用
同税制の適用要件③(前年伸率)が改正されます。これにより、従来の適用要件①②を満たすことで「給与等支給額の増加額の10%」の税額控除が適用でき、さらに改正後の要件③を満たすことで、賃上げ2%以上だと中小企業ならば最大で22%(10+12%)の税額控除を受けることが可能になります。


改正後の要件③ 税額控除額


平均給与等支給額:
前年度比2%以上増加
(2%未満は除外されます)
(賃上げ率2%以上の企業)
・前年度からの増加額について税額控除を2%上乗せ



平均給与等支給額:
 前事業年度を上回る
前年度比2%以上増加

賃上げ率2%未満の企業 
・税額控除10%を維持
賃上げ率2%以上の企業
・前年度からの増加額について税額控除を12%上乗せ

平成29年4月号 29年度税制改正について

【知って欲しい大切な情報】

【29年度税制改正について】

非上場株式の評価の見直

 皆様方の会社の株式評価は相続や贈与の時にしなければなりませんが、その非上場株式の評価方法のひとつである「類似業種比準方式」が、大きく見直されます。
 類似業種比準方式とは、事業内容が類似する上場企業の株価を基に、評価対象会社の1株当たりの配当金額、利益金額、純資産価額を比較することで株価を算定する方法です。

(1)現行と改正の背景

■現行制度における類似業種比準方式の計算式

A:類似業種の株価(①課税時期以前3ヶ月間の各月の株価のうち最も低い価格、②前年平均株価のいずれか)

B:類似業種の1株当たりの配当金額

C:類似業種の1株当たりの年利益金額

D:類似業種の1株当たりの純資産価額

b:評価会社の直前期末以前2年間における1株当たりの年配当金額

c:評価会社の直前期末以前1年(又は2年)間における1株当たりの年利益金額

d:評価会社の直前期末における1株当たりの純資産価額

 類似業種比準方式は上場会社の株価(A)を基に算定するため、中小企業の株価も著しく変動してしまいます。企業の業績に大きな変化がないにも関わらず、想定外に株価が高く評価される事にもなるのです。問題は、3 つの比準割合の構成比です。上記算式のとおり、現行制度では「配当1:利益3:純資産1」とされていることから、利益の高い会社の株価はどうしても高く評価されてしまいます。

 そこで、株価評価の基礎となる上場企業の配当、利益及び純資産という比準要素を見直し、中小企業の実力を適切に反映した評価ができるよう、計算方法が改正されることになりました。

(2)改正の概要
非上場株式の評価の見直し
 類似業種比準方式について、次の見直しが行われます。
■改正後の類似業種比準方式の計算式(赤字が改正部分)

A:現行制度上の①、②または③課税時期の属する月以前2年間の平均価格のいずれかを選択

B:類似業種の1株当たりの配当金額

C:類似業種の1株当たりの年利益金額

D:類似業種の1株当たりの純資産価額

b:評価会社の直前期末以前2年間における1株当たりの年配当金額

c:評価会社の直前期末以前1年(又は2年)間における1株当たりの年利益金額

d:評価会社の直前期末における1株当たりの純資産価額

平成29年3月号 29年度税制改正案について

【知って欲しい大切な情報】

【29年度税制改正案について】
前号で概略をお知らせしました。各項目で少し詳しくお知らせします。
■配偶者控除と配偶者特別控除の見直し
これらの改正は平成30年分以後の所得税について適用されます。
いわゆる「103万円の壁」というのは

基礎控除38万円 + 給与所得控除65万円 = 103万円

妻の収入を103万円以下とすることで、
 
妻が所得税を支払わずに済む
 夫が配偶者控除を受けることができる(控除額38万円)

というものです。103万円を超えても配偶者特別控除があるのですが、103万円が一人歩きしているようです。また、収入を抑える要因として、「103万円」という金額が企業の配偶者手当制度等の支給基準に採用されていることもあります。これらが、人手不足の要因の一つだということで「150万円の壁」へと拡大されることになりました。

①配偶者控除
配偶者控除(改正前)

控除額
控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
38万円 48万円

配偶者控除(改正後)    一律ではなく所得によって変わることになります。

居住者の合計所得金額控除額
控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円
32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円
1,000万円超 適用なし 適用なし

配偶者特別控除

配偶者特別控除の控除額(改正前)

配偶者の合計所得金額
38万円超
40万円未満
40万円以上
45万円未満
45万円以上
50万円未満
50万円以上
55万円未満
55万円以上
60万円未満
60万円以上
65万円未満
65万円以上
70万円未満
70万円以上
75万円未満
75万円以上
76万円未満
76万円以上
38万円 36万円 31万円 26万円 21万円 16万円 11万円 6万円 3万円 0万円

見方の例)所得76万円は、給与でいえば65万円控除前ですから141万円です。給与収入で140万円の場合、
所得は140万円-給与所得控除65万円=75万円ですので3万円の控除があります。

配偶者特別控除の控除額(改正後)

配偶者の合計所得金額

38万円超

85万円以下

85万円超

90万円以下

90万円超

95万円以下

95万円超

100万円以下

100万円超

105万円以下

105万円超

110万円以下

110万円超

115万円以下

115万円超

120万円以下

120万円超

123万円以下









900万円以下 38万円 36万円 31万円 26万円 21万円 16万円 11万円 6万円 3万円

900万円超

950万円以下

26万円 24万円 21万円 18万円 14万円 11万円 8万円 4万円 2万円

950万円超

1,000万円以下

13万円 12万円 11万円 9万円 7万円 6万円 4万円 2万円 1万円
1,000万円超 適用なし

 見方の例)妻の収入が150万円だと、所得は150万円-給与所得控除65万円=85万円以下ですので配偶者控除はありませんが、その替わりに38万円の配偶者特別控除があります。妻の給与収入が200万円の場合は所得は122万円ですので(別に計算表があります)3万円の配偶者特別控除があることになります。
 ただし夫が高額所得者だと上の表のように控除が少なくなります。なので高額所得者は増税になります。

平成29年2月号 29年度税制改正案について

【知って欲しい大切な情報】

【29年度税制改正案について】
比較的関係ありそうな重要項目の概略をお知らせします。「案」ですので、詳細が決まったら随時便りにてお知らせします。また例年通り研修会でお知らせする予定です。
○【所得税関係】配偶者控除、配偶者特別控除の見直し
いわゆる「103万円の壁」を解消するための改正です。配偶者特別控除について、38万円の控除を受けることができる配偶者の要件が、給与収入ベースで103万円→150万円になります。
配偶者特別控除については給与収入ベースで141万円→201万円になります。一方で、配偶者控除について、控除を受ける本人に所得制限(合計所得金額1,000万円以下)が加わったり、所得金額により控除額が段階的に引き下げられたり、給与収入1,220万円超(所得1,000万円超)の場合は配偶者控除・配偶者特別控除ともに適用できなくなる等、かなり複雑になります。 
 平成30年分の所得税、平成31年度分の住民税からの適用です。

【法人税・所得税関係】雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度の拡充
従来からある制度の改正です。一定の要件を満たす必要がありますが、給与増加額の10%を税額控除できるという制度です。ただし法人税額の10%(中小20%)が限度です。改正後は、
大企業→賃上げ率2%未満は適用できなくなります。2%以上だと10%に2%上乗せ12%になります。
中小企業→賃上げ率2%未満は10%、賃上げ率2%以上の場合2%上乗せで合計22%になります。
平成29年4月1日以降開始事業年度から30年3月31日の間に開始する事業年度に適用です。

○【法人税関係】生産性向上設備の即時償却等(中小企業経営強化税制)
青色申告書を提出した中小企業者等で経営力向上計画の認定を受けた者が、一定規模以上の特定経営力向上設備に該当する機械装置、工具器具、付属設備、ソフトウエアを取得し事業の用に供した場合に
・即時償却   ・7%(特定中小企業者等は10%)の税額控除(法人税額の20%を限度)
のいずれかを選択適用できるというものです。 
平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に事業の用に供した生産性向上設備に適用です。

【法人税】中小企業者等の軽減税率の特例の延長
現在、中小企業者等については、課税所得800万円以下の部分については、法人税税率15%(本則19%)に軽減されていますが、その期限が平成31331日以前開始事業年度まで2年延長されます。

【財産評価】非上場株式の評価方法見直し
中小企業の株式の評価方法の一つである類似業種比準方式の見直しがなされます。
・類似業種の上場会社の株価について、現行に加え前2年間平均額を追加する。 
・類似業種の上場会社の配当金額、利益金額、簿価純資産価額を、連結決算を反映させたものとする。
・比較する要素である、配当金額、利益金額、簿価純資産価額の比重を1:1:1にする。 
現行は比重は1:3:1であり、利益の額を重視して評価額を計算していました。改正により、利益がたくさん出ている会社の株式は、改正前よりも評価額が下がります。  
平成29年1月1日以降の相続等から適用。

固定資産税の3年間半分に減免、生産性工場設備の税額控除もしくは即時償却等、中小企業向けの投資促進税制が統廃合されたりして複雑化しています。経営力向上計画の策定を求められるものが多くなってきました。詳細を検討の上、皆様には随時お知らせしていきます。


平成28年12月号 損益通算について

【知って欲しい大切な情報】

【損益通算について】
○損益通算とは

税制上、収入は性質ごとに区分されています。そして、その区分ごとに課税の方法も異なります。
例えば、会社員が受け取る給料は「給与所得」、貸家の収入は不動産所得、配当は配当所得といった具合です。そこで、複数の区分から収入を得ていて、ひとつの区分に赤字があれば、ほかの区分の黒字から差し引けるのです。これが「損益通算」ですがうまく活用することが節税につながります。
損益通算の方法は複雑なのですが、ここでは基本的なことをお話しします。

○所得税の課税方法は、「総合課税」と「分離課税」とに分けられます。
各種の所得を合算したものに税率を乗じることを総合課税、個別に税率を乗じることを分離課税といいます。税制上の原則は総合課税です。例外として分離課税が存在します。

[総合課税の対象]
利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・譲渡所得(土地建物等・株式等の譲渡所得以外)・一時所得・雑所得。

[分離課税の対象]
譲渡所得(土地建物等)・譲渡所得(株式等)・山林所得・退職所得・先物取引による所得。
譲渡所得は総合課税・分離課税双方にあります。

○どうして「分離」して課税するのか
税制は所得が多いと税率も上がるという制度(累進課税)になっています。総合課税だけだと、住宅ローンが払えなくて自宅を売却した人に高額の税金がかかってしまったり、長年働いた後の退職金に大きな税金がかかってしまったりします。そのような事態を避けるために、一時的な高額所得は分離して所得税を計算するようになっています。

○損益通算の手順
損益通算のポイントは、まず総合課税、分離課税各々のなかで通算するという大原則があります。
損益通算できるのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」の4つで生じた赤字のみです。
その手順はいくつかの段階に分かれています。まずは区分(グループ)毎に通算します。

第一グループ:不動産所得と事業所得の損失。利子所得・配当所得・給与所得・雑所得から「不動産所得と事業所得の損失」を差し引くことが出来ます。
よくあるのは、給与所得+200万円、農業等の事業所得▲50万円 の通算で150万円となるといった事例です。

第二グループ:総合課税の譲渡所得の損失。一時所得から「譲渡所得の損失」を引くことが可能です。ここでいう譲渡所得には、分離課税のものは含まれませんのでご注意ください。
第一グループと第二グループ内で通算した後、なお損失があれば、他グループとの通算できます。
例えば、第一グループは+300万円のプラス、第二グル―プ▲100万円という場合には、2つを通算して+200万円とすることができます。

○損益通算の例外
損益通算の対象外となる場合もありますので注意してください。ご不明点は事務所担当者にお尋ねください。


平成28年11月号 マイナンバーの対応は進んでいますか・【中小企業向けの固定資産税の軽減特例】について

【マイナンバーの対応は進んでいますか 】
マイナンバーが28年1月から始動しています。
税務や社会保険などの手続きの際にマイナンバーが必要となります。

28年分の年末調整が始まりますが、
「平成28年分の給与所得者の扶養控除当申告書」に、給与所得者本人、扶養控除の対象者、控除対象配偶者等のマイナンバーの記載が必要です。
源泉徴収票への記載、確定申告書への記載も始まります。

マイナンバーについて事業者がやらなければいけない主なことをまとめておきます。

  1. 従業員に利用目的を通知し、マイナンバーを集める
  2. 会社のマイナンバー(法人番号)を調べる
  3. 地代家賃や報酬等の支払先(支払調書に必要)に利用目的を通知し、マイナンバーを集める
  4. マイナンバーの管理者・事務担当者を決める
  5. マイナンバー管理のセキュリティ対策
  6. 年末調整資料の作成・事務手続き


【中小企業向けの固定資産税の軽減特例】について 
機械装置に関する固定資産税(償却資産税)が3年間半額になるという制度です。
対象の期間は平成28年7月1日から平成31年3月31日までです。

この対象になるのは 
 〇 一定の機械装置(新品) 
 〇 販売開始から10年以内の物 
 〇 旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、 
   エネルギー効率等)が年平均1%以上向上するもの 
 〇 160万円以上 
 となっています。 
対象の期間は平成28年7月1日から平成31年3月31日までです。

この軽減措置の適用を受けるための手続きは下記となっています。 

  1. 工業会等による証明書を設備メーカー等を通して入手。 
  2. 事業所管大臣に当該設備の取得を含む「経営力向上計画」を提出し、
    認定を受ける。申請の際には、工業会等による証明書を必ず添付する。 
  3. 毎年1月の固定資産税の申告の際に、申請書の写し、認定書の写し、
    工業会等による証明書の写しを申告書類とともに市町村等に提出する。 
 この認定を受ければ、機械装置に関する固定資産税が3年間半額になります。 
 なお、既に取得した機械装置についても申請できますが、 
 この場合は取得から60日以内に計画を提出しなければなりません。 

 なお、計画申請から認定までにかかる日数は標準的には30日となっています。
 また、工業会等が発行する証明書の取得には数日~2か月間かかるようです。
28年7月号にも記載していますので、ごらんください。


平成28年10月号 企業格付けのこと

【企業格付けのこと 】
1.
企業格付けとは? その目的は?
 金融機関がつけるいわば企業の通信簿です。具体的には、各金融機関が取引先企業の今後3~5年間の信用力をスコアリング(点数付け)して10~15項目に分類しています。
 企業格付けは、金融機関が負う「信用リスク」、つまり、取引相手の契約不履行により、債権が期日に回収できなくなるリスクを把握管理する体制を構築するために行われます。 

2.企業格付けのもつ意味
 企業格付けは、
取引先の取引方針の決定、融資案件の審査、金利の設定、保全の検討等の判断の重要な要素となります。現在、多くの金融機関では企業格付けと連動した標準金利を設定しており、企業格付けを改善すれば金利の引き下げも可能になります。
 中小企業の場合、経営基盤が十分でないため、外部環境の変化等はすぐに売上や利益に影響し、財務内容を悪化させるケースが少なくありません。特に、資金繰りの悪化は経営の根幹にかかわってきます。
 中小企業の場合、資金の調達は金融機関からの借入に頼っている部分がほとんどです。したがって、この「企業格付け」を引き上げるための経営努力が必要です。

3.「企業格付け」はどのようにして評価されるのか?
 各金融機関が独自のスコアリングシート(得点表)を使用して、最低年1回、企業の決算書を基に行います。つまり毎年見直されていくということです。 
 「格付け」の構成要素には、財務評価(定量要因)と非財務評価(定性要因)があり、定量要因は計数によって、債務者償還能力を中心に安全性や収益性、成長性などを評価します。
 また、定性要因では経営環境や経営能力、将来性など数値に表れない項目を評価します。

4.「企業格付け」をアップするにはどうすればよいか?
 各財務評価を引き上げる対策としては、各種指標を構成している勘定科目の数値を好転することです。具体的には主に次の3つになります。
 a 自己資本の増加   b有利子負債の圧縮  c  償却前営業利益の増加

①「企業格付け」を引き上げる数値目標・行動目標を設定して、毎月経営をチェックしていくことが企業の体質改善には最も有効な手段です。むしろそれ以外にないのではないでしょうか。
格付けアップ目的で決算書を組み替える似非コンサルもあるようですが、本末転倒でありますので、そこはお間違えなく。 

②「定性要因」をアップさせるには 
通常の財務データでは判断できない総合的な企業評価項目をよく知り、その向上に向けて企業の体質改善を計画的に地道に行うことです。特に企業風土の改善を経営者が先頭だって取り組む姿勢が必要です。

5.企業が自社の「格付け」を知ることはできるのか?
 企業格付けは、貸付け審査の一部ですので、詳しい説明を受けることは一般的には難しい状況です。
当事務所では、TKC自計化システムFX2を利用して財務会計処理をしていただいている関与先につきましては、「企業格付け自己診断システム」を活用して、『金融検査マニュアル別冊』に対応したスコアリング・シート及びチェックリストにより、格付けを確認しています。

平成28年9月号 

【税務調査時に特にチェックされること 】
秋は税務調査の時期です。調査は申告内容が正しいかを確認するのが目的です。ここでは問題となりやすい点を掲げました。調査を甘く見てはいけません、きちんとしておけば何の問題もありませんが、どうしても疑いの目で見られます。あらぬ疑いを掛けられて問題が生じないように記録(証拠)を重視し適正に処理をしておくことが大切です。領収書に一緒に食事した相手の名前をメモ書きをしたり、証拠の保存を心掛けておくことは重要です。言うまでもありませんが、脱税は論外です。絶対にやめましょう。
1.大きな変動のあった科目
金額が大きく変動したときには、
その原因をきちんと分析して把握しておくことが大切です。税務調査のためだけでなく、経営的にも大切なことです。
2.現 金
現金の有高と帳簿残高に差異がある場合には、売上計上洩れ、仕入計上過大等、税務調査で疑いを掛けられ問題になりやすいのです。日頃から現金実査を行い記帳誤りがないように心がけましょう。
3.棚卸資産
在庫調べもれがないようにしましょう。事業年度末において必ず実地棚卸をし記録に残します。原始記録は絶対に捨てないで下さい。外注先保管品、外部倉庫預け品などを確認したり、期末日直前の入荷・出荷などに注意しましょう。棚ざらし等で評価減をするときには根拠を記録したり、必要に応じて写真をとったり、説明できるような資料を保管しましょう。
4.固定資産
新規購入資産は、
事業に使い始めた日がいつかが大切です。事業の用に供してはじめて減価償却できるからです。購入した資産をいつ事業の用に供したか確認できるようにしておきましょう。また、固定資産台帳と現物とが合っているでしょうか。毎期末には確認をしましょう。
5.資本的支出と修繕費
減価償却資産について、修理、改良等のため支出した金額が資本的支出となるか、修繕費となるかの根拠について説明できるよう、特に問題となりそうな場合は、写真、新旧図面、見積書、工事内容の説明書などの資料を整理しておく必要があります。
6.売上げ.仕入れ、経費
いつ売上し、いつ仕入れたのかがポイントです。特に
期末前後は要注意です。実際は今期の売上なのに翌期にしているのではないか、翌期の仕入れを前倒ししていないかを日報等で確認されます。売上はその商品等を相手方に引き渡した日に計上します。特に翌期初めの売上は「引渡しの日」が客観的に説明できるように、日報や納品書等の書類を整理しておくことです。
7.役員との取引 ・役員報酬
役員と会社の取引は特に注意が必要です。役員に極端に安く売ったり、
役員の個人的経費を会社につけ込んだりすることは厳に慎むべきです。会計に対する経営者の姿勢そのものが疑われ、他にも何か疑わしいことがあるのではと思われかねません。役員報酬は原則毎期首から3月以内に取締役会等で決めます(議事録整備)。期の途中の利益調整のための変更は原則損金にできないので注意が必要です。
8.関連会社間の取引
親会社と子会社などとの取引は、力関係で不合理な取引があるのではないかと思われがちです。そこで、取引については、特に
第三者からみても客観的な取引と認められるように根拠資料を作成しておきましょう。
9.雑収入や雑費
企業によっては
自販機の手数料や、廃品鉄くず等の売却収入がありますが、そのまま福利厚生に使ったりしてつい漏れがちです。福利厚生に使ったとしても、収入は収入、支出は支出で必ず計上しましょう。紹介手数料等は支出先等を明確に帳簿書類に記載しなければ、損金にできないこともありますので要注意です。
10.架空人件費がないか?源泉所得税は天引きされているか?外注費と給料が混乱していないか?
最近の税務調査時によく見られるポイントです。消費税にも関係してきますので注意しましょう。
11.領収書や契約書等に収入印紙が貼られているか?
12.消費税 帳簿と請求書の保存

仕入税額控除の要件として、帳簿記帳と請求書等の両方を保存しておかなければなりません。
上様領収書はだめです。帳簿記入は正しいか、請求書等に洩れがないかを確認しておきましょう。

 税務署さんは、税務調査で、その会社が支払った細かい経費を記録していかれます。払ったところがあれば受け入れているところがあるわけで、その受け入れた会社に税務調査に行った時に、それが売上や雑収入に計上されているかを確認します。小さい金額だからとか領収書を切っていないからといって(必ずしも領収書がなければ経費にできないことはありません)除外することは絶対に止めましょう。

平成28年8月号  「中小企業等経営強化法」の制定で企業はますます未来志向経営計画が求められる

○「中小企業等経営強化法」の制定で企業はますます未来志向経営計画が求められる
 中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部が改正され、「中小企業等経営強化法」となり、平成28年7月1日より施行されました。中小企業の経営強化を図るため、事業所管大臣が事業分野ごとに経営力向上のための取組等について示す指針を事業所管大臣において策定するとともに、当該取組を支援するための措置等を講ずるというものです。

これまで、私どもの事務所が皆様とともに経営計画を策定し予実の管理をしてきたことが、やっと認められる気がします。今後はより高いレベルでの事業計画を推進していきましょう。

○目標指標となる「ローカルベンチマーク」について
 これも既に皆様の決算報告会の中で経営分析指標として目標を設定していることです。
 企業が自らの経営状態を把握していくために、「ローカルベンチマーク」という新しいツールが経済産業省から提唱されました。ローカルベンチマークは、企業の経営状態の把握、いわゆる企業の「健康診断」を行うツールとして、経営者等や金融機関・支援機関等が、企業の状態を把握し、双方が同じ目線で対話を行い、課題を認識し解決の為の行動につなげていくための指標です。
当事務所では、既に取り組んでいる当たり前のことで、ちょっと遅いような気がするのですが・・・。

○「ローカルベンチマーク」とされる指標は
 地域経済(ローカル経済圏)で生き残っていくためにも「稼ぐ力」を高めていくことが必要です。
 今回、経済産業省がとりまとめた「ローカルベンチマーク」では、「財務情報」から6つの指標として、次の指標が掲げられています。

これらの指標は、既に皆様に提供している月次試算表や決算書に掲載されている指標です。

 (1)売上高増加率(売上持続性:売上高/前年売上高)
 (2)営業利益率(収益性:営業利益/売上高)
 (3)労働生産性(生産性:営業利益/従業員数→一人あたり営業利益)
 (4)EBITDA有利子負債倍率(健全性:(借入金-預金)/(営業利益+減価償却費) 
   →借入金返済能力(年数)です。預金を引いてあり、経常利益でなく営業利益を使っています。
 (5)営業運転資本回転期間(効率性:(売上債権+棚卸資産-買入債務)/月商
 (6)自己資本比率(安全性:純資産/総資産)

更に「非財務情報」から4つの視点として、
 (1)経営者への着目 (2)関係者への着目 (3)事業への着目 (4)内部管理体制への着目
を掲げています。
 企業として生き残っていくためには、経営者自身も課題に気づき、緊張感を持って経営改善に向けた目標の設定や共有、「PDCAサイクル」を機能させていくことが必要ということです。

○ ローカルベンチマークは金融機関にも取り入れられる
 金融機関側でも企業の成長余力や持続性、生産性等の評価を行うこが期待されています。平成27年9月に金融庁が公表した金融行政方針の中でも、企業の価値向上・経済の持続的成長と地方創生に貢献する金融業の実現に向けた施策のひとつとして、金融機関に対して中小企業の事業性を評価した上で融資を行うことを求めていることは事務所便り7月号でお知らせしたとおりです。

2016年7月号  生産性工場設備にかかる固定資産税の軽減措置について

生産性工場設備にかかる固定資産税の軽減措置について
 機械装置等にも償却資産税として固定資産税がかかっています。
この償却資産税を割引するという制度です。機械装置の導入予定があれば、適用できないかを注意して当事務所にご相談ください。中小企業のみに適用される制度です。

(1)制度創設の背景
わが国の経済は緩やかな回復基調にありますが、地方によっては経済環境に厳しさが残っています。ローカル・アベノミクスの更なる浸透による地域経済の活性化に向けて、地域の中小企業による設備投資の促進を図るため、固定資産税の期間限定で特例措置が創設されました。

(2)制度の概要
① 中小企業者等が、「中小企業等経営強化法」の施行日(7月1日)から平成31年3月31日まで期間に一定の機械及び装置を取得した場合、その固定資産税について、最初の3年間に限り、課税標準を価格の2分の1とする措置が創設されました。

対象者① 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
② 資本若しくは出資を有しない法人の場合、常時使用する従業員の数が1千人以下の法人
③ 常時使用する従業員の数が1千人以下の個人
対象資産次の①〜③の要件をすべて満たす機械及び装置
① 販売開始から10年以内のもの
② 旧モデル比で(生産性単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等)が
  年平均1%以上向上するもの
③ 1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
内 容固定資産税の課税標準を、最初の3年間に限り2分の1とする
適用期間中小企業等経営強化法の施行日(28年7月1日)から平成31年3月31日まで期間

② 「中小企業等経営強化法」の施行日以降に取得した設備となっています。施行日は7月1日となっています。
③ 適用を受けるためには、企業が経営力向上計画を策定し、経済産業局に提出し、認定を受けることが必要です。
基本、認定後に取得した設備が対象になるわけです。
ただし、認定前に取得した設備についても、「取得日から60日以内に計画を提出」すれば受理されることとなっています。
④ 申請に当たっては、工業会が発行する「証明書」が必要です。企業としては、設備購入メーカーにこの対象になるかどうかを確認してください。
⑤ 申請の書類は詳細調査中です。いずれにしても認定支援機関である当事務所にて作成支援することになる予定です。

平成28年6月号  源泉徴収について

○源泉徴収について
 最近、税務調査で売上や経費の処理はきちんとしてあったとしても、それ以外に源泉徴収の件が細かく見られ、源泉徴収をしていなかったとして、源泉徴収義務者である支払者に税金を払って下さいという事例が出ています。本来会社が負担する税ではなく会社が引き忘れていただけなのですが、会社は引く義務があるので、その義務を果たして下さいというわけです。
その場合、いったん会社が支払い、支払った従業員さんや相手先に「源泉徴収をしていなかったので、遅ればせながら源泉税を戻して下さい」と請求しなければならなくなります。退職者になればこれはなかなか難しく、結局とれないとなりがちですので、充分注意して下さい。

1.源泉徴収の趣旨と内容
 給与や報酬などの支払いを行う者が、その支払いを行う際に、所得税を差し引いて支払います。差し引かれた税金は、支払者が代わって定期的に納付をする制度です。その支払者のことを源泉徴収義務者といいます。つまりは事業者が源泉徴収をしなければならないのです。毎月の源泉徴収実務は、「源泉徴収の対象となるかの判定」→「金額計算と徴収」→「納付」の手順になります。

2.源泉徴収の対象となる支払について
 源泉徴収の対象は法律で定められているものに限られています。源泉税を引かなければならないのは給料だけではありません。むしろ給料以外の源泉税の処理に問題が起こりますので注意しましょう。 代表的な取引としては次ようなものがあります。
○株主に配当を支払うとき:会社のほうで先に源泉税、上場株式以外は所得税20%+復興特別所得税0.42%=20.42%)を引きます。
講師の謝金:会社の研修会に大学教授を招き、講演料を渡すときも10.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%)の源泉税をさし引きます。例えば手取りで5万円の講演料を渡したいときは55,685円の講演料として、源泉税5,685円としないと計算が合いません。
士業の方に支払う報酬:弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、社会保険労務士、司法書士等の専門士業の方に報酬を支払うときも決められた源泉税を差し引きます。

3.源泉徴収金額の計算方法
 源泉徴収金額の計算は支払内容によって変わります。一般的な給与と報酬の計算方法を紹介します。 給与の源泉徴収税額は、支給金額から社会保険料等の控除を行い、その金額を扶養者の数等を考慮して源泉徴収税額表に当てはめると算出できます。
 源泉徴収をする所得税及び復興特別所得税は、税額表に記載されている「甲欄」か「乙欄」又は「丙欄」で税額を求めます。「給与所得者の扶養控除等申告書」が提出されている場合には「甲欄」、提出がない場合には「乙欄」で税額を求めます。「丙欄」は「日額表」だけにあり、日雇いの人や短期間雇い入れるアルバイトなどに一定の給与を支払う場合に使います。
 ここで大切なのは、「給与所得者の扶養控除等申告書」をもらっている人とそうでない人はもらっている人の方が源泉税が少ないということです。必ず採用の時にこの申告書をもらって下さい。
 報酬の源泉徴収税額は、支払金額に税率(概ね10.21%)を掛けて計算します。専門家の種類によって源泉徴収の方法が異なりますので注意が必要です。迷ったら支払う前に必ず税理士事務所に相談下さい。
 
 消費税の取り扱いですが、源泉徴収は、消費税も含めた金額を対象に計算を行います。ただし、
請求書で報酬金額と消費税額が明確に区分されている場合に限り、消費税抜きの報酬金額を源泉徴収の対象とすることができます。
 例えば、請求書に報酬108,000円とだけ記載すると源泉徴収税額は、11,026円(108,000円の10.21%)となりますが、請求書に報酬100,000円と消費税8,000円を区分して記載すると源泉徴収税額は、10,210円(100,000円の10.21%)にすることができます。

4.特に注意すべきこと
 給与の源泉徴収はあまり問題になりませんが、報酬の源泉徴収は、そもそも源泉徴収の対象となるかどうかの判定をしなければなりません。源泉徴収の判断と責任を追うのは報酬を支払う者つまり源泉徴収義務者です。支払者は受け取った請求書に源泉徴収の記載がなかったり、たとえ源泉徴収をしないように依頼等があったりした場合であっても、源泉徴収をしなければなりません。もし源泉徴収を怠った場合、不納付加算税と延滞税が別途課税されますので、注意しましょう。
 請求する側は、取引先とのトラブルを回避するため、報酬の対象となる業務が源泉徴収の対象となるかどうかを把握し、消費税の金額もきちんと明示して、源泉税の額も明示して、請求書を発行するようにしましょう。

5.源泉徴収金額の納付について
 源泉徴収した者は、実際に源泉徴収を行った月の翌月10日までに、納付します。例えば、3月1日~31日の間に支払いを行った場合、4月10日までに納付を行います。
 小規模の事業者が毎月源泉徴収した税金を納付するのは事務的にも大変なため、給与の支払人員対象者が10人未満の源泉徴収義務者が「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出して承認を受けると、1月から6月までの所得税は7月10日まで、7月から12月に支払った分に対する所得税は、翌年の1月20日までに納付すればよくなります。

平成28年5月号 M&Aにまつわる話:主に税務について

1.”事業譲渡”とは

 事業譲渡は株式を売るのではなく事業を売ることになります。一般的には事業所の土地建物、機械や備品を売る、在庫商品を売る、場合によってはお客様がついているのでその価値を売る、といったイメージです。事業用の資産を売るといった方法です。

 この場合だれが、利益を上げるかといえば、売る方の会社が、対象の事業を買い手に売って対価をもらう訳ですので、利益があるのは、売る方の企業という事になります。利益が出た場合には、当然に税金を負担しなければならないということになります。ただし、必ずしも利益が出るとは限りません。

2.税金はどうなる?いくら負担するのか?

 次に、いくらの税金を負担するのかという事ですが、これは法人と個人によって分かれます。基本的に法人は、法人税と事業税と住民税を負担します。個人の場合は所得税を負担することになります。

 法人の場合は、“株式譲渡”であれ“事業譲渡”であれ、通常の法人の事業損益の中に入りますので、このM&A( 株式譲渡、事業譲渡)によって利益を得た場合は、他の事業の損益と合計された上で利益がでれば税金がかかります。法人税率は概ね30%前後となるでしょう。

3.個人で事業譲渡の場合は

 まれに”個人事業”を誰かに買ってもらう事もあるでしょう。個人事業の場合は、株式会社ではありませんので、当然のごとく株式は存在しません。従って”株式譲渡”という手法はありません。結果として”事業譲渡”という方法しかありません。その場合は、個人の譲渡所得や事業所得として所得税を支払うことになります。つまりはM&A で所得(利益)を得ると、所得税を支払う必要があるわけです。

4.消費税について

 消費税についてですが、“ 株式譲渡” の場合は資本取引(簡単に言えば物品の販売ではない) なので消費税の対象外ですが、“事業譲渡”の場合は、税法上は普通の資産の売買と同じだと考えられていますので、消費税の対象となり、消費税分8%がON されることになります。従って事業譲渡の場合は、“税込み総額でいくらかかるのか?”ということを、売り手買い手で明確にしておく必要があります。

例えば、1億円でM&A をするといっても、株式譲渡と事業譲渡では実質の金額が異なり、事業譲渡だと1億800万円となりますので留意が必要です。

5.消費税について

 “のれん”について概略を説明します。“のれん”について簡単に言えば、純資産より高い金額で購入( 買収) する場合に、“ のれん” というものが発生することになります。” のれん” は” 営業権” ともいいます。例えば、純資産2億円(資産が時価5億円、負債が3億円といった場合)の会社があったとして、固定のお客様がついているとか、ブランドの価値があるとかで2.5億円で買ったとします。

その場合は、2.5億円と2億円の差額である0.5億円が“営業権”ということになります。そこは貸借対照表の数字で表せない価値でもあります。

 事業譲渡により発生した“営業権”というのは、税務上5年以内に償却が可能です。という事は、純資産より高く投資をした分に関しては、損金として落とすことができるのことになります。となると、買った会社(買収側)が利益を出しているということを前提とすると、この事業譲渡のスキームを使う事によって、投資した金額の一部(売買代金− 純資産)を損金に落とすこともできるというメリットもあります。

平成28年4月号 M&Aにまつわる話

1.事業の承継をする方法のひとつにM&Aという手法があります

 親族の後継者がいれば社長をその後継者に交代をすればいいだけのことですが、いない場合には有力な社員に引き継ぐことも考えられますが、借入がある場合その連帯保証人になる必要がある、株式の取得資金がない等、なかなか難しいものです。そこで、会社を欲しい人に売却することになります。
会社を売るとは、誰が何を売ればいいのでしょうか。その前に会社は誰のものかを理解する必要があります。会社は会計的には株主のものです。社長のものでも、従業員のものでもありません。会社には会社名義の土地や建物、売掛金などの資産もあれば借入金、買掛金などの負債もあります。それらも実は全て株主のものなのです。

2.会社を売るとなれば会社の株を売ればことが済む

 つまり”株式譲渡”の手法です。具体的にいいますと、中小零細企業は一般的には社長一族が株式を持っていますので、一族が株式を譲り受けたい者に売却します。そして社長も退任し、新社長が就任します。これで終わりです。
 その他に”事業譲渡”という手法もありますが、今回は”株式譲渡”についてお話しします。

3.いくらで売買するのか、値決めはどうするのか

 株の価額算定の基本資料となるのが決算書です。時価純資産はいくら?過去の利益は?将来の見込みは?といった要素で価格が決まってきます。そこで、買う方としては、会社の決算書の数字は正しいのか?簿外の負債があるのではないか?等々の検証が必要になります。税理士や公認会計士といった会計の専門家がその検証に携わることになります。法的な問題等の検証は弁護士や司法書士といったその道の専門家が検証します。これらをデューデリといいます。その他雇用をどうするかといったことも売る側(旧社長)にとっては、これまで共に会社を構築してきた社員ですから重要な要素です。

4.M&Aの典型的手法である株式譲渡の税はどうなる

 M&Aには税務の問題は必ず絡むことになります。”株式譲渡”は株の売り買いですのでそこに利益が生じれば税金も生じます。誰に税金が発生し、誰が税金を負担しなければならないのか?といった事を考える時には、誰が利益を稼ぐのか?を考えると、分かりやすいと思います。
 株式譲渡の場合の登場者は売り手・買い手・対象会社となります。株を売った方(個人、会社)が利益を得ます。勿論、買った(投資した)金額より悪い(低い)金額でしか、株を買ってもらえないケースでは利益はないので税金はありません。大部分が株を売った方は利益を得ますので、税金を負担しなければならない訳です。ですので、売り手である元々の株主が税金を納めることになります。

5.いくら負担するのか?法人の場合と個人の場合は違います

 次に、いったいいくら税金を負担するのか?という事ですが、これは法人と個人によって分かれます。
法人が持っていた株を売った場合は、法人税等を負担しますし、個人の場合は所得税等を負担することになります。購入した方には当然ですが特に税金はありません。
 法人の場合は、法人の損益の中に入りますので、この株式譲渡によって儲かった場合は、その他の利益と合計された利益に税金がかかります。株式譲渡の分だけ税率が異なるということはありません。
 一方、個人の場合で、“株式譲渡”の場合は株式の譲渡所得という事になりますので、20%の税金となります。ですので、通常の所得税や法人税とくらべると、税負担はかなり安くなります。
20%を税金として払い、残り80%は手元に残ることになります。

6.消費税について

 次に消費税についてですが、“株式譲渡”の場合は消費税が掛かりません。これは、資本取引ですので、消費税の対象外となっています。

平成28年3月号 決算の時に注意すべき事

決算を迎えるにあたり、最も重要となるのが期間損益という考え方です。
つまり、今期の利益がいくらなのかを計算するわけですから、売上は今年度にあげるべきなのか、経費は今年度のものなのかといった事を重点的に検討することが基本になります。税理士事務所でも確認をしていきますが、間違った資料が出てしまうと間違った決算申告になってしまいます。
以下、留意すべき点を簡記します。

○現金残高の確認

 現金の実在残高と帳簿上の残高が一致しているか否かの再確認をしましょう。特に現金商売のところは動きが大きいので要注意です。金庫残高が多いのは危険ですので、できるだけ銀行に預けましょう。

○売掛金残高の確認

 取引先毎の残高が一致していることを確認します。できれば取引先に対し残高確認書により確認を行うことが望ましいと思われます。確認することでいわゆる不正を防止できます。長期滞留先の状況も確認しましょう。貸倒損になるのではないかの判断の材料として必要です。

○受取手形の確認

 受取手形のうち、裏書譲渡・割引手形を改めて確認し、その所在及び期日を再確認しておきましょう。

○棚卸

 自社の棚卸評価方法を再確認し、必ず実地棚卸を実施しましょう。そしてその棚卸の計算の原始資料(きちんとエクセルに書き写したものだけでなく)も必ず保管しましょう。税務調査で確認されます。併せて、決算時点で適正在庫となるよう仕入の調整を行うことも有効です。期末頃に仕入れた物の確認漏れがないか、別の倉庫に入れている物が漏れていないか等特に注意しましょう。工事業者であれば仕掛工事がないかの再確認を特に期末は綿密に確認しましょう。

○仮払金の整理

 決算を迎えるにあたり、仮払金・立替金などについては、できるだけ整理しておきましょう。

○固定資産の確認

 これまでに計上してある固定資産が実在するかどうかについて、現物と確認しましょう。既に滅失しているものは速やかにその理由を確認し、除却する必要があります。

○買掛金残高の確認

 〆後の仕入について漏れなく計上する必要があります。〆後の仕入については必ず納品書等により確認してください。棚卸との整合性も確認しましょう。

○未払金残高の確認

 期間損益を求めるにあたり、当期発生した経費についても計上する必要があります。買掛金同様に相手からの請求漏れがないか確認しましょう。

○売上高の確認

 〆後の売上についても漏れなく計上する必要があります。万が一にも漏れた場合には、脱税行為となりますので、請求漏れがないかなど充分に注意しましょう。原則、商品製品の引渡しの時、工事の完了引渡の時が売上計上時期です。期末頃の完成で微妙な場合は税理士事務所に相談の上検討しましょう。

○資産計上すべき取引の有無

 備品消耗品費等、固定資産に計上すべき取引が無いかどうかは、月次の段階で確認済みですが、改めて確認し、資産計上すべきものについては計上する必要があります。決算利益に影響しますので、事前に適正な利益検討が出来るようにしておく必要があります。

平成28年2月号 平成28年度税制改正大綱の概要:主に法人税関係をまとめました。

所得税関係は、特に重要な大きな改正はありませんでした。追ってお知らせします。

1.法人税率が引き下げられます。

法人税率が28年度、30年度に引き下げられ、最終的に国と地方を合わせた実効税率が30%を切ります。
現在法人税率は23.9%ですが、 28年4月開始事業年度から(29年3月決算)~30年3月開始事業年度(31年2月決算)まで が、23.4% それ以降の30年4月開始事業年度からは23.2%に引き下げられます。
中小企業の800万円以下の15%という軽減税率は、当面従来のままですが、今後検討されることになっています。

これにより資本金1億円超の会社(普通法人)の実効税率(法人税や事業税・地方税合計)は、 現行32.11%から29.97%になります。
資本金1億円以下の会社は軽減税率がありますので、所得年800万円と仮定した場合、 現行実効税率22.32%ですが、改正後もほぼ横ばいです。

2.外形標準課税が改正されます。

これは大企業のみの税制です。27年度から複雑な税体系となっていますが、またしても改正で、 28年度から法人事業税が引き下げられ、その分地方法人特別税が引き上げられます。

3.欠損金の繰越控除の繰越期間の変更

大企業は繰越限度額が28年4月開始事業年度から60%になり段階的に下がって30年4月開始事業年度は50%と縮小されます。替わりに繰越期間が9年から10年に延長されます。
中小企業は従来通り100%控除できます。繰越期間の延長は中小企業も10年になります。
期間延長は少し先の話で平成30年4月開始事業年度において生ずる欠損金からの適用です。

4.企業版ふるさと納税制度の創設

個人のふるさと納税はすっかり定着したようですが、その企業版が開始されます。
一定の寄付をした場合に通常の損金算入措置に加えて、税額控除ができる制度です。
しかしながら、個人と違い寄付先は対象が限定されます。認定地域再生計画に記載された地方(国が認定します)に対する寄付のみが対象になります。

5.償却資産税の軽減措置の創設

機械等には償却資産税(機械や備品等に対する固定資産税)が賦課されています。
この固定資産税について、中小企業に限り一定の機械装置を取得した場合当初3年課税標準を1/2にする制度が創設されます。
ただし、生産向上計画の策定認定が必要です。一台一基160万円以上等の条件があります。

6.減価償却制度の見直し

平成28年4月以後取得する建物附属設備及び構築物について定率法が廃止され、定額法に一本化されます。

7.消費課税の改正

平成29年4月1日から10%へ引き上げられますが、同時に消費税軽減税率が適用されます。
旧税率が適用される経過措置と合わせて、当分の間5%・8%・10%の税率が混在することになります。
会計システムの変更(TKCシステムは対応します)と、食品小売企業ではPOSの入替の検討が必要です。

2015年12月号 マイナンバーについて

マイナンバーについて

「通知カード」が郵送されています。どうするのだろうという疑問も多いようです。
個人側から見た良くある質問をまとめてみました。

1.マイナンバーを取り扱う場合に何に注意すればいいですか?

マイナンバーは生涯にわたって利用する番号なので、「通知カード」や「個人番号カード」をなくしたり、マイナンバーをむやみに提供したりしないようにしましょう。詐欺が横行しています。マイナンバーの通知や利用、個人番号カードの交付などの手続で、行政機関などが口座番号や口座の暗証番号、所得や資産の情報、家族構成や年金・保険の情報などを聞いたりすることは一切ありません。

2.「個人番号カード」は何に使えるのですか。最初に届く「通知カード」との違いは何ですか?

送ってきた番号の書いた紙が「通知カード」です。申請するのが「個人番号カード」です。個人番号カードは、顔写真のついたカードであり、写真をつけて申請しないと入手できません。無料です。

3.個人番号カードは必要ですか?

通知カードは番号だけ書いてありますので、それだけでは本人のものかどうか確認できません。免許証などをあわせて提示することになります。個人番号カードは写真付きですので間違いないことを1枚で行うことができます。身分証明書としても使用できるわけです。また搭載されているICチップを利用して図書館カードや印鑑登録証など地方公共団体が定めるサービスに利用でき、e-Tax などの税の電子申請等が行える電子証明書も標準搭載されます。

4.個人番号カードの取得の申請はしなければいけませんか?義務なのですか?

個人番号カードは申請により市町村長が交付することとしており、カードの取得は義務ではありません
しかし、個人番号カードは、上記3のような機能がありますので、若い方、お勤めの方は写真付きを持っていたほうがいいでしょう。政府としては、多くの国民の皆様に取得してほしいと考えています。

5.通知カード・個人番号カードのコピーを提出しなければいけませんか?

税務の手続き上、勤めの会社にマイナンバーを知らせることになります。書類には番号を書きますが、正しいかの確認のため、通知カードか個人番号カードを提供しなければなりませんが、そのものをコピーして提出する必要はありません。

6.個人番号カードを申請することで、各人にマイナンバーが付与されると思っていたが?

郵送された通知カードに既にマイナンバーが書いてあります。番号自体を取得する為に申請をするということではありません。申請は上記3に書いているように、写真付きカード(個人番号カード)を欲しい人がするものです。

7.個人番号カードの更新はあるのですか?

20歳以上の場合は10年、20歳未満の場合は5年間が有効期限ですので更新します。写真のない通知カードには有効期限はありません。

8.結婚したら番号変わるのですか?苗字の変更は?

番号は一生変わりません。結婚したら婚姻届出提出時に苗字の変更を行い、市役所から通知がくることになっているようです。(市役所談)

2015年11月号 福利厚生費か給与か?

1.福利厚生費か給与か?

「この費用は福利厚生費でいいのか?給与加算で源泉徴収しなければならないのか?」
よく迷うところです。福利厚生費だと本人の給与とはみないわけですから源泉をする必要はありません。
では、そもそも「福利厚生費」と「給与」の境目とはなんでしょう?
福利厚生費とは、従業員の福利、慰安等のために支出する次のような費用をいいいます。

1 法定福利費

法律の規定によつて支出する健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの事業主負担分の金額など

2 その他の福利厚生費

(1)慰安旅行などの費用・・従業員の慰安のための旅行・運動会等の費用で、通常必要とする費用

(2)記念行事などの費用・・開業記念日、国民の祝日、診療所新築記念などに際して、従業員におおむね一律に供される飲食に要する費用

(3)従業員の慶弔費・・従業員やその親族の慶弔・禍福に際し、支給される金品に要する費用

(4)残業食事代・・従業員や事業専従者が、たまたま残業する場合に供する食事に要する費用

例えば、従業員の給料が30万円とします。現金で渡せば、この30万円に対して源泉税を天引きしますので、手取りは減ります。そこで、「従業員の昼飯代は会社で全額負担、毎月5万円かかるとすれば、給料20万円だけど、15万円にすればほとんど税金引かなくていいな」と考えます。これがまかり通ると、税金を払う人がいなくなってしまいかねません。そこで、税の世界では、どれくらいまでなら「福利厚生費」でよいけど、超えたら「給与」とみなします、ということが決まっているわけです。

2.従業員の慰安旅行についてはどれくらいまで「福利厚生費」でOK?

慰安旅行については、次のような取り決めがあります。

  • ■4泊5日まではOK(目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数によります。)。
  • 旅行の参加行事が一般的であること
  • 従業員全員を対象とし、旅行に参加した人数が全体の人数の半分以上であること。
  • 自己都合による不参加者に金銭を支給しないこと(もらった人は給与になります)

などの要件を満たしていないと福利厚生費とは認められないとなっています。
永年勤続記念旅行券の支給に伴う課税上の取扱い」では、満25年勤続者に対する10万円相当の旅行券(満35年勤続者に対しては20万円相当の旅行券)については課税しなくてよいとされています。

2.家賃の補助はいくらまで?

使用者が、使用人に対して無償又は低額の賃貸料で社宅や寮等を貸与することにより供与する経済的利益については、一定の額と徴収している賃貸料との差額が給与として課税されます。
 ただし、賃貸料相当額の50%相当額以上を使用人から実際に徴収している場合には、給与としなくて良いことになっています。役員さんは別の取り決めがありますのでご注意を。

3.食事代の補助は?

外から購入した食事を支給する場合、食事代の一部を従業員さん負担させている場合には、その月毎の負担額がその月毎の食事代の50パーセント相当額以上であつて、かつ、その食事代と負担額との差額が3,500円以下であるときは、その差額については課税されないことになっています。
 たとえば、月額18,000円の食事代のうち10,000円を負担させている場合を例にとると、使用人の負担額は食事代の50パーセント以上になるが、その差額(8,000円)は3,500円を超えることになるから、その差額の8,000円は給与として課税されることになります。
 なお、使用人に支給する食事のうち、残業または宿直もしくは日直をする場合に支給する食事については課税しなくて差し支えないものとされています。

4.有効な活用をしましょう。

逆に言えば。「この範囲内であればOK ですよ。」と、国税が事前に認めてくれているのです。その範囲で節税していけばよいのではないかと思います。

2015年10月号 帳簿書類の保存の期間について

帳簿書類の保存の期間について

各種の帳簿、注文書、契約書、送り状、領収書等の書類の保存については、かなりの保管場所を要するところから何か良い保存方法がないかと質問があります。

1.結論、会社法と税法の規定の違い

税法では原則7 年の保存ですが、会社法では帳簿閉鎖の日から10年間となっています。このように、保存期間の目的が会社法と税法では違うのです。したがって

「会計帳簿などは、税法の規定にかかわらず10年間保存してください。」
「領収書や、請求書については、税法に規定する7年間保存してください。」

と答えています。詳しくは下記の通りです。

2.税法では原則7年保存が必要

青色申告法人は、以下の帳簿書類を整理し、7年間保存しなければならないものとされています。

(1)仕訳帳、総勘定元帳等の帳簿並びに資産、負債及び一切の取引に関して影響を及ぼす帳簿

(2)棚卸表、賃借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類

(3)取引に関して、相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

3.マイクロフィルムによる保存も可

帳簿書類については、紙による保存が原則ですが、一定の保存期間を経過したものについては、外部撮影型のマイクロフィルムにより保存することが認められています。ただし機械等の制約もあり、整備コストの問題など現実的には難しいようです。

4.欠損が生じている場合の保存期間の注意

平成23年12月の税制改正により、青色欠損金額の繰越控除期間が7年から9年に延長されたことに伴い、延長された期間に係る欠損年度の欠損金を控除するためには、欠損金額が生じた事業年度の帳簿書類の保存が要件とされました。したがって、青色申告法人の帳簿書類の保存期間としては、今までどおり7年間となりますが、平成20年4月1日以後に終了した欠損金の生じた事業年度においては、帳簿書類の保存期間が9年間に延長されました。

また、平成27年度税制改正により、平成29年4月1日以後に開始する欠損金額の生ずる事業年度においては、帳簿書類の保存期間が10年間に延長されています。

5.電磁的記録による保存方法

自己が電子計算機を使用して作成する帳簿書類で一定の要件を満たすものは、紙による保存によらず、サーバ・DVD・CD 等に記録した電磁的記録(電子データ)のままで保存することができます。

この場合はあらかじめ所轄税務署長に対して申請書(備付けを開始する日の3 月前の日まで)を提出し、承認を受けることが必要です。

6. 一定の書類のスキャナ読取りの電磁的記録の保存方法

保存すべき書類のうち、一定の書類については、紙でなくスキャナ読取りの電磁的記録による保存を行うことができます。なお、スキャナ読取りの保存を行う場合には、あらかじめ所轄税務署長に対して申請書(保存を行おうとする日の3月前の日まで)を提出し、承認を受けることが必要です。

ただし、整備コスト、ランニングコスト面等から現実的には難しいでしょう。

5.重要書類は永久保存を

たとえ保存期間が定められていても、以下のような書類は重要書類として永久保存すべきと考えます。
定款、登記関連書類、免許許可関連書類、不動産関連書類 その他重要な契約書・申請願・届出書 等

2015年9月号 修繕費として損金(経費)にできるか、資産計上して減価償却すべきか?

1.修繕費として損金(経費)にできるか、資産計上して減価償却すべきか?

固定資産について支出した金額が資本的支出に当たるかそれとも修繕費にあたるかについては、迷うところです。事例をもとに具体的に検討してみましょう。
次のような支出は税務上修繕費に認められるでしょうか?という質問です。

  1. 前期末の取得価額50万円の固定資産について、8万円の支出で修繕した。
  2. 前期末の取得価額300万円の固定資産について、25万円の支出で修繕した。
  3. 前期末の取得価額600万円の固定資産について、90万円の支出で修繕した。
  4. 前期末の取得価額800万円の固定資産について、120万円の支出で修繕した。

なお、この120万円には、用途変更のための模様替えのもの70万円が含まれています。

2.「資本的支出」ってなに?

固定資産の修理、改良等のために支出した金額については、その支出金額のうちその固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなる部分の金額が資本的支出となります
とはいってもこれではわかりにくいです。そこで、実務上は、資本的支出か修繕費かの区分については、法人税基本通達において次のように具体的に定められているものがあります。

3.税務上修繕費にできるものを具体的形式的にどう決めてあるのか?

①「少額又は周期の短い費用の損金算入」では、一の修理、改良について修繕費として損金経理をすることができるものを例示しています。
そのなかに、費用の額が20万円に満たない場合は修繕費として損金にしてよいとなっています。
 「その費用の額のうちに資本的支出か修繕費であるかが明らかでない金額がある場合」において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金にできるとされています。この適用は明らかでない場合に限りますので注意が必要です。
 (イ)その金額が60万円に満たない場合
 (ロ)その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
③ 「資本的支出と修繕費の区分の特例」では、資本的支出であるか修繕費であるか明らかでない金額がある場合において、法人が継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認めることとされています。

4.以上のことを参照して、事例について検討します。

(1)については、支出金額が20万円未満ですから、上記①により、全額修繕費となります。
(2)については、支出金額が固定資産の前期末の取得価額300万円の10%相当額以下ですから、上記②の(ロ)により、全額修繕費になります。
(3)については、上記③により、支出金額の30%相当額(90万円×30%=27万円)と固定資産の前期末の取得価額の10%相当額(600万円の×10%=60万円)のいずれか少ない金額である27万円が修繕費となり、残額の63万円(90万円-27万円)資本的支出となります。
(4)については、支出金額のうち70万円は用途変更のための模様替えの費用とのことですから、もともと資本的支出に該当します。
その残額の50万円については、上述の②の(イ)により判定しますと修繕費ということになります。

2015年8月号 相続ってなんだろう

1.相続ってなんだろう

相続人とは、相続財産を受け継ぐ「権利」がある方のことをいいます。ただし、相続財産を受け継ぐ「権利」があるだけで無く、相続人には相続財産を適切に管理する「義務」も負わされています。そのため相続人となる方は、相続財産を何も受け取るつもりがなくても、必ず何らの形で遺産相続の手続きに関わらなければなりません。相続財産といいますが、これには資産(積極財産)のみならず借金(消極財産)も含みます。

2.誰が相続人となるのでしょう

誰が相続人になるかについては、民法で定められています。亡くなった方に近い関係の方から、順番に相続人になるようになっています。
例えば夫が亡くなれば、奥さんと子供が相続人となります。また子供がいなければ、親、兄弟姉妹という順番に相続人となる方が順次変わっていきます。
亡くなられた方(被相続人)の配偶者である夫または妻は、どんなときも相続人となります。
配偶者は、亡くなられた方に子供がいようが親がいようが兄弟姉妹がいようが、必ず相続人となるのです。従って、必ず遺産相続の手続きに参加することになります。

3.相続人には、順番があります

相続人には、優先順位があります。子供→親→兄弟姉妹という順番で相続人が決まります。ただし配偶者である夫または妻は、どんなときでも必ず相続人になります。
つまり順番が1番である子供がいるときは、親と兄弟姉妹は絶対に相続人とはなりませんし、子供と親が同時に相続人となるとか、親と兄弟姉妹、子供と兄弟姉妹という組み合わせも、絶対にないことになります。
従って、誰が相続人となるかは、下記の7パターンということになります。

  1. 配偶者(夫または妻)と子供
  2. 配偶者と親
  3. 配偶者と兄弟姉妹
  4. 配偶者のみ
  5. 子供のみ
  6. 親のみ
  7. 兄弟姉妹のみ

この順番で相続人が決まります。たとえば①の配偶者と子供がいる場合は、親と兄弟姉妹は相続人にはなれません。この7つのパターンの相続人間で、遺産相続の手続きをすることになります。

4.相続人が被相続人より先に亡くなっていたら

血族相続人のうちに、被相続人の子及び兄弟姉妹で、被相続人より先に死亡していたらどうなるでしょう。その時はその子供(孫または甥、姪)が変わって相続人になります。これを代襲相続人といいます。
甥、姪も亡くなっていたら、その子供までもは代襲相続人とはなりません。兄弟姉妹は代襲相続は一代だけという事です。一方、滅多にないと思いますが孫も亡くなっていればひ孫が代襲相続人となります。

5.その他

養子は法律上、実子とみなされますので、相続人となります。
又、認知した子も当然相続人となります。

2015年7月号 今回はふるさと納税について解説します

【知って欲しい税の大切な情報】

【2015年7月号 今回はふるさと納税について解説します。】
ふるさと納税についてお聞きになったことがあるかもしれませんが、意外とその内容を知られていないようです。その概要を解説します。

1.ふるさと納税制度というのは?
 都道府県や市町村に寄付をすると、寄付をした金額のうち2,000円を超える部分が確定申告によって還ってくる制度です。この「寄付」のことを「ふるさと納税」と呼んでいます。なので正確には「納税」ではなく、「寄付」です。

2.2,000円を超える部分は全て所得税・住民税から控除されます。
 例えば、下記の表の例のように30,000円ふるさと納税をすると、2,000円を差し引いた28,000円は所得税・住民税から控除されることになるので、実質負担は2,000円のみです。
ただし、所得や家族構成によって限度額があります。
限度額は所得割額の10%迄でしたが平成27年より、20%にアップされます。
つまり所得の多い人ほど所得割の住民税が大きいので、限度額も大きくなります。
所得によるのですが、一般的な家庭では10万円程度であれば概ね2,000円を引いた98,000円全額が控除になると思っていいでしょう。 

3.多くの市町村では、ふるさと納税をしてくれた方に対して、お礼のギフトを提供しています。
 実質2,000円の負担でそれ以上の地域名産のギフトが提供されています。従って、別の言葉で言い表すと、「自己負担2,000円で全国からお取り寄せギフトをいただける制度」といえます。
 自分のふるさとにしか納税できないと思っている方が多いですが、そうではなくて、どこでも好きな自治体にふるさと納税することが可能です。ギフト目当てでも問題ありません。

ふるさと納税に係る控除額の計算について
4.どういう手続きをするのか
○確定申告が必要です。

 ふるさと納税額を所得税・住民税から控除するためには、ふるさと納税を行った年の翌年3月15日までに確定申告が必要となります。

○給与収入だけの方には、確定申告不要のふるさと納税ワンストップ特例制度が創設(27年分から)
 今まではふると納税を活用するには確定申告が必要でした。そのため、一般的に確定申告が必要のないサラリーマンには使い勝手が悪い制度でした。しかし、平成27年4月1日以後に行われるふるさと納税については5つまでの地方公共団体へのふるさと納税については確定申告不要となります。
ただし、申告は不要ですが、寄付先に特例申請書の提出をする必要があります。寄付先役場から自動的に住所地の役場に書類が送られて、住民税が安くなります。
27年4月以後の寄付分からなのでそれ以前に行った方は従来通り確定申告が必要となります。
確定申告の必要な事業者の方は従来通り確定申告でします。
地方の活性化にもつながりますし、使わないともったいない制度ですので是非ご検討してみて下さい。

2015年6月号 マイナンバーがもうすぐ導入されます

【知って欲しい税の大切な情報】
【2015年6月号 マイナンバーがもうすぐ導入されます】

マイナンバーがもうすぐ導入されます。事業者にとって重要な制度の導入です。このことについて基本的なことをお伝えします。
1.マイナンバーって、何?   何のために導入されるのか?
 マイナンバーは、住民票を有する全ての国民に番号を付して、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるものです。
 マイナンバーは、「行政を効率化」し、「国民の利便性を高め」、「公平かつ公正な社会を実現する」為に導入されます。効果としては、大きく3つあげられます。
 1つめは、所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行えるようになります。(公平・公正な社会の実現)
 2つめは、添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます。自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ったりできるようになります。(国民の利便性の向上)
 3つめは、行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の無駄が削減されるようになります。(行政の効率化)

2.自分のマイナンバーはいつわかるのか?
 平成27年10月から、住民票を有する国民の一人一人に12桁のマイナンバー(個人番号)が通知されます。 通知は、市区町村から、住民票に登録されている住所あてにマイナンバーが記載された「通知カード」が送られてきます。

3.マイナンバーはいつから誰がどのような場面で使うのか?
 平成28年1月から、マイナンバーが必要
になります。マイナンバーは社会保障、税、災害対策の中でも、法律や自治体の条例で定められた行政手続でしか使用することはできません。このため、国民は、年金・雇用保険・医療保険の手続、生活保護・児童手当その他福祉の給付、年末調整、確定申告などの税の手続などで、申請書等にマイナンバーの記載を求められることとなります。

4.企業でもマイナンバーを取扱うのか?
 民間企業は、従業員の健康保険や厚生年金の加入手続を行ったり、従業員の給料から源泉徴収して税金を納めたりしています。平成28年1月以降(厚生年金、健康保険は平成29年1月以降) は、これらの手続を行うためにマイナンバーが必要となります。そのため、企業に勤務する方は、勤務先に本人はもちろん、扶養親族である家族のマイナンバーを提示する必要があります。
 逆に、企業は従業員やその扶養親族のマイナンバーを収集することはもちろんのこと、外部の方に講演や原稿の執筆を依頼し、報酬を支払う場合、こうした外部の方からも源泉税が必要ですので、マイナンバーを提供してもらう必要があります。不動産の賃貸料の支払先が個人の場合も同様です。

5.マイナンバーは自由に使っていいのか?個人情報の管理は安全なのか?
 マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の手続のために、国や地方公共団体、勤務先、金融機関、年金・医療保険者などに提供するものです。こうした目的以外に他人にマイナンバーを提供することはできません。 他人のマイナンバーを不正に入手したり、他人のマイナンバーを取り扱っている人が、記録された個人情報ファイルを他人に不当に提供したりすると、処罰の対象になります。

6.自分の個人情報がどのようにやりとりされているか確認できるようになります。
 マイナンバーを使って自分の個人情報がどのようにやりとりされているか、ご自身で記録を確認する手段として、平成29年1月から「情報提供等記録開示システム」が稼働する予定です。
情報提供等記録開示システムの機能として、マイナンバーを含む自分の個人情報をいつ、誰が、なぜ提供したのか確認できる機能のほか、以下のような機能が入る予定です。
・行政機関などが持っている自分の個人情報の内容を確認できる機能
・行政機関などから一人一人に合った行政サービスなどのお知らせが来る機能
・行政機関などへの手続を電子的に一度で済ませることができる機能

7.通知カードと個人番号カードの違い
 10月以降に送られてくる「通知カード」は、券面に氏名、住所、生年月日、性別(基本4情報)、マイナンバーが記載されたものになります。 「通知カード」は顔写真が入っていませんので、このカードだけで本人確認をするときには、別途顔写真が入った証明書などが必要になります。本人確認の必要のない顔写真の入ったカードが「個人番号カード」です。

■個人番号カード
 個人番号カードは、表面に写真、氏名、住所、生年月日、性別、裏面にマイナンバーなどが記載されます。平成27年10月以降に通知カードでマイナンバーが通知された後に、市区町村に申請すると、平成28年1月以降、個人番号カードの交付を受けることができます。
 個人番号カードは、本人確認のための身分証明書として利用できるほか、カードのICチップに搭載された電子証明書を用いて、各種電子申請が行えます。
 なお、個人番号カードに搭載されるICチップには、電子申請のための電子証明書は記録されますが、所得の情報や病気の履歴などの機微な個人情報は記録されません。そのため、個人番号カード1枚からすべての個人情報が分かってしまうことはありません。

8.法人番号について
 平成27年10月から、法人に通知される13桁の番号のことです。法人番号はマイナンバーと違い、誰でも自由に使用することができます。
・法人番号をキーにして、法人の名称や所在地の確認が容易になります!
・鮮度の高い名称・所在地情報を入手でき、取引先情報の登録や更新が効率化します!
・複数部署で異なるコードを使用している場合、取引先情報に法人番号を追加すれば、情報の集約や名寄せ作業が効率化します!

2015年5月号 役員への報酬の税務上の注意点

【知って欲しい税の大切な情報】
【2015年5月号 役員への報酬の税務上の注意点】

1.役員への報酬の損金算入は条件付き

 税務上、役員と従業員は厳密に区分されています。なぜなら、中小企業の社長にとって、個人財産も会社のお金も、自由にコントロールできる傾向があるからです。会社の利益が予想以上に出た場合には、役員報酬を支払い、会社の利益を圧縮し法人税の負担を少なくしようと考えがちです。このような課税逃れを防ぐために、役員報酬(給与)に一定の歯止めを掛けています。

 役員に支給される報酬や賞与は、役員給与として税務上の損金算入が制限されています。

 原則として、中小企業には次のいずれかに該当する場合にのみ損金算入が認められます。

(1)定期同額給与…1月以下の一定期間ごとに毎回同額が支給される給与
期の途中に利益が出そうだからと増額すると同額でなくなりますので、増額部分は損金算入が認められません。決算総会にて前もって金額を決めておく必要があるのです。

(2)事前確定届出給与…税務署に支給時期・金額を事前に届出をし、届出通りに支給する賞与等

2.税務上の役員は範囲が広い

 役員という言葉は、一般的に用いますが、法人税法では役員の範囲が広くなります。法人税法上の役員とは、取締役、執行役、監査役、会計参与、理事、監事等会社法などの法律で役員とされている人は当然ですが、形式上は従業員等であっても、法人の経営に従事している人は役員として扱われます。例えば、相談役や顧問という名称で会社の経営に実質的に従事している人も役員と見なされます。

 ほかに、同族会社(同族株主によって、50%超の株式等を所有されている会社)については、使用人(従業員)のうち、一定の要件を満たしている人が、その会社の経営に従事している場合には、役員とみなされます

 社長の親戚が会社に勤めている場合などは、税務上のみなし役員に該当するケースがあるため注意が必要です。なかでも、オーナー社長の奥さんは、会社の株をまったく持っていない場合でも、持株割合の要件を満たしてしまうことになり、取締役に登記していなくても役員とみなされる可能性が高いでしょう。

3.平取締役に対する賞与は損金算入される部分もあります

 役員に対する賞与は原則として損金不算入ですが、例外的に損金算入が認められるケースがあります

 例えば取締役営業部長とか使用人としての職務を有する役員に対し、使用人としての職務に対する賞与を、他の使用人に対する賞与の支給時期に支給する場合に、損金算入が認められるというものです。これを、使用人兼務役員に対する賞与といいます。

4.過大な役員報酬は損金算入できません

 役員報酬について、不相当に高額な部分の金額は損金算入が認められません。いくら以上の役員報酬が「不相当に高額」とされるのかですが、判断基準には、形式基準と実質基準の2つがあります。

 実質基準は、役員の職務の内容・会社の収益・使用人に対する給料の支給状況・事業規模が類似する同業他社の役員報酬の支給状況に照らし、役員報酬として相当であると認められる金額以内となっていることです。中小企業の中には、オーナー社長の家族が名目上の役員になっているケースがあります。このような場合には、職務の内容を勘案した金額しか損金算入は認められないでしょう

 形式基準は、株主総会等の決議(又は定款の規定)により定めている報酬限度額以内となっていることです。役員報酬を株主総会などで決議しておくことが求められます。決議が無ければ、これを支給することはできません。通常は、役員報酬の上限額を決議します。役員の増員などで役員報酬の総額が、以前決議した上限額を超えそうな場合には、上限額を引き上げる決議を行いましょう。うっかり忘れると、役員報酬の損金算入はされません。

5.こういう場合も役員賞与を支給したとされます

 役員賞与は、損金の額に算入されないのですが、注意したいのは、役員賞与として支給した認識がない場合でも、役員賞与に該当すると判断されることがあるということです。例えば、役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合などは、現金を支給していなくても、経済的利益を供与したことになります。この経済的利益は一般的に臨時的な供与ですので、役員賞与となり損金算入されません。もちろん受けた役員には所得税がかかります。

2015年4月号 相続税に備え生前贈与を上手に活用しましょう

【知って欲しい税の大切な情報】

【2015年4月号 相続税に備え生前贈与を上手に活用しましょう】

相続税に備え生前贈与を上手に活用しましょう
相続税の対策として相続財産を早めに相続人に贈与するという方法があります。
税金がかからない贈与の制度の活用を整理してみました。
1.110万円迄の贈与は非課税
最もポピュラーな制度ですので是非活用したいものです。わずか110万円といえども、2人に10年贈与すれば2,200万円にもなります。相続時には既贈与の金額が加算されることはありませんが、3年以内の贈与に関しては加算しなければなりません。従って早くするにこしたことはないのです。年々評価が上がる自社の株式の後継者への贈与等に有効です。

2.住宅取得資金の贈与の非課税制度
直系尊属(祖父母、親)から子への住宅取得の為の資金贈与の非課税制度です。
27年は一般住宅で1,000万円迄非課税です。例えば子供夫婦共々それぞれの直系尊属(祖父母、親)から1,000万円ずつ贈与してもらえば2,000万円を非課税で贈与を受けることが出来ます。
28年からは徐々に金額が減ります。消費税10%では増額になります。31年6月まで適用されます。大きな贈与で相続財産を減らすことができ、3年以内でも相続税の対象財産に加える必要はありません。

3.配偶者に対する居住用住宅の生前贈与の非課税制度
配偶者に対しての大きな金額の非課税贈与の制度です。条件は婚姻20年以上であること。居住用の土地建物であることです。2,000万円迄非課税です。配偶者に大切な住まいを相続発生前に贈与しておくことが出来ます。3年以内でも相続税の対象財産に加える必要はありません。

4.「相続時精算課税制度」による非課税制度
相続や贈与を検討されている人は、この制度の利用を検討してみましょう。
○この制度は、一定の条件のもとに2,500万円までの贈与が非課税になります。
60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子孫に贈与する時に適用できる手続きです。
 住宅取得資金の贈与に限っては父母祖父母の年齢制限はありません。
○相続の前倒しなので相続人への贈与のみが対象で第三者への贈与は対象になりません。
○この制度を使うとその贈与者からの贈与については110万円の非課税制度は使えません。
○この制度は、その名前の通り相続の前倒しであり、「相続時には遡って精算課税する制度」です。
つまり、この制度を使って生前贈与を受けた場合でも、相続時にはその金額が加算されて相続税が計算されます。加算する金額は贈与の時の評価額です。いざ、相続の時に例えばその建物が古くなって価値がなくても、昔贈与したときの評価額になるのがデメリットです。しかし逆の場合はメリットになりますので、値上がりしそうな財産を贈与することが得策です。
○2,500万円を超えると超えた部分に20%の贈与税がかかります。その税金は相続の時に精算されます。
 相続時精算課税制度を利用するかどうかは、相続時の相続財産の額、将来予測、親族の事情によってケースバイケースです。
特に相続税申告が将来発生する見込みがないのであれば利用は有効です。

5.贈与税の教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
受贈者(30歳未満の者に限る)の教育資金に充てるためにその直系尊属(親や祖父母等)が金銭により金融機関、銀行等金融商品取引業者に信託等をした場合には、受贈者1人につき、1,500万円までの金額に相当する部分の価額については贈与税を課さないこととする。という内容です。
適用されるのは平成25年4月1日から平成31年12月31日までの間に拠出されるものに限ります。
親の教育資金は一般的に子供の教育費生活費を負担する扶養義務者としてあたりまえですので、現在でも通常の資金は非課税です。従って、この贈与の対象になるのは一般的には祖父母から孫への一括先払い贈与に有効です。
受贈者(子や孫)が30才までOKです。その時口座にまだ使い切っていない残金があれば、残りは贈与税がかかります。 相続開始前3年以内に贈与を受けた財産の価額として相続税の対象財産に加算する必要がないので相続財産の縮小には大変有効な制度です。

6.子や孫の結婚・出産・育児に要する資金の一括贈与に係る非課税措置
27年から新しく創設されました。20才以上50才未満の子や孫への一括贈与を一人当たり1,000万円迄非課税にするというものです。受贈者が50才に達した時に使い残しがあれば使い残し分に対して贈与が課税されます。受贈者死亡した場合は、その時点で使い残した分に対して相続税が課税されます。
結婚資金などをその都度贈与して(親が負担)も贈与税はかかりませんが、この制度はあくまで事前に一括して贈与することが前提です。早めに贈与しておきたいときに有効です。

7.相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税財産への加算する必要有り
亡くなった時、原則として、相続財産の価額に以前贈与した贈与財産の価額を加算する必要はありません。ただし、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産の価額は加算しなければなりません。配偶者への居住用財産贈与等、3年以内でも加算する必要のない贈与税の非課税制度を有効に活用しましょう。

2015年3月号 平成27年度税制改正大綱 特に関連ある項目について

【知って欲しい税の大切な情報】
【2015年3月号 平成27年度税制改正大綱 特に関連ある項目について】

改正税法については概略を前回お知らせしました。
再度、特に関連ある項目をピックアップしてお知らせします。

【個人所得課税】
○ 住宅ローン減税等の適用期限の変更 (平成29年12月31日まで⇒平成31年6月30日まで)。
住宅ローン減税の拡充等の措置について、その適用期限が31年6月末まで延長されます。
消費税8%で取得する住宅については
最高限度額 住宅借入金の4,000万円まで1.0%=40万円 を10年間 計400万円
税額控除する制度です。消費税10%になった時は5,000万円までに増額されます。

【資産課税】
○ 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の延長・拡充
適用期限が26年末でしたが、31年6月まで延長されます。 消費税8%時代は
一般住宅の場合、非課税限度金額は27年12月迄は1,000万円
29年9月迄は700万円となります。子や孫への住宅取得のための資金援助に活用して下さい。

○ 子や孫の結婚・出産・育児に要する資金の一括贈与に係る非課税措置を新設
20才以上50才未満の子や孫への一括贈与を一人当たり1,000万円迄非課税にするというものです。
受贈者が50才に達した時に使い残しがあれば使い残し分に対して贈与税が課税されます。
受贈者が死亡した場合は、その時点で使い残した分に対して相続税が課税されます。
 具体的な手続きは教育資金一括贈与と同じように金融機関に口座を開設し、受贈者はお金を引き出す度に目的にかなった使用かどうかの確認のため領収書を金融機関に提出することになります。
 結婚資金などをその都度贈与して(親が負担)も贈与税はかかりません。この制度はあくまで事前に一括して贈与することが前提です。果たして、利用は進むのでしょうか。

【法人課税】
○ 成長志向に重点を置いた法人税改革 → 法人税率の引下げ等 
法人課税

○中小企業(資本金1億円以下の法人)の場合、所得金額800万円以下は15%(本則19%)と軽減されています。この措置は29年3月31日まで2年間延長されます。
 例)中小企業で所得1,000万円の場合
現行 800万円×15%+200万円×25.5% = 171万円
改正後800万円×15%+200万円×23.9% = 167.8万円

○欠損金繰越控除の見直しと、欠損金の繰越期間を延長
大法人の控除限度 現行:所得の80%⇒27年度:65%⇒29年度:50%と使える額を縮小します。中小法人は従来通り100%です。また、欠損金の繰越が現行の9年から10年に延びます。平成29年4月1日以後開始する事業年度に発生した欠損金から適用されます。中小法人にとっては有利です。

2015年2月号 平成27年度税制改正大綱の概要:主な内容をまとめました。

【知って欲しい税の大切な情報】

【2015年2月号 平成27年度税制改正大綱の概要:主な内容をまとめました。】
 デフレ脱却・経済再生
をより確実なものにすべく、成長志向に重点を置いた法人税改革、高齢者層から若年層への資産の早期移転を通じた住宅市場の活性化等のための措置、企業の地方拠点強化、結婚・子育ての支援等の措置、消費税率の10%への引上げ時期の変更等の内容です。

【個人所得課税】
○ NISAの拡充
 ・ジュニアNISAを創設(20歳未満の者の口座開設を可能に。年間投資上限額80万円)。
 ・投資上限額を引上げ(年間100万円⇒120万円)。
○ 住宅ローン減税等の適用期限の延長
 ・住宅ローン減税の拡充等の措置について、その適用期限を1年半延長(平成29年12月31日まで⇒平成31年6月30日まで)。
○ ふるさと納税の拡充
 ・特例控除額の拡充(上限:個人住民税所得割額の1割⇒2割)。
 ・申告手続の簡素化(確定申告不要な給与所得者等がふるさと納税を行う場合、ワンストップで控除を受けられる仕組みを導入)。

【資産課税】
○ 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の延長・拡充
 ・適用期限を延長した上で拡充(非課税枠:1,000万円⇒最大3,000万円)。
○子や孫の結婚・出産・育児の資金の一括贈与に係る非課税措置を創設(非課税枠:1,000万円)。

【法人課税】
○ 法人税率の引下げ等 中小法人の800万円までの軽減税率15%は2年延長(→29/3)です。

法人課税

・課税ベースの拡大等
 -欠損金繰越控除の見直し 中小企業は適用ありません。
 (大法人の控除限度 現行:所得の80%⇒27年度:65%⇒29年度:50%)
 -繰越欠損金の繰越期間の見直し 29年4月開始事業年度から10年(現行9年)に延長。
 -受取配当等益金不算入の見直し
 (現行:持株比率25%未満は50%、25%以上は100%益金不算入
   ⇒5%以下は20%、5%超1/3以下は50%、1/3超は100%益金不算入)
 -法人事業税の外形標準課税の拡大 税率のアップ
・所得拡大促進税制等の見直し
 -給与等支給増加割合の要件の見直し 3,4,5%と上げる予定でしたが中小は3%までです。
 (現行:基準年度比27年度+3%→28年度+5%→29年度+5%
 ⇒27年度+3%→28年度+4%(中小+3%)→29年度+5%(中小+3%))
 -法人税の所得拡大促進税制の要件を満たす場合に、法人事業税(外形標準課税)において、給与等支給額の増加分を付加価値割の課税ベースから控除する制度を導入
○ 租税特別措置の見直し
 ・研究開発税制の見直し(控除限度額の総枠は「法人税額の30%」を維持しつつ、特別試験研究費の控除限度を別枠化(5%)。限度超過額の繰越制度を廃止)
 ・生産等設備投資促進税制の廃止 (特別償却は現行期限29年3月31日となっている)
 ・太陽光発電設備の即時償却の廃止 (現行期限27年3月31日となっている)

【消費課税等】
○ 消費税率10%への引上げ時期・平成27年10月1日から平成29年4月1日へと変更。
○ たばこ税(旧3級品)の見直し
 ・旧3級品(しんせい、エコー等)の紙巻たばこに係る特例税率を段階的に縮減・廃止。
○ 車体課税の見直し
 ・エコカー減税(自動車重量税・自動車取得税)について、減免税車の対象範囲を見直した上で、適用期限を2年延長。
 ・軽自動車税について、平成27年度に新規取得した一定の環境性能を有する軽四輪等について、その燃費性能に応じたグリーン化特例(軽課)を導入。
○ 銀行等に対し預貯金情報をマイナンバーにより検索可能な状態で管理することを義務づけ。

税務お役立ち情報 平成26年

税務お役立ち情報 平成25年