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2024年は定額減税が実施され、年末調整業務も例年にない煩雑さが懸念されていますが、その他にも税制改正による変更点がいくつかありますので確認してください。
■2024年の年末調整業務の大きな変更点
2024年6月1日から定額減税が行われています。定額減税の実施により、2024年の年末調整業務にもいくつかの変更点があります。
既に2024年6月1日時点での定額減税額にて月次減税がされていますが、年末調整の際に改めて2024年12月31日時点の定額減税額で計算しなおし、所得税額の調整を行います。
■年末調整対象者は?
まず、大前提として「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出がないとできません。給与総額が2,000万円超も対象外です。本年12月31日に在籍している方が対象です。一般的には1年を通じて勤務している人、年の途中で就職(転職)し、年末まで勤務している人です。
中途就職の従業員さんは前の職場の給与も加えて年末調整をします。そのために前職の源泉徴収票が必要です。それがないと、年末調整はできませんので、自分で確定申告をすることになります。従って、中途退職者には、必ず退職までの給与の源泉徴収票を発行してあげましょう。
■「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を求めましょう。
前記の通り、この申告書が提出されていないと年末調整はできません。必ず提出を求めてください。また、この書類が提出されていない場合は毎月の給与について一般の源泉徴収金額とは異なる「乙欄」による源泉徴収をする必要があります。天引きしていなくても雇用主がその源泉徴収税額の納付をしなければなりませんので、注意しましょう。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は必ず保管してください。
■記入用紙が3枚あります。提出書類の名称と記載方法が一部変わったりしています。
記入用紙は ①「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」②給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」③「保険料控除申告書」の3枚になっています。①と②は必ず必要です。③は該当ある方のみの提出ですが、念の為「なし」の場合も「なし」ということで出してもらった方がのちのトラブルを避けるためにもよいでしょう。他に「住宅借入金等特別控除申告書」は該当ある方のみです。今年新規の住宅ローン控除の手続きは確定申告でします。
■その他年末調整業務に関する変更点 各種申告書の簡略化
2024年の年末調整では、保険料控除申告書や給与所得者の扶養控除等申告書の提出が簡素化されました。
保険料控除申告書等の様式について、続柄の記載欄が削除されました。
給与所得者の扶養控除等申告書の提出が簡略化
源泉徴収手続きの簡素化を目的として、給与所得者の扶養控除等申告書の提出が簡略化されました。
2025年1月1日以後に提出する「給与所得者の扶養控除申告書等申告書」について、前年の申告内容から記載すべき事項に変更がない場合は、変更がない旨の記載のみで提出できるようになります。
詳細は手引き等をご覧ください。
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が令和7年4月13日から184日間、大阪市で開催されます。入場券の購入費用に係る税務上の取扱いは、2005年日本国際博覧会(愛・地球博)と同様の取扱いになることが示されています。内容は次のとおりです。以下国税局の回答です。注)は山浦補足。
入場券の購入費用については、次による。
(1) 法人が販売促進等の目的で当該入場券のみを取引先等に交付する場合の当該入場券の購入費用は、交際費等に該当せず、販売促進費等として処理する。 注:交際費の損金不算入の制限を受けないことになります。
(2) 企業等が従業員の慰安会、レクリエーション等として博覧会を見学させる場合の当該入場券の購入費用及びその見学のために通常要する交通費、宿泊費等については、福利厚生費に該当する。なお、従業員の家族を含めて実施した場合も同様とする。 注)給与とする必要はないことになります。
Q1 当社が購入した入場券を下請先若しくは孫請先又は当社のグループ会社の取引先などに交付した場合でも、販売促進費や広告宣伝費等として処理できますか?
国際博覧会の性格等を踏まえると、万博に参加・貢献しているという企業グループのイメージ向上による販売促進や広告宣伝のために、下請先や孫請先又はグループ会社の取引先などに広く入場券を交付するのであれば、販売促進費や広告宣伝費等に該当するものと考えられます。
Q2 当社は、従業員等の慰安のために入場券を購入し、全従業員に交付する予定です。この場合、全額「福利厚生費」として処理することができますか?
福利厚生費として処理することができます。企業等が従業員のレクリエーション等として万博を見学させる場合の入場券の購入費用を福利厚生費として処理できるのは、当然に以下のような場合を前提としています。
・入場券を希望する全従業員を対象に(希望により家族分も含め)交付する。
・入場券は、従業員又はその家族が使用することを条件に交付するものとし、従業員が実際に使用したことについては事後的に報告をさせる。
・交付を希望しない従業員に対し、入場券の代わりに金銭を給付する等の対応は行わない。
Q3 当社(親会社)は、関係会社の従業員等に対しても入場券を交付する予定です。「販売促進費等」として処理することはできますか?
本来関係会社が負担するべき自社の従業員に対する福利厚生費用を親会社が代わって負担しているものと考えられ、販売促進等の目的で入場券を交付するものとは認められませんので、関係会社への寄附金に該当するものと考えられます。
注)最初から関係会社の従業員に渡すことなく、Q1にあるように関係会社に使途を任せば寄付にならないと思います。
Q4 「販売促進目的」で購入した入場券の購入費用は、いつの事業年度の損金に算入できますか?
取引先に入場券を交付した時点で損金算入します。開幕前に入場券を交付した場合でも損金算入することが可能です。
Q5 「福利厚生費」として処理する入場券の購入費用は、いつの事業年度の損金に算入できますか?
原則、入場券を使用した時点で損金算入することになります。交付した時点で損金算入することとしてもいいです。
Q6 取引先から入場券の交付を受けた場合、資産計上をする必要はありますか?
資産計上をする必要があります。入場券の交付を受けた側は、「雑益」として資産計上し、用途に応じて費用処理します。
注)販売促進費とか福利厚生費で処理することになります。結果プラスマイナスで利益0円です。 (参考 国税庁Q&A)
贈与の場合、受けた人は、年間110万円を超えた部分の財産額に対して課税されます。ところが例外的に贈与をしても非課税となる場合があります。その一つに住宅取得資金の贈与があります。子や孫がマイホームの建築・購入予定がある方は、相続税対策としても上手に活用しましょう。以下概略をお知らせします。一般的には建設業者がアドバイスされる事が多いですが、詳細不明なことは税理士事務所や税務署にお尋ねください。
■住宅取得等資金贈与の非課税とは
父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。
■受贈者(もらう人)の要件
次の要件のすべてを満たす受贈者が非課税の特例の対象となります。
(1) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。
(注) 配偶者の父母(または祖父母)は直系尊属には該当しませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。
(2) 贈与を受けた年の1月1日において、18歳以上であること。
(3) 贈与を受けた年の年分の合計所得金額が2,000万円以下(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、1,000万円以下)であること。
(4) 平成21年分から令和5年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと。
(5) 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたり、これらの方との請負契約等により新築もしくは増改築等をしたものではないこと。
(6) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金で住宅用の家屋の新築等をすること。
■適用期限
もともと期限を「令和5年(2023年)12月31日まで」と定めていましたが、この期限が3年延長され、「令和8年(2026年)12月31日」まで適用延長となりました。
■非課税となる金額は
住宅の形態によって、非課税限度額が決まっています。
省エネ等の住宅用家屋 1,000万円
上記以外の住宅用家屋 500万円
■住宅資金贈与の特例を活用する際の注意点
住宅取得等資金の非課税の特例を利用する際の注意点としては、贈与税の納税は不要でも申告が必要ということです。申告の期間は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間で、管轄する税務署に贈与税の申告書を提出します。なお、その際には戸籍の謄本や住宅購入の契約書など一定の書類を添えて提出をします。
相続税はいくらかかるのだろうか気になるところです。相続税の計算は複雑なので、申告となると、どうしても税理士に頼むことになるでしょう。ただ、基本的な事を知っておくことは将来の相続に備えるためにも必要です。
■相続税がかかるのはいくらから?
気になるのはいくら遺産があったら相続税がかかってくるのか、という点かと思います。誰がいくら相続するのかということももちろん関係するのですが、まずは、遺産総額や法定相続人の数が深く関わってきます。
とくに、相続税がかかるかどうかを考えるうえで重要なのが、基礎控除についてです。基礎控除とは相続税を計算するときに、課税対象となる遺産から差し引ける金額のことで、いわゆる非課税枠です。
■基礎控除額を超える財産に対して課税される
この基礎控除は次の式で求められます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば、夫婦と子ども二人の家族で夫が亡くなった場合。
法定相続人は3人なので、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除額となります。
相続税は基礎控除額を超えた財産に対して課税されます。
■対象となる財産の計算はどうする?
相続税がいくらかかるかを知るうえで、まずは財産を把握する必要があります。そのためには、相続税の課税対象となる財産を知る必要があります。課税対象となる財産の種類は、大まかに次の3つです。
① 本来の相続財産 亡くなった方(被相続人という)の死亡の日に保有する現金や預貯金、株式、不動産です。
② 生前の贈与財産 相続の開始7年前 までに被相続人から受けた贈与財産も、じつは相続税の課税対象です。また、相続時精算課税を適用したことがある方は、別の方法で加算します。
③ みなし相続財産 被相続人の財産ではないものの、相続税の計算上は相続財産と見なすものがあります。代表的なものは、死亡保険金や死亡退職金です。
■非課税となるものは? 差し引くことができるものは?
墓地や仏壇・仏具といった祭祀関係の財産です。その他、国などに寄付したお金についても非課税となります。
また、債務などや葬式費用は相続財産から差し引くことができます。
つまり整理すると、相続税の計算の対象となる金額は
遺産総額+生前贈与財産+みなし相続財産-非課税財産-葬式費用-債務など ということになります。
既に述べましたように、実際に課税対象となるのは、上記金額から基礎控除額を差し引いた金額です。
たとえば、先ほど例に挙げた夫婦・子ども二人の家族で夫が亡くなった場合、
課税対象となる遺産の金額が1億円だったとすると……
遺産1億円 – 基礎控除4,800万円=5,200万円に対して相続税がかかるということです。
■相続税はどれくらい?
税金の計算は少し複雑なので省略しますが、概ねどれくらいかといいますと、基礎控除前の遺産総額で
遺産1億円 相続人配偶者・子供2人 配偶者が1/2相続する場合 税金は配偶者0円 子供2人総額315万円
遺産2億円 相続人配偶者・子供2人 配偶者が1/2相続する場合 税金は配偶者0円 子供2人総額1350万円
配偶者は相続財産1億6千万円まで、超えても法定相続分までは無税です。ただし申告は必要な場合があります。
いわゆる修繕をしたとき、税務上は修繕費として一時に損金(経費)にして良い場合と、資産に計上して一定期間で毎期減価償却費で経費にしていくべき場合があります。後者を資本的支出といいます。実務では、判断が難しい事例も多々あります。
■資本的支出に該当するのはどのような場合か
固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるとしています。その例示として、(1)建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額 (2)用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額 (3)機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合などがあります。
■修繕費に該当するのはどのような場合か
固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となります。例示として、使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額も修繕費です。
■資本的支出に該当する場合でも、修繕費にできる場合
資本的支出に該当するものでも、その費用が20万円未満の場合や、資本的支出か修繕費かが明らかでない金額が60万円未満又は固定資産の前期末の取得価額のおおむね10%相当額以下であれば、修繕費として処理できます。
■新紙幣の発行に伴うレジや券売機等のシステム改修等の費用は?
新紙幣の発行に伴うレジや券売機等のシステム改修等の費用は、その内容によって、「修繕費」又は「資本的支出」として処理することになります。
国税庁は、新たな制度の実施に伴い固定資産に生じる費用の取扱いに関して、以前「消費税の軽減税率制度の実施に伴うシステム修正費用の取扱いについて」、「消費税法改正に伴う会計ソフト修正費用の取扱いについて」を出しています。
つまり、新制度の実施に伴い、システム等の機能を維持するための修正であることが作業指図書等で明確である場合は、修繕費に該当する旨を示しています。新たな機能の追加、向上等に当たる部分の費用は資本的支出となるということです。
新紙幣に対応するための券売機等の改修費用等も、上記の情報と同様の考え方になるでしょう。従って券売機等の機能を新たに追加、向上等させるものではなく、単に新紙幣の利用に対応するためのものは、券売機等の機能を維持する費用として、修繕費に該当することになります。
暑中お見舞い申し上げます。
■棚卸資産について、前号の追加での注意点です。
【製造業の場合の棚卸資産】
製品や仕掛品は、適正な原価計算によって算出されたものであれば認められますが、実務では実際原価ではなく、標準原価で計算することがあります。標準原価と実際原価との価格差が少額であれば問題となることはありませんが、標準原価を何年も変更していないときに、現状と金額が乖離していることもあります。調査では、原価計算の根拠を求め、標準原価であれば、実際原価と比較して、差異が大きく棚卸資産が過少となっていれば利益が少なくなるわけですから問題となります。
【棚卸資産を除却する場合について】
在庫で、長期滞留の物、全く売れる気配のない物、廃棄予定の物であっても、在庫として所有している以上、評価損の対象となるもの以外は原価(購入価額)での評価が必要です。ただし、それらを実際に廃棄すれば、廃棄損(除却損)として損金に計上ができます。
調査では、決算日までに資産を廃棄したかを確認するために、産業廃棄物の明細書類や、処分した業者の領収書等で、廃棄の時期と事実がわかる書類の提示が求められます。実際、会社は在庫処分の決定を決算が近づいた時期に行うことが多いため、決算日までに廃棄が間に合わないことがありますので、廃棄損を計上する場合には事実を確認したうえで処理をするようにしてください。
【未使用の消耗品等】
未使用の機械等の部品や作業工具、器具、備品、消耗品又は予備の部品の保管状況を確認します。これらは作業用消耗品に該当しない限り、原則は貯蔵品として資産に計上すべきものだからです。また、長期滞留の在庫や未使用品、不良在庫が工場の片隅に置かれていることもあり、それが在庫として計上されているかも確認します。実務上、これらを販売不能(価値がない)と判断し、在庫に計上しないケースもありますが、それは単価(評価)の問題であるので、数量としては計上していないと在庫漏れを指摘されることとなります。
■決算賞与を支払うときの注意点
決算を迎えるにあたって思った以上に利益が出そうなので、頑張った従業員に賞与を払いたい。結果税金も減るのでと考え、決算賞与を支給する方針をとる経営者の方もいるでしょう。しかし、この決算賞与がその期の損金(経費)として認められるにはクリアーしなければならないことがあるので注意が必要です。その期に支払えば何の問題もありませんが、期が過ぎてから決算賞与を払おうと考えたときは、既に時遅しでありますので、まずは決算の前に当期の決算予想を把握することが大切です。
【未払決算賞与と認められる条件】
〔1〕その支給額を各人別かつ同時期に、支給を受ける全ての使用人に対して「通知」していること
〔2〕その通知をした金額を、通知をした全ての使用人に対し通知をした期の翌期首から1月以内に支払うこと
〔3〕その支給額につき通知をした期において損金経理をしていること
この3要件全てを満たす場合に限って、当該賞与は、使用人にその支給額の通知をした期において支給確定したものとして損金算入できることになります。つまり未払計上もできますが、申告の頃にはすでに支払われていることになります。
7月決算を例に分かりやすくいうと、①7月中に全従業員に賞与金額を通知しておくこと ②①の賞与を8月中に払っていること ③①の金額を7月中に決算賞与として損金経理(会計上経理)しておくこと、となります。
調査では、売上とそれに対応する原価(在庫・棚卸資産)は、必ず確認する項目です。以下注意点をお話しします。
【数量確認のポイント】
①実施棚卸しがどのように実施(日時、場所、ルール、スケジュール)されているか
②輸送(運送、配送)中の商品、預け品は計上しているか
③棚卸原票と決算計上数量は合っているか(転記間違い、桁間違い、集計間違いはないか)
④決算日前の仕入れ、決算日以降の売上から在庫の計上漏れの可能性はないか
⑤期末未使用分のカタログ、消耗工具、販促用備品等の漏れはないか(期末大量購入品)
棚卸資産は、「数量×単価」で構成されています。調査では、数量が正しくカウントされているか、実地棚卸の原票を取り寄せ、原票に抜け漏れがないか商品等を保管している場所に赴き確認します。
期末の概ね1ヵ月程度前に仕入れた商品等が在庫に計上されているか、いつ出荷(売上計上)されたかの確認をします。また、決算日前後に輸送中の商品等や、外注先等に預けている材料・仕掛品等の漏れがないかもチェックポイントです。
調査では、工場の現場へ赴くことがあります。出来上がった製品が出荷されるまでどこで保管されているか等を確認します。同時に、未使用の機械等の部品や作業工具、器具、備品、消耗品又は予備の部品の保管状況も確認します。これらは作業用消耗品に該当しない限り、原則は貯蔵品として資産に計上すべきものです。また、長期滞留の在庫や未使用品、不良在庫があり、それが在庫として計上されているかも確認します。実務上、これらを販売不能(価値がない)と判断し、在庫に計上しないケースもありますが、それは単価(評価)の問題であり、数量としては計上していないと在庫漏れを指摘されます。
なお、在庫管理の不備により従業員が勝手に商品を持ち出し質屋やネットで販売したことが判明するケースもあります。調査官は、この場合、不正をした個人が自己のために行ったのか、確認のため取引の流れ、管理の状況が調べられます。従業員が不正行為で得たお金は、使用されて手元に残っていないことがほとんどで、会社は回収が困難であるとして損失と考えたくなりますが、税務では、失った在庫相当額は従業員に対する請求権(未収入金・貸付金)の発生と捉えますので、原則的には一旦は売上計上しての課税の対象となります。
【単価確認のポイント】
①評価方法は届出をしている方法で行っているか 法定評価方法として最終仕入原価法が適用されます、
②取得にあたって直接要する費用は含まれているか 運送費と輸入品の関税が要注意です。
③原価計算は正しく行われているか(標準原価と実際原価、間接費の配賦等)
④各製品、工事等の材料費、人件費、外注費等の振り分けは正しく行われているか
⑤前受金がある場合、それに見合う仕掛分の有無は検討したか
⑥未成工事の進捗と原価の支出に整合はとれているか(とれていないと他の工事へ原価の付け替えが疑われやすい)
【棚卸資産の評価損のポイント】 評価損は原則できませんので要注意ですが、下記の場合に限って可能です。
①季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが明らかであること。
②破損や型崩れ、たなざらし、品質変化等により、通常の方法によって販売することができないようになったこと。
③型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき、今後通常の方法により販売することができないようになったこと。
(参考:税務通信)
参考資料:税務通信
コロナ渦をきっかけに生命保険の役割を再認識する機会となりました。また企業を取り巻く環境も変化しリスクも高まっています。ここでは、特に経営者の不測の事態に備えての生命保険について考えます。
■生命保険の大きな機能
生命保険を節税目的で加入することは本来の目的ではありません。確かに節税の効果はありますが、本来の目的は2つあります。この2つの目的を同時にカバーするために保険は有効な手段です。
①経営者の万が一の事態が生じたときの保障
経営者がもしもの時の事業継続のための補償という役割です。
②企業の財務強化の役割
生命保険は企業にとって社外預金の意味もあります。
■経営者の万が一の事態に備える
死亡のみならず、病気やけがという自体が想定されます。特に近年は死亡というより治療期間の就業不能が経営に及ぼす事例も増加しています。その中長期の就業不能に対応するための保険も検討すべきです。治療時の就業不能保障という目的に合った保険の種類も増えています。
■生命保険を経営に有効に使うことは大切な財務戦略
企業の経済環境はめまぐるしく変化します。いつ財務的に危機に遭遇するかわかりません。その資金面でのリスク対策として生命保険は有効です。資金不足が生じたときに解約すれば資金が調達できます。または契約者貸付も利用できます。
リタイア時の退職金の原資として活用することもできます。
■保険でカバーすべき優先順位
企業経営を行う上で、その財務的リスクをカバーすることは経営者として必須です。リスクに対する全カバーをすべきでありますが、その優先順位、その必要保障額の算定で必要なことは次の通りです。
①借入金の返済ができる金額を確保する 少なくとも絶対に借入金の額は確保すべきです。残された遺族に借入金がのしかかるのは大きな負担になります。
②運転資金の確保 経営者に不測の事態が生じると長期間経営から離脱することになり営業活動に支障が生じる可能性が高くなります。中小零細企業は特に社長が営業の要であることが多いのです。従って買掛金や給与等の固定経費の支払いに必要な資金を確保しておく必要があります。概ね2か月分は必要ではないでしょうか。
③遺族の生活に必要な資金の確保 企業の存続が可能であれば、遺族はその後の生活資金を確保できますが、もしそれができないとなれば一定の資金を必要とします。
■加入後のメンテナンスをすること
会社の財務状況も変化し、経営者自身の人生設計も変化します。従って保障内容も見直す必要があります。無駄な保険に加入する必要はありません。保険の種類には主に一定の年齢で終了する定期保険、年齢に関係ない終身保険、解約返戻金のあるなし、高度障害に対応する生存給付の保険、年齢とともに逓減する保険など、多くの種類があります。その中から自社に必要とする保険を選定し、いくら必要なのかをできるだけ毎年確認しメンテナンスしていきましょう。
■制度の概要 -相続の前取り制度なので相続時に加算されます-
相続時精算課税の制度とは、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
受贈者(子や孫)が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができます。
ただし、それで終わりというわけではありません。贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額で相続税額を計算します。いわば相続の前取り制度といえます。贈与を受けた年の翌年確定申告時期に「相続時精算課税選択届出書」等一定の書類をつけて贈与税の申告書を提出する必要があります。
■制度の留意点 -相続発生まで長期間の管理が必要-
①上記のように贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額を加算して相続税額を計算します。その価額は贈与時の価額です。なので、評価が上がるであろう資産は有利ですが、下がる可能性のある資産は不利になります。その見極めは必要になります。
②この制度を選択すると、その選択をした贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。一度選択すると、その後の贈与は全て相続税の申告の時に加えなければなりません。何年経過しても加えなければなりませんので、ずっと記録が必要です。もちろん税務調査でもさかのぼって調べられます。暦年課税の場合は3年超前(改正で7年になりました)は加える必要はありませんが、相続時精算課税制度はそうはいかないと言うことです。
③ 相続時精算課税を一度使うと、暦年課税に戻れないわけですから、贈与税の基礎控除額110万円を控除することはできません。贈与を受けた財産の価額が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。となっていたのですが、この毎年の申告を失念するなどして問題が生じていました。そこで、改正されて6年分から下記のようになっています。
累計で2500万円オーバーしたら20%の税率で贈与税がかかります。この税金は相続税の前払いとして相続税と精算されます。
■令和6年1月から制度が一部改正されます
① 相続時精算課税に係る基礎控除の創設
相続時精算課税を選択した受贈者が、 贈与者から令和6年1月1日以後に贈与により取得した場合の贈与税については、暦年課税の基礎控除額と同様に、相続時精算課税用の基礎控除額110万円 ができる様に改正されました。一度使うと少額でも申告が必要だったのですが、改正で110万円超のみ申告必要です。
また、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算されるのは、令和6年1月1日以後に贈与については、基礎控除額を控除した後の残額とされます。 改正前は基礎控除がなく全部加算でした。
■使うときのポイント
相続時精算課税制度を使うと、相続が発生するまでは、何年であろうと管理しておかなければならないことには変わりありません。相続の時に以前贈与した分を加算しなければならないわけですから、相続の時に財産が少なくても相続税の申告が必要な場合も出てきます。加算しても相続税申告が不要と想定される場合には、早期の財産移転として有効に使えると思います。申告の時に以前もらっていたことが判明しても、もめ事がないならば、適用して良いでしょう。相続の申告が将来かならず起こるという場合は適用するかどうかを慎重に検討しましょう。
令和6年度税制改正の中で、岸田総理が経済対策の一環として「所得税の定額減税」を打ち出したことで、「減税か、給付か」など社会的にも大きな議論を呼びました。この「所得税の定額減税」ですが、所得税、住民税合わせて1人あたり最低4万円と減税額が小さい一方、早く効果を上げたいがために年末調整時ではなく期中で実施します。そのため企業の事務負担、と混乱は避けられません。詳細は次号等でお知らせしますが、関係ありそうな項目を概略お知らせします。