| 令和4年12月号 | 売上の質に強く焦点を当てましょう |
| 令和4年11月号 | 我が社の適正利益は |
| 令和4年10月号 | 情報発信は一定の繰り返しがポイント |
| 令和4年9月号 | 稲盛和夫氏の言葉 |
| 令和4年8月号 | 人への投資が企業の将来を左右する |
| 令和4年7月号 | 盤石な会社は資金を持つ |
| 令和4年6月号 | 地域金融機関と税理士事務所 |
| 令和4年5月号 | 会社という組織に大切なこと |
| 令和4年4月号 | 原材料高騰と価格転嫁への対応 |
| 令和4年3月号 | コロナ対策融資への対応 |
売上が5%でも落ちるとものすごく気になりますが、妙なことに利益率が5%落ちてもあまり気にならない経営者が多いようです。しかし売上よりも利益(もっと正確に言えばキャッシュフロー)により強く焦点を当てこだわるべきです。売上げにこだわる経営者は赤字でも売ろうとします。実はそのような経営は、再度成長期の亡霊が付きまとっているのです。
今、諸コストがアップしています。手を打たなければいつの間にか赤字で販売することになります。値上げすると売れなくなるのではという発想では、その次も赤字での販売を余儀なくされます。これも売上至上主義の亡霊です。このような営業方針では、厳しくなる経営環境を生き抜くことはできません。
ではどういう戟略を立てるべきか、このような厳しい経営環境を生き抜くためにどうすればいいかですが、売上至上主義を改め、売上の質を高めることです。利益を上げるための単なる経費の削減とは意味合いが違うので注意が必要です。商品の付加価値を高め、 わが社ならではの価値で非競争の環境を創り出すことです。なぜわが社の商品を求めておられるのかを突き詰めて考えてみましょう。そこに創意工夫も生まれてきます。
その方法が、ひいきの顧客のニーズに、貴社だけが応える戦略への転換です。そこに単価引き上げの理屈が成り立ちます。そうすることで特徴ある商品やサービスを高評価した新しい顧客が増え、結果的に増収増益をもたらすことになるでしょう。
事業計画を考えるときに、我が社のデッドラインはどこかを考えましょう。つまりこれを確保できないと資金繰りは危なくなる、経営が立ちゆかなくなるというラインです。平たく 言えば「我が社が継続していくための適正利益は」ということです。
「適正利益」は「必要利益」置き替えて考えていいでしょう。「必要利益とは、会社が企業活動を行うにあたって最低限必要な利益」のことです。各企業の置かれている立場で持つべき目標によって必要利益は異なります。まず我が社の置かれている立場での目標を考えましょう。そしてその目標の優知順位を考えましょう。優先順位は下記のようになります。1がクリアーできていれば2です。1.2もクリアーできていれば3です。5の段階まで来れば実質無借金状態になります。
1.返済財源をいくらかでも確保する利益
2.借入れ返済財源を確保するための利益
3.債務超過を〇年後に解消するための利益
4.同業優良会社並の自己資本比率を〇年後に確保するための利益
5.自己資本比率を〇年後に50%にするための利益
これらの目標が立ったら、それを達成するためにどう行動すればいいのかを現状を分析して諜題を見つけ改善の行動計画をたてます。後はそれを実行していくことで、必ず目標利益が達成されます。現状分析する時、模範となる同業の優良企業のデータは参考になります。それが現実として存在するのですから。
色々な手段での情報発信が売上アップに欠かせません。情報発信するとき、つい考えてしまう間違いが、「これは、何度も発信したから、やめておこう」「一度発信したけど、効果は見られないのでやめとこう」という考え方です。一度見たから聞いたからといって、印象に残るでしょうか?テレビCMを見ればわかるように、何度もしかも同じ内容を繰り返しています。何度も繰り返しでやっと印象に残るのです。新聞や雑誌の広告も同じです。一度や二度では、気づいてはもらえません。かえって費用の無駄です。同じ内容を、何度、発信しても問題がないどころか、必要なのです。中小企業である自社は、その存在さえ知られていないのです。大切な一人のファンをつくるつもりで、繰り返し情報発信し続けていくことが大切です。そうすることで、知らず知らずのうちに「ああいつも見るあの店ね。あの商品ね。」と貴社の知名度が上がり、ブランド化につながっていきます。まずは会社を、お店を、商品を知ってもらうことが大切です。
ただし、どの方法が最も効果的かを吟味したうえで費用対効果も考えながら、情報発信にはコストをかけるべきです。もちろん、その商品やサービスが、それを欲しいであろう人に、関心を持ってもらえる情報発信にするには、お客様が感じているお困りごと不便・不満・不足を解決するイメージを持てるようにすることです。
元京セラ創業者の稲盛和夫氏が亡くなられました。多くの経営者が稲盛氏の書物等で得ることは多かったのではと思います。私もその一人です。稲盛氏は「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」とか「利他の心」の言葉で経営の本質を説かれています。前者は自己満足のために行う善行(小善)が、それが善意から発したものであったとしても結果的に人を傷つける大悪を生み出すことがある。
また、それに対して、本気で相手のことを考えて行う善行(大善)は、厳しく、容赦のない態度(非情)と誤解されることがある。という意味だそうです。そしてこういわれています。「上司と部下の関係でも、信念もなく部下に迎合する上司は、一見愛情深いように見えるが、結果として部下をダメにしていくことになります。これを小善といいます。「小善は大悪に似たり」と言われますが、表面的な愛情は相手を不幸にします。逆に信念をもって厳しく指導する上司は、その時はけむたいかもしれませんが、長い目で見れば部下を大きく成長させることになります。これが大善です。真の愛情とは、どうあることが相手にとって本当に良いのかを厳しく見極めることなのです。」と。
ここをわかってくれない部下がいる現実はつらいと思いますが、部下にとっての幸せを心から願って担雪埋井の心で、指導していくことが大切なのでしょう。真の愛情とは、どうあることが相手にとって本当に良いのかを厳しく見極めることなのです。真剣に考えて社員の成長を考えていきたいものです。
先日の日経新聞に、積極的な人材育成が好業績・高株価につながっているという調査結果があるという記事がありました。人手不足が深刻な問題となっていますが、同時に今慟いてもらっている人材をいかに大切に人財として育てるかが、企業存続と成長を左右する大きな要因です。当然と言えば当然かもしれませんが、これまで以上に特に若手社員さんのスキルアップの取り組みを強める必要があると思います。事業環境は大きくかつ早く変わっていっています。経営資源を人材投資に重点的に優先的に充当していくことがこれまで以上に必要です。座学の研修会だけではなく、現場による実学研修がより有効でしょう。仕事に直接的に必要な知識や技術を身につけるための研修、あるいは仕事に直接的に必要な免許や資格を取得するための費用、業務を遂行する上で必要と認められる研修費等については福利厚生費や研修費などとして損金にできます。給与として処理する必要はありません。
当然のことながら、盤石な会社にするには、現預金を多く持っておく必要があります。いざという時にすぐにキャッシュに変換することができる資産を多く持つということです。いざという時とはコロナ禍のようなネガテブな事態もあれば、経営拡大のための投資チャンスあります。いくら貸借対照表の資産の部に資産が計上されていても、中身が問題です。陳腐化した在庫や、滞留売掛金、土地建物など、これらは「総資産」として数字上は計上されていますが、現預金にできないので緊急時に会社を守り、発展させる財源にはできないのです。健全な会社にすることを、一般的に「財務体質を良くする」といいます。「財務体質を良くする」とは、言い換えれば、「貸借対照表を良くする」ということを指しています。では、「貸借対照表を良くする」ということは何なのでしょうか。それは資金が潤沢にあるということです。とはいっても預金もあるがそれ以上の借金もあるではなくて、現預金≧借入金という状態です。つまり実質的には「無借金」の状態です。ここを目指し、この差を年々大きくしていくことが、財務体質を良くしていくということなのです。
借入金があることは財務体質が悪いということではありません。むしろ現金預金がないことが大きな問題です。借入もないが預金もないよりも、預金もあるが借入もあるの方がいいです。そして現預金≧借入金という状態であればよりいいのです。
金融庁の「2021事務年度金融行政方針」に経営改善事業・再生事業・事業転換等の推進と体制構築という項目があります。この中にこれらの政策の推進を進めていくために、「地域の関係者(金融機関、信用保証協会、商工団体、中小企業再生支援協議会、税理士等)と連携共同し実効性ある事業者支援体制の構築強化を通じて、経営改善・事業再生等の取り組みを推進していく。」と書かれています。このように金融機関と税理士事務所との連携が求められているのですが、税理士・公認会計士が金融機関の支店長を知っているのは3割程度しかないという統計があります。まだまだ金融機関との関係の希薄さが問題視されているのです。もちろん、私たちの事務所では、金融機関様とは交流を深めて情報を共有させてもらっています。
神戸大学経済経営研究所所長で現在政府関連の委員を務められ金融庁参与であった家森義信氏は講演会で税理士事務所と金融機関との連携の必要性についてこう述べています。◎中小企業は様々な課題を抱えており、コロナ化によって状況は一段と困難になっている。◎地域金融が目指すべきは、事業性評価に基づく顧客企業の価値向上。それが地域金融機関の発展の唯一の道。◎実効的な事業性評価には、正確な信頼できる決算書をタイムリーに入手できることが不可欠。その点で中小企業との信頼関係を持つ税理士との連携が効果的である。◎税理士との連携は進んでいるが、発展途上。組織全体および現場レベルの両面から相互信頼の醸成を進めるべき。
さて、気になるアンケート調査があります。それは「きちんとした会計を行うことは中小企業の経営力を高める」と答えた金融機関の支店長さんは、強くそう思うが約65%、そう思うが36%で、殆どが共感されていることも紹介しておきます。きちんとした会計と事業計画は支援したい企業の選別の要件になっているのです。
企業が人の集まった組織である以上、企業の質を高めていくためには、その組織の構成員である人の質を高めていく必要があります。名経営者である稲盛和夫氏は「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」という方程式でいかに考え方が必要であるかを説いています。考え方が0であると全てが0になるわけです。マザーテレサの言葉も同様の意味でとても参考になります。その言葉は、「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから」「言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから」「行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから」「習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから」「性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから」。つまりは運命も、性格も、結局は考え方を変えないことには変わらない、よい方向にはいかないということです。
企業という組織の運命は、結局は組織の個々人の考え方をいかに高みに持っていくか、経営者自身も含め考えていく必要があるということでしょう。陥りがちな妙な魔力に振り回されないようにしたいものです。
原材料費やエネルギーコストの上昇が続き、地場企業の業績も目に見えて圧迫されてきました。適切な価格転嫁の重要性がより高まっています。ただ、中小企業庁が2月に公表した受注側の下請け中小企業約4万社を対象に実施した調査によると、直近1年間で発注側企業と価格交渉できなかった受注側企業は1割、価格転嫁が全く実現できなかった企業は2割にのぼっています。企業庁は調査結果を業種・企業ごとに順位付けし、下請中小企業振興法に基づく行政指導に乗り出すなど取引環境の改善を急ぐとのこと。価格交渉・転嫁状況が良くない個別企業に対し、下請中小企業振興法に基づく行政指導を順次開始するほか、21年9月に続き、22年3月を価格交渉促進月間と定め、今回と同様の調査を実施したそうです。企業庁の幹部は「月間がただのパフォーマンスではないというメッセージを発信していきたい」と強調しています。また大企業経営者が取引適正化を宣言する「パートナーシップ構築宣言」の実効性を怠めるため、宣言企業全社を対象にした調査を実施し、結果を公表します。大企業の経営層だけでなく、受注側との交渉を担う調達現場への宣言内容の浸透を徹底するとのことです。今回の調査では宣言企業で優良な結果だった上位企業も公表し、信越化学工業や東洋紡、NTT東日本、日立システムズ、富士電機などが挙げられています。中小企業はあきらめることなく適切な価格転嫁についてしつかりと取り組んでいきましょう。
新型コロナウイルス感染症の影響をコロナ特別借入でしのぐことができ、コロナ禍が落ち着けば事業の回復が進むと期待していたのですが、なかなか終息を見せず、関連事業への影響はまだまだ続いています。そんな中、対策借入の返済が近づきました。幸い支援いただいている金融機関様も相談に乗っていただき、返済延期や借り換え対策等で、できうる限りの対応をしてもらっています。我々としても、金融機関様との仲介役としてしっかり対応しているところです。この対応は、将来へ向けての展望を描けていて初めてできることです。コロナ禍を機会に、自社をよく分析し課題を見つけ、今後の対応について具体的な事業計画・行動計画を立て、それに沿って動いていくということです。課題解決のシュミレーションをするときに、設備改善などを要し、そのための資金も必要になるということもあります。資金ひっ迫の中でさらなる資金というときに金融機関様の支援がどうしても必要になります。本当はこうなる前にリスクを見据えた資金計画のもとで取り組むべきだったのかもしれません。そうはいっても、目の前に改革すべき現実は来ています。金融機関様の支援を仰ぐことができるのは、具体的計画はもちろん、経営者の行動と、その実績です。苦しい中ですが、少しでも前進の姿を見せていきましょう。そうすれば絶対によくなると信じています。そういう姿をたくさん見てきました。