令和7年8月号 | 「売上決定の原則とお客様との接点集中の原則」 |
令和7年7月号 | 「売上決定の原則とお客様との接点集中の原則」 |
令和7年6月号 | 「グレシャムの法則」 |
令和7年5月号 | 「パレートの法則」 |
令和7年4月号 | 小売店が勝つ方法 「ランチェスターの法則」の実践 |
令和7年3月号 | 戦略の基本的な法則 |
令和7年2月号 | 勝つための科学的手法 |
前号では 「売上の決定権はお客様にある」という売上決定の原則をお話ししました。このことから企業の力をどこに注がないといけないかといえば、お客様との接点の部分に力を集中させるのが最優先だということになります。経営は全てこの戦略に焦点を絞って運営することでいい結果を生むようです。そのことを頭に入れて戦術を考えてみましょう。
当然ですが、売るものは商品(サービス)ですから、売るものがなければ売上はありません。そこで考えるべきは、いったい誰が売る商品を作り、誰が客数を増し、単価を上げるのかということです。ご承知の通りそれは全て人です。人というのは事業を取り巻く関係者全てですから、従業員であり、売上決定の原則で検討したお客様でもあります。ですから売上を増やすには、根底にはやはり人を大事にしなければならないということになります。お客様の接点にもっとも関わるのは経営者を含めた社員です。従って、社長、社員の学びや教育はとても大切だということになります。特に経営者は目線を低くした姿勢が必要ではないでしょうか。このお客様というのは、ものを買ってくれた方ばかりではありません。将来買っていただけるかもしれない予備軍も含みます。つまり関わりのある全ての人ということになります。従業員さんも関係者です。そのことを考えて取り組みを考える必要があります。働き甲斐のある職場にすることも、大切な要素になるということです。
売上はいうまでもなく「客数×単価」できまります。ですから売上を増やすためには、客数を増やすか、単価を上げるしかありません。客数は買いに行くか行かないかで決まりますから、それを決定づけるのはお客様です。単価はどうでしょうか。価格はお客様から見た価値の値段です。企業が付けた値段とお客様から見た価値が一致したときにお客様は購入することを決定します。ですからこれも主導権はお客様です。つまり「売上の決定権はお客様にある」という売上決定の原則が導かれます。
このことから企業の力をどこに注がないといけないかがわかります。お客様との接点の部分に力を集中させるのが最優先だということになります。経営は全てこの戦略に焦点を絞って運営されるべきなのです。お客様は何を求めているのか、お客様に我が社の商品やサービスを伝える接点をどう構築していくのか。その商品やサービスの価値をどう伝えているのか。価値 > 価額をどう納得していただくのか、すべてその情報を伝えるための接点が必要です。その戦略を考えていく必要があります。
グレシャムの法則は「悪貨は良貨を駆逐する」というものです。何事も悪い方に流されるのは避けたいものです。
この法則は、ルーティンワークが創造的な仕事や戦略的計画を駆逐してしまう「計画のグレシャムの法則」として経営にも応用されます。企業風土も悪しき習慣は黙っていては自然にはびこってしまう性質を持ちます。例えば日常業務では、自然にほっておくと、本質的に大切なことよりも、つい目先の用件を片づけることが優先され、ついに、重要な用件には手が着けられなくなってしまいがちなのです。
私たちの日常生活の中でも、同様なのですが、ビジネスの中でも起こります。目先の請求書を発行したりするとか、とりあえず、会議に出るというスケジュールもあります。そういった目先の業務も大切なので、つい、そこに全勢力を注ぎこみ仕事をしているつもりになってしまっているわけです。しかし、それでは、明るい将来につながってきません。いつの間にか時代に取り残されていきがちです。この現象を回避するためには、計画や規律が必要です。ところが、計画を立ててもグレシャムの法則が働けば、やはり、目先の業務とか、ひととのつきあいとかで手つかずになりがちです。ではどうすればいいのでしょうか。
計画により具体性を待たせることが大切です。つまり、具体的目標を決めてより具体的な行動計画が必要になります。とかく、重要度の高いことほど、多くの場合は、緊急度が低く感じやすいものです。重要度の高さは緊急度の高さと同等だとの気持ちで目標を立て、戦略的な業務を上位の優先順位として時間を向けることが大切です。
「2:8の法則」という言葉は、みなさんもお聞きになったことがあると思います。 これは、「パレートの法則」ともいいイタリアの経済学者が発見した経験則です。
全体の2割程度の高額所得者が社会全体の所得の約8割を占めるという法則です。
ほかのさまざまな現象にも適用できます。
例えば「全商品の20%が80%の売上を作る」「全顧客の20%が全体売上の80%を占める」「働きアリの20%はあまり働いておらず、その20%のアリを巣から除くとまた新たな20%のアリが怠け者アリになる」「10項目の品質向上リストのうち上位2項目を改善すれば80%の効果がある」などです。
これを応用すると、上位2割に資源を集中するのが最も有効な戦略といえます。上位2割が何かを調査、分析しそこに人・物・金・知恵を集中することが重要なのです。
これをマーケティングの分野に応用するとすれば、上位2割の項目に資源を注力することが大切なのですから、上位2割の客層にプロモーションをかける。
費用対効果が高い上位2割の広告に資源を集中する。Web 戦略は上位2割に資源を集中するといったことが最もパフォーマンスが高いといえます。
上位2割が何かを調査、分析しましょう。だからこそ会計データが必要なのです。
大型店の真似をして戦いを挑んでも勝ち目はないのです。そこで、小店舗(弱者)はどうすれば勝てるか、お客様は振り向いてくれるのかを考える必要があります。
これも「ランチェスターの法則」の応用が考えられます。
勝てる部分を探すのです。大型店にはA商品群、B商品群、C商品群とたくさんの商品が揃っています。
小売店はそのA、B、Cの商品を揃えて戦っても大型店の方にたくさんあるわけですから、お客様は大型店に行き、結果負けます。ではどうするかです。
すべてに勝とうとしないことです。勝とうとすれば弾(商品)をたくさん持った相手が強いのですから、すべてに負けてしまいます。
小売店はA商品群だけに的を絞って局地戦で戦いをすることです。一騎打ちの戦略をとるのです。
つまりは専門店化、差別化です。「オンリーワン戦略」ともいえます。並はずれた、これだけは負けないぞという部分を作るのです。そうすればその部分には勝ち目があります。
商品群で説明をしましたが、戦いを挑む部分はたくさんあります。
たとえば挨拶でもいいでしょう。笑顔の挨拶には負けないこれも立派な差別化です。
大型店の回りでは集客力をねらった専門店で生き残れるのです。「並はずれたオンリーワン戦略」を検討してみたらいかがでしょう。
戦略の基本的な法則を見ていきましょう。戦略家孫子の言葉「敵を知り、己を知らば百戦危うからず」はあまりにも有名です。経営も一つの戦いといえます。
経営戦略に使われる有名な法則に「ランチェスターの法則」があります。
ここで重要なことは、自社が、業界のあるいは地域のどのような立ち位置にいるのかを知ることです。つまり我が社は弱者なのか強者なのかを知るということです。
そのことで戦い方が違ってきます。相手は必ずしも競業者(社)というわけではありません。その先にあるのはお客様ですので、いわばお客様にどう戦いを挑んでいるかの違いでもあります。
ランチェスターの法則の基本があります。
接近戦では「攻撃力=兵力×武器性能」となり、射程距離の長い戦いでは「攻撃力=兵力2乗×武器性能」となるというものです。
例えば、A組3人対B組5人で戦ったら接近戦では1:1の戦いができるので、B組が2人生き残ることになります。広域戦(鉄砲での戦いになるでしょう)では2乗の戦いになるので、3の2乗:5の2乗=9:25での戦いになりBはほぼ無傷で圧勝します。
小店舗がまともにぶつかっては大型店に負けるのはこの法則です。大型店の真似をして戦いを挑んでも勝ち目はないのです。
そこで、小店舗(弱者)はどうすれば勝てるか、お客様は振り向いてくれるのかを考える必要があります。
「勝つ」ということの意味は、それぞれの人でとらえ方が違い、価値観で決まると思います。
少なくとも自分の思いが成就し、幸福感を味わえた時に「勝った」と思えるのではないでしょうか。
その思いが何であれ、企業にとっての「勝つ」とは、経営者本人はもちろんのこと従業員の生活の基盤である経営が継続することが必要最小限の条件でしょう。
そこで「勝つ=経営が継続する」と言い換えていいのではないでしょうか。その経営が継続するための法則があると思うのです。
ある本に「経営は科学である」と書いてありました。確かに、経営がうまくいく法則があるとすればそれは科学といえそうです。
いろいろ勉強をしてきましたが、店舗戦略、人事戦略、顧客戦略、財務戦略、システム戦略、等々いずれもその戦いの策略を立てるには法則を学ぶ必要があります。
例えば顧客の戦略や人事の戦略には心理学という科学の法則は欠かせないはずです。店舗の商品レイアウトにも科学的手法が使われます。経営に手法に使われる有名なランチェスター戦略も科学的根拠に基づいた手法です。
このような伝統的手法は現在も生きており活用できます。次号からこれらの手法について述べていきたいと思います。