| 令和7年12月号 | 令和8年に適用される主な税制等 |
| 令和7年11月号 | 関係会社間取引の注意点 |
| 令和7年10月号 | 中小企業の法人税を節税するための対策 |
| 令和7年9月号 | 自社株を会社が買い取るとどうなる? |
| 令和7年8月号 | 中小企業の株式にまつわる話 |
| 令和7年7月号 | 所得税の基本的課税の仕組み -改正税法に備えて- |
| 令和7年6月号 | その支出は修繕費?それとも資産計上?どう判断するのか。 |
| 令和7年5月号 | 令和7年度改正税法-年収の壁はどう見直しされた?- |
| 令和7年4月号 | 令和7年度改正税法が修正されて年度内ぎりぎりに成立 |
| 令和7年3月号 | 活用しやすい中小企業投資促進税制について |
| 令和7年2月号 | 令和7年度の税制改正- 主な項目を抜粋して - |
企業経営に直接関係ある項目についてアウトラインをお知らせしています。詳細は関連情報を確認してください。
1.「防衛特別法人税」の創設
日本の防衛力強化に必要な財源を確保するために創設される新しい税制措置です。
適用時期:令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から適用です。税率は、基準法人税額から、基礎控除額500万円を差し引いた金額に対して4%ですので、中小零細法人には影響は少ないです。
2.社会保険の年収の壁が影響をうけます。
給与所得控除と基礎控除の引き上げで所得税がかからない年給与は103万円から160万円になりました。
ところが、社会保険の年収の壁は変わります。
撤廃予定: 2026年中に106万円の壁(賃金要件)が撤廃されます。時給が上がっているため加入対象者が増えます。
社会保険: 2027年10月には企業規模要件も段階的に撤廃され、週20時間以上働く全ての方が社会保険の加入対象となります。
3.子ども・子育て支援金
2026年4月から「子ども・子育て支援金」の徴収が開始されます。これは少子化対策の財源確保を目的とし、公的医療保険に上乗せされる形で徴収されます。対象者: 公的医療保険に加入している全ての方が対象です。
負担額: 年収に応じて変動し、2026年度は月平均500円、2028年度には月平均850円に増加する見込みです。
4.エコカー減税の変更
エコカー減税は、排出ガス性能と燃費性能に優れた自動車の自動車重量税を軽減する制度です。2026年4月30日まで継続延長されます。
5.ガソリンの暫定税率は2025年12月31日に廃止される方向です。
暫定税率の廃止により、ガソリン価格は理論上1リットルあたり25.1円安くなります。ただし、一気に下がるのではなく、2025年11月中旬から補助金が段階的に拡充されているので、徐々に下がります。
6.インボイス関係の改正 各種特例の縮小等
〇2026年10月からの特例措置の変更点「負担軽減特例」が段階的に終了・縮小します。
・2割特例の終了
2026年9月で終了し、2026年10月以降、売上税額の2割納税は不可です。
小規模事業者も仕入税額控除の計算を全ての仕入について行う必要があります。
・免税事業者からの仕入税額控除割合の縮小
現行:80%控除(2026年9月まで)・2026年10月以降:50%控除と縮小されます。
【例】免税事業者からの仕入税額が10,000円の場合
2026年9月まで⇒8,000円控除(10,000円×80%)
2026年10月以降⇒5,000円控除(10,000円×50%)
関係会社間取引の「関係会社」とは、親会社、子会社、孫会社にとどまらず、事業活動を行ううえで自社と密接な関係がある会社をいいます。このような会社間では第3者間と違い、価格等比較的自由な取引がなされがちです。つまり、通常の市場条件と異なる条件で行われることがあり、そのことで、利益を自由に操作もできるわけです。そこに税務的なリスクが生じかねないので注意が必要です。
1.関係会社間取引の問題点
関係会社との間で、不適正な価格で取引が行われたり、無償で貸付が行われたり、債権放棄や従業員の出向などを通じて利益が供与されたりした場合には、税務上、寄附金として扱われることがあります。
寄附金として扱われると、一般の寄附金は損金算入できる金額は限度がありますので、限度を超える場合には、追徴課税が発生することになります。法人税法上、寄附金とは、「寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与」(法人税法37条7項)と定義され、原則として一定の額を超える場合は損金不算入となります。
寄附金税制が問題となる際の関係会社間取引の「関係会社」とは、親会社、子会社、孫会社にとどまらず、事業活動を行ううえで自社と密接な関係がある会社をいいます。
2.関係会社間取引における不合理な取引価額
関係会社間取引は、第三者(独立当事者)との取引よりも条件や価格等でどちらかといえば自由に取り決めることができ恣意性が介在しやすいことから問題となりやすくなります。
特に関係会社との売買や役務提供で、どちらかの会社に有利(もしくは不利)な価格である場合に、それが不合理なものであり、利益移転、課税回避等と認定されたときは、寄附金等とみなされる可能性が高くなります。
関係会社に対して業務委託する場合、何の対価として委託料が支払われるかが明確になっていれば問題ありませんが、委託業務とその範囲が明確でないものについては取り扱いに注意が必要です。具体的な業務内容や、その業務が履行されたことを証明できる資料を整備しておくことが必要です
税務調査にあたっては、関係会社を把握するため、関係会社の情報を確認します。あるいは、申告書に添付される「出資関係図」「(同族会社等の判定に関する明細書)」や有価証券の内訳明細書をチェックされます。
そして関係会社間でどのような取引があるかを確認されます。それを踏まえて帳票類のチェックを行い、取引額(単価等)が第三者(独立当事者)と比べて大きく異なっていないか、異なっている場合はその理由は何か等を確認します。
比較すべき第三者(独立当事者)がない場合は、原価計算等を行って、利益に偏りがないかをチェックされます。
3.取引価額は定期的に見直しをしましょう
長い間取引価額の見直しをしていないと、その価額が一般的な価額とはかけ離れてしまっているかもしれません。第三者間で取引をするときと同様に見直しをすべきです。そして、その根拠を明らかにしておきましょう。
例えば、出向関係が問題になることがあります。関係会社へ出向する場合、出向元の企業に在籍したままの異動であり、出向者への給与等支払い方法として、「出向元からその者へ給与等の全額を支払い、出向先は相当の負担金を出向元へ支払う」という方法がとられることが多いでしょう。
税務調査では、出向先が支払っている給与(もしくは負担金)が低額であり、その分出向元の負担割合が大きくなっている場合には、出向元から出向先に経済的利益の供与があったとして、寄附金課税の問題が生じてしまいがちです。その金額に問題はないかを必ずチェックしておきましょう。
■法人税を節税するための対策
法人税を節税するための対策にはさまざまな方法があります。無理な対策は後に禍根を残すこともあるので注意しましょう。ここでは、代表的な対策を確認していきます。自社に実践できる方法があれば、検討しましょう。
1.役員・従業員社宅の導入
法人名義で賃貸物件を賃借し、役員や従業員の社宅として活用することも節税につながります。企業が支払った家賃と入居者が支払った家賃負担額の差額分が企業の損金となるため、所得を減らすことが可能です。
注意点として、役員や従業員から受け取る家賃負担額は、税法上決められています。役員の社宅は特に注意しましょう。国税庁が定める賃料相当額を守らないと、役員及び従業員には給与としての課税が発生します。法人の損金に認められない場合もあります。
2.社員旅行の活用
福利厚生の一環として社員旅行を実施して、福利厚生費に計上する方法もあります。注意点として、福利厚生費として認められる範囲が決められているため、下記の条件を満たすことが必要です。
また、役員や従業員の家族にも参加を認める場合は、家族分の費用は必ず自己負担にする必要があります。
3.30万円未満の消耗品の購入
中小企業では、30万円未満(企業消費税処理によって違いますが一般的には税抜基金額)の消耗品を購入すれば、全額損金として計上できるため、法人税の節税につながります。「中小企業等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」に定められています。かと言って無駄な購入はしないようにしましょう。
4.決算賞与の支給
業績が好調で資金に余裕があるようなら、従業員に決算賞与を支給すると法人税の節税につながります。決算賞与の支給は従業員のモチベーションアップにもつながるでしょう。ただし、節税対策として決算賞与を活用するには、下記の条件を厳格に満たしている必要があります。
これらの条件を満たしていれば、決算の時点で、未払金として当期の費用として計上できます。
5.経営セーフティ共済への加入
経営セーフティ共済への加入は、節税対策・将来の資金対策として最もお勧めします。掛金は積み立てをしながら全額損金に算入できます。しかも借入れも出来ます。月額5,000~20万円の範囲で、最大800万円まで積立が可能です。
6.短期前払費用の活用
短期前払費用の特例とは、年払い契約をして費用を前払いすることにより、来期分の経費を今期分の経費として計上することを認める特例です。例えば、事務所家賃を年払いに変更したり、保険料やリース料を年払いにすることにより、当期分の所得を減らせます。ただし、継続適用する必要があるため、節税効果を得られるのは初年度のみです。
7.不良在庫の処分
不良在庫を適切に処分することは、節税対策に役立ちます。不良在庫であっても、保管されている限りは棚卸資産に計上しなければなりません。処分換金することで資金的にも効果があり、節税にもつながります。
8.出張旅費規程の整備
出張旅費規程を整備し、出張時に旅費日当を支給するのも、法人税を節税するためのひとつの方法です。旅費日当を法人税の損金に算入するためには、規程にもとづいて適正に日当を支払う必要があります。また、旅費日当を受け取る役員・従業員側は、日当分については所得税が課税されません。ただし、金額は常識的に設定すべきです。
1.自己株式の譲渡による所得の課税
(1)通常の場合
個人株主がその保有する株式を発行会社に対して売買により譲渡する取引(自己株式の譲渡)は、一般的には、その譲渡益は「株式等に係る譲渡所得等」として所得税の課税(分離課税)の対象となります。
ただし、個人株主が自己株式の譲渡により収受した譲渡対価のうち、譲渡した株式に対応する資本金等の額を超える部分の金額は、「利益の配当」とみなされ、配当所得の課税対象(みなし配当所得。総合課税)になります。したがって、譲渡した株式の譲渡対価のうち自己株式等の時価に相当する金額からみなし配当額に相当する金額を控除した金額が、株式等に係る譲渡所得金額等の譲渡収入金額になります。実務では譲渡の価額での留意点があります。

(2)自己株式の譲渡が低額譲渡に該当する場合
イ みなし譲渡所得課税の仕組み
譲渡所得課税は、当事者が取り決めた譲渡対価の額が譲渡収入金額となって課税されることが原則とされています。
ただし、法人に対して、時価の2分の1未満という低額で譲渡をすると、時価で譲渡したものとみなして譲渡所得の課税が行われます。
なお、この低額譲渡によるみなし譲渡所得課税の適用の基準となる「時価」の判定基準は、所得税基本通達に定めてあります。同通達によれば、取引相場のない株式については、(イ)売買実例があるものは最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額又は(ロ)類似会社の株式の価額のあるものは、類似会社の株式の価額に比準した価額、さらに、(ハ)これらに該当しないものについては、その株式等の発行法人の1株(1口)当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額によることとされています。
ロ みなし配当課税との関係
自己株式の譲渡があった場合には、譲渡した株式の実際の譲渡対価のうち資本金等の額を超える部分について、配当とみなされ配当所得の課税対象になります。非上場会社の場合には、約20%の分離課税ではなく、他の所得と合算した総合課税が適用されます。結果として税負担が非常に高くなりがちです。
したがって、自己株式の低額譲渡になると、譲渡対価の額が資本金等の額に対応する額を超える場合には、その譲渡価額(時価)相当額は、(イ)みなし譲渡収入金額(時価-実際の譲渡対価の額)、(ロ)みなし配当金額(実際の譲渡対価-資本金等の額に対応する額)、(ハ)実際の譲渡収入金額(資本金等の額に相当する金額)からなることになります。
*相続した株式の譲渡の場合の特例
相続した株式を相続後3年10ヶ月以内に売却したのであれば、分離課税で約20%だけの税金で済む特例があります。この特例の大きな落とし穴は、配偶者が株式を相続した場合には、配偶者はこの特例が使えない可能性が高いことです。理由は、この特例は、「相続税が課税された人」がその株式を発行会社に売却した場合に使える特例だからです。
2.他の株主に贈与税がかかる場合もある
株式発行法人が客観的時価により自己株式を取得したものである場合には、経済的利益の贈与という事実は発生せず、したがって、他の株主に対する贈与税の課税関係が生じることはありません。
ただし、個人から財産の低額譲渡を受けたため、株式の1株当たりの価額(相続税評価額)について、株式の低額譲受前よりも譲受後の方が増加する場合には、その差額については財産の譲渡人から同族会社の株主に対して経済的利益の贈与があったものとみなされ、贈与税の課税対象になることがあります。
皆さん方がお持ちの会社の株式は、上場されていませんので、非上場の株式として、税務面でもいろいろな課題があります。知っておくべき、主に税金に絡むことをお話ししたいと思います。
1.株主名簿の整備をする
株主は株式名簿で管理します。そのため、株式を譲渡や贈与をしたときは株主名簿の書き換えが必要です。歴史の長い会社には実際に出資はしていないいわゆる名義上の株主もあったりします。移動時に困るので、早めに確認の上整理する必要があります。なお、株式の譲渡については勝手に動かせないように取締役会の承認を必要とする譲渡制限付きとなっている会社がほとんどなので確認してください。
2.株式は財産なので、相続税の対象資産となる
株式も財産なので、相続税の対象となる資産です。その評価は税法で決められています。自己資本(純資産)の大きい会社は、株式の評価額はかなり大きくなっていることが多いです。1株1万円が評価で50万円ということもざらにありますので確認が必要です。必要と思われる場合は、当事務所で評価額を算出しています。
3.非上場株式の評価額は場面で違ってくる
非上場株式を相続や贈与、または売却する場合には、価額が問題になります。評価には相続や贈与税の時に使う評価方法、所得税や法人税に使う評価方法、少数株主間で使う評価方法等決められており複雑です。
例えば、売る場合はいくらで譲るかという譲渡価額の問題があります。評価額は税法で決められているのですが、誰の所有の株を誰に譲渡するのかで課税が変わってきますので、とてもややこしい問題になります。一般的に資産を売買するときに、お互いの納得のいく価額で決まりますが、株式も同様です。その事例は第三者間で売買されるM&Aなどの時です。それはまれで、親族間の移動がほとんどです。となれば金額は自由に恣意的に税金が少なくなるように決めてしまうかもしれません。そこで税法では歯止めをかけるための仕組みになっています。
4.非上場株式の譲渡の価額
税法で定められた金額を考慮して売却しないと、思わぬ税金がかかってきますので注意が必要です。一例ですが、大株主である社長が評価額200万円の株を息子だからということで安く50万円で売ると、息子は150万円贈与受けたことになり贈与税がかかるといった具合です。また、その社長が自分の会社に売ることも可能ですが、価額によってはみなし譲渡が生じたりします。誰が誰にいくらで売るかで、税のかかり方も変わり極めて複雑ですのでご注意が必要です。
5.株式の譲渡益の税金
金額の考え方は上記のとおり様々ですが、M&A等で個人から個人へ株式を譲渡した場合は、儲けに対して課税されます。譲渡価格から取得費などの必要経費を差し引いて譲渡所得を算出ます。所得税は一律15%が課税され、住民税の5%、復興特別所得税の0.315%(所得税の2.1%)と合わせると20.315%の課税となります。
6.株式の対策
節税のためには、生前から少しずつ贈与を進めたり、株式の評価額を下げてから譲渡したりする方法がありますが、さまざまな要素をふまえて最善な時期や方法を選択するのは簡単ではありません。将来を見据えた対策が必要です。
暑中お見舞い申し上げます
103万円の壁問題を端緒として、所得税の改正がありました。改正によっては基礎控除や給与所得控除の額等が変わり、より複雑化します。年末調整での適用ですが、所得税の基本的課税の仕組みをおさらいしておきたいと思います。
■計算の大枠
所得税の金額=課税所得金額×税率-税額控除額
復興特別所得税の金額=所得税の金額×2.1%
上記のように所得税の金額と復興特別所得税を合計して納付します。
以下のような手順で所得税を計算していきます。
注)土地建物の譲渡による所得、退職金の所得等は別の計算をします。
■所得税を計算する手順
① 年間の収入を計算する
まず、年間の収入を計算します。収入とは、個人事業主なら年間の売上、会社勤めやアルバイト、パートの場合は賞与を含めた年間の給与の総額のことです。
② 年間の収入から経費を差し引く
個人事業主なら、収入から人件費や家賃、仕入れ代といった経費、青色申告の事業者は要件によって10万円から65万円の青色申告控除を差し引きます。会社員やパート、アルバイトの場合、経費の代わりに給与所得控除を差し引きます。給与所得控除は給与収入によって控除額が決められています。
給与所得控除額は例えば
収入162万5,000円以下は 55万円 でしたが 改正で190万円以下は65万円になります。
段階的に金額が上がり、850万円超は 195万円までで、上限があります。
③ ②の金額から所得控除額を差し引く 注)基礎控除などが引き上げられます。
②の金額から、所得控除の金額を差し引きます。差し引き後の金額が課税所得金額となります。
所得控除は、個人の事情にあわせて税負担を軽減させる制度で15種類あります。例えば、納税者の所得に応じた金額を差し引ける基礎控除、対象の扶養家族がいる場合の扶養控除、医療費を支払った際の医療費控除などです。事業主の退職金用に積み立てられる小規模企業共済等掛金控除も所得控除です。
所得控除が多いほど課税所得金額は少なくなりますが、それぞれ複雑な適用要件があり、自動的に適用されるわけではなく、年末調整や確定申告で申告必要なので注意しましょう。
④ ③の金額に定められた所得税の税率をかける
③で計算した課税所得金額に、所定の所得税の税率をかけて所得税の金額を計算します。所得税の税率は所得が増えるほど高くなる超過累進税となっています。最低5%から最高45%です。
⑤ ④の金額から税額控除額を差し引く
④で計算した金額から税額控除を差し引きます。税額控除は、所得税額から一定の金額を差し引ける控除制度です。配当控除や寄附金控除、住宅借入金特別控除などがあり、それぞれに控除される金額が決められています。
また、2037年までは所得税の金額に復興特別所得税の2.1%をかけた金額が加算されます。
■機械や建物などを修繕した時に、一般的に修繕といいますが、税務的には修繕費なのかどうかの検証が必要です。税務でいう修繕費だと損金(経費)になりますが、そうではないと資本的支出として、一度に損金(経費)にするのではなく資産計上をし減価償却をしていくことになります。どういう基準で決めるのかは実務上迷うところですが、税法では、下記のように決めています。
■資本的支出は「固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。」として例示しています。
(1) 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。
■そうは言っても、経理の現場では、その判定は必ずしも容易ではありません。そこで、税法では、上記で判定しづらい場合にどうするかの形式基準を設けています。
① 少額又は周期の短い費用は損金算入できます。修理、改良について要した金額が20万円未満の場合は修繕費として損金経理をすることができます。
② その費用の額のうちに資本的支出か修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、その金額が次のいずれかに該当するときは、修繕費として損金経理ができます。
(イ)その金額が60万円に満たない場合
(ロ)その金額が修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合
※例1 例えば機械(建物)の取得価額が1000万円だった時、70万円かかった修理があり、それが資本的支出なのか修繕費なのか判別できない時には、1000万円×10% > 70万円 なので、70万円は修繕費で落とせます。
③ 資本的支出と修繕費の区分の特例では、資本的支出であるか修繕費であるか明らかでない金額(上述のイ又はロの適用を受けるものを除きます。)がある場合において、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、これを認めることとされています
※例2 例えば取得価額600万円の機械の修理に90万円かかり、その費用が修繕費なのか資本的支出なのかわからない場合は、支出金額の30%相当額(90万円×30%=27万円)と固定資産の前期末の取得価額の10%相当額(600万円の×10%=60万円)のいずれか少ない金額である27万円が修繕費となり、残額の63万円(90万円-27万円)資本的支出となります。
■注意 上記の②③はあくまで判定できない時であって、用途の変更とか明らかに資本的支出には適用でません。
前号でもお知らせしましたが、所得税の年収の壁問題が議論されていましたが、国会議論で紆余曲折の上決着が付きました。
大変わかりにくい制度になっています。別紙に『「年収の壁」見直しで、何が、どうなる?』の事務所通信を同封していますのであらためてご確認ください。
これらはいずれも令和7年分の所得税から対象となりますが、従業員等に毎月給与等を支払う際の源泉徴収時の適用ではなく、令和7年12月の年末調整で改正制度を反映することになります。
時間はあるとはいえ、この複雑な制度をそれぞれの従業員さんごとに把握する事務負担の増加は避けられません。
少数与党による国会運営で注視された3月31日の参院本会議では、衆院で法案修正された所得税法等の一部を改正する法律が参院本会議で年度内に成立し、即日公布されました。
所得税関係では当初の税制改正法案から修正案が示された所得税の基礎控除の上乗せ特例があります。
また防衛財源確保のための防衛特別法人税の創設や、子育て支援に係る措置として生命保険料控除・住宅ローン控除等の拡充があります。
ここでは特に話題となった103万円の壁にかかわる所得税の改正を取り上げます。
■所得税の人的控除関係の改正 -適用は年末調整時・事務負担増は避けられない-
所得税の基礎控除、給与所得控除の控除額の引上げ、配偶者控除や扶養控除の合計所得金額要件の引上げ、新たに「基礎控除の特例」や「特定親族特別控除」が創設されます。
これらはいずれも令和7年分の所得税から対象となりますが、会社が従業員等に毎月給与等を支払う際の源泉徴収時の適用ではなく、令和7年12月の年末調整で改正制度を反映します。
時間はあるとはいえ、この複雑な制度をそれぞれの従業員さんごとに把握する事務負担の増加は避けられません。
■基礎控除の特例は所得に応じて控除額を加算 -48万円が58万円に、ただし特例で複雑に-
所得税の基礎控除では合計所得金額2,350万円以下の者の控除額が10万円引き上げられ58万円となります。
さらに所得に応じて基礎控除の額を加算する「令和7年分以後の各年分の基礎控除等の特例」(「基礎控除の特例」)が創設されます。
■基礎控除の特例とは -2年間だけ適用される制度-
合計所得金額が「①132万円以下」では、基礎控除の額は58万円に37万円を加算して95万円に、
「②132万円超336万円以下」は30万円加算で88万円、
「③336万円超489万円以下」は10万円加算し68万円、
「④489万円超655万円以下」では5万円加算で63万円となる。
①の基礎控除の額の加算は恒久措置だが、②③④の加算は令和7年分及び令和8年分の時限措置とされる。
■給与所得控除の引き上げ -55万円から65万円に引き上げ-
一律ではなく、給与等収入190万円以下までが65万円の控除額となります。
■配偶者控除に係る同一生計配偶者や、扶養控除に係る扶養親族の合計所得金額の要件については、48万円以下から58万円以下に引き上げられ、若干は扶養になりやすくなります。
奥様の配偶者控除は現在給与は103万円以下が条件でしたが、123万円(123-65=58)になります。
■新設の「特定親族特別控除」は子等の所得123万円以下が対象-2年間だけの大学生世代の子への対応-
「特定親族特別控除」の創設により、特定親族(19歳以上23歳未満の親族で合計所得金額が123万円以下の控除対象扶養親族に該当しない者)を有する者は、
特定親族の合計所得金額が58万円(給与150万円)超123万円((給与188万円)以下まではその所得金額に応じて、63万円から3万円の範囲で控除額が逓減する控除を受けることができます。
今までアルバイトで103万円超えると扶養控除できなかったのですが、大幅増額です。
■勤労学生の合計所得金額の要件も、75万円以下から85万円以下に引き上げられます。
給与収入150万円(給与所得控除65万円+勤労学生控除85万円)までは所得税がかからないことになります。
■中小企業投資促進税制について
中小企業の設備投資を支援する中小企業投資促進税制が、令和7年(2025年)改正で若干の見直しで令和9年3月31日まで2年間延長されました。
給与増額による税額控除とともに活用しやすい制度ですのであらためて概要をご紹介します。
■中小企業投資促進税制とは
中小企業投資促進税制は、中小企業における生産性向上等を図るため、一定の設備投資を行った場合に多めに減価償却費を計上できる特別償却(30%)または税額控除(7%)のいずれかの適用を受けることができる制度です。
(注)税額控除は資本金3,000万円以下の法人、個人事業主のみ適用できます。
特に事前に申請をするとかは必要ありません。業者の方に対象になる機械装置かを確認してください。
■対象事業者
次の①または②の法人
①青色申告書を提出する中小企業者(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等)
② 従業員1,000人以下の個人事業主
措置の内容
① 資本金3,000万円超の中小企業 ・・・取得価格×30%(特別償却)
② 資本金3,000万円以下の中小企業・・・取得価格×30%(特別償却)または取得価格×7%(税額控除)
業種についてはほとんどの事業が適用できます。
■対象設備 中古品は適用できませんのでご注意ください。
| 設備(注1) | 取得価額要件 |
|---|---|
| 機械装置 | 1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの |
| 測定工具 検査工具 | 1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの (事業年度の取得価額の合計額が120万円以上のものを含む) |
| 一定のソフトウエア | 一定のソフトウェアの取得価額が70万円以上のもの (事業年度の取得価額の合計額が70万円以上のものを含む) |
| 普通貨物自動車 | 車両総重量3.5t以上(注2) |
| 内航船舶 | 内航船舶全て(注3) |
(注1)中古品、貸付の用に供する設備は対象外です。
(注2)普通貨物自動車は、道路運送車両法に規定する普通自動車で、貨物の運送の用に供するものが対象です。
(注3)取得価額の75%が対象となります。
令和7年度税制改正大綱はいわゆる給与の税金がかからない103万円の壁問題の解決策がメインです。ほかにも改正事項がありますが、中小企業にとっては大きな改正はありません。
改正案の内容の概略をお知らせします。ただし現段階では国会で議論中であり、例年のように税制改正大綱がそのまま決定するとは言えないようです。
【所得税関係】
(1)基礎控除の引き上げ
①基礎控除について、合計所得金額が2,350万円以下である個人の基礎控除額を10万円引き上げ58万円となる。
②上記①の見直しの結果、基礎控除の額は次のとおりとなる。
イ 合計所得金額が2,350万円以下である個人58万円
2,350万円を超え2,500万円以下は段階的に引き下げ最低16万円とする。
(注1)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。源泉徴収については、令和8年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について適用されますので、事務負担は年末調整の時まで特にありません。
(2)給与所得控除の引き上げ
①給与所得控除について、55万円の最低保障額を65万円に引き上げる。
(注)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。なお、給与所得の源泉徴収税額の算出率の表の改正は、令和8年1月1日以後に支払うべき給与等について適用する。
(1)と(2)により給与の場合123万円(改正前103万円)までは税金がかからないことになります。
(3)特定親族特別控除(仮称) 大学生年代の子の親への特別控除の創設
人手不足の中、特に大学生のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているとの指摘解消のため。
①19歳以上23歳未満の大学生年代の子等の合計所得金額が85万円(給与収入150万円に相当)までは、親等が特定扶養控除と同額(63万円)の所得控除を受けられ、また、大学生年代の子等の合計所得金額が85万円を超えた場合でも親等が受けられる控除の額が段階的に逓減する仕組みとする。
(注)給与所得者については令和7年分の年末調整において適用できることとする。
(4)上記(1)から(3)までの見直しに伴うその他の措置
①同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を58万円以下(現行:48万円以下)に引き上げる。
②ひとり親の子の総所得金額等の合計額の要件を58万円以下(現行:48万円以下)に引き上げる。
③勤労学生の合計所得金額要件を85万円以下(現行:75万円以下)に引き上げる。
(注)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。
【法人税関係】・令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
(1)中小企業者等の法人税の軽減税率15%の特例について、次の見直しを行った上、適用期限を2年延長する。
所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率を17%(現行:15%)に引き上げる。高額利益先ですので一般的中小企業には影響なしです。
(2)防衛特別法人税(仮称)の創設 納税500万円以上の場合の適用です。
・法人税額に対し、税率4%の新たな付加税を課す。
・課税標準となる法人税額から500万円を控除する。