| 令和5年12月号 | 年末調整とその留意点 |
| 令和5年11月号 | よく言われる年収の壁について |
| 令和5年10月号 | インボイス制度の再確認 - 免税事業者との取引関係 |
| 令和5年9月号 | 役員への貸付金の留意点 |
| 令和5年8月号 | 自分や相続人が認知症になったときの問題点と対策 |
| 令和5年7月号 | 具体的・身近なインボイス対応 |
| 令和5年6月号 | 中小企業向け設備投資促進税制について |
| 令和5年5月号 | 中小企業の賃上げ促進税制について |
| 令和5年4月号 | いき過ぎた節税対策は企業存続を危うくする |
| 令和5年3月号 | 令和5年度税制改正-使いやすくなった相続時精算課税制度- |
| 令和5年2月号 | 令和5年度の税制改正-インボイス制度の改正- |
年末調整は、特に昨年との改正点はありません。今一度提出書類を確認し早めに提出してもらいましょう。電磁的方法による提出も推進されています。以下、よくある留意点、疑問点をまとめました。
■年末調整対象者は?
「扶養控除等(異動)申告書」の提出がないとできません。給与総額が2,000万円超も対象外です。本年12月31日に在籍している方が対象です。中途退職者は原則年末調整はしません。
■「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を求めましょう。
この申告書を提出されていないと年末調整はできません。必ず提出を求めてください。また、この書類が提出されていない場合は毎月の給与について一般の源泉徴収金額とは異なる「乙欄」による源泉徴収をする必要があります。天引きしていなくても雇用主にその源泉徴収税額の納付をする義務があるので、注意しましょう。
■年末調整の改正点と「扶養控除等(異動)申告書」の記載の留意点は?
令和3年分から給与所得控除や基礎控除の改正、寡婦控除の改正、ひとり親控除の創設、所得金額調整控除の創設があっています。本人や扶養親族等の障害者の場合には、障害者の□にチェック、本人が寡婦、ひとり親、勤労学生の場合は該当する□にチェックを忘れずに入れましょう。昨年と移動があっていないか改めて確認を。
■記入用紙が3枚あります。この提出がないと事務手続きができません。
記入用紙は①「扶養控除等(異動)申告書」②「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」③「保険料控除申告書」の3枚になっています。①と②は必ず必要です。③は該当ある方のみの提出ですが、昨年と比べ移動がないか確認しましょう。念の為「なし」の場合も「なし」ということで出してもらった方がのちのトラブルを避けるためにもよろしいでしょう。他に「住宅借入金等特別控除申告書」は該当ある方のみです。
■子供が12月25日に生まれました。扶養親族にできますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行います。従って生まれて間もないですが、扶養親族になります。
■親を扶養していましたが、年の途中で亡くなりました。扶養から外れますか?
扶養親族の判断は12月31日現在で行いますので、その日には親はいないので、扶養から外れるのではと思いがちですが、令和5年中であれば、例えば5年1月に亡くなられたとしても今年までは扶養控除ができます。
■中学生の息子は扶養控除にできないのですか?
扶養親族は生計を一にしていて、所得が48万円以下(給与だと収入103万円以下)であることが条件です。しかし16歳未満(平成20年1月2日以後に生まれた人)は扶養控除の対象にはなりません。子供手当てが支給されるからです。ただし、障がい者の場合は障がい者控除があります。
■障害者等の確認をしてください
障害者として申告されている人は、給与所得者本人又は同一生計配偶者や扶養親族となっている人ですか。
障害者控除は、同一生計配偶者や年齢16歳未満の扶養親族であっても受けることができます。
■国外に住んでおられる親族に係る扶養控除の適用を受ける場合
その国外居住親族の年齢等の区分に応じて、関係書類(送金関係書類など)を給与等の支払者に提出又は提示する必要があります。不明点は当事務所にお尋ねください。
■前職の源泉徴収票がもらえないのですが?
中途就職の従業員さんは前の職場の給与も加えて年末調整をします。そのために前職の源泉徴収票が必要です。それがないと、年末調整はできませんので、自分で確定申告をすることになります。従って、中途退職者がおられれば、必ず退職までの給与の源泉徴収票を発行してあげましょう。
パートで働く主婦は、年収によって税金の有無や社会保険の自己加入義務が変わります。年収の壁には所得税の壁、住民税の壁、そして社会保険の壁がそれぞれあって、より複雑になっています。しかも数年毎にそれぞれの法律が変わっていくものですから余計に混乱しています。それぞれの年収の壁を超えるとどうなるのか、概略を解説していきます。色々な詳細な条件等がありますが、それは割愛し一般的な事例をお話しします。
■100万円前後の壁:自分の住民税の非課税年収額
住民税は、前年の所得に対してかかり、均等割と所得割が徴収されます。伊万里市の場合均等割は、年間5500円(自治体により異なる)の定額です。給与収入93万円超の場合課税となります。所得割は、年収100万円を超えると課税対象となります。100万円を超えると収入から98万円を引いた額に10%の税額を掛けて計算するので、1万円増えるごとに1,000円の所得割が増えます。また、未成年者、障がい者、ひとり親、寡婦の方は、前年の合計所得金額が135万円(給与で約204万円)では市・県民税はかかりません。
■103万円の壁:自分の所得税の非課税年収額
パート代が年間103万円以下であれば、本人の所得税がかかりません。103万円を超えると、超えた分に対して所得税がかかります。給与所得控除が最低でも55万円あり、基礎控除が48万円あるので合計103万円までは所得税はなしです。ちなみに150万円の所得があれば所得税住民税併せて7万円ほどです、103万円以下だと、ご主人の所得計算のために配偶者控除を受けられます。超えたとしても201.6万円までは配偶者特別控除を受けられます。
■106万円の壁:勤務先によっては社会保険加入の年収額
サラリーマンの夫の勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金など)の扶養に入るには、年収約106万円と130万円の二つの年収ボーダーラインがあります。勤務先での社保は会社が約半分負担します。
勤務先規模や条件が以下の人は、年収106万円以上になると勤務先の社会保険への加入義務が発生し、自分で保険料を払うことになります。夫の扶養に入っていた人は、夫の社会保険の扶養から外れます。
*106万円~社会保険の加入条件(2022年10月時点)
いよいよインボイス制度が始まりました。今回は免税事業者との取引関係についてお話しします
これまでも取り上げていますが、基本的事項を含め、実務で重要となる点を再点検する意味で確認します。
■免税事業者等との取引で仕入税額控除はできますか。
インボイス発行事業者以外の者である消費者・免税事業者・インボイス登録を受けていない課税事業者(免税事業者等)からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために保存が必要なインボイスの交付を受けることができないため、仕入税額控除を適用できません。ただし、一定期間は、免税事業者等からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる下記の「経過措置」があります。
■免税事業者等からの課税仕入れに係る「経過措置」の内容と、いつまで適用できますか。
経過措置を適用できる期間及び控除割合は、「令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%」、「令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%」となります。
令和11年9月30日を過ぎると、免税事業者等からの課税仕入れの全額について、仕入税額控除ができなくなります。
■経過措置の適用要件を教えてください。
経過措置の適用を受けるためには、一定の事項が記載された「帳簿」及び「請求書等」の保存が必要です。帳簿については、通常の記載事項に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要です。
「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」の記載については、個々の取引ごとに「80%控除対象」、「免税事業者からの仕入れ」などと記載する方法があります。そのほか、例えば、経過措置の適用対象となる取引に、「※」や「☆」といった記号・番号等を付し表示する方法も認められます。区分が必要なので事務手続きが複雑になります。
【経過措置の適用を受けるための帳簿の記載事項】は従来と同様です。
①課税仕入れの相手方の氏名又は名称 ②課税仕入れを行った年月日
③課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)及び経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨
④課税仕入れに係る支払対価の額
■免税事業者等との取引条件を変更しようと考えていますが、留意点はありますか。
取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、「優越的地位の濫用」として、独占禁止法上問題となるおそれがあります。
特に、令和11年9月30日までは、前述のとおり、免税事業者からの仕入れでも一定割合を控除できる経過措置があります。にもかかわらず、消費税10%相当額を取引価格から引き下げることを一方的に通告することは、問題となるおそれがあります。
しかし、新聞報道によれば経過措置後は免税事業者とは取引をしないことを打ち出している大手企業も出てきています。
■免税事業者がインボイスのために課税事業者になった場合の納付税額の軽減措置とは
小規模事業者から「免税事業者のままでは、取引先が仕入税額控除できないため取引が打ち切られる」「課税事業者になると消費税負担が増えて生活が苦しくなる」といった影響が心配されています。そこで、免税事業者がやむを得ず課税事業者となりインボイス発行事業者になった場合、納付すべき消費税額を3年間は軽減する措置が設けられています。
消費税額を売上の20%に軽減する措置を受けることができます。納付税額=売上税額-(売上税額×80%)です。
例えば税込売上550万円(消費税50万円)であれば、50万円−(50万円×80%)=10万円(50万円×20%)の納税となります。
この軽減措置は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において適用されます。
中小企業のオーナー経営者の場合、会社のお金と個人のお金の境目が曖昧になってしまい、
社長の生活費が足りないなどの理由から、いつの間にか「役員貸付金」が膨らんでいることがあります。ここにはいろんなリスクがありますのでこれについて考えます。
1.オーナーと会社の財布は同じではありません
まず理解しておいてもらいたいのは、会社の財布と社長の財布は決して同じではないということ。会社から社長へ貸したお金は「役員貸付金」としてしっかりと管理し、会社の帳簿に記録する必要があります。「この会社は自分のものだから」と曖昧なままでお金を移動させることは、絶対にしてはいけません。
2.役員貸付金の発生原因
「役員貸付金」は大抵役員報酬が低すぎる場合に見られます。例えば会社の業績が思わしくなく、役員報酬が少額な場合には、生活費が足りずに会社からお金を借りざるを得なくなるケースも出てきます。その他現金管理がずさんで、役員が個人的に使ってお金がどこに使われたのかわからない場合です。明らかにあるべきお金がないのですから、使途不明である限りは役員貸付金にするしか方法はありません。社長以外でも役員がお金を借りたのであれば「役員貸付金」となります。
3.役員貸付金のリスクは?
「役員貸付金」の一番のリスクは、銀行の印象をきわめて悪くします。結果融資が受けにくくなりますし、返済をしばらく止めてもらうなどの救済の支援も受けにくくなります。金融機関からの借り入れがある場合は、その借入金を流用していると判断されます。金融機関に返済すべきお金を役員が個人的に使っているのですから、心証はきわめて悪くなるのは当然です。使途不明の貸付金が、異常に増加するとすれば益々です。
対外的な信用も落ちます。第三者が決算書を見た際に良い印象は与えません。
4.税務調査でのリスク「役員貸付金」には利息がかかる
会社は営利組織ですから、企業行動は全て利益につながっているはずだ、という前提があります。会社から社長にお金を貸すのも、営利活動の一環でなければならないのです。ということは、会社は利息を取る必要があります。しかし社長は自分の会社から借りたお金に利子をつけなければいけないという意識がありません。
この状態で税務調査に入られると、税務署からは指摘が入ることになります。多くの場合、会社が取り損ねた利息は「会社から社長への役員報酬として支払われた」とみられます。利子分が上乗せされた報酬額となりますから、それに応じた追徴課税の対象となってしまいます。
5.税務調査で「役員貸付金」を会社に返済する意思がないとみなされるととんでもない税金がかかる
「返済の意思がない」と見なされた時点での「役員貸付金」は役員に対する報酬にすぎないと見なされることもあり得ます。すると多額の追徴課税の対象になるのです。できるだけ早く定期的に返済すべきです。
6.役員貸付金の解決方法は?
上記のようなリスクを避ける為に、まずは、現金預金管理をしっかりして、使途不明の為の役員貸付金が増えないようにすべきです。次に「役員貸付金」は返済することで、増やさないようにすることです。多額の役員貸付には「取締役会の承認」が必要であることもお忘れなく。返済方法には、「役員報酬の増額」「個人資産の売却」、「役員退職金との相殺」などが考えられます。特に事業承継をするためには、整理をしておく必要があります。
厚生労働省の予測では2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になるといっています。
認知症になるとどのような問題が生じるのか、想定される主な事項を知っておきましょう。そして、その対策も考えましょう。
1.認知症の相続人がいると、遺産分割協議はできない
相続が起こると、亡くなった方の財産は凍結されます。なので、原則として、銀行預金などは下ろせなくなり、不動産等も処分できなくなります。遺産分割協議で誰が相続するかを決めれば解除されます。しかし、相続人であるお母さんが認知症などで判断能力が低下していると、遺産分割協議に参加して意思表示することはできないのです。認知症の相続人は相続放棄をすることもできません。これらの手続きは代筆することもできません。
2.株式の売買や贈与、融資の契約、株主総会における決議などができません。
認知症の人が会社にかかわる人物であればより問題を大きくします。株式売買等の法律行為ができないからです。
例えば、事業承継には、さまざまな法律行為を伴います。高齢化で事業承継を進めようと考えていた場合、経営者が認知症になってしまうと、自身の判断で事業承継ができなくなるリスクがあります。
3.遺産分割協議等を行うためには成年後見制度を利用するしかない
相続人に認知症の人がいると遺産分割協議や相続放棄は全くできなくなるわけではありません。その場合成年後見制度を利用することになります。成年後見人等が代理で法律行為を行うことになります。後見人が本人の代理人として参加することで遺産分割協議をし、また相続放棄についても、後見人が手続きすることになります。
ただしその手続きは面倒です。お父さんの死後、慌てて認知症のお母さんの後見人の選任を家庭裁判所に申し立てた場合、手続きには数か月かかってしまいます。特に複雑な家族関係とかがあればなおさら困難です。
相続税申告の期限は10カ月ですので、もたもたしていると期限に間に合わない可能性もあります。
4.認知症の家族がいるときの生前対策
相続人の1人が認知症などにより判断能力が無い場合は、相続発生後のトラブルを回避するため、生前にできる対策をしておきましょう。特に複雑な家族関係とか、事業経営にかかわっている場合は絶対に対策が必要です。
5.遺言書を作成する
対策の最も有効でやりやすいのは、お父さんが生前に「遺言書」を作っておくことです。遺言で「誰に何を相続させるか」を決めていれば、遺産分割協議をしなくても不動産や預貯金について、凍結を解除し相続手続きをすることができ安心です。ただし、認知症になってからは判断力次第で作成できないこともあります。元気なうちに作りましょう。
特に複雑な家族関係とかがあれば、これはぜひともやっておく必要があります。公正証書遺言がいいでしょう。手続きは公証役場(唐津や佐世保にあります)にて行います。数万円の手数料で済みます。
6.家族信託を利用する
お父さんと子どもが家族信託という手続きをしておき、承継先を定めておくことでも、同様に遺産分割協議を回避することができます。父親の死後、子どもは事前にした契約通り、信託財産を管理、運用、処分できます。
家族信託の手続きは、信託銀行や専門の司法書士に依頼します。
■身近なインボイス対応 タクシー代はどうなる?
従業員等がインボイス登録をしていない個人タクシーの領収書を会社との間で精算した場合、どうなるのか気になるところです。
インボイス制度では、免税事業者や未登録の課税事業者等からはインボイスが交付されず、買手は経過措置を適用することで制度開始から6年間、仕入税額相当額の80%又は50%を控除できます。一方、請求書等の交付を受けることが困難などの理由から、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引として、出張旅費等特例があります。同特例では、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)が対象となります。
例えば、従業員等がインボイス登録をしていない個人タクシー(免税事業者等)を利用し、代金を現金で支払って領収書を受け取ったとします。従業員等が会社との間で精算する実費相当額はその領収書と帳簿の保存により、経過措置を適用して最初の3年間は80%、その後の3年間は50%の控除が可能となります。また、旅費規程等に基づく範囲の額であれば、会社は帳簿に“出張旅費等特例”などと記載して保存すれば全額を控除できます。
基準期間売上1億円以下の中小事業者については、インボイス開始後の6年間、税込1万円未満の課税仕入れにつきインボイス不要で一定事項が記載された帳簿のみで仕入税額控除も認められます。(少額特例)
インボイス制度では、原則、適格請求書等を保存しなければ仕入税額控除ができませんが、請求書等の交付を受けることが困難な取引に係る仕入れについては、帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます。控除を受けるには、帳簿に「帳簿のみ保存が認められるいずれかの仕入れに該当する旨(該当する仕入名)」を記載しなければなりません。
帳簿のみ保存の対象となる取引には、適格請求書等の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送(公共交通機関特例)や、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費特例)などの9種類があります。帳簿には、例えば、公共交通機関特例に該当する取引には「3万円未満の鉄道料金」と、出張旅費特例に該当する取引には「出張旅費等」とそれぞれ記載すればよいです。
■大手建設会社はインボイスに関して下請け会社にどう対応しているか
鹿島建設株式会社はこのほど、インボイス制度に関する行動指針を策定し、全従業員が遵守することを公表しました。具体的な遵守事項は以下のとおりです。参考になります。
(1)適格請求書発行事業者登録をしないことを理由にして、発注取止めや、消費税相当額の一部または全部を支払わない行為をいたしません。
(2)適格請求書発行事業者登録によって免税事業者から課税事業者に転換したお支払先様から、従前、免税事業者であったことを前提に設定していた単価の見直し要請があった時に、価格交渉に応じず一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注する行為をいたしません。
(3)お支払先様に対する適格請求書発行事業者登録のお願いは、協力の依頼のみであり、強要はいたしません。
中小企業投資促進税制は、中小企業が生産性を高めるための設備投資を支援する税制です。ところが近年、この制度を活用した節税(実際には課税繰延)が一部で流行しています。本業との関連性が薄く、「中小企業が生産性を高めるための設備投資を支援する」という制度趣旨から大きく外れる「コインランドリー」と「マイニング機器」が名指しで除外されることになりました。
令和6年まで改正の上で延長されています。
個人事業主と資本金3000万円以下の中小企業は30%の特別償却のみでなく7%の税額控除か選択可能です。
中小企業投資促進税制
| ● 中小企業投資促進税制は、中小企業における生産性向上等を図るため、一定の設備投資を行った場合に、税額控除(7%※)又は特別償却(30%)の適用を認める措置。 ※税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者等に限る |
【適用期限:令和6年度末まで】
※赤字は令和5年度改正による変更点
| 対象者 | ・中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等) ・従業員数1,000人以下の個人事業主 |
|---|---|
| 対象業種 | 製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、 港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業については生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る。)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、通信業、損害保険代理業及びサービス業(映画業以外の娯楽業を除く)、不動産業、物品賃貸業 ※性風俗関連特殊営業に該当するものは除く |
| 対象設備 | ・機械及び装置【1台160万円以上】 |
| ・測定工具及び検査工具【1台120万以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上】 | |
| ・一定のソフトウェア【ーのソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上】 ※複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く |
|
| ・貨物自動車(車両総重量3.5トン以上) | |
| ・内航船舶(取得価格の75%が対象) | |
| 措置内容 | 個人事業主 資本金3,000万円以下の中小企業 30%特別償却 又は 7%税額控除 |
| 資本金3,000万円超の中小企業 30%特別償却 |
※①中古品、②貸付の用に供する設備、③匿名組合契約等の目的である事業の用に供する設備、④コインランドリー業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものは対象外
※総トン数500トン以上の内航船舶については、船舶の環境への負荷の状況等に係る国土交通省への届出が必要
出典 経済産業省 令和5年度税制改正について
令和4年度税制改正において、「中小企業向け所得拡大促進税制」を抜本的に拡充した「中小企業向け賃上げ促進税制」が設けられています。税額控除率は従来の最大25%から最大40%へと大幅に引き上げられております。賃上げが求められる今日税制面での後押しです。
従前と比べ使い勝手は緩和されていますので、賃上げの参考にしてみてください。
■制度改正の全体概要
中小企業向け賃上げ促進税制は、中小企業者を対象に、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始される事業年度(個人事業主の場合は令和5年及び令和6年)で利用可能な制度です。適用要件及び税額控除は以下の通りです。大枠を理解していただくために細かい点は省いて概要を書いています。
①通常要件 雇用者給与等支給額が前年と比べ1.5%以上増加したとき
増加額の15%を法人税または所得税額から控除
②上乗せ要件1 雇用者給与等支給額が前年と比べ2.5%以上増加したとき
控除率を15%上乗せし、増加額の30%を法人税または所得税額から控除
③上乗せ要件2教育訓練費が前年比10%以上増加したとき
さらに控除率を10%上乗せし、増加額の40%を法人税または所得税額から控除
*税額控除額は控除前の法人税額または所得税額の20%が上限となります。
例)前年給与支給額 1,000万円 当年支給額1,100万円 法人税額200万円とする。
増加率10%>2.5% ②の適用 控除税額は増加額100万円×30%=30万円
控除限度額 法人税額 200万円×20%=40万円 40万円>30万円 よって控除額30万円
*①のみの適用は15%、②の上乗せ適用の場合は30%、①と③適用は25%、②と③だと40%になります。
*この制度は中小企業者(期末時に資本金の額等が1億円以下、又は、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の青色申告法人等)のみの制度です。
中小企業向け賃上げ促進税制については、一人ひとりの賃上げに加え、雇用を拡大することによる給与等の支給額の増加に対するインセンティブとしても機能するよう、対象となる雇用者給与等支給額を雇用されている全ての方の給与総額とする考え方は維持しており、昨年の改正のポイントは、上乗せ要件の簡素化及び税額控除率引上げです。
また、一人ひとりの賃上げや雇用の確保に積極的に取り組む中小企業を力強く後押しするという観点に加え、人的投資に積極的に取り組むことで、生産性の向上を通じた更なる賃上げ原資の確保に繋げることを目的として、上乗せ要件を「雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加」と「教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加」の2つに分け、いずれか一方のみの適用、あるいは併用、いずれも可能とすることとしました。
参考 大企業向け賃上げ促進税制の概要 中小企業とは若干厳しい要件となっています
令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において、継続雇用者に対する給与等が対前年度比で3%以上増加した場合に、原則、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%の税額控除が認められます。4%以上増加などの上乗せ措置を適用した場合には、最大30%の税額控除が可能となります。適用要件や税額控除限度額などは、従前の人材確保等促進税制に設けられていた、いわゆる設備投資要件は令和4年改正で撤廃されています。
■過度な節税対策を行うと、後に困ったことがおきます。
中小企業にとって節税対策は会社を維持するために大事なことですが、やり過ぎてしまうと資金繰りを悪化させ、かえって企業の存続を危うくしてしまいますので、要注意です。
決算の時期に税金対策として高級車を購入する。必要性の低い物を購入する。行き過ぎた交際費を使う等です。これらの行動でお金を使いすぎてしまえばいくら節税ができたとしても結局は損失につながってしまい、経営を苦しくする原因になります。高級車購入はちょっと待ってください。自己資本比率が30%以上になってからにしましょう。それ以下はまだ並の会社になっていないのですから。
1.ここに A社 B社 いずれも同じ業績の会社があるとします。
A社は儲かった利益で毎年500万円の納税をし、毎年1,500万円貯めていきました。B社は税金がもったいないと思い、その対策のため1,500万円の経費を使い利益を減らし、税金を125万円に少なくしていきました。
さてこの2つの会社の5年後はどうなっているでしょうか?その結果が下記の通りです。
A社
| 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
| 売上 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 |
| △経費 | 8,000 | 8,000 | 8,000 | 8,000 | 8,000 |
| 税前利益 | 2,000 | 2,000 | 2,000 | 2,000 | 2,000 |
| △法人税 約25% | 500 | 500 | 500 | 500 | 500 |
| 税引後利益 | 1,500 | 1,500 | 1,500 | 1,500 | 1,500 |
| 残る預金 | 1,500 | 3,000 | 4,500 | 6,000 | 7,500 |
B社
| 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
| 売上 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 | 10,000 |
| △経費 | 8,000 | 8,000 | 8,000 | 8,000 | 8,000 |
| △税金対策の経費 | 1,500 | 1,500 | 1,500 | 1,500 | 1,500 |
| 税前利益 | 500 | 500 | 500 | 500 | 500 |
| △法人税 約25% | 125 | 125 | 125 | 125 | 125 |
| 税引後利益 | 375 | 375 | 375 | 375 | 375 |
| 残る預金 | 375 | 750 | 1,125 | 1,500 | 1,875 |
残る預金に注目してください。A社は預金に7,500万円が残ります。B社は1,875万円しか残っていません。実にその差は5,625万円もあります。
借入金でいえば、A社はその預金で7,500万円返済できますが、B社は1,875万円しか返済できないことになります。
2.ここで考えてみましょう。
5年後、経済環境が変わり不景気が来ました。生き残れる会社はどちらでしょうか?
5年後、運良くいい仕事が来て、それに対応するため設備投資をする必要があります。対応できるのはどちらの会社でしょうか?資金力の差で、リスクに耐えてかつ業績を伸ばすチャンスを逃すことをわかっていただきたいと思います。
3.目的が税金対策であることが問題。
目的は経営対策としての支出であるべきなのです。経営対策はそれぞれの会社で異なります。借入過大の会社は、まずは預金が残る対策(=借入返済)を最優先すべきであることはおわかりだと思います。
借入過大の会社かどうかは自己資本比率でわかります。30%以下の会社は税金対策の支出は慎重であるべきです。そのようなことをすれば負のスパイラルにはまり経営悪化をするばかりです。多くの資金繰りの失敗、経営の失敗はここにあるのです。
□生前贈与の改正 相続時精算課税制度が使いやすくなりました。
贈与の方法として、大きく暦年贈与と相続時精算課税制度の2種類があります。
今までは、贈与は暦年贈与をお勧めしてきました。なぜなら相続時精算課税制度は、「行きはよいよい帰りは怖い」と言われる制度だからです。
相続時精算課税制度は、相続時に贈与した金額が何年たっても持ち戻され、相続税の前取りみたいな制度です。しかも以後暦年贈与は使えない制度になっています。一方暦年贈与は贈与時に課税されても一定期間持ち戻されることはありません。従ってこつこつと暦年贈与をした方が賢明であり、相続時にもめるリスクも低いのです。相続税の申告の必要の無い人にはお勧めでした。
現に令和3年贈与課税件数は、暦年課税分48万件、相続時精算課税分4万件と圧倒的に暦年課税分が利用されています。令和5年度改正で、相続税の見直しがなされ、この相続時精算課税制度が令和6年分から使い勝手が良くなったと言えます。
①生前贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間が3年から7年間に延長されます
現在の制度では相続の前に暦年贈与をしたとき、3年前の分までは、相続の時に加算することになっています。これが、次のような改正されます。
○相続発生前7年以内(現行3年以内)に贈与された財産を、相続財産に加算する。
○ただし、延長された4年分の贈与については、4年間の贈与額の合計額から100万円を控除した金額を相続財産に加算する。つまり、4年間合計で100万円以内の少額は加算しなくても良いということです。
この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。
②相続時精算課税制度を使っても110万円の基礎控除が使えるように見直し
○相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母が、18歳以上の直系卑属(子または孫など)
に対して贈与した場合に、適用できる制度です。贈与時は2500万円までは課税されないのですが、相続時に贈与した金額が持ち戻されるという意味で、相続税の前取りみたいな制度です。しかし、これを選択すれば、2度と暦年贈与には戻れません。従ってこれを使えば現行制度では以後110万円の暦年贈与の基礎控除枠は使えないことになり、例えば50万円の贈与をしても申告が必要となります。ここが普及しない原因でした。
〇今回の改正では、暦年課税制度と同様に、相続時精算課税制度にも毎年110万円の基礎控除枠が設けられます。これにより、年間110万円以下の贈与については、贈与税の申告が不要となります。110万円以下については毎年の贈与があったとしても、持ち戻しの必要がなくなったのですから、非常に使い勝手は良くなりました。
この改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産について適用されます。
○相続時精算課税制度を使って贈与した場合、その財産の評価額は「贈与時の評価額」で固定され、仮に10年後に相続が発生した場合であっても、贈与した当時の評価額で相続財産に加算されます。
そのため、贈与財産が災害で被害を受けて価値が下がったのに評価額は贈与時のままになる可能性があります。そこで今回の改正では、贈与された土地・建物が災害により被害を受けた場合には、評価額を再計算する事ができるようになります。令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用されます。
令和5年度税制改正での特に重要な点は、相続時精算課税制度の改正と、今年10月からスタートするインボイス制度に関する改正です。今回はインボイス制度の改正について要点をお話しします。主に4項目あります。
1.納付すべき消費税額を3年間売上の20%に軽減する
〇インボイス制度をめぐっては、小規模事業者から「免税事業者のままでは、取引先が仕入税額控除できないため取引が打ち切られる」「課税事業者になると消費税負担が増えて生活が苦しくなる」といった影響が心配されています。そこで今回の改正では、免税事業者がインボイス発行事業者になった場合、納付すべき消費税額を軽減する措置が設けられることになりました。
〇改正の概要 次に掲げるいずれかに該当する事業者が納付する消費税額は、3年間限定で、売上に係る消費税額の2割納付に軽減されます。
イ) 免税事業者が適格請求書発行事業者となった場合
ロ) 課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合
この軽減措置は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において適用されます。
2.中小事業者の過大な事務負担軽減
〇インボイス制度が開始されると、金額にかかわらず、全ての取引についてインボイスを取得・保存することが義務付けられます。これに伴い特に、中小事業者においては過大な事務負担の発生が予想されることから、一定規模以下の事業者の行う少額の取引については、帳簿のみで仕入税額控除を可能とする措置が設けられました。
〇改正の概要 以下のいずれかに該当する事業者が行う「支払対価の額が1万円未満である取引」については、一定の事項が記載された帳簿のみの保存を要件として仕入税額控除が認められます。
イ) 基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1億円以下である事業者
ロ) 特定期間(前年または前事業年度開始の日から6ヶ月間)の課税売上高が5,000万円以下である事業者
この改正は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて適用。
3.少額なものについては、返還インボイスの交付を不要とする
〇インボイスが交付された後に返品や値引き、取引先に対する販売奨励金の支払いなどが行われた場合、返還インボイス(適格返還請求書)と呼ばれる書類を別途交付しなければなりません。そのため、例えば振込手数料を売手負担とし、振込手数料相当額を値引きとして処理する場合にも、この「返還インボイス」を発行する必要があるのです。この事務処理は、事業者の膨大な負担になります。そこで今回の改正では、返品や値引き、取引先に対する販売奨励金の支払いなどに係る税込価額が1万円未満である場合、返還インボイスの交付義務が免除されます。
令和5年10月1日以後の課税資産の譲渡等につき行う売上げに係る対価の返還等について適用。
4.適格請求書発行事業者の登録期限の見直し
〇現行制度では、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、その課税期間の初日の前日から起算して1月前の日までに登録申請書を提出しなければなりません。改正後は「その課税期間の初日から起算して15日前の日」までに登録申請書を提出すれば、その課税期間の初日から適格請求書発行事業者になることができます。